総選挙、ですか……
下原プロミスとの仮契約も無事に終わり、小野寺は七瀬のフォローへと回ることが多くなった。
本契約を確実に交わすことが最優先。小野寺の残業は日増しに多くなり、会社に泊まり込む日もあった。
「係長! 本契約、取れました!!」
「そうですか。おめでとうございます」
帰社した七瀬の笑顔が全てを物語っていた。
本契約の立ち会いに向かった課長の柳田が、まるで自分が契約してきたかの様に自慢気な顔をしていたが、誰も相手にはしていなかった。
これで久々に早く帰れそうだ。
小野寺の頭の中を、久しく通っていなかったオムライスが過る。
「お帰りなさいませ御主人様♪ 御指名はありますでしょうか!?」
「……いえ」
「ただ今総選挙期間となっておりまーす♪ 御一人様三票まで使えますので、お好きなメイドに投票してあげて下さいね♪」
投票用紙を三枚渡された小野寺。面倒そうな顔で席へと向かう。
「うんぴー☆ アリスちゃんだぞー♪」
「……どうぞ」
お冷やを運んできたアリスに、アリスの名を書いた投票用紙を一枚渡す。
「おのっち劇ヤバうんぴーワロスwww メッチャ嬉しいんすけどうんぴーワロスwww」
「もっと要りますか?」
「いるいるwww」
「どうぞ」
三枚とも手渡すと、アリスは満面の笑みで「追加は一枚千円です♪」と、こたえた。
「……結構です。それよりオムライスを一つ」
「うんぴー☆」
小野寺は早々にオムライスを食べ終え、席を立った。
「あっ! 社長さんいらっしゃいませ♪」
帰り際、七瀬の姿が見えた。年老いたサラリーマンの相手をしていた。
「やあ七瀬ちゃん。今日も元気をもらいに来たよ」
「やだぁ、嬉しいです♪」
「……」
その声に、小野寺は聞き覚えがあった。
「……父さん」
「……哲か?」
「えっ!? 社長さん、係長のお父さんなんですか!?」
七瀬が驚いた。
「何故父さんがココに……」
「七瀬ちゃんに会いにだよ」
「……なるほど。何故下原プロミスと契約に至ったのか、分かりましたよ」
「わしゃ何もしとらんよ。ただ、ココでメシを食ってるだけじゃ」
小野寺の父、小野寺大次郎は一部上場企業経営者であり、数多くのグループ会社を持つ大企業の社長でもあった。
その中の一つに下原プロミスがあることを、小野寺はたった今思い出した。
「哲、お前こそ」
「私はオムライスを食べに……」
「係長ったらオムライスにしか興味が無くて、じゃんけんもチェキもなーんにもしてくれないんですよぉ?」
七瀬が頬を膨らますと、大次郎は嬉しそうな顔を七瀬に向け、そして小野寺へは辛辣な顔をくれた。
「哲……お前はココに何をして来てるんだ。彼女達を見て見ろ。彼女達の生き様を覗いてみろ。俺達は彼女達から学ぶべき事が沢山ある。そうだろう?」
「なんですか一体……」
「まあ座りなさい」
「…………結構です」
小野寺は拳を握りしめ、みけねこを後にした。
次回最終話──小野寺爆発す!!