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43.うさぐるみの倒しかた



「きゃっ!」



 まーちゃんは、再びぬいぐるみの形に戻った、もぞもぞと動き回る綿のタックルを喰らい、尻餅をつく。



「ゆーたやろ!? 焼かなアカンて!」


「でもっ! ぬいぐるみがかわいそう……」


「あのもぞもぞ動く様子見てもか?」


「…………。まるでイモムシ……」



 ぞわぞわっという寒気が、こちらにも伝わってくるほど、まーちゃんは苦い顔をしている。

確かにな、汚い埃の芋虫の大群が、うぞうぞとより集まってるようにしか見えないし、気持ちはわかる。



「だから焼かなあかんのやって……」


「むぅ……!」



 まーちゃんは駆け出し、俺の投げた剣を拾うかと思いきや、それをスルーして飛びかかる。



「だいたいっ!!」(62)


「なんでっ!!」(65)


「ぬいぐるみがっ!!」(64)


「体当たり攻撃できるほどっ!!」(61)


「硬いのよっ!!」(67)



 怒りのまーちゃん、実演販売スキルを忘れ、ひたすらに攻撃。

ちな、ダメージは全然通っていない模様。



「ちょっ!? なにしとんや!?」


「こんなぼろぼろの綿だからだめなのよっ!!」(66)


「そんな綿はこうじゃ!!」(12)(15)(9)(18)



 スパッと切られた布地から飛び出す、ワタを引っ張り出し、まーちゃんはぐにぐにと揉みくちゃにしはじめた。

そして同時に、その攻撃とも言えぬような攻撃が通じているのか、ダメージの数字は連続して上がりはじめた。



「なっ!? なにやっとんやまーちゃん!?」


「ぬいぐるみの良さはねっ! ふわふわ感なのよっ!」(11)(18)(13)


「だからこうやって! ほぐしてあげるのっ!!」(8)(12)(16)



 言っている間にも、その手の中には必死に逃れようともがく、わたの塊があった。

一応ダメージ入ってるし、これも攻撃と判定されているようだが……。意味はあるのだろうか。


 ちなみに、その綿が入っていた布は、中身を全て引っ張り出され、ぺたんとただの布地へと変わっている。

もしかして、この魔物の本体ってのは、この綿だったんだろうか?



「よしっ! ふわふわになってきたね!」


「まぁ、それはええんやけど……」


「あとは綺麗に洗わなくっちゃね!」


「ちょまっ!?」



 いうが早いか、まーちゃんはインベントリから水と桶を取り出し、バシャバシャと洗いだす。

同時に絡まったゴミを取り除き、綿は白く綺麗な状態へと変化していくのだった。



「ワイは何を見せられとんや……」


「よし! あとは乾かしてる間に、この布の方を直してあげて……」



 そこまで言って、まーちゃんの手が止まる。何か思い出したようだ。

このぬいぐるみがモンスターだったってことを思い出してくれたなら、助かるんだけどな。



「私……、裁縫の道具もスキルも持ってない……」


「そっちかーい!!」


「ま、いっか。とりあえず、こっちも洗って乾かそう!」


「マイペースかーい!!」



 俺の全力のツッコミを無視して、まーちゃんはズタボロになった布を洗い、そして綿と共に台車に乗せ乾かす。



「それじゃ、進もっか」


「あんな、ちょっと待って。ホンマさっきのはなんやったん?」


「え? 綿の打ち直しだよ?」


「そうやない……。もうええわ、ほないこか……」



 綿も布も動かなくなった所を見るに、どうやらモンスターは倒せたらしい。

それなら、クエストの障害は無くなったわけだし、問題ない。疑問はあるけどな!!



「あっ! そうだ!」


「今度はなんや?」


「あのねあのね! 不動さんがね、ぬいぐるみ作れるらしいの!」


「あぁ、そういや販売員のねーちゃんが、売ってるゆうてたな」


「だからね! このぬいぐるみも修理してもらえるんじゃないかな?」


「なんやまーちゃん、そんなにこのぬいぐるみ気に入ったんか?」


「うーん……。そうじゃなくて……」


「ん? どうしたんや?」


「この子、捨てられたんじゃないかなって……」



 ボロボロのぬいぐるみ、それが襲ってくる。

その姿を見てまーちゃんが思うのは、相手はただのモンスターじゃないという、隠されたストーリー。


 大事にされていたのに、古くなって捨てられた。

ぬいぐるみの恨みが、モンスターへと変化させる。

そんなストーリーを想い、焼き払うのをためらったのだと言う。


 この世界がホンモノだ、そう思い行動しているからこその想像力。

そんなまーちゃんに、俺は少し感心していた。

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