6 マティアス様と計画
リリアンヌが暴走気味です。
「カタリーナを貶める計画⁉︎ それは一体……!」
マティアス様が顔色を変えて私に一歩詰め寄る。
うん、必死な余りカタリーナ様を呼び捨てになってますわよ。貴族ではお名前呼びするのは余程仲の良い関係だけ。まあ幼馴染とかならば不思議ではありませんけれどね。
「第2王子ルーカス様と仲良くなさっている子爵令嬢マリー様が、カタリーナ様に嫌がらせをされたと王子に泣きつき冤罪を被せ婚約破棄をさせようとされているのです。…おそらく、婚約破棄の舞台は王立学園の卒業パーティーですわ」
私はどこまで話すべきかと考えていたけれど、何せ断罪が行われる筈のパーティー迄後2ヶ月余り。こちらの体制もしっかり整えるにはモタモタしている時間はないのだ。
「この婚約は王家からなされたと聞いております。となると公爵家からお断りする事は不可能。そんな状況であるのに第2王子のお振る舞いは余りにも酷く……。見ているのも辛いほどでしたわ。その上で向こうから破棄してくれると言うならかえって良いかと思います。ですけれどもカタリーナ様に冤罪をかけて、というのは全くいただけません。…破棄していただいてから、ひっくり返すべきです!」
私はここまで言い切る。
相手が王族である以上、こちらも万全の体制で臨まないと押し切られるかもしれない。何せ流れがほぼゲームの通りなのだ。ゲームの強制力というものもあるかもしれない。
そして私1人の力ではひっくり返せない。
「…とりあえず、あちらに破棄をさせてから……。その後彼女に何の罪も無いと、そう証明して彼女を婚約から解放させる……。そういう事か……」
私の言葉に最初驚いていたマティアス様が、言葉を噛み砕くように呟いた。
「そうです。彼女には何の落ち度等も無く、ただあちらの不義不貞と冤罪をかけた罪、…そして、公爵家の乗っ取りを企てた罪を償っていただくのです」
「…公爵家の、乗っ取り……⁉︎」
マティアス様が目を剥いた。
~~~~~
あれから3日後。
「それで……。何のお話かしら?」
揺れる馬車の中。公爵家の柔らかなクッションの効いた椅子に座り、私はカタリーナ様と向き合っていた。
接点の無い公爵令嬢カタリーナ様と人に聞かれない様に話をする、というミッションはなかなか難しいものだった。
王子妃教育のない日の帰り際のカタリーナ様にぶつかり倒れ、馬車で送っていただく……という素晴らしい女優並の演技でなんとか2人きりという状況に持ち込んだ……、のだが、あれ?
「何かお話があって、あのような事をされたのでしょう?」
バレてる――!? 私の、名女優級の演技力が……!
…流石は、公爵令嬢ね……!
「…そうです。改めまして私カールトン伯爵が娘リリアンヌと申します」
開き直って話そうとすると、カタリーナ様は少し哀しそうに目を細めて微笑まれた。
「存じ上げておりますわ。…マティアス兄様の婚約者、の方ですわね。私はここ何年かは兄様とお話もしておりませんので、お力になれる事があるかは分かりませんが……」
「私の事を、ご存知なのですか?」
驚いた。そっか、私が2人の事に気付いたように、マティアス様を見ていたカタリーナ様も当然私に気付いていたという事なのだわ。
「紹介もされていないのに、どうしてかと思われますわね。私はマティアス様と幼馴染で……。最近は関わりはありませんがお噂だけはお聞きしていましたの。とてもお可愛らしい婚約者がいらっしゃると」
「そうでしたか……」
元日本人としては「いえいえ可愛らしいだなんてそんな……」などと言いたくなってしまうがここは日本ではない。
そして実際、元日本人の私から見たリリアンヌは緩いウェーブの上品な金髪に薄紫の瞳、なかなかの美少女なのだ!
公爵令嬢カタリーナ様の、見事な金髪で紫の瞳の品のある美しさには敵わないけれども……。
そして、カタリーナ様の髪は見事な縦ロールなのだった…て。これも、ゲームの悪役令嬢補正なのかしら⁉︎




