23.はじめましたボス戦
「ていっ!」(28)
「効かんわっ!!」(48)
「やあっ!」(31)
「本気で来いっ!!」(53)
おー。息を呑むような、レベルの低い戦いだぁ……。
数字的にはまーちゃんが押されているものの、回復薬の数で一進一退といった感じか。
そして相手のキャップは、回復手段がない。それだけで時間さえかければ勝てる戦いだ。
ただし問題がないわけでもない。
アイテムの所持数制限のせいで、まーちゃんの回復薬も有限だ。
もし使い果たせば、それで負けが確定してしまう。
その上、毒消し薬を積んでいるので、さらに回復薬は減ってしまっているのだ。
かつ、キャップはイベントモンスターということもあって、体力はこのレベルで挑むにしては高めに設定されている。
そのため、持久戦を続けざるをえないにも関わらず、そうしてしまうとジリ貧になってしまうのだ。
「くらえっ!」(毒攻撃)
「きゃっ!!」
キャップの頭、つまり傘の先から胞子が噴出する。
その胞子を吸い込んで、まーちゃんはゲホゲホと咳き込んでいた。
いや、実際に胞子を浴びたわけじゃないはずなんだけどな。
「てーか、胞子そこから出るんかいな!!
……胞子ってつまり子だ」
「トンちゃん! どうしたら……、きゃっ!」(毒ダメージ:23)
「はよ毒消し使わな!」
「あっ、うんっ!」
うっかり言いそうになった、下ネタはまーちゃんのおかげで中断された。
まーでも、胞子の出る場所といい、色々狙ってるような気がするのは俺の気のせいだろうか。
そういえば、キャップって二次創作では結構人気キャラなんだよな……。
主に毒胞子で女騎士の体の自由を奪って……、とかそういう役回りで。性格はあんなに紳士なのに。
「うぅ……。このままじゃダメかも……」
「降参するのであれば、命だけは助けてやろう!」
戦いながらも、こんなことを言うほどの紳士なんだよなぁ……。
あ、じゃない。そろそろ奥の手を使うとしようか。
まぁ、俺の推測が当たっていれば使えるかもしれないって手なのだが……。
「まーちゃん! その剣を褒めちぎるんや!」
「へっ!?」(29)
「その剣がスゴいってとこ、褒めまくるんや!」
「わっ、わかった!」(32)
「一体、何をしようと言うのかねっ!?」(56)
「切れ味がすごい!」(105)
「デザインがオシャレ!」(98)
「素早さもちょっと上がる!」(113)
「なっ……!?」(61)
攻撃を受けながら、そして攻撃をしながらもキャプテンは焦る。
いや、それで驚くってAIすごすぎるだろ!?
ま、まぁそれはいい。運営の謎の技術力はあとで関心するとして……。
「お、おい、隊長が押されてるぞ……」
「なんだあの剣、強すぎるだろ……」
その様子に周囲のモブキノコもざわめき始める。
いや、やっぱすげーよ!? なんでモブまで状況認識してざわついてんだよ!?
あぁ、俺のツッコミ魂が止まらねえ!!
「えっと、えっと!」(24)
「ふっ、偶然かっ!」(59)
「とにかくすごいんですっ!!」(127)
「ぐはっ!」
とにかくすごいという、語彙力の境地に至った絶賛に、剣は応えたようだ。
それによって、キャップは若干よろめく。
それを見た一匹、もしくは一株? のキノコは声高らかに言い放った。
「すげぇ! すげぇぞ嬢ちゃん! 俺にその剣を買わせてくれっ!!」
「へっ!? はいっ! まいどあり!」
「ちょまっ!? なに剣売っとんねん!?」
「あっ! うっかり……」(13)
「うっかりちゃうぞー!!」
剣を売ってしまい、素手になった瞬間攻撃力はガクッと下がった。そりゃそうだよなぁ……。
いや、それ以前にあのキノコ何考えてんだよ!?
自分とこの隊長をボコボコにした剣買うって、どういう神経してんだ!?
もしくはあれか、これで下剋上して「俺が隊長になってやるぜ!!」みたいなアレか!?
「ふふっ、はははは!! 一瞬ヒヤリとしたが、これで我が勝ちは確実!!」(61)
「ふぇぇぇ……」(9)
「とっ、ともかく耐えるんや! なんか考えるから!」
そう言ったものの、俺にできることなどさほど多くはなかった。




