【短編】彼女の料理はモンスター~彼女の料理が究極メシマズスキル「料理がモンスター化」だったけど、最高に可愛くて性格も良くて絶対手放したくないので、俺は剣を手に取り彼女の料理に立ち向かうことにしました。
「なあ。念の為に聞いておきたいんだけど」
「念のためってレベルなら、別に聞かなくてもいいんじゃない?」
僕のそんな何気ない問いに、彼女は痛々しいほどすっとぼけた様子で、
これまた分かりやすく口笛を吹いて、よそ見をしながら返事をする。
目の前には、綺麗に並べられた食器があり、その上には最早、
なにを元に作られたかもわからない、名状しがたき物体Xがそびえ立っていた。
「【今回は】一応人間が食べられる物体を使ったんだよね?」
「記憶が正しければ」
彼女の記憶が正しいことを切に願う。
「なんか匂い嗅いでると涙出るんだけど」
「玉ねぎ入ってるからだと思う」
恐らく違うだろう、なぜなら玉ねぎは生命の危機を感じる匂いを発しない。
「なんか微妙に動いているのはなぜ?」
「ほ、ほら、活きが良いってことだよたぶん」
活きが良くても、相手が物体Xなのだからたまらない。
僕の彼女は料理ができない。
それはここまで話を聞いてくれた皆さんもご理解いただけただろう。
ただそれだけじゃない。
彼女のスキルが規格外なのだ。
料理のスキルという意味ではない。それなら頑張れば改善する可能性があった。
でもこの場合のスキルというのは、人が生まれ持って得た先天的なスキルである。誰もがスキルを持って生を受けるこの世界だが、スキルが必ずしも自分を助けるものだとは限らない。中にはネガティブな効果を発揮するスキルもある。
彼女のスキルは、そんなネガティブスキルの中で、いわゆる
「メシマズ」ジャンルに値する。
作る料理がメシマズになるスキルだ。
このスキルを持って生まれた人間には、人間が食べて良い料理を作れないという残酷な運命が待っているかわりに、それとは別に基本ステータスに補正がかかる。
めちゃくちゃ頭が良かったり、
めちゃくちゃ性格が良かったり、
めちゃくちゃ可愛かったりかっこよかったりする。
なので【メシマズ】スキルがあるからと言って、必ずしも人として劣っているわけではなく、むしろステータス補正で人として優れていたり、そのスキルを克服するために人としての修練を積んで人望を得たりすることがある。
俺も初めから彼女からメシマズスキルの話は聞いていた。
しかし俺は彼女にぞっこんだった。一目惚れと言うか、出会った瞬間電撃が走ったような感覚を覚えた。それは彼女も同じだったようだ。
彼女はめちゃくちゃ頭が良くて、魔法科大学の最高峰、国立ステートル魔術大を最年少で卒業し。どんな人間にも分け隔てなく愛情を持って接して、そして異次元に聖女の如き可愛さだった。
察しのいい方ならわかるだろう。彼女のスペックを理解すれば。
そう、彼女はそのすさまじいスペックを生まれた瞬間神から譲り受けた。が、その大小として究極のメシマズスキルを得た。それは、
【料理モンスター化】
である。
彼女は生まれてこのかた、彼氏がいたことはなかったという。
その理由が、彼女の父親によって課せられた試練
「俺の娘の彼氏になりたかったら、娘の料理を一生食べろ」
というものだった。
無茶だった。譲る気はないのがミエミエだった。
しかし、それに対して俺のスキルはコレだ。
「鉄の胃袋」
このスキル、一見普通のようだが、俺はこのスキルを実はチートだと思っている。
なぜなら俺はこのスキルのお陰で世界最凶と言われたスラムから成り上がることができたからだ。あらゆるものを食べることができるので、飢えて死ぬということがない。これまであらゆるものを食べてきた。
それは毒物も含まれる。なので俺の中には大量の毒物に対する抗体ができていて、俺はその抗体を国の研究機関を提供することで一財産を得て成り上がることができた。
俺のお陰でかなりの数の病原菌が撲滅され、生後4歳までの子供の生存確率が4%上がったという。4%ってしょぼくない?と言ったら、国のお医者さんに「あなたは自分の偉大さを0.00000000000000001%もわかっていない」と怒られた。
このスキルを見込まれて、俺は彼女から依頼を受けたのだ。
依頼の内容は
「私と結婚してください!」
というもの。秒で依頼を受けた。
しかしこの依頼を達成するには、彼女の料理を食べないといけない。
そして今。俺はその依頼を達成するために彼女の料理と向かい合っている。
目の前にそびえ立つ物体Xが、僅かに小刻みに、まるで生き物のように脈動する。
その動きは次第に大きくなり、まるで本当に生きているかのように動き出した。
僕はその様子を横目で見つつ、用意していた大ぶりのハンマーを構える。
今回の化け物はスライムタイプらしい。比較的対処しやすい相手だ。
僕は相手が完全に化け物になる前に、手に持ったハンマーで何度か殴りつける。
若干反則な気もするけど、現実は非情なのだ。
食べてみたら寒天みたいな食感だった。味はあたりな方だ。
彼女の作る料理は、その材料次第で様々な化け物に変化する。
牛肉を使えば牛系のモンスター、魚を使えば魚系のモンスターといった具合だ。
食べられない食材になるほど強いモンスターになるようで、コンクリートが材料だった時は、巨大なゴーレムが出現して、危うく家が崩壊するところだった。
こんな壊滅的な特技を持つ彼女だけれど、僕は彼女を愛している。
なにせ彼女は料理以外の面は最高で、彼女以上の女性に出会えたことはないからだ。
また生活面でも仕事面でも、完璧なパートナーとしてお互いを支えている。
それに僕は彼女に感謝している。
なぜなら彼女の料理を倒しているうちに、毒耐性+強靭な肉体を手に入れて、
国王に認められるまでに至ったのだかから。
数年後。僕は勇者になった。
だから僕は、自分が今の地位につけた理由について聞かれると、
いつもこう答えている。
「彼女の料理が、僕を勇者にしたんだ」と。
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