第1話 愛の勇者と魔族の侍女
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クラウディア王国。王都ノヴァウスの中心に4つの地方が王都を囲むように位置する王国である。
東側は農業、西側は工業が発展しており、王都はその中間にある為、地方の品物を扱う商人などで賑わいを見せており、南側は魔族の国との国境沿いである為、城塞都市が建てられ、魔族の侵入を防いでいる。
国を治めているのはクラウディア王国初の女王であるダイヤモンド・アミール・クラウディアであり、彼女は元々王妃だったのだが夫である先代国王が逝去した際、国王の遺言により女王に即位した。
新雪のように白い髪を背中まで伸ばし、月のように黄色い瞳でとても美しく、性格は慈悲深く、国民の事を第一に考えており、国民からの支持が高い。
彼女の部下には七勇者と呼ばれる7人の勇者がおり、火の勇者、水の勇者、雷の勇者、風の勇者、鋼の勇者、心の勇者、愛の勇者の7人が存在し、主に彼らが王都の治安と国の平和を守っている。
勇者は数十年に一度、15歳から30歳の男女の中から選ばれ、選考基準は不明だが選ばれた者には安泰した未来が約束されている。余談だが、歴代の勇者に選ばれた者には悪人が1人も居ないらしい。
「ただいま」
「おかえり。マリー」
王宮の一室でたわいもない会話をしているのは、七勇者の1人であるローズマリー・ヘルゲートと彼女の専属侍女であるガレディア・アイルハートである。
ローズマリー・ヘルゲートは愛の勇者の称号を授かり、七勇者のリーダー的存在。
王国一の実力者であり、剣と魔法両方に長け、剣を交えている最中に至近距離で魔法を放ったり、剣に魔法の属性を上乗せして攻撃したりと両方得意なことを活かした戦法が得意。
性格はクールだが卑怯者や犯罪者には一切容赦しない。相手が誰であろうと隔てなく接するため、国民からの人気は高い。
ガレディア・アイルハートは路地裏で暴漢に襲われていた所をローズマリーに助けられ、行き場がない彼女をローズマリーが自分の専属侍女にした事でお世話になっている。
見た目は17歳頃の少女で腰のあたりまである赤髪に赤い瞳が特徴で、ローズマリー以外には愛想が悪い。
彼女は魔族であり、ローズマリーが彼女を連れて帰ってきた時はちょっとした騒動になったが、面倒は全て自分が見るのと問題を起こした時は責任を取るという条件で事なきを得た。
というのも人と魔族は極めて仲が悪く、過去には何度も戦争している。互いを憎み、虐げ、差別する事が当たり前であり、溝は深まるばかりである。
ローズマリーはそれを快く思わず、人と魔族が手を取り合って共に生きる世界を心の中では望んではいるが現状を変えられる術はなく、半ば諦め気味になってしまっている。
因みにマリーとはローズマリーの愛称で親しい間柄の人達は彼女をこう呼ぶ。
勇者の仕事を終え、自室に戻ったローズマリーはこちらに向かってくるガレディアをぬいぐるみのようにぎゅっと抱きしめた。
「ねぇマリー」
「何?」
「しばらくこのまま抱きついていたい」
「……着替えたいのだけど」
「そ、そうだよねごめん」
ローズマリーは苦笑いしながら言うと、ガレディアは彼女の事を考えずにわがままを言ってしまった事を謝りながら慌てて身体を離した。
「すぐ寝間着にきがえるからちょっと待ってて」
「うん」
ローズマリーは少しだけ時間が欲しいとガレディアに言うと、彼女は曇った顔を伏せながら大人しく従った。
「ほら、おいで」
寝間着に着替え、ベッドの上に倒れたローズマリーにガレディアは給仕服のまま腕を彼女の脇腹に一周させながら抱きつき、豊満な胸に顔を埋める。
胸の谷間から上目遣いでこちらを見てくるガレディアを愛おしく思いながら、ローズマリーは彼女の頭を撫でながら何があったのか聞いた。
「今日はどうしたの?いつもだったらこんなに甘えてこないのに」
「ちょっと嫌なことがあった」
「そっか」
ローズマリーは嫌な事があったガレディアを気遣い、詳しい事は聞かずに甘えてくる彼女を優しく受け止める。
「聞かないの?」
「聞かないよ。私はそういうのを根掘り葉掘り聞くタイプじゃないから。君が話したくなった時に聞ければいい」
「……ありがと」
ガレディアが少し眠たげな声で返事をしてきたので、ローズマリーはそのまま彼女を寝かせてあげようと母性本能を感じる声で眠りを促した。
「今日はこのまま寝ようか」
「……うん」
2人は抱きついたまま、互いの心地よい温もりと小さな幸せを感じながら穏やかな眠りについた。