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第18話 反対意見

――――――――――――――――



 残り時間――9時間23分  


 残りデストラップ――9個


 残り生存者――10名     

  

 死亡者――2名   


 重体によるゲーム参加不能者――1名



 ――――――――――――――――



「オレは棄権するぜ。作戦会議でもなんでも、そっちで勝手にやってくれ」


 ヒロトは誰にも視線を合わせることなく投げやりな感じで言った。ヒロキ同様に相変わらず非協力的な姿勢のままだ。


「あ、あの……ぼくは……その、皆さんの意見に……従いますので……」


 自主性がまったく感じられない解答を出したのは瑛斗である。こちらも始めからずっとビクついた態度は変わらない。


「オッケー。そいうことならば賛成多数で作戦会議を開くということで決定だな。――それじゃ、さっそくだが何か案があるものはいるか?」


「はい……ゴホッ、ゴボ……ちょっといいかな……」


 円城が咳交じりの声をあげた。


「私が思うにデストラップにかかった人間は、みなこのホールから出た後で罠に掛かっている。最初の奥月さん、その後のミネさん、そして九鬼さんしかり」


「つまりどういうことかな?」


「つまり、参加者全員でこのホールにいた方が安全じゃないかと思ってね」


「実は俺もそれは考えていた。このホール内を見ると、取り立てて命の危険になるような物は見当たらない。デストラップのネタになるような危険物がないいんだよな。もちろん、いつまでも安全という訳には行かないだろうが、無闇に院内を出歩くよりは安全じゃないかと踏んでいる」


「おいおい、おっさん。さっきこの部屋に看板が飛び込んできたのを、まさか忘れちまったのか?」


 話に加わらないと言っておきながら、難癖をつけるヒロキである。


「忘れてはいないさ。でも、だからこそ参加者全員でこのホールにいた方がいいんだよ。全員でまとまっていれば、次のデストラップが起きたとしても、さっきのスオウ君のように誰かしらがデストラップの前兆に気がついて、全員で回避することが出来るだろうからな」


「そうですよね。ぼくも皆でここにいた方が安全だと思います」


 五十嵐が円城の意見に相乗りした。五十嵐はすっかり弱気になってしまったのか、自らの意見を述べるということをしなくなった。


「けっ、なんだよそれ。作戦にもなってねえじゃんかよ」


「女性陣はどうかな?」


 瓜生は完全にヒロキを無視して会議を進めていく。


「アタシはそれでいいよ。だって、ここから動くのダルいしね」


 なんとも愛莉らしい返事だった。


「わたしも大丈夫よ。それにどのみち、ミネさんがこの状態のままだと、ここを動くわけにはいかないからちょうどいいし」


「おれもイツカと同じです」


「三人とも分かった。薫子さんは――聞いていないみたいだから、まあいいか」


 瓜生は一度薫子の顔を確認してから、そう皆に言った。


「それじゃ、今から全員このホールで待機して、デストラップの前兆を見逃さないようにお互いに注意することにしよう」


「おい、ちょっと待てよ。勝手に決めるなよ!」


 ヒロキが抗議する。


「確か、ついさっきお構いなくとか言ってなかったか?」


「そんなこたあ、いいんだよ! そもそも全員の意見が一致してねえだろうが!」


「それを言うなら、そもそも会議を拒否したお前には関係ない話だろう」


「おう、言うじゃねえかよ」


 ヒロキがその場で立ち上がった。今にも瓜生に殴りかかってきそうな雰囲気である。


「悪いがこんなときにお前と殴りあうつもりはないからな」


「ふんっ。怖気づいたかよ」


「本当にバカなのか?」


「なんだとっ!」


 ヒロキが瓜生の眼前まで詰め寄った。


「この状況が理解出来ないようなら、バカと言うしかないだろうが。今この瞬間にデストラップの前兆が現れたらどうすんだ?」


 瓜生がヒロキの機先を制して言った。


「うっ……」


 途端に口篭もるヒロキ。


「くそがっ! だったら、そのテレビを今すぐ消せよ!」


「テレビ? テレビは今は関係ないだろう?」


「はあ? それぐらいも分かんねえのかよ? それでよくリーダーぶっていられんな。テレビの音がうるさいと、デストラップの前兆が分からなくなっちまうだろうが!」


「だったら少し音量を下げればいいだけだろ。さっきも言ったと思うが、テレビでデストラップの前兆が放送される場合があると分かった以上、テレビは消せないな」


「だったら勝手にしやがれ! オレは今からひとりで行動させてもらうからな! これ以上お前たちに付き合ってらねえぜ!」


 ヒロキは立ち上がると、座っていたイスを腹立たし気に蹴りつけた。ホール内にイスが転がるけたたましい音が響く。


「いやあああっ!」


 薫子が悲鳴じみた声をあげて、両手でお腹周りを庇うようにした。


「こんなことぐらいで騒いでんじゃねえよ!」


「やめて! やめて!」 


「うるさいんだよっ! さっきからずっとビクつきやがって、目障りだぜ!」


 ヒロキが薫子に近付こうとした。


「やめ、やめ……やめて……やめて……」


 薫子が恐慌状態に陥ってしまった。


「おい、それ以上その人を責めるのはやめるんだ!」


 瓜生が二人の間に割って入った。


「どうやら、本当にお前とは協力出来そうにないな」


「ふんっ、それはこっちのセリフだぜ!」


「だったら、俺ももう止めはしないから勝手にすればいいさ」


「ああ、そのつもりだよ。こんな所にいたらデストラップにかかる前に、お前らのことをヤッちまうかもしれねえからな」


 ヒロキはそう吐き捨てると、背中を向けてホールから出て行こうとした。

 

 そのとき、テレビのニュース映像が切り替わった。



『番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお送りします。今日夕方、市内で起きた逃走事件の続報をお送りします。現在逃走中の犯人について、詳細な情報が入りましたのでお伝えいたします。護送車両から逃走した男は、市内に住む和嶋(わじま)ヒロユキ、21歳。逃走時の服装は白のジャージの上下。髪型は金髪の短髪です。逃走中に交番を襲い、勤務中の警官から銃を奪って発砲しています。現在、市内全域に検問が敷かれています。近所にお住みの皆さんは、出来るだけ不要不急な外出は避けて、家の中に留まるようにして下さい。もしも逃走犯らしき人間を見かけた場合は、落ち着いて速やかに警察まで――』

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