炎精霊の巣窟への帰宅
よろしくお願いします。
一番最近の再編集日時は、2017年10月27日です。
アサシの髪の色である設定は、水色と変更しました。
「ナナお姉さまっ!! 良かった! ああっ! 私・・・・・・ナナお姉さまが獄門に投獄されたリ、むごたらしい拷問を受けそうになったとか伺い、いてもたってもいれずに参りました!! よくご無事で!!」
王都の留置所正面大門前で、ナナってやつのデスブックワームを待ち構えていたのは、何日か前、愛しい院長からお褒め頂いたことがある私達の防御壁を見事ぶち壊した女郎・・・・・・マーマラである。
炎精霊の巣窟のポストに、司法の組織から、ナナの誤認による捕縛について書かれた謝罪文の手紙が送られ、それを読んだマーマラって女が、彼女を出迎えに参ったのだった。
女郎の瞳から、ボロボロボロボロ涙を垂れ流し、 嗚咽を必死にこらえて、デスブックワームに向かって小走り。それからマルウエーメガネザルの手のひらを ガジッ 両手で掴み、体全身を震えさせていた。
「マーマラさん・・・・・・獄門じゃないって、留置所だって・・・・・・」
そう語って、引きつった笑いをしたのは、たった今留置所の楼門からでた主人公もどきナナ。
格好は、素晴らしくセンスがいい院長と同じローブである。形状、色、原材料、メーカーが同一。髪の毛や眼鏡はあの暗黒日【院長が捕縛された日】の時に変装した前に戻っていた。まあ赤茶髪の丸メガネだけど。
・・・・・・髪の色とか戻してなかったら、あのパクリ女をぶち殺しに行ってたよ私・・・・・・。
え? 作者? もっと客観的に語ってくれって? あと言葉遣いに気をつけろって・・・・・・?
あーはいはいわーったわっーた・・・・・・まあ今回の語り手は私 パープル サピエン まあ読者の皆さんにゃあ聞いたことねえ名前かもしれねえが、マーマラって彼女に毒砲弾撃ち込んだと勘違いした院長の部下・・・・・・それ私。 【原作者から渡された書類をバッサバッサと揺らしながら、けだるげに語るパープル)
あと一応語らなきゃいけない説明があるんだけど、まあ院長の部下である私達は、司法が管理する監獄医療等で治療を受け、院長より先に刑事裁判で裁かれ、彼に凶行を強要させられたってことで、情状酌量・・・・・・懲役の執行猶予二年で済んだ。今はほぼほぼ自由の身ってわけ。
あ~・・・・・・何で私・・・・・・前の話数である院長が活躍した話じゃなくて、憎ったらしい女郎共の会話を紹介しなきゃいけないんじゃろー。やる気おきねえ~・・・・・・。
・・・・・・え? 真面目に語り手がんばったら、院長のプライベート情報やらシークレット情報やら教えるって・・・・・・本当? ・・・・・・・・・・・・。
まじかよ!? よっしゃあぁぁああああぁあああああああああああ!!! 頑張るぜ!!
では物語の続き話させていただきますわよぉお。
「あらやだ・・・・・・勘違いしました・・・・・・恥ずかしい・・・・・・」と、垂れ気味であったエルフ耳を、ますます弱るように伏せ、赤面したジョロッ・・・・・・マーマラ。
「この国に・・・・・・獄門や拷問なんて存在しないって・・・・・・。滅多なこと言わないでよマーマラさん・・・・・・」と、 留置所の正門の前に佇む二人の門番達と、マーマラの顔を、自分の視線を チラチラ 交互に行き来し、口ごもるように言うナナ。
拷問とか獄門とかのワードが、彼女たちから発せられるたびに、一人の門番は、自分たちの国の司法を侮辱されていると思い、どんどん怪訝な顔に変え、もう片方が、その相方を眺めて、自分の口を抑え、肩を震えさせていた。プックック~・・・・・・と。
ナナはそれを感じて、何かがいたたまれなくなっていたのである。
「ナナさんよ・・・・・・。これに懲りたらもうここに戻ってくんじゃねえぞ・・・・・・」と、軍服姿で、迷彩色ベレー帽をかぶり、黒白組み合わせた横ジマ柄の服とかを抱えている留置所看守のおっさんが、シリアスな低い声で、彼女に注意した。・・・・・・あっ、前の話数で、出てきたおっさんだこいつ。
「え~・・・・・・! 懲りる? ウチ冤罪で捕まったんだけど・・・・・・! 牢屋ん中でもいっぱい自分の正体語ったのに、全然聞かなかったじゃん!!」と、不機嫌そうに、文句を語るナナ。
彼女に続けて「そうですよ! あちらさんの失態を、なぜお姉さまのせいにしてるのですか? 酷いですよ。謝るのはあなた達の方では!」と、マーマラも憤怒を隠さず語る。
