表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/68

13.困ったら神様のせいにしとけばええねん

 まーちゃんの腕の中で、俺はモミモミと、柔らかくなるように調理されるかのごとく弄ばれていた。

なんとも積極的というか、調子を狂わされる反応だが、むしろ俺にとっては調子は狂わされる方がありがたいくらいだ。



「まったく、まーちゃんは甘えたさんやなぁー。

 まぁええわ。ワイが面倒見たるゆーたんやし?

 ちゃーんと一人前になるまで付きおうたるわ」


「へへへ……。よろしくね……」



 はにかみながら笑うその顔は、無邪気な子供のようで、それでいて女の子らしい柔らかな笑みで、うっかり見惚れそうになる。

いやいや、これはゲームのアバターであって、本物じゃないわけで、これはつまりまーちゃんの理想の姿であって、それは裏を返せば……。


 やめよっか、この話。虚しくなるだけだし。

気を取り直して、今日はまーちゃんの商人への第一歩を踏み出す日なんだ。

余計なこと考えずに、特に俺自身のやる気を削ぐようなことは考えずに、やっていこうじゃないか。

何より俺には、あまり時間が残ってないのだから。



「ほな、まーちゃん。気が済んだらそろそろ行こか」


「はいっ!」


「ええ返事や。とは言ってもな、まず最初にやらなならんのはレベル上げや」


「レベル上げ? 何をするの?」


「ズバリ! 戦闘や!!」


「銭湯屋? 番台仕事? それとも経営?

 『トントン? 贅沢な名だねぇ……』っていうのやる?」


「ちゃーう!! そんなモノマネもいらーん!

 てかこれ以上減らしたら『ト』くらいしか残らんやないか!!

 戦や戦! 戦って! 勝つ!!

 それがレベルを上げる唯一の方法なんや!」


「えっ……。商人になるんじゃ……」


「商人のスキルとるのに、スキルレベルを上げやんといかんのや。

 んで、ついでに基礎レベルも上げて、有利なステータス構成にするで」


「スキルレベル? 基礎レベル?」


「あー、そこからか……」



 マジの初心者、しかも説明何も聞いてない……。

というより、ちゃんとチュートリアル受けてきたんだろうか?

まぁしかし、わからないなら教えるしかない。

それに、分かってないからこそ、俺の望み通りに育成させられるんだし。


 しかし、ロールプレイングガチ勢って言ってたし、うまく用語をボカしながら、違和感なく説明してやらないといけないのか……。それが一番面倒そうだ。

ともかく、説明しながら狩場へ向かうことにしよう。

俺はまーちゃんの腕に抱かれ、揺られながら、一からの説明をはじめた。



「この世界にはな、基礎レベルとスキルレベルがあるんや。

 基礎レベルは、強さとか賢さとか上げるためのレベルで、攻撃力とか魔法の威力を上げられるんや」


「戦っていたら、勝手に強くなるんじゃないんだ?」


「あー、それはあれや……。えっと、なんや?

 そう! ステータスの管理する神様がおってな、敵を倒して得られる経験値を供物に、好きな能力上げさせてもらえるんや」


「へー。だから戦わないといけないんだね」


「せやせや」



 嘘である。でっち上げである。

いやしかし、我ながらなかなか良い感じに誤魔化せたんじゃないだろうか?

神様に経験値捧げるから強くなる。世界観を守りながら、能力が数字として現れる理由としては悪くないと思う。


 てーか、その神様ってのが運営な気がするが、そういうメタい話は、ロールプレイングガチ勢には伏せないとな。



「でーやなー、同じようにスキルの神様もおるんや」


「そっちも経験値をスキルに変えてくれるの?」


「おっ、呑み込みが早くて助かるわ。

 その通りで、スキルレベルってのを上げてくれて、スキルポイントってのをくれるんや。

 そのポイント使うて、好きなスキルを取れるっちゅうわけやな」


「それじゃあ、大工のスキル取りたいな。可愛い家具作ってみたい」


「楽しみにしてるトコ悪いんやけど、いきなりは無理なんよな……。

 スキルには、取るのに前提スキルがあったりするんや。

 まぁその辺は、狩りしながら話そか」



 街を出てすぐの平原、ここが初心者向けの狩場だ。

誰もいない、そして野生動物が数頭見えるその景色を眺めながら、俺はこの先の険しい商人道を予見していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