8 リリアンヌの学園生活
リリアンヌの、マリー嬢の話を聞いた設定の場所探しです。ノーマン公爵への言い訳用です。
ノーマン公爵は国の英雄とはいえ、国王陛下の弟。流石に兄王に逆らう事になる可能性のある事に協力は難しいのね。
本当は王家の方のご協力は欲しかったけれど……。
「それは……、仕方が無いのかもしれません。そうしましたら、他の有力貴族の方にご協力をお願いして……」
「いや、完全に断られた訳では無くて……。公爵は一度君からの話を聞きたいと、そうおっしゃってこの話を保留とされた。…私と共に公爵家を訪ねてくれるかい?」
少し気不味そうに話すマティアス様の言葉に、私は固まる。
えっ……。ノーマン公爵にお話を、ですか。私から……!
ノーマン公爵は国の英雄、黒と金の美丈夫。それだけあって、圧が凄いのだ!
前回のご挨拶の時もガチガチだったのに……。大丈夫かしら。
というか、あれ程の人物が聞けば私の話におかしいところがある事に気付いて疑問に思われたのかしら? 凄い尋問を受けてしまったらどうしよう……!
でも、逃げる訳にはいかない……。
今回敵対? する相手はこの国の第2王子。出来れば王族の、しかも国でかなりの発言権のあるノーマン公爵の協力は欲しいのだ!
「…分かりましたわ。私から、ノーマン公爵にご説明させていただきます」
「私が至らなくて済まない。…ノーマン公爵は、ご自分にも周りにも厳しい方だが一度懐に入れた人間はとても大切にされる。いつもの君ならばきっと話を聞き入れてくださるだろう」
それも、かなりのプレッシャーです……。しかも実はゲームで知り得た情報であって、マリー嬢の話を聞いてしまった、というのが嘘なのでもしもその辺りを突いてこられると厳しいわ……。
私は気付かれないようにそっとため息をついた。
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「ここだと……。うーん……。結構学舎からは丸見え過ぎるわよねぇ……。では講堂の裏側なら……」
「…ねぇ、何してるの?」
「! きゃっ⁉︎ え? サリア?」
そこには私リリアンヌの幼馴染、伯爵令嬢サリアが呆れた顔で立っていた。
ここ王立学園の2年生で同じクラス、父親同士も幼馴染で学園での親友、親子2代に渡っての親友であり家族ぐるみの仲なのだ。
「貴女ここの所どうしたの? ずっと考えこんでいるかと思ったら、数日前にはカタリーナ様にぶつかって送っていただいたり……。
あぁ、アレわざとよね? 貴女第2王子様の婚約者と知り合ってどうこうってそんな野心持ってたっけ?
あぁそれと、他の方で見てた方がいらっしゃったから、『リリアンヌは昔からドジでー』って言っといてあげたわよ?」
「…それは、どうもありがとう……」
ここでも私の名女優ぶりは否定されるのか……。
でも他の方に(ちょっと苦しい言い訳だけど)説明してもらえたのは有難いけれどね。
「実はちょっといい場所を探していて……。そうだ!サリアなら知ってるかしら? 内緒話をするのに最適だけどコッソリ話を聞けちゃうような場所!」
「…は⁉︎
…私思うんだけれどいくら幼馴染とはいえ、リリアンヌに付き合っていける私って結構凄いと思わない?」
更に呆れた顔なサリア……。
えぇ、サリア。貴女はとっても素敵なお友達よ?
彼女は一つため息をついて、少し考えた。
「…中庭の奥に知る人ぞ知る告白スポットがあるの。奥に入れば人目につかず声も意外に聞こえない。でも私この間飛ばされた書類を追いかけて、渡り廊下から裏手に入ったらちょうど告白の真っ最中で。そこからはバッチリ誰が何を話してるか分かったわ。そこは多分そんなに知られていないと思うわ」
「!! サリア、ありがとう!! 早速行ってみるわね!」
駆け出そうとする私の前に、サリアが立ちはだかる。
「待って。…ねぇリリアンヌ。貴女本当に最近何をしているの? 少し前は酷く悩んでいて、その後何日か寝込んでいたし。
体調が復活したと思ったら今度は何かをしようとしてる。…私には話せない事なの?」
サリアは私の目を見て真剣な顔で言った。
小さな頃から親に怒られたり習い事が上手くいかなかったり……、そんな時いつもこうやって本気で話を聞いてくれた。
私またサリアに心配させてしまったのね……。
「サリア……。ごめん、そして心配してくれて、ありがとう。うん、…私今……、それこそ自分の人生が変わる程の、大変な所にいる、と思う。
…だけど、この事は他の方の人生に大きく関わる事で、今は話す事が出来ないの」
「リリアンヌ……」
悲しそうな、寂しそうな顔をするサリア。
「でも、この事が済んだらきっと話をする……、ううん、サリアに聞いてほしいの! きっと、バカだと言われると思う、そんな私の、馬鹿な決断を聞いて欲しい……。
どんな結果になっても、私はこの決断をしない自分の方が許せないと思うから!」
マティアス様の愛するカタリーナ様が冤罪で断罪されると分かっていて放っておく事は出来ない。そして愛し合う2人の障害を取り除く方法があるかもしれないのに知らぬ振りは出来ない。
そして、私が2人の邪魔をする訳にはいかない。
…たとえ、私がマティアス様の事が本当に好きだとしても。
真っ直ぐに、私達はお互いを見た。
「…分かったわ。今は何も聞かない。リリアンヌが話してもいいと思った時に話して頂戴。…待っているから」
優しくサリアは微笑んでくれた。
私もつられるように笑う。
「…うん!ありがとう、サリア……!」
「あ、でも危ない事に首を突っ込むのはダメだからね!!」
少し戯けるようにサリアは言う。
ありがとう、サリア。大好きよ!
サリアはリリアンヌか自分、どちらかが異性だったら父親達は絶対結婚させようとしただろうな…、と思ってます。そのくらい家族同士仲が良いです。