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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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40 包囲網

 ノーマン公爵は特殊とくしゅなお方だ。


 王弟であり、ほぼ負けの戦争をひっくり返した国の英雄であり、偉大な初代国王と同じ黒髪と金の瞳をもつ稀有けうなお方。


 戦争の英雄などという者は、大概たいがいは戦争が終わると肩書きばかりの国のお荷物となったりするものだが、このお方は戦後も国の為領地領民の為に尽くされた。

 そして、権力を望まず兄王を支えて来た。


 彼をよく知る者は彼を崇拝し、彼に助けられた者は彼に心酔しんすいしどこまでも支えていきたい、とそう思う。


 そんな者達がノーマン公爵の周りにたくさん集まっている。…私 マティアス ワーグナーもその1人だ。


 それが、今まで地位も権力も望まず皆の為に尽くしてくれたノーマン公爵に、ひとつ望むものが出来た。

 それが、今私の婚約者であるリリアンヌ カールトン伯爵令嬢だ。


 私も当然彼の為に動きたいのだが、今はこの国の第2王子の婚約者とされた、私の愛しい人カタリーナの婚約破棄を勝ち取ってから、という思いから動けないでいたのだ。


 私も当然、ノーマン公爵の想いは応援したいと思っている。

 …しかし、私にとってはリリアンヌの気持ちを優先させたい気持ちがある。彼女は、カタリーナと私の為に動き、協力し、…そして身を引こうとしてくれている。そんな彼女の気持ちを考えてから動こう。…そう思っていた。

 ノーマン公爵の想いがリリアンヌに通じたら良いな、と願いながら……。


 だがまさか、その前に1番厄介やっかいな人に気付かれてしまうとは……。


 数日前にリリアンヌがノーマン公爵と街で偶然出会い、ノーマン公爵が彼女に対して取ったという行動は、周りから見て彼がリリアンヌを憎からず想っていると充分に分かるものだっただろう。


 そしてその日ノーマン公爵に付いていたのは、リリアンヌが『芝居がかった従者』、と言っていた事から恐らくノーマン公爵に心酔しんすいしているブレットだろう。彼は武芸に秀でてはいるが、実は芝居が趣味で最近は『勧善懲悪かんぜんちょうあくの旅を続ける元副将軍とその従者の物語』にハマっている。ついこの間、私も似たような小芝居を見せられたばかりだ。


 …そして悪い事に、ブレットは『あの』ウォード伯爵に近い人物でもある。


 14年前の戦争でノーマン公爵と生死を共にし、公爵に心からの忠誠を誓う彼らの内の1人。フィリップ ウォード伯爵。

 ノーマン公爵の副官として普段から仕えている彼は、公私共に公爵に1番近いと言われる人物だ。

 そして、公爵の為に影で暗躍あんやくする人物でもある。


 リリアンヌとノーマン公爵が会ったというその日、公爵に付いていたブレットは2人の行動のほとんど一部始終を見聞きしただろう。

 そしてそれは、恐らくそのままウォード伯爵に伝わっている。


 その後、我が弟ダニエルに軍より下ったという『学園でのリリアンヌ嬢を守れ』との命令。きっと学園外でも別の護衛が付いた事だろう。


 それは、ウォード伯爵が動いているからに違いない。


 リリアンヌ。君はノーマン公爵を崇拝する彼らに、『ノーマン公爵が愛する娘』と認定されてしまったんだ……。

 恐らく2人が恋人となれるよう彼らは動きだすだろう。彼らに狙われたらきっと逃げられない。



「マティアス様? 急に黙られていかがなさいました? ご気分でもお悪いのですか?」


 リリアンヌが心配そうに見ていた。

 緩やかなウェーブのかかった優しげな金髪に薄紫の瞳。手足も華奢で長い。黙っていれば儚げな美少女だ。


 だが、背筋は彼女の意思のごとくピンと伸ばされ、その瞳は優しげであるのに意思があり見つめられると嘘などつけない。


 そう……、その強い瞳の光は、色こそ違えどまるでノーマン公爵の金の瞳のようだ。


 やはり……お似合いの2人なのだろうな……。

 是非とも一緒になってほしいが、それは現在リリアンヌの婚約者である私の立場からは言える事ではない。


「いや……、なんでもないよ。

ただ、これからは特に身辺に気を付けて欲しい。

君は色んな意味で狙われる可能性があるからね」


 やはり今は彼女に私からは何も言えない、と思い注意だけに留めておく。


「色んな……? 第2王子達も思い通りに事が進まず手当たり次第の手を打ってくるかもしれない、という事ですね!

前回ノーマン公爵が『今度何かあれば婚約の破棄を』と王に約束させていた事はご本人達はご存知でしょうしね……!」


「そうだね、ご存知だとは思うがそれをどこまで深刻に考えているかは不明だけれど……。

とにかく、今は警戒し過ぎるということはないから気を付けるようにね」


 まあ多分あちこちに護衛や監視が付けられているとは思うけれど――。


「そうですわね! 勿論もちろんマティアス様も気を付けてくださいませ。

あぁ、カタリーナ様にはもっと気を付けていただくようお伝えしなければ!」


 そう、そしていつの間にかカタリーナとも良き友人となっていたリリアンヌ。

 度々教えてくれるカタリーナの様子は、2人がお互い心を許している様子がよく分かる。


 私はリリアンヌの幸せを心から願い、そして力を尽くしていこうと、そう決意を新たにした。



お読みいただき、ありがとうございます。


リリアンヌの知らぬ間に、周りはガッチリ固められていってます…。

マティアスもウォード伯爵の素早い動きにドン引き…、イヤイヤ感心してました。

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