第16話 〈乾杯!!〉
「へへ、魔石ゲットだぜ〜!」
「やったじゃない!?」
「え? また魔石あったのか?」
俺達は冒険者ギルドに戻り、ドーバード1羽を解体窓口で買い取ってもらっていたのだが、なんとヘッドバットディアに続きドーバードからも魔石が出てきた。
普通は、そんな簡単に出てくる物じゃないのだが、二連続もまあなくはない。
まあ運が良かっただけだろう。
「ほとんどの部位を食事に回しましたけど良かったですよね?」
「さっすがアンナ。分かってるわね〜」
ドーバード1羽なんて普通は食べられる量じゃないが、今日はミレーヌがいる。
この女はスリムなくせに恐ろしいほどよく食べる。
男の中でもよく食べるカイにすら勝ってしまう程よく食べるのだ。
やはり【剣聖】と呼ばれる程の剣士ともなると、尋常じゃないカロリーを消費しているのだろうか?
今回の依頼はメンバーの募集だけだったので、達成手続きなどはしなくていいのだが、冒険者カード更新のために受付でベティにカードを渡す。
「いい人達見つかって良かったですね」
「ハ、ハハハ」
ミレーヌが愛想笑いで誤魔化してカードを受け取る。
食堂の奥のテーブルに陣取り、アンナが外で頼んだ料理が運ばれてくれるのを待つ。
「とにかく乾杯しましょうよ〜」
アンナがそう言いながら木製のジョッキを三つ持ってきた。
「そうね。半年ぶりに会ったんだもんね」
「じゃあ仲間との再会を祝して……乾杯!」
「カンパーイ!」
「乾杯!」
「じゃあ料理が来る前に、冒険者カードの確認をするか」
各々がカードを確認する。
「お? やったぜ! レベルが一つ上がってる」
レベルが4になっている。
ステータスとスキルに変化は無しと。
「わ〜い。私レベル上がりました〜!」
アンナもレベルが上がったようで何より。
聞いてみたらステータスなどの変化は、アンナもないようだ。
「え?」
ミレーヌが困惑している。
「どうした?」
俺が覗き込もうとすると、ミレーヌは何故かカードを隠した。
「何で隠すんだよ。見せ合う約束したろ」
「別にいいじゃない私のカードなんて」
怪しい。
「ダメですよ、ミレーヌちゃん。私達の仲に隠し事なんて無しですよ!」
そう言いながらアンナがカードを取ろうとすると、ミレーヌが奪われないように本気で抵抗をした。
「アンナ、やっちまいな!」
「ラジャ!」
アンナが敬礼をしてから盗賊のスキル【盗む】を使った。
アンナの両手に靄のようなエフェクトが発生する。
「あ、カイくん!」
アンナが視線の先に、さもカイがいるような表情をすると、「え? カイ?」とミレーヌは釣られてアンナの視線の先を見てしまう。
アンナはその一瞬のスキを見逃さず、ミレーヌの冒険者カードを掠め取った。
「でかした!」
「ブイ!」
アンナがピースサインで勝利宣言をして、はじめてミレーヌは冒険者カードを盗られた事に気がついた。
「ダメェ! 見ないで!」
ミレーヌの冒険者カードの内容はこうだ。
イレーネ・マレー 22歳 女性
【S】〈魔獣使い〉
【レベル】7
体力 ──E
力 ──SS
耐久力──F
俊敏性──D
魔力 ──H
知力 ──G
運 ──E
【スキル】強制服従、捕獲、身代わり、人魔一体、目覚める力
【強制服従】魔力を消費してテイムモンスターを強制的に服従させる。
【捕獲】魔物を捕獲出来る確率が跳ね上がる。
【身代わり】テイムモンスターのダメージを肩代わりできる。
【人魔一体】よく知らないスキルだが、名前からしておそらくはテイムモンスターと、魔獣使いの共同攻撃だろう。
名前は偽装されていて、前職からの引き継ぎパラメーターは力のSSか……穴もスイスイ掘ってたし、ドーバードも軽く担いでいたから納得だ。
だが、問題はそこではない。
何故だ?
何故ミレーヌのレベルが7なのだ!?
百歩譲ってレベルが上がった事まではいい……なぜ2もレベルが上がっているのだ。
今日のミレーヌなんて泣きながら正座していただけじゃないのか!?
もしかして穴掘りやドーバードを担いで運んだ事が経験に加味されているのか!?
俺だってヘッドバットディア一人で運んだのに不公平ではないか!
