Beautiful Thing
空を見上げると、流れる雲が目に入った。
「綺麗だね」
ボクの側で同じように空を見上げる彼女は言う。
何が綺麗なのか、ボクには分からない。そう伝えると、彼女は優しく微笑んだ。
「全てが綺麗なんだよ。あの空も、雲も、森も、花も、木も、鳥も、水も、川も。自然にあるものは全て美しいと思う。……それが何故だかわかる?」
彼女はボクに目を向けて問う。ボクには見当もつかない。そう伝えると、彼女はまた空に目をやって教えてくれた。
「それはね、全て光のおかげなんだよ」
ボクはよく分からながら、太陽を見上げる。
「そう。お日様の光だ。光があるからこそ、全てを感じることができるし、それは変化することができる。だから、私たちは、変化を感じて美しいと思えるんだよ」
それなら夜は駄目ではないかと訴えると、彼女は面白そうに笑って答えた。
「そんなことはないよ。夜には月や他の星たちが照らしてくれる。それはそれでとても綺麗だ。……おっと、君にも見えるのかな?」
ボクは普通の鳥よりは夜目が利く。そう伝えると彼女は本当に嬉しそうに笑った。
「そうか、それはよかった」
その笑顔がとても綺麗で、ボクはみとれてしまった。
やがて、彼女が、ボクの方に腕を差し出す。
「そろそろ帰ろう。皆が心配する」
その腕が、あまりにも細く白く綺麗なので、ボクは少し躊躇したが、彼女が催促するように腕を振ったので、仕方無く、今までとまっていた木の枝から彼女の腕に舞い降りる。鋭い爪でその綺麗な肌を傷つけないように、慎重に止まる。翼をたたんでなんとか彼女の細い腕に収まると、彼女は満足そうに笑った。
「さあ、帰ろう」
歩き出した彼女の腕から、ボクは、また空に目をやる。その色は夕暮れに赤くなりかけていた。
その空の、赤と青と白が織り成す不思議な色合いを、ボクは綺麗だと思った。
初投稿でした。
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