プロローグ
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もうどうでもいい。
私はここでコイツらに殴り殺されるんだ。思えばクソみたいな人生だった。
気付いた時には既に人間の国に居て、路地裏で残飯を漁ったり、人の物を盗んで生きてきた。人々から蔑まれ、物を投げられた事もあった。
そして、いつものようにゴミ箱を漁っていたら、コイツらが俺達のナワバリだと言うので、無視して去ろうしたのがコイツらには気に食わなかったらしくこのザマだ。
身体中が痛いし、意識を遠ざかる。でもこの生き地獄とおさらばできるのならそれでいいや。
「貴方達、こんな所で何をしている?」
全てを諦めてこのまま意識を失って野垂れ死ぬのを待っていたその時、光が差しかかった路地裏の出口の方から突然、女の声が聞こえた。
「あぁ?」
奴らが女の声が聞こえた方に顔を向けると態度が一変し、動揺と恐怖で慌てふためきだした。
「ゆ、勇者様!?」
「おいどうすんだよ!こんな所見られたらタダじゃ済まねぇぞ!」
さっきまで意気揚々に私を殴ってた奴らの声が震えて気が動転している事を気にも留めず、勇者と呼ばれた女は蔑みを込めた威圧的な声で奴らに問いかけた。
「寄ってたかって1人の女の子を痛め付けて、人として恥ずかしくないの?」
奴らの1人がいかにも自分達が正義だと言わんばかりな大柄な態度で女に反論しだした。
「でも勇者様。コイツ魔族ですぜ?」
あぁ決まり文句か。止めが入っても魔族だと知ると見逃されるか加担される事が多々あった。
どうせコイツもそのどっちかだろうなと思って微塵も期待していなかったが、私の予想は大きく外れた。
「そんなのが理由になるか!!」
女は声を震わせながら憤怒と憎悪に満ち、路地裏中に響く声で奴らを怒鳴りだした。
私は一瞬何が起こったのか分からなかったが女の言葉の意味が分かった時、自然と涙が止まらなかった。とっくの昔に諦めていた事が起きたのだ。
「ヒィ!?」
奴らが真正面にいるから見えないが女の方から剣を引き抜く音が聞こえ、冷えきった声で奴らを容赦なく追い詰める。
「今すぐその手を離してここから立ち去りなさい。でなければ実力行使に移させてもらう」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「すみませんでしたあああああああああ!!」
「じにだぐなああああああああい!!」
奴らは完全に女に怯えて私の胸ぐらをさっさと手放し、声を裏返して情けない断末魔を上げ、地を這いながら無様に逃げ去った。
私は朦朧とする意識で起き上がり、助けてくれた女を下から見上げた。
少しでも屈めば地面に着きそうなまでに長い金髪に快晴の空のように青い瞳。
右半分を前髪で隠した端正な顔立ちと今まで見た事ない程の豊満な胸。
そして彼女が身に付けている金の模様があしらわれた白い鎧。
一言でいうなら女神のような女は剣を収めると、私を見下ろしながら近づいてこう言った。
「今から君を保護する」
これが私、ガレディア・アイルハートと愛の勇者ローズマリー・ヘルゲートの出会いだった。




