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迷宮の呪い

家族が欲しいと願い、幸いか不幸か呪いという形で現世に具現した幽霊少女のルニマー、改めルニと、病み上がりでもついてきてくれたニール、そして俺の長年とも言える相棒のマサムネと共にルニが今まで迷惑をかけていた迷宮型の呪いに挑戦することになった。

まぁ俺の場合はこんな可愛い子に更に呪いをかけようとか言う不届き物には成敗を与えてやらないととは思っているけどな。


「よし、とりあえず、この結界解くぞ」

『うむ』

「はい」

『分かりました』


3人分の返事を貰ったという事で俺は「完全な自己空間(パーフェクション・マイルーム)」の結界を解いた。

とりあえず、これを解く前に俺たちは話し合いをした。マサムネは言うまでもなく俺の腰にぶら下がっているが、病み上がりのニールは無理をさせないために俺が抱えていくことに。ま、背中に抱える形だけどな。

で、肝心のルニだが、正直に自分には屋敷の呪いが直に伝わるという事を話してくれた。そして今は願いが叶っているために自身の呪いの力が消滅しているそうだ。最初は変だなと思ったが、最初に測った呪いの力は屋敷の呪いが足されていたために彼女自身の呪いの力が分からなかった。だが、俺が呪いを解呪したという事で、融通が利くようになったらしい。で、それが今俺のしている籠手…っていうかグローブにその秘密がある。


籠手と言っても利き腕である右の反対側の左の方しかなかったけど、そこの手の甲に浮かんでいる妙な模様がある。これは魂魄石と同じ働きがあるらしい。

魂魄石はレイスなどの元を入れ込められるらしく、これの中にいればレイスなどの死霊系をテイムって状態に出来るらしい。んで、この元って言うのが魂って奴らしくて、これも初代冒険者ギルドマスター(創始者)が発見したんだと。マジで凄すぎるぜ。

魂魄石は解呪士もある程度は常備していて、大きさも小さい。けれど呪いは別だ。俺の3つの呪いに関する能力は底を知らない。その内の一つ…“解呪された時の呪いの願いに最も適した形”で別の能力が与えられる。一応これは“解呪付与”って呼ばせてもらうか。勿論、俺も彼女が解呪された時、俺の頭の中に謎の文字が響いたさ。


{悪者感知、取得}


これは恐らく、ルニの“家族が欲しい”という願いが欲しかったがため、この力が呪いとして宿ったのだろう。その力は常時発動型でもしも悪い人…まぁ野望が凄いある人とか腹黒い人とかそういう人を感知できるようになっているようだ。

自分を害そうとする人たちも…だ。

現にこの呪いを受け取った際に何故だか屋敷の中のとある一点に俺の意識が集中しやすくなってるのだ。これは恐らくこの屋敷の呪いが俺たちを害そうと考えているからだろうな。


そしてルニだが、“家族が欲しい”という願いは無事に俺によって届けられたため、俺の“解呪付与”が発動した。そしてルニは“もっと一緒にいたい”と願い、それが“自身が装備に成れる”能力が発現して、俺のグローブになったって訳だ。いや、なったというより「憑依」したって言った方が正しいな。

憑依したことでその防具の性能が上がっていることも感知したので、俺たちはその能力を“具霊憑依”と名付けることにした。具は「防具」と「武具」をかけてる。マサムネにも憑依出来たため、武具が追加されたからだ。で、肝心のその効力だが、憑依して更にその力をあげることが出来るっぽいが現状ではただでさえとんでもない切れ味が更に上がると言うだけで特に意味はなかった。

だがマサムネ曰く、斬れないものまで斬れそうだ、とも言っていたから完全に無駄ではなさそうだ。

因みに憑依した状態でも霊体は出せるらしい。そして憑依している証拠にこの魂魄石みたいな効果を持つ模様が装備のどこかに出てくるのだ。


という事で、俺たちはこの屋敷に住み着いた迷宮型の呪いの攻略に勤しんだ。







「まったくわかんねぇ……迷宮が更に迷宮化してる気がするぜ」

『というよりは今まで通ってきたところが別の通路になっていたりとこれはかなり難題じゃのぉ』

『そうですね…私は一応解呪されましたからもう大丈夫みたいですけど…それでもこの複雑さは……』

「にしても、今までルニがストッパーだったって線はもう完全な当たりって断定してよさそうだな」


迷いに迷って1時間。全く呪いの元の近づける様子がない!

