G.W on-line序章
上下ジャージ姿で近くのコンビニへと夜食を買い出しにいく。安アパートで1人暮らしの俺にとっては生活の一部と化している。いや、最初は自炊とか頑張ってたんだよ〜……
いつしか面倒になり、ついついお手軽なコンビニに変わってしまった。独り身アルアルだよね。
「いらーしゃーませぇ〜」
気だるそうに声をだす店員、俺がオーナーなら絶対クビにするな……そんな事を2年越しに思いつつも、家から2分のここを利用してしまう俺がいるのだった。食べ飽きた品揃えの中から、パスタとコーラを選びレジへと会計をしに行く。
ブルル……
ポケットに入れた携帯が不意に着信を知らせてくると、携帯をポケットから取り出し画面を確認する。
画面に表示されていたのは、神様だった……は?
「ん?神様って誰だよ……そんなヤツ電話帳に登録してたか……」
香美さん? 違うか、職場の先輩は美香さんだったか?
俺は一応通話ボタンを押して電話を取るのだった。
「もしも〜し。太田ですけど」
「あ、私神です。早速で悪いんだけど、願い事一つ言ってもらえるかな?500年に一度のチャンスは君に決まったのよね。報告書も作らないといけないし、手短にお願いね!」
何だこいつ……いきなり口早に意味わからない事言いやがって、500年に一度のチャンス?
新手のイタズラ電話かよ、メンドくせぇ!
だが、俺はこんなイタ電に屈する程やわな男では無いのだよ!ふふ
「あ、神様どうも。俺は今彼女いないんだよね、だから俺に世界中全ての女性の御縁を与えて下さい。
流石に全ての女性を彼女に!ってのは無理だから、それでいいよ?
18歳から下は無しと30歳以上も無しで!あ、めちゃくちゃ可愛いか綺麗な人でお金持ちはアリでもいいな……しょうもないイタ電してくる神様もありにしとくよ。明日から毎日楽しみだなぁ〜」
「……君ねぇ。まあ……しょうもない口論する時間は勿体無いから今回は流すとしましょう……でもちょっとだけカチンときちゃったかな……うふふ。
じゃあそれで決定するわね、感謝しなさいよバーカ!」
プツッ……
あのアマッ!言い逃げして切りやがった。モヤモヤしながら帰路に着く俺は10分ほど苛立ちながらも、直ぐにイタズラ電話の事を忘れてしまうのだった。
「あ〜!早く明日にならねぇかな!興奮して眠れないよぉぉっ!」
1人叫びながらもネット画面を食い入る様に見つめる。【G.W on-line】
global world online
40年ほど前に認知されて来た、e-Sportsと言うものがあるのだが、簡単に言えばeスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)」の略で、ゲームを競技とした新たなスポーツだ。
プロゲーマーやら賞金やらの考えをベース元に、G.W on-lineは制作開発されたらしい。
世界各国の最新技術を持って、共同開発の元で作られたVRゲーム……
国内においては、市民権をもつ小学生以上の住民全員にプレイ権があり、プレイするにあたって全ての設備や費用は国から無償で提供される。
そう!今俺の目の前にもカプセル型の機械があるのだ!今から80年ほど前に世界中を巻き込んでの戦争が勃発し、莫大な被害が各国に生じてしまった。
コレはイカン!と、各国は世界平和を掲げてある国から上がった一つの提案を決定したのだ。
その提案とは……バーチャルワールドを作って戦争するならそこでしない?被害もないし、白黒つけれるじゃん!
それにさ、バーチャルワールドでは自動翻訳機能付けて誰でもルールの下で商売しようぜ!あと、再び戦争になりにくいように人類共同の敵も作っちゃえ的なものだった。それが、G.W on-lineとなる。
新しい世界を一から作り出し、全てのプレイヤーは平等に明日からバーチャルワールドに降り立つ形となるのだ。
この10年で国の法律は変わり、国民がG.W on-lineをプレイしやすいような法律も決まった。
小学生以下の子供や、プレイできない高齢者は国の支援を受け、1人一日1万円支給される。
その他にも幼児や高齢者の面倒をみる人達と、国が指定する仕事についている人への補助金が素晴らしく、一日2万円支給されると言う物だ……
ちなみに、G.W on-lineをプレイするプレイヤーには一日6千円支給され、月18万ほどは補助してくれる。ゲーム好きな人間には最高の世界だ。
コレだけ聞くとどれ程、世界中の国が力を入れているのかがわかるよね。それに、G.W on-line内で稼いだお金は全て現実世界のリアルマネーと変換する事が出来るらしい!
俺はG.W on-lineが出ると正式発表されてから5年、この為だけに生きてきたようなもんだ。
一応毎日筋トレも始めた、腹筋60回、腕立て50回、おかげでムニムニだった体はちょっとスリムになった気がするぜぁっ!?