「・・・・・・ナナさんが、日頃から図書館の本を大切に扱わなかったり、館内に向かって強行突破したことは懲りなくていいのかい・・・・・・? そもそも誤認されたこともそれらが原因なんだろ?」と、そのおっさんは、上から仕入れた情報を頼りに、至極正当な返答をした。
「「あっ・・・・・・」」
正論を突かれた二人は、それぞれ一粒の冷や汗を頬に流して、少し黙り始めた。
数秒後、彼女を慕うマーマラは「っしかし・・・・・・ナナお姉さまが図書館に侵入したのは、院長から、善良な市民を護るよう闘うために、やむを得ず行ったことだと思います! 大義名分があるのです!」と反論。
「マ・・・・・・マーマラさん、この件については忘れてくれないかしら・・・・・・? 頼む、お願い・・・・・・」と、実は我欲のために、自分の体を、図書館窓に投じたことについて、誰にも・・・・・・特に自分をなぜか尊敬する彼女だけは、触れられたくなかったらしい。
「まあっ・・・・・・、俺様たち司法側にも責任でもあるからな・・・・・・ほれっ!」と、おっさんは自分の胸に持っていた横ジマシリーズを、ナナに渡した。
「それは・・・・・・?」
「囚人シャツと囚人キャップ、そして囚人パンツ【下着ではなく、ズボンの方】だ!! 司法側からな・・・・・・お詫びの品として、あんたにプレゼントとして差し上げたいんだとよ・・・・・・現金とかだったら、不祥事のもみ消しみたいになっちまうから、物品贈与で勘弁してくれって。・・・・・・それら非売品だから、いいだろ~」
うわっ・・・・・・呆れた・・・・・・。私こんなのゲッツされたら、迷わず渡した奴に、毒弾ぶち込みますよ。
ナナは自分に渡された囚人シャツと囚人キャップを、ただ口を開けたまま無表情で眺めていた。
片方どころか、両方ともどもの門番は、悶た状態で、笑いをこらえていた。プキカクッキカクククックククッ・・・・・・と。そしてマーマラは・・・・・・。
「ふざけているのですかっ!!?」
顔どころか、うなじまで真っ赤にして激怒したマーマラ。垂れていた耳が、 ピイッン と立ち、地団駄を一回踏んだ。 ・・・・・・知ーらね、知ーらね、魔力の化物怒らせた~♪。こ~の国終~わった~♬。
「マーマラちゃん・・・・・・この服・・・・・・」と、機械音のように、感情が感じられないような声で、彼女に話しかけるナナ。
「そうですよね? 酷いですよね? 犯人に間違えられ、何日かの自由を奪われた代償がこれでは、無礼にもほどがありますよね!!?」
「助かった~っ!! 新しい服とか欲しかったんだよね~!! ありがとっ!」と、喜ぶように答えるナナ。
「ええええええええええええええええええええっ!!!??」 ええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!!!!???
「ウチって、限定品とかに弱いんだよね~・・・・・・それどころか非売品・・・・・・! まさしく極レア・・・・・・!!」
「ナナお姉さま・・・・・・?? お言葉ですが、お許しになってよろしいのですか!? これ捕まった人が着せられる服なんですよ!? いくら非売品とは言え・・・・・・こんな・・・・・・センスの欠片もない・・・・・・」
「いやいやマーマラさん・・・・・・。センスナシアリは、着こなし方で決まるとウチは思うよ? それに現金渡されたら、ついつい生活必需品じゃなくて、本買ってしまうからね~ウチ。最近ローブとかケープとか偏った物しか今はないからさ・・・・・・」と、貰った服とかを、愛おしそうに抱きながら、語るナナ。
「着こなし方・・・・・・! そうか! ナナお姉さまになら、どのような服にも、コーディネート次第で、立派な服装にアレンジできるんですね!? 流石です!」と、最初に考え込みながら呟いたマーマラは、最終的に彼女の意見に賛同してしまったのであった。
この会話を聞いた門番二人と、語り手である私は、 ええええええええええぇぇえっ!!? と驚愕。まじかよこいつら・・・・・・。
おっさん「さっき返したあんたの所有物の中で、見当たらない物はなかったかね?」
「見当たらない物・・・・・・」と、十七分前、彼から自分のハンカチやら、財布やらの私物を返してもらっているナナは、今自分のポケットを探っている。
ガサゴソガサゴソ 探しこんでいた彼女は、あることに気づく・・・・・・。
捕まった日に持っていたはずの携帯電話が、どこにも見当たらないのだ。
ナナ「携帯電話が見当たらないのですが?」
