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ヒロインは耐える


「ローバル様。これは一体どういうことでしょうか。なぜ私が剣を向けられているのですか?」


こわい。この状況があまりに理不尽で無慈悲で。けれど、アリーの婚約者の顔を見て歯を食いしばる。


 ーーーーきっと、またあの人だ。


 だから私は恐怖を飲み込んで、声が震えてしまわないように胸を張って問いかける。


 チラリと視線を横へと移せば、その間にも騎士が飛び出した扉から会場にいた貴族達が何事かと溢れ出てくる。広かったテラスも着飾った人々が埋め尽くしてしまえば窮屈そうだ。

 ガヤガヤとした空気の中で、目の前にいる人物の舌打ちだけはやけに耳についた。


「白を切るつもりか、ルナール。婚約者の友人だからと、今まで大目に見ていたが、いよいよお前も性根が腐っているようだ。お前みたいな者が婚約者の友人だと思うと吐き気がする。アリーナも人を見る目がないようだ」




ああ。

胸から嫌な音がする。

崩れてしまわないようにぐっと堪えて自身の拳を握りしめる。

ダメだ。だめ。堪えるの。こんな世界にだって大切な人がいるんだから。耐えなきゃ。



 何も言い返さずただその憎い顔を睨み返した。誰も言葉を発せずただただ沈黙が流れる。

 

「ミューリア・エルフィ・ルナールよ」


それを破ったのは、騎士達の後ろから現れた人物だった。

騎士達が道を開け、中央に出来た道をその重厚な声の主はゆっくりと歩いてくる。



「国王陛下...」


なぜ、陛下が出てくるのか。どうしてここまで大きな事が起こっているのかさっぱり分からない。あまりの出来事に冷や汗が背中を伝っていく。


「ミューリア・エルフィ・ルナール。其方を第二王子暗殺未遂で地下牢へと投獄する。これは王族への反逆罪だ」


そのよく通る声は、地響きのような響めきを呼んだ。貴族達の動揺は凄まじい。


 けれど私は陛下の言葉を聞いても私自身が驚くほどに、心は凪いでいた。


 ああ、、、そうくるんだ。


 寧ろ、笑ってしまいそうだった。

どうやら、私はとことん彼女とこの国に嫌われているらしい。ほんと、私が何をしたっていうのだろう。


「私は何もしていませんし、知りません」


 私は静かにそう答えた。

無駄だとは分かっていても、肯定だけは出来ない。エルフは嘘がつけないからだ。


「抵抗しても無駄だ。我が息子は毒を盛られたようだが、息子が倒れた傍らには其方が身につけていた髪結いのリボンが落ちていた。言い逃れは出来まい」


まさかと思い、手でリボンを結ってもらった位置を触ってみる。


そこには纏められた髪しかなかった。


 ああ、なるほど。あの時か...。


 踊っている時は回るたびにリボンの端がヒラヒラと視界に入っていた。だから、あの時は確かに私のもとにあった。

 その後、給仕とぶつかった。何となく不自然なぶつかり方だとは思っていたけれど、そうか、あの時かぁ。

盗られていたとは思わなかったなぁ。


 



...なんだか、何もかもが馬鹿馬鹿しくて笑いが込み上げてくる。

 っふと後ろを振り返ればリコルが下を向いて泣いていた。変なことに巻き込んじゃったなぁ。どうにかして、無関係なリコルを逃してあげないと...


顔を前に戻してっふと上を見上げるとバルコニーからは、国賓である王様達やその側近がこちらを見下ろしていた。


 そこには、皇帝陛下もいてその隣に






ーーーーーサブリナ様もいた。

















ああ。もう....抑えられない。


 




 


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