それに金だって貯めはじめた。5年で20万貯まったんだぜぁっ!?
全ては整っているんだよ……ふふ。
「それにしてもG.W on-lineってメリットしかないよな……あ、そだ!キャラどうしよう。確かベースは3種類だったはずだよな」
ネットの公式サイトでは、最初に決めれる自分の系統は3種類と掲載されている。戦闘、生産、内政となっているのだが、俺の中では既に決まっていた……
俺は迷わず戦闘だな、ゲームの中で生産や内政などめんどくさいし……俺は鼻歌混じりでネットサーフィンを夜通しするのだった。
…………
……
ピンポン!ピンポン!ピンポン!
朦朧とする意識の中、連打されるインターホンの音で目を覚ます。なんの嫌がらせなんだよ!俺は不快な気分で玄関の扉を開ける。
「荷物っす!ここに受け取りの判子もらえるっすか?」
ぐ、なんて態度のデカイ宅配業者だよ……雑に押して宅配業者から荷物を引ったくるように奪うと、すぐに中身を確認していく。
「ん。なんだコレ……通帳?俺の名義だし……っ!!」
何気に開いたページに目を見開いてしまう。いやいや……なんのイタズラだよ!
俺宛に届いた俺名義の通帳には、30億4千万と記載されていたのだ……
ブルル……ブルル……
放心状態の俺は携帯の着信で我に返り、スグに通話ボタンを押していた。
「おい!神様これはいったいどう言う事だよ……!?これイタズラだよな?」
「あー!うるさいわねっ!!急にビックリするじゃない、君の願いを叶えただけよ?今日から毎日、世界中の18歳以上から30歳までのごえん下さいって言ったのは君だよね……」
は?確かに言ったが、30億ものお金が入金された通帳が送られて来る意味がわからないのだが……
「いや……意味がわからない……」
「はあ?君は自分が言った事覚えてないワケ?バカなの?世界の人口知ってる?大体今は76億人。18歳から30歳までの女性はその内約8%なの!6億と800万人から5円貰ったら30億4千万円でしょ……ホントバカね!」
ちょっとまて……何かニュアンスが違うぞ。御縁と俺は言ったはずだよな……まさか御縁が5円に脳内変換されているんじゃ……
「おい。御縁とは言ったが5円とは言ってないぞ……確かに6億800万人から5円かき集めたら30億4千万にはなるが……まさか聞き間違いではないよな……」
「……あ、はい……スグ行きますから!って事で、わ、私は忙しいのよね〜……」
ガチャ……
アイツ切りやがった……。今の絶対エアー呼び出しだろ!?
ま、まあそれはいい。てかマジでアイツが神様だったのか?30億もの大金どうすんだよ?
それにサラッと毎日とか言ってたような気がするよな……ま、まさかな……はは……。
とりあえず今は考えないでおこう。うむ、もうすぐG.W on-lineが解放されるはずだ。
が、がんばるぞ……
俺はこうして神様の誤認で一夜にして30億もの大金を手に入れてしまったのだった。
…………
……
「キタキタァァァッ!!遂に来たぞっ!?」
カプセル型のG.W on-line専用機へとダイブする様に入った俺は、内部の電源ボタンを入れていく。カプセルの中は心地よくまるで水の上に浮かんでいるような感覚にため息が出てしまう。マジで凄い!流石は世界の最新技術の集大成だろう。ブラボー!
個人設定を済ませていた俺の体は、カプセル内部でスキャンされると脳裏に浮かぶ【G.W on-line】の文字に、俺のテンションは上がっていた!
「さ、さあ行くぞっ!G.W on-lineスタートぉぉっ!」
プツンと突然視覚や聴覚などの全ての感覚が途切れるように遮断される……
意識が戻ると俺は、言葉に出来ないほどの綺麗な光景に思わず息を飲んでしまった。オーロラが揺らめく綺麗な満天の星空に自分が浮かんでいるんだ……なんて壮大な景色なんだろうか。この景色だけでもG.W on-lineをする価値はあるだろう……
〔G.W on-lineへようこそ〕
突然空から響く声に俺は辺りを見渡すのだった。声は俺の戸惑いを気にする事なく、続いていく。
〔この世界は新しく誕生したばかりの世界です。ルールの中で自由に満喫して下さい……
戦闘に明け暮れてもかまいませんし、大切な家族をつくるのも自由なのですから……
貴方の心ゆくままにG.W on-lineを楽しんでもらえる事を我々は願っています……さあ……お行きなさい。
ココはG.W on-line……新しい世界です……〕
心地良い声を聞きながら、俺の気持ちは高揚していた。初めて経験する事への期待感……あぁ、生きてて良かったよ。そんな事を思っていると、景色が揺らめき突然真っ白な部屋へと変わったのだ。
〔はじめまして。私はこの国担当のナビゲータータマエです。宜しくお願いします。早速ですがアバタークリエイトを始めましょう。〕
少し機械的なナビゲーターのタマエさんは、空間にモデルとして表示された裸の俺を指差していた……ちょ!あ、大事な部分はないのね。
ついに来たか、事前に調べていた俺はある程度アバターを決めているのだった。どうせヤルならカッコよくしたいのよ。男の願望だろ……
性別は本来の性別が反映される為に変更不可能となっていた。それじゃあ、始めるか!
