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俺の異能は【呪い】の異能

「よし、これでもうお前の【呪い】は消えた。もう、自由だ」


 とある廃屋。というよりは廃れた館。その最奥に、俺はいた。

 理由?それは俺が解呪士だからだ。


 たまにこういった【呪い】関連の情報を集めては世界中を旅回って、そいつの【呪い】を解呪する。それが、俺の新しい力になるからだ。


『ああ………ありが……とう………』


 で、今のが本当にたった今、俺が解呪した【呪い】の正体。体は半透明に浮いていて、これがオバケって言ったら10人中10人はそう言うだろうな。そしてそのオバケの正体はレイスだ。

 レイス、ゴーストとかのアンデッドは闇属性の魔物だがたまにこうして【呪い】として発言することもある。主な違いは自由に動けるかどうか。後は魔力のよどみの違いだな。普通は闇魔力が出ているはずだが、【呪い】で出てきたやつらの空気はよどんでんだ。そりゃ分かるわ。

 なんっつうんだろうなぁ。闇魔力が普通の黒い湖だけ(・・)って感じで、【呪い】が生み出す澱みはもう色んなモンが混ざって汚いわ悪臭がするわって感じ?

 ……うん。割と正確な表現だと思ってる。ただ黒いだけじゃねぇ!って事だ。


 そして俺は【呪い】を解くととある物事が頭の中に入る。


 {精神防壁、取得}


 さて、今度はなんだろうな?

 俺はそう思って、新しく手に入れた「精神防壁」を俺のもう一つの力、「査定」と「検査」を使う。


 ……へぇ、なるほど。他の精神攻撃に対する自動的な防御能力か。こりゃぁいい。特に悪い物も無いらしいな。使い勝手がいい。


「査定」は自身の能力がどういった能力なのかを調べてくれる。勿論、中にはどうでもいいのがあるが…それはそれぞれの能力だろう。対して「検査」は、その能力自体の悪意などを調べてくれる。使った瞬間に死ぬとか堪ったもんじゃないからな。そこは「査定」で出してくれない部分も出してくれるから、どっちも重宝してる。


 そうだな…。例えば防御力上昇の能力を得たとしよう。

 「査定」の場合、純粋に防御能力上昇って感じで評価を出してくれる。

 が、これが「検査」となると、使った瞬間体全体が石になってしまうって出る。場合によっては治癒不可能とかって結果もはじき出したりする。

 まぁ、こんな違いがあるって訳よ。



「さて、出るか」



 …本当はこういった能力は全部【呪い】なんだ。

 新しい力って言ったが、厳密に言うなら、【呪い】の“譲受”ってところか。つまり、このレイスの「精神防壁」の【呪い】は精神攻撃の自動防御。だがその代り、使用者に多大な【呪い】の負荷が掛かる。言い変えるなら自我は保つが死にやすいって感じか。「査定」や「検査」も元を辿ればこの【呪い】郡の一つなんだ。

 こういった【呪い】の負荷は多岐に渡る。一般的なのが暴走状態による自我の損失だ。いや、自我というより自意識って言った方がいいか?そんな感じのもあれば、使えばその瞬間に体全体が軋みだして凄い痛みを訴えたり、自分も相手と全く同じ病状や症状になったりする。


 悪魔とかの“与える対価に奪う”がそのまま宿った物が【呪い】……と、されている。つまり、悪魔が宿る器ということで“悪器”とか呼ばれている。



「ん~~~っ!ああ…伸びが気持ちいいぜ!おっと、こんな時間になってたか。そろそろいかねえと、ちとやばいな。飯に間に合うかなぁ」



 ま、仮に【呪い】の負荷を完全になくすことを前提としても、万能じゃない。

 流石に不老不死は無理だ。不老は可能かも知れないが、不死は無理だ。いくつかの組み合わせで実質的に不死は可能かもしれない。有名なのは特定の手順を踏まないと死なない、とかな。だが、俺はそんな話を聞いた事がない。そんなの神同然だろ。

 次に時間の支配。これも少なくとも【呪い】では無理だ。……魔法なら可能って話ならよく聞くけどな。亜空間を作り出してそこの中の時間だけを止めるとか、そういう【呪い】なら聞いた事がある。あくまで話に聞いただけで実際に見てはいないけどな。

 最後に…ごく一部の特異体質者に【呪い】をかけること。こういう奴らは【呪い】に対する一種の強力な耐性がある。で、そのごく一部の特異体質者ってのが…


 ―――俺だ。


 ―――ハルスワート・ルドべルス。

 それが俺の名だ。勿論、本名じゃない。こんな職業で本名語って堪るか。基本的に解呪士ってのは本名は語らない。呪われるからだ。至極単純で至極真っ当な理由だ。


 これが発覚したのも結構な偶然だったんだよなぁ。



 それは俺が興味本位で呪われた品を触った時だ。それは遠い異国の剣。俺の爺はこれを“カタナ”っつってた。普段、俺たちが使ってるような叩き切るような剣じゃない。もっと、“切る”じゃなく、“斬る”という一つの概念を可能な限り叩き込んだ武器だとか。ま、今じゃすっかり俺の相棒になってくれてるけどな。

 で、話を戻そう。俺はその品に興味を持って触ってみたんだ。勿論、なんともなかった。ただ、変わった武器だな、とは思ったがそれだけだ。まぁ、あの時はガキだったからな。俺の家…少なくとも最後のルドべルスの部分はマジの家名だ。そして、れっきとした解呪士の家系だ。それ故に、色々な呪われた道具やらガラクタが集まってくる。そのカタナも呪われたモノの1つだった。

