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幽影の君  作者: セレン☆
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作戦

真夜中、日付が変わった頃にギルカは目を覚ました。身だしなみを整えて外出の準備を済ませると、部屋を出て支部長の部屋へと向かう。そして独特のリズムでノックをすると、中から声がかかった。


「ギルカ様ですか?どうぞ」


中へと入り、対面する。シルディックはいつ寝ているのかと気になるほど仕事していた。いや、それはギルカも似たようなものなのだが…。


「どうかされましたか?」


シルディックはプライベートと仕事を分けている。プライベートの場合、あまり立場に問題はないが、仕事の場合、権力が絡む立場で上下関係が出来てしまう。歳下のギルカであっても社会関係では年齢は関係ないのである。なので、仕事の時はケジメとして敬語を使っていた。


「俺の依頼書。1人で任務遂行出来ない。どうするべきか教えてくれ。1度本部に戻ればいいのか、支部から数人借りればいいのか、どっちだ?」


ギルカは手に持っていた依頼書をシルディックに渡し、内容を確認してもらう。短い沈黙の後、シルディックは依頼書をギルカに返しながら言った。


「盗賊団の方は本部専門です。ですが、賭博街は南支部専門ですので、先に本部に戻り、数人を引き連れて賭博街経由で盗賊団の方へ行かれると良いかと思われます。賭博街にいるであろう指揮官、又の名通り魔の収容所は南東にありますから」


「そうか。俺は1度本部に戻る。またな」


「いってらっしゃいませ」


ギルカはシルディックに見送られてその場を後にし、元来た道を永遠に戻って支部の屋敷外へ。番兵の傍を通り過ぎると、番兵はビシッとギルカに敬礼した。


…さて。期間はまだあるにしてもグズグズしてたら逃げられる。少し急いで行くか…。



ギルカは覆われた霧から晴れる場所まで木々に飛び移りながら移動する。川の近くまで来ると、黒い渦を巻きながら消えた。

次に現れた場所は本部近くの階段下。霧で覆われた所から少し移動してから消えたのは、霧の幻覚濃度が高く座標を合わせにくいため混乱するからだ。どこの建物もそうだが、よほどの事がない限り近くで姿を現してはいけないことになっている。一般人に見られない場所、つ目的地から少し遠めの場所に座標を合わせること。暗殺階級のルール上そうなっているのだ。


本部の広場に戻ると、いつものように近くの兵士が気づき、跪く。


「副頭領様、お帰りなさいませ」


「「「お帰りなさいませ」」」


ギルカはその挨拶をされる間、うっとおしそうに無言で終わるのを待つと、口を開いた。


「三番隊隊長はどこだ?」


「はい。レーマン隊長は第一訓練所に居られます」


ギルカは場所を聞くと、階段を使って地下1層にある訓練所へ向かう。訓練所に近づく度に兵士達の掛け声やら金属が当たる激しい音が聞こえてくる。


階段近くで素振りをしていた兵がギルカに気づき、ビシッと敬礼をして挨拶をした。


「副頭領殿。今回はどのようなご用件でありましょうか?」


「レーマンを呼んでこい」


「はっ」


兵は返事をすると走ってレーマンを呼びに行った。ギルカはその間、近くの壁に背中を預けて寄りかかり、腕を組みながら訓練生の様子をていた。

しばらくして兵がレーマンを連れて戻ってくる。


「副頭領殿!レーマン隊長をお連れしました!」


「副頭領殿、久しぶりですな。今回はどのようなご用件でしょうか?」


「任務だ。俺1人じゃ出来ないからな。数人連れていく。賭博街の1人を抹殺する事と盗賊団の暗殺だ。手頃な奴はいるか?」


「はっ、賭博に詳しい者が2人、盗賊団の暗殺には…3人いますが、いかが致しましょう?」


「賭博に1人盗賊に2人連れてこい。南支部からも数人借りるからな。少ない方が良い」


「わかりました」


レーマンは指示通り3人を連れてくると、自己紹介をさせた。


「初めまして。ルック·フェンシブです」


「こんにちは。ガリル·フヴァーラです」


「自分はツァハ·ボレク。よろしくお願いします」


一通り自己紹介が終わると、追加でレーマンが詳しく教えてくれた。


「副頭領殿、フェンシブは賭博知識があり、ツァハは夜目が効きます。ガリルは賭博の経験者で道をある程度把握しており、暗殺技術は他のものより優れています」


「…ご苦労。レーマン、お前は部下の指導。3人は俺に着いてこい」



ギルカはそう言ってローブを翻して訓練所を後にした。それに続いて3人も後を追う。その後入った部屋は執務室の隣、談話室だった。もちろん、そこは普通じゃ入れない。ギルカは能力を使ってその壁に黒く渦巻く穴をあけた。


「入れ」


3人は初めて入る場所であり、謎に満ちたその渦に戸惑いを覚えたが、上司の命令は絶対である。よって、躊躇いながら入った。

ギルカは全員が入った後に続いて入り、渦を消す。


「座れ」


談話室は黒いソファで大きな長細いを囲むようにして設置されている。ギルカは奥の椅子に座ると、3人は扉に近い向かい席に座った。


「俺の事は銀と呼べ」


ギルカはそこでやっと自己紹介をし、本題へと入った。その空気はピリピリとし、緊張と重すぎる空気に包まれている。


「まず初めの任務は抹殺だ。賭博街にいる通称通り魔の捕獲。終わり次第、南東にある収容所に連れ込む。すいれん、収容所への道を知っているな?」


翠はルック·フェンシブのこと。煉はツァハ·ボレクのことだ。暗殺者は任務の際、正体を隠すために匿名を持っている。戦闘中に長ったらしい名前はマイクロ秒単位で無駄になるので簡単に2文字(また)は3文字の匿名が原則とされている。そしてそれはその者自身の特徴を表した名前であることが多い。ちなみにガリルははなである。


「はい。何度かその任務を付かせて頂きました」


「僕も知っています」


「では────」


ルックとツァハの確認が取れると、ギルカはどんどん話を進めて作戦を練り、最終確認をした。



「────ということでいいな?」


「「はい」」

「分かりました」


ギルカは全員の了承を得ると、立ち上がり、壁に黒い渦を出す。そして談話室を後にし、1時間後に広場に集まるよう命じ各自解散した。

少し短かったかな?

次回、王都南支部へ行きます。どんな風にギルカは作戦を練ったのかなぁ?

予想外の事を踏まえながら作戦通りにするのは思いのほか難しいと思います。まずは支部の様子を見ることにしましょう

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