…………
……
「完璧だ……俺の望んでいた姿だよ……」
身長175cm 体重63Kg
しなやかな筋肉はマッチョメンでもなく、ガリガリでもない鍛え抜かれた肉体美。顔はエルフをベース種族に選びヒューマン寄りにあえてよせた。髪色は現実ではあり得ない色を選択してグレーアッシュ!
髪型はハーフエルフと言えば長髪かなって思ったが、めんどくさそうなので、少し目にかかる程度にしておく。毛先に流れがあった方がいいかな。あと目の色は、うおっ赤と青のオッドアイいいな……
…………
……
迷いに迷って1時間。いやなにこのイケメンっぷりはどこのイケメン勇者だよ……てか、フロッグマンとかオークとかも選べたけど、誰が選ぶんだよあんなもの……
「完成で!」
〔認証致しました。次はアバターネームを決めて下さい。〕
「アバターネームかぁ。じゃあ……ルキウスでいいかな」
世界の修復者ルキウス・ドミティウス・アウレリアヌス。3つに分裂していたローマ帝国を統一した有能なローマ皇帝、俺が好きな人物だ。
〔アバターネームを【ルキウス】で登録しました。次は職業のベースを選択して下さい〕
「あぁ。それはもう決まってる。戦闘にするよ」
〔職業ベースを戦闘で登録しました。次は職業の選択をして下さい。職業は3種類ランダム表示となります。変更可能ですが1度の変更につき1000円必要となります。
職業には、希少価値レア度が存在しています、青通常職業、緑レア職業、赤ハイレア職業、シルバーウルトラレア職業となります。〕
おいおい課金制度来たよ!レア度なんて言われたら課金するだろ?第2の人生だよ?ふふ……神様言いそびれたが、感謝します……30億多いに使わせて頂きます!
まずは、無料分スタート!
兵士 【青】
警察 【青】
剣闘士【緑】
はいハズレ!剣闘士はレアだがシルバーとか聞いた日にはシルバー狙うでしょ!あ、課金システムは事前に口座と連結させてるから、自動引き落としになるのだよ。
はい、じゃんじゃん行くよ!
自衛隊 【青】
忍者 【赤】
スナイパー 【青】
おぉ……忍者【赤】こんなものもあるのか!やべ、テンション上がるわぁ!!次!
ヒットマン 【青】
ギャング 【青】
狩人 【青】
…………
……
バーサーカー 【赤】
ネクロマンサー 【シルバー】
ビースト 【青】
「き、きた!シルバー出ちゃったよ!」
遂に引き当てるたシルバーのウルトラレア、ネクロマンサー!約50回目の変更だった。5万だよ、5万!
世界中の人が5万使ったとしたら、かなりの収益になるんじゃないのか……最大の敵は国だったのか……
ま、まあそれよりもネクロマンサーどうしようかな……なんか禍々しくて実際悩むよな。むう……へ、変更で!こうなりゃとことんやってやるぜ。
…………
……
ガードナイト 【緑】
ファルコンウィング 【赤】
死神 【シルバー】
ぐ、頼むから禍々しいのは辞めてくれ……チェンジ!
自力で貯めた20万は底をついた。200回も回しちゃったよ……俺は直ぐにスリープモードを使い神様貯金を連結するのだった。
「さあ……始めようか!無限課金上等っ!!」
300回、400回……800回目に突入した時だった。急に目の前が光り輝くと、表示されていた3個の職業がルーレットの様に回転し始めたのだ!
「こ、これは!レア演出なのか……」
ルーレットが停止すると七色の光が集結し文字を形成していくのだった……
兵士 【青】
騎士 【青】
大魔王 【虹】
まてぇぇぇっッい!!!
禍々しいのはヤメろって言ったよねぇっ!?大魔王ってなんだよっ!80万も払ってなんで人類の敵にならなきゃいけねぇ……んだよ……
ナビゲータータマエさんの説明に【虹】は無かったはずだ、恐らくシークレット職業だろう。が、大魔王なんだよ……ぐう。もうやり直す気力がないし。
「大魔王で……いいです……」
〔シークレット職業エピック【大魔王】を登録しました。おめでとうございます!シークレット職業は世界で数少ない伝説の職業となります。職業恩恵で得点もございますので、後程御確認下さい。
これで初期設定を終了します。それでは、G.W on-lineをお楽しみ下さい。〕
キャラ設定トータル4時間38分の果てしなき戦いは終わったのだった。