というのも、さっき言った通り、今まで通った場所が別の場所に繋いだり、別の部屋だったり、かなり迷いやすい状態なのだ。

これは恐らく呪いが迷宮をどんどん作っている最中なのだろう。じゃなきゃこんな複雑になるわけがない。そうなると取れる手段は…まぁ、ぶっちゃけそのまま歩くことしか出来ないんだけどな。


「とりあえず、今は外の方へと目指そう。じゃねぇと自分がどこにいるのかが分からなくなる」

『了解じゃ』

『分かりました』

「はい」


と、一応外の方に歩くが…どうも中に入る以上に出るのが難しくなってる。というより一種のループに入っている感覚があった。


「こりゃ中目指さないと何も出来ねぇな」

『むぅ…これはこれで特殊じゃのぉ』

「こりゃ最悪も考えておいた方が良さそうだな」

『じゃな。これはあまりに…』

『あの…その最悪って…』

「考えないほうがいいぞ。これは解呪士である俺が知っておいた方がいい事案かも知れないからな」

『そ…そんな事態に…?』

「あくまで推測っていうか憶測っていうか…まぁ、予想だけだからな。変に心配しても力むだけだから意味ねぇだろ」

『は、はぁ…』

「それにしても、複雑ですね」

「同意以外の何もねぇな」


呪いは目的に沿って行動する。特にこう言った迷宮型とかの呪いはな。そうなると、相手は俺たちを外に出したくない。けどだからと言って中に目指して欲しくもない。つまり、俺たちを閉じ込めたいという一種の欲がある。じゃぁどうして俺たちを閉じ込めたい?いや、それ以前に相手が望むのがルニだから、俺たちは邪魔者?…分からない。


『難しい問題じゃのぉ』

「……」

(なぁ、マサムネ)

『……何か案が?』


俺とマサムネはニールと一緒に行こうという時に独自のルールを作った。それは長年連れ添ってきたマサムネだからこそのルールだ。

それが、俺が念話で話した時は、1:1で話したいという事。だから、今の俺たちのこの会話は1:1…つまりニールとルニには聞こえないのだ。マサムネは解呪士じゃない。が、俺とほぼ同じ年月を共にいるのだ。実質、俺の副官みたいな存在なのだ。だが、マサムネの過ごしてきた年月は俺の何倍も……生きているのだ。

ま、俺に取っちゃぁ姉貴みたいな存在だけどな。それでも、こういう時は本当に有難い。


(相手は何を求めていると思う?)

『ハル殿はハル殿で考えておるのだろう?』

(まぁな。欲しいのはルニで俺たちは邪魔なのか、単純に俺たちを捉えたいのか…分からないな)

『ふむ…』


マサムネもマサムネで呪いとして生きていた年月が非常に長い。故に、呪いの波動?みたいなのを感知できるらしい。それで相手が何を望んでいるのか…それが分かるようなのだ。


『………どうも、この呪いはかなり、残虐というか、陰湿というか……あまり良い望みでは無さそうだぞ』

(……どういった感じだ)

『第一印象としては痛めつけたいようだ。が、どうもその奥にその願望があるようじゃの。じゃが童ではその願望が見抜けん。だが何かあるのは事実の様じゃの』

(だろうな)

『何か知っておる……いや、そうか。確かにあのギルドマスターの情報の中にあったの。だとしたらその路線は正解じゃな』

(むしろそれ以外正解がないだろ)

『じゃな。ふぅ…魂魄石を持ってきて正解じゃな。あと、例の資料も』

(ああ)


そう念話して俺は自分のバッグの中にある、いくつかの紙束とそれをまとめている蜜印に目を向けた。それは、恐らく今回の攻略に必要不可欠とも言える物であった。








またしばらく歩いていたが、いくら何でも攻略出来ないと感じた。


「なぁ……これさ、ぶっ壊したらどうなるかな」

『なにを物騒な…と、童も言いたいが賛成じゃな』

『え!?屋敷の壁を壊しちゃうんですか!?』

「じゃないと永遠にここに籠ることになんぞ?んなのめんどくせぇ」

「確かに……申し訳ありませんが私ももうそろそろ限界が…」

「だよな…本当にわりぃな、こんなところまで付き合わせちまってよ」

「大丈夫…です」

「ああ、もう喋るな。取りあえず寝てろ」

「はい……」


そして俺はニールを壁際に寄せるようにして、眠らせた。するとすぐに寝息を立て始めた。


「よし、寝たな。……この壁は…マサムネでも斬れ無さそうだな」

『もうちょい火力が欲しいのぉ』

「という訳で、ルニ」

『は、はい!』

「早速だけどマサムネに憑依してくれ」

『あれ?でもそれってあまり意味ないんじゃ…』

「いや、ちょっと別の考えが浮かんだ。斬味強化以外の考え、だけどな」

『は、はい。分かりました』


そう言ってルニはマサムネに憑依した。

マサムネの憑依はカタナの刀身の、それも主に刃辺りに模様が浮かぶ。この模様はルニの気分で変わるそうだ。で、今の模様はまるで刃全体が光っているように覆い被さっている。


「そんじゃぁ………ほいよっと!」


そして俺は強化されたマサムネで、呪いを感じる方角へとその刃を振った。


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