ポイントサービス、ですか……
たまの休日、小野寺は買い物をすることが多かった。
自炊派の小野寺は、スーパーや市場へ出向き、自ら食材を見て観察し、消費者としての視点やニーズを仕事へ活かす取り組みを行っていた。
「む、ポイント五倍サービスですか……」
特売日でもないが、ポイント五倍に釣られて店へと導かれるように入店する小野寺。
彼はポイントサービスに弱かった。
「少し買いすぎましたか……」
日持ちする食材を中心に、普段はあまり買わなかったり、他店でも値段があまり変わらない品を買った小野寺。溜まったポイントはここぞと言うときに使う派だ。
「む……」
夜、小野寺はスマホの通知画面に現れた『来週はポイント3倍ウィーク』の文字に、思わず指を伸ばしてしまった。
「みけねこハウスのですか……あそこもポイントあったんですね」
思わずスマホのアプリから、会員ナンバーを入れてマイページへと飛んだ小野寺は、初めて目にする獲得ポイントを見て、一瞬我が目を疑った。
「……50000P? そんな馬鹿な……」
それ程回数をこなした訳でもないのに、既に小野寺のポイントは五万ポイントを超えており、その桁数に何度も確認をしたが、間違ってはいないようだった──。
「どういう事ですか、これは……」
「あ、それはですね──」
翌日、小野寺はみけねこハウスでオムライスを食べていた。彼はポイントサービスに弱かった。
「沢山0が付いた方が嬉しいだろうって、店長が」
「確かにそれはそうですが」
「その分減り方も早いですよ?」
「……でしょうね。で、ポイントは何に使えるんですか?」
「えーっと、食べ物や飲み物、チェキやじゃんけんに……」
チェキ? じゃんけん?
小野寺は一瞬首を傾げたくなったが、そう言えばここはメイド喫茶だったな、と納得した。
「それに、ポイント限定のグッズや呼び方を変えれたりもするんですよ?」
「……呼び方、とは?」
「普通は『御主人様』ですけど、自由に変えられるんです」
「……ほう」
「旦那様、とか……社長さん、とか……先生、なんて呼ばれたいお客さんも居ますよ」
「……呼び方なんて別に何でも良いと思いますが、ね」
そう発した小野寺は、遠くを見るようにしてオムライスを口へ運んだ。
「……課長」
小野寺の手が止まった。
「課長♪」
小野寺の手からスプーンが落ちた。
「課長さん♡」
小野寺の手がオムライスの上に墜落した。
「ふふ、どうですか?」
「…………ま、まあ人それぞれと言うことで」
ナプキンで手の甲に着いたケチャップを拭き取ると、水を一口飲み、落ち着きを取り戻す。
「……因みにそれは何ポイントなんです?」
「1億ポイントになりまーす♪」
「……はい?」
「1億ポインツでーす♪」
「……」
桁数がおかしくなり、何度通えば良いのか分からなかったが、とりあえずそんなになるまでは行かないだろう、と小野寺は思った。
「数ヶ月に一回くらいポイント百倍とかやりますから、案外溜まるの早いですよ?」
「……クッ」
彼はポイントサービスに弱かった。