まあ? 職業でレベルの上がりやすさや成長のしやすさは違うから仕方ないのかもしれないが、次に職を司る女神インティーナ様に会う事があったら一言文句を言わせてもらおう。
アンナを見ると、やはり憮然として納得していない様子だ。
「ほらぁ〜、アンタ達絶対そういう顔すると思った! だから見せたくなかったの」
ミレーヌが逆ギレして頬を膨らませる。
ようやく注文した料理がテーブルに運ばれてきた。
ドーバードの唐揚げに、蒸し鶏、串焼き、ステーキと鳥料理のオンパレードだ。
「では……手を合わせください」
「「合わせました」」
「いたーだきます」
「「いただきます」」
「ふふふ……この食事前の挨拶も久しぶりね。懐かしい」
ミレーヌが昔を懐かしんで頬をゆるめる。
そして目を閉じた。
数秒間目を閉じて、次にゆっくりと目を開くと、ミレーヌの目つきは戦う女の目になっていた。
俺は過去に何度もこの目をしたミレーヌを見た事がある……アンナも同じだろう。
大量の敵を目にしたミレーヌは、いつもこの目になるのだ。
そう……食戦士の目である。
獲物を捕らえる鷹のような目つきで次々と料理に狙いを定め、尋常じゃないペースで食べ始める。
「ミレーヌはなぁ……これさえなきゃイイ女なのになぁ……食い方きったねぇなぁもう……」
「アッシュさん、そんな事言ってる暇ないですよ! 早く食べないとミレーヌちゃんに全部食べられちゃいますよ!」
俺と二人の時は酒を楽しんでいたアンナだが、ミレーヌが加わって戦場と化した食事では、どうやら食べる方を優先するらしい。
俺達が黙々とドーバード料理を食べてる間に、転職前のミレーヌの冒険者カードを紹介しておく。
ミレーヌ・モロー 22歳 女性
【S】〈剣士〉
【レベル】235
体力 ──A
力 ──SS
耐久力──S
俊敏性──A
魔力 ──B
知力 ──C
運 ──A
【スキル】最後の一撃、剣神招来、剣神の加護、見切り、パリィ
【最後の一撃】残り体力が少ない時に、攻撃力が上がる。
【剣神招来】魔力を大量に消費して、一定時間攻撃力を大幅に上げる奥の手的スキル。
【剣神の加護】ピンチになればなるほど、攻撃力が上がっていく。
【見切り】相手の攻撃を見切りやすくなる
【パリィ】相手の攻撃を受け流して体勢を崩す事の出来る有能なスキル。
さすが前衛の花形職業の剣士なだけあって攻撃向きのスキルも多いし、ステータスも万能な感じだ。
勇者よりも強いと噂されていただけはあるな。
「ミレーヌちゃん、ミレーヌちゃん」
「何?」
「ミレーヌちゃんも砂時計貰った?」
そう言ってアンナが、女神インティーナ様から貰った謎の砂時計を取り出した。
「ああ、コレ? 一応持ち歩いてるけど、何なのコレ?」
「アッシュさんとも話してたんですけど、分からないんですよね〜」
「アンタ頭イイんじゃないの? 分かんないの!?」
「頭良いのと博識なのを混同するんじゃね〜よ。まあ、頭は良いけど」
知力がFのアンナですら絶望感あったのに、ミレーヌは知力Gか……なんも言えねえ。
可哀想なミレーヌにはこの言葉を贈ろう。
「人間は皆、何かしらの事情を抱えながらも、平然と生きていけるものさ」
「は? 何よ急に」
俺はただただ優しい顔でミレーヌを見つめる。
「え? なんなのよ一体。私何かしたっけ!?」
「大丈夫。そのまま進め」
「何コイツ!? ワケわかんない!!」
「まあまミレーヌちゃん、アッシュさんがワケ分からないのは今に始まった事じゃないですよ」
知力FとGのお前達には分からないのも仕方がない。
「なんなのよ、その表情は〜!!」
「まあまあミレーヌちゃん、飲みましょう! 嫌な事は飲んで忘れましょうよ!」
アンナに誘われてミレーヌがジョッキを呷る。
「砂時計については、そのうち検証してみようぜ」
「ですね〜」
「仕方ないわね」
「じゃあ、俺先に宿に戻るからアンナの事と支払いヨロシク!」
俺が帰ろうとしたその時、酒が入って気が大きくなっているアンナがゆっくりと口を開いた。
「ミレーヌちゃん、そう言えばアッシュさんがね〜」
ん?
「ノートにですね〜、自分で……」
「オイ、アンナちょっと待て!」
何の事を言おうとしている!?
アレは夢だったんじゃないのか!?
ノートは燃やしたよな!?
燃やしたハズだよな!?
「インタビュー……」
「はい分かりました、最後まで付き合います〜! ええ、付き合わせていただきますとも!!」
「良かった〜」
「え? 話が全く見えないんだけど……」
「見えなくていいんだよ。いいんだけど、おいアンナ! お前いつノート見たんだよ!!」
「秘密でーす」
完全に弱味を握られた俺は、明け方まで酒に付き合わされた。
頼む! オラにみんなの評価とブクマを分けてくれ!