 その後、俺は家の奴らに聞いてみたんだ。あの武器は何なんだ…ってな。そしたら親父に呼び出し食らって怒られたよ。


『何をしている!お前は死にたいのかっ!!』


 その時俺は驚いたよ。そのカタナは触ったら最後、憑りつかれ、死ぬ。当時の俺はその感覚を知らなかった。だが、俺は度々その武器を振ってた。普通はもうこの時点で乗っ取られてるも同然だ。だが、俺は平気だった。

 後は親父の鬼のような顔は……ああ、今でもちとこええって思うな。

 だが…。

 ある日、俺は今まで通りその武器を振ってた。っていうか独学稽古みたいなもんだな。で、まぁ家の奴に見つかったわけだ。その後、カタナは厳重に封印、俺に至っては監禁にまで至った。けどな、俺の親父と爺は即座に違和感に気付いたんだ。どうしてお前は呪われてないんだ?って。

 流石に耳を疑ったさ。けど事実、俺は呪われてなかった。で、今度はカタナの封印を解いてみた。すると、俺の状態はそのままで、カタナの力が僅かだが弱まってたんだ。そこで家の奴らは俺のこの現状に1つの仮説を立てた。


 ――もしかすると、俺は呪われないんじゃないか?もしくは【呪い】が効きにくい体質?

 ――場合によっては【呪い】を削る力があるのでは?


 そこで俺は様々な呪われた道具を手にした。結果、全てが正常。呪われなかった。

 俺はココで初めて、自分が呪われない体質だって知らされた。そこで、俺は例のカタナを解禁された。有難い事にな。



 ええっと……乗り合い馬車の停泊所ってここだっけ。

 あのおっさんに聞いてみるか。


「乗合馬車はここか?」

「ああ、そうだ。もうすぐ来るはずだぜ。あんたはどうしてここに?」

「ちと依頼でな」

「大変だな」

「まぁ、けど悪くない」

「へ、そうかい。ならいい」

「お、あれか?」

「おう!じゃぁな、あんちゃん」

「ありがとな、おっさん」



 そこから暫く。俺はまだそのカタナを独学で振っていた。たまに木刀で他人とも組手したが、それくらいか。で、しばらくそのカタナを振ってると、声が頭に響いたんだ。妙に女っぽい声でな。


『お主はなぜ、童を振う?童は呪われておるのじゃぞ?』


 ってな。そりゃ最初はびっくりしたわ。あまりに驚いてカタナをうっかり離しちまったくらいにな。で、俺はこう答えた。


 ――何となく、気になったから。それに、俺は呪われねぇよ。


 ってな。まぁ嘘じゃない。すると『そうか』って言ってまた無言になった。また何日?何週?とか振ってると、また声をかけてきたわけだ。


『一体なんじゃ、その振い方は。まるでなっとらん』


 じゃぁどうしろって事だよな。そしたら不思議なカタナの鬼指導ってなったわけだ。そんでもってしばらく日数過ごしてると、また声をかけてきたんだ。


『お主は……童をどうしたい』


 って聞いてきた。俺も当時はしばらくずっと一緒だったから、【呪い】って奴に慣れてきたからさ、色々分かってきたんだ。特に、そのカタナにはな。だから、そいつの【呪い】が解かれる時が来てるって自然に思った。だから言ってやったさ。


 ――それはお前が決めることだろ。


 って。【呪い】はいつも自分勝手で、我が儘だ。そら人の我が儘が乗り移ったのが【呪い】だからな。そういう意味じゃ、いつも通り、自分勝手で我が儘でいればいい。そう思っての言葉だ。そしたらなんていった。


『そう…か。そなたのおかげじゃ。感謝するぞ。ルドべルスの子息よ』


 っつって勝手に解呪されやがった。するとそんときに、例の妙な文字が頭に浮かんだんだ。丁度、今回の依頼みたいにな。



 だが、解呪されたはずなのに……そのカタナは今俺の腰に下げられている。喋る力を持つ、一種の知能ある武器になっていた。


『今回の依頼も、なかなか良い物件であったな、ハルよ』

(だな。でも、もう眠いわ)

『くくく…いつも通りであるな。良きかな、良きかな』


 で、そのカタナは解呪されてもなお、俺とこうやって一緒に旅して、話し相手になってくれてる。今までのこうした観点から、俺はこう考えた。そしてそれは恐らく、それが俺の力とか体質なんだろう。



 曰く、俺に【呪い】は一切効かない。

 ―――俺は何年も【呪い】の道具とかを触ってきたけど、それら全部の呪いが効かなかった。恐らくこれからも効かないだろう。


 曰く、解呪された【呪い】は全部俺の新しい“力”になる。

 ―――今回のこの「精神防壁」とやらも、最初の解呪成功例であるこのカタナの事から、それは確実だった。他にも成功例があるから確定と考えていい。


 曰く、解呪された【呪い】はその【呪い】が解呪される寸前の最も望む"道"が与えられる。

 ―――このカタナが願った事は「俺と一緒に居ること」…だと思う。だからこうしてまた喋ることができるんだと思う。理由は聞いても教えてくれなかった。対してあのレイスは「成仏すること」を願ったから、成仏した。それだけだ。他の【呪い】の案件でも似たような事が起きてるからこれも確実だと思う。



 “異能”。

 俺はこの言葉を知らないが、それが俺の中に宿る、最も根本的な力だった。


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