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始まってしまった…!  作者: 本見りん


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19 狂った歯車

「ノーマン公爵様……? もう一つ、よろしいですか?」


 私は、このモヤモヤした違和感をお話ししてみる事にした。


「なんだい? 何でも聞いてごらん?」


 優しく応えてくださるノーマン公爵に問う。


「…どうして、王家はそのタイミングで使者を送れたのでしょう?

カタリーナ様とマティアス様の婚約の話は王家にもう内々に届けられていたのですか? もしくは周りで噂になっていたのでしょうか?

マティアス様達が婚約寸前と知っていて婚約話を持っていくのはかなり恥知らずな行為ですし、世間の笑い者もしくは信頼の失墜という事になってしまうかと思うのですけれど」

 

 それを聞くと、当事者であるマティアス様が答えてくれた。


「…王家がどのようにして知ったのかは分からないんだ。

 ワーグナー侯爵家が私を養子に出しても良い、と決めてからの動きは早かった。次の日には公爵家に使いを出し、シュバリエ公爵もすぐに時間を作ってくださり、両家で会って婚約は直ぐにまとまった。

王家からの使者が来たのは最初両親が養子に行って良い、と私に伝えてから一週間も経ってないんだ。だから世間では婚約寸前だと知っていた人はほぼ居ないと思うよ。

だから……、王家も本当に偶然だったのかもしれない」


 そう説明されるマティアス様だが、その口振りから本当は納得されていない事はよく分かった。


「でも、そのたった1日程の差でカタリーナ様は第2王子様とご婚約する事となってしまったのですよね……。そして世間の方々はまだシュバリエ公爵家とワーグナー侯爵家との間で話がまとまっている事を知らなかった」


 私はいったん息を吐き、 マティアス様を見た。


「…マティアス様、私『偶然』って信じておりませんの。

そもそも王家は、内々の打診も無しに正式な話を持って来られた、という事でしょう?

王家との婚約を断らせない為という事と、こちら側の何処からか話が漏れて婚約が決まりかけている事実を知り、慌てて打診を出す間もなく使者を出した、という事……ですわね。

これは『偶然』などではなく『誰か』が、王家側に情報を漏らした。

今更犯人探しをしても仕方ない、ですけれども……!」


 そう。本当に今更なのだけれど、今回の歯車が狂い始めたのはそこからなのだ。ちょっと憎らしく思っても仕方がないでしょう?

 それにもし悪意の犯人が本当にいたのだとしたら……。


「今回私達が動いている事に気付き、その『犯人』がまたおかしな動きをするかもしれない、という事だね?」


 ノーマン公爵が答えを引き取ってくれた。


「…はい」


 今度こそ、邪魔をさせる訳にはいかないのだ。だから出来れば犯人の目星はつけたいところよね。そしてその『誰か』はワーグナー侯爵家かシュバリエ公爵家のどちらかの関係者である可能性が高いと思う。


 …だけど、動機はなんだろう? 2人が結婚して困る人……。


 シュバリエ公爵家は普通なら王家との婚姻の方が望ましいだろう。だけど公爵様の母君は元王女様だ。実の所はこれ以上王家との縁を求める必要はまだないだろう。

 そしてカタリーナ様がマティアス様をお好きな事は公爵様も知っており、2人が上手く行くように協力していた位なのだ。


 今回の犯人が王家より公爵家に入った間者だったりした場合はどうしようもないけれど、少なくとも公爵家側は王家との縁談に乗り気ではなかった、だから公爵家側からではないわよね?


 そうしたら、ワーグナー侯爵家はどうだろう。


 マティアス様の婚約を阻止したら……。うん、フリーのマティアス様に令嬢達が大騒ぎで殺到するわよね。


 やっぱり、マティアス様狙いの令嬢のいる貴族がって説が濃い気がするわ……。


「マティアス様……。第2王子の婚約が決まってから、やはり婚約のお話は殺到なさいましたの?」


 つい、直球で聞いてしまう。

 マティアス様は苦々しいお顔で答えられた。


「まぁ……。そういうお話はそれ以前からもたくさん頂いていたから……。その後特に増えた、という事もなかったとは思うけれど……」


 うん、現在の婚約者の私から聞く話ではなかったかもしれないわね。

 侯爵家跡取りでイケメンと来たら、それはたくさん縁談はきたでしょう。

 

 でも……。王家の方以外でわざわざカタリーナ様を王子の婚約者にする事で得をする人は余り考えられないし、やはりマティアス様の婚約を阻止したかった、と考える方がしっくりくるのだけれど……。


「では、その後から今まではなかった方からアプローチをされたという事は……?」


 マティアス様は少し考えられて、ハッと何かに気付かれたようだった。


「少し……、思い当たる所はあるのですが、申し訳ありません、これは我が家に持ち帰らせてくださいませんか。

 決して、これからのこの件に関わらせる事は無いとお約束しますので」


 何か、決意されたように言われた。

 それはワーグナー侯爵家内部の事で、きっとそれに気付かれたマティアス様はこれからそれにご自分で対処されるおつもりなんだろう。


 それならばこちらから言う事はないわよね。


「わかりました。それではその件はお任せいたします」


「…ありがとう。必ず約束は守ります」


 マティアス様は苦しくも強く決心されたご様子で答えられた。



お読みいただき、ありがとうございます!


名探偵リリアンヌ、回です…。ワト○ン君も眠りの小○郎さんもいませんが…。(ノーマン公爵がワト○ン君役ですかね?)


そして、情報を漏らした「犯人」は、まさかそんな事になるとは全く思っていない、全くの悪気はない人ではあったようです。『ここだけの話』とか『誰にも言わないでね、実は…』ていうのは、まあ漏れてしまうものなんですよね…。

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