看守「・・・・・・? おかしいな、ケースごと持っていて、全部渡したはずだが・・・・・・?」
「ああっ・・・・・・いいんです、いいんです。もしかしたらウチが、勘違いして、家に忘れたか、どこかに落としたかと思うんですが・・・・・・」と、自分の両平手を、おっさんの前に出して、軽く振るジェスチャーをしながら、語るナナ。
「そうだな・・・・・・。携帯電話というものは、どういうものかさっぱりわからんが、とりあえずこっちで見つかったら、連絡するわ。安心せい」
ナナ「おおっすいません・・・・・・」
くっくっく・・・・・・。ざまあ身晒せ・・・・・・。前の出来事(話数)を記された書類を、一応語り手の参考のためとして作者から渡された私にとって、あいつらの会話がおかしくてたまらないわ。今に見てなさい・・・・・・。
ナナとおっさんの会話の約十分後、王都の郊外にある、麦畑のあぜ道に設置されたランタイプキマイラバス【略してキマバス】の停留所側で、バスを待っていたナナとマーマラ。
彼女たちが側に立っている停留所の特徴構造は、ヒノキ製の屋根付き高さ二メートルの角ばり柱が、地面に数センチほど埋まっている。
道沿いに平行しているその柱の面には、停留所の名前が刻んでおり、その反対の面には、時刻表がはりつけてあった。
時刻表というと、時間がわからなきゃ意味ないからな。
その表の下隣に描かれた時計のイラスト・・・・・・本当の時間と正確にシンクロして、絵だというのにインクの針がひとりでに回っている。全てのバス停に描いてある魔術さ。
その停留所の名前は、王都三区二丁目。
漢字とかひらがな・カタカナではなく、あくまでこの国を代表する文字ルーンで記載されてあった。・・・・・・ルーン文字のいろはも知らない作者が、何カッコつけて描写してるんだか。
何・・・・・・? 一応図書館の本とかで、ルーン文字の種類とかを調べたことあるって? 角ばっているBとかSとか、1を鏡写したようなものとかでしょって、作者言ったの? バカにしているの? 私達の文化であるルーン文字は、あなた達のひらがな・カタカナよりも劣るっと、そう言いたいわけ?
ちょっと、こっちに寄って・・・・・・毒砲弾ぶち込んじゃるから・・・・・・。
脱線しました。話の続きをします。
「ところでお姉さま・・・・・・。私達のギルドの最高責任者とは、一体どのような人物なのですか・・・・・・?」と、マーマラ。
「おおっ・・・・・・! とうとう来たかこの質問!! すごい人よ! 炎系の魔術を扱う者の中で、彼女の右に出る者は無し! エスっ気が有るけど、面倒見が良くて、可愛くて、理系で、まさしくウチ達の自慢のマスターってわけ!」と、自慢気に高らかな声で、説明するナナ。語っている時は興奮気味に手足とかオーバーに振っていた。
「へえっ~、すごいですね。私も会ってみたいな~」
「ぶっちゃけ、今回ウチが冤罪で捕まった時も、留置所に直談判しに来たからねマスター。それから、看守たち側が、真面目に取り調べしたから、ウチが無実と証明されて助かったよ。彼女は国の信頼度が高いってことね。でも何でウチが捕まったのを知っていたのか、いまだに分からないの」
マーマラ「そのマスターは今どこに?」
ナナ「なんか田舎らへんなとこで、テロリストが活発化してるかなんとかで、お偉いさんから、会議に出るように招集命令を受けたんだって。面会の時教えてくれた。多分彼女は王様の城の中にいると思うな」
そんな会話の後に、二人がいる停留所に、お求めのバスが到着。
馬車の客席部分である荷台部分が、異界に有るという油が原動力のからくりバスみたいに長っ広い。屋根はついておらず、荷台部分は、入り口には木製の引き戸と、簡易に折りたためる極短はしごが設置されており、それ以外の縁は、高さ一メートルの厚い仕切りが、乗客を落下事故から守っていた。
車輪は鉄製で、六つある。
キマイラの手綱を引く人から、直接整理券をもらい乗車して、荷台の仕切りに沿って設置されてある布製のイスに、腰を下ろした二人。
他にも乗客がちらほら。
キマバスが発車してものの数秒・・・・・・、ナナがヒソヒソ声で、マーマラに耳打ちした。
「どうしよう・・・・・・留置所にはお風呂とかシャワールームがなかったから、ウチめっちゃ臭いかもしれない」
「あ~・・・・・・。まあひどい話ですよね・・・・・・罪が確定した犯罪者たちがいる監獄には、大浴場が有ると聞きますのに、留置所にはシャワールームすら無いなんて・・