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08.こんちわまーちゃんと!



「ってことで、たっだいまー! 二人は仲良くしてたかなっ!?」



 ネズミは満面の笑顔だが、隣の黒ブタ、つまり俺は疲れ切った顔をしていただろう。

そして戻った先の空気も、氷河期でも来たのかと思うほどに、冷え切っていた。



「うわっ、お通夜会場でももうちょっと賑やかだよ!?」


「比較対象がひどないか!?」


「ままっ、アカさんがわいわい喋ってる方が、ボクにとっては恐怖だけどね!?」


「それもそれで、ひどい言いようやな!?」



 そんなネズミとブタの漫才のような話を聞いても、マコという名の女の子は、うつむいてピクリとも動かない。


 それも仕方ないよな。いきなりゲーム始めて、新生活……、いやロールプレイガチ勢にとっては、新しい人生始まったと思ったところに、これなんだからな。


 ここは俺がピシッとキメて、新入りさんを歓迎してやるしかないな!

なにせビギナーの入ってこないゲームは、いずれ廃れるのが運命というものなんだから!


 ふよふよっと、俯く新入りマコさんの元に飛んでいって、顔を覗き込む。

泣いてはいないけど、どうしていいかすごい悩んでる、困っているって顔だ。



「おー、もう大丈夫やで。怖かったやろ? でも安心しい! ワイが話つけたるさかいな!!」



 そういってやれば、コクコクと小さくうなづく。どうやら聞こえてはいるようだ。

しかしどうしたものか、話をつけるといっても、この子は喋らないし、逆に向こうは喋りまくるが話が噛み合わないし……。


 そんなことを考えていると、不意に視界が動く。

ふわりと浮いたかと思えば、後ろに引き寄せられる感覚。そして突然、影が落ちた。


 何が起きたのかと上を見上げれば、そこにはマコの顔があった。



「なんや、急に抱きついて。びっくりしたやないか」


「…………。ごめんね」


「ええんや、ええんや。あやまらんでも。

 まぁ、いきなりやったからな。ワイもビクってなってしもたんや。

 なんやったら、なでなでしてもええんやで?」



 いえばすぐに頭を撫でてくる。いや、いいといったのは俺だけど、遠慮なく撫でてくるとは……。

ネズミもそうだったし、意外とこの姿は、可愛いもの好きにはウケがいいのか?


 ランダムで設定されたものだし、黒ブタ姿をはじめて見た時は、運営の中の人をぶん殴ってやろうかとも思ったが、なかなか良い仕事だぜ運営!



「えへへ……」


「あーあ、トンちゃん取られちゃったなー」


「まー、ワイの可愛さは誰しも魅了してまうモンやし? しゃーないやろ?」


「それ、自分で言うんだ?」


「あっ……、でもっ……。おなかもにゅもにゅするんはやめてっ……。ちょっ……、あかんて……」


「…………」



 ネズミ姿であっても、俺の反応に引いてるのがわかる。

いや、これはロールプレイガチ勢に合わせた反応だからな!?

撫でられたって感覚はないけど、反応しないのは不自然だろ!?



「マ……。まーちゃん、この辺で勘弁してくれへんか?」


「まーちゃん……?」


「ん? あかんか? ワイはマコんこと、まーちゃん呼びたいんやけど。

 やっぱちゃんと、マコちゃんって呼んだ方がええか?」


「…………。ううん、まーちゃんで、いいよ」


「よっしゃ! んじゃよろしゅうな、まーちゃん。

 ワイのことは、トンちゃん呼んでくれたらええからな!」


「うん。よろしくね、トンちゃん」



 ん? あれ? そういや俺、適当にあしらって終わらせるつもりだったよな……。

なんか妙に懐かれてしまった気がするが……。


 まぁいいか、ちょっとの間くらい構ってやるくらい、先輩プレイヤーの余裕があれば……。

って違う違う!! 俺には残ってる時間少ないんだっつの!!


 こうしてる間にも、寿命と結婚システムなんていう理不尽要素を攻略しないといけないんだよ!!

クソっ、こんなシステム実装した運営だ! さっき褒めたのは取り消しだっ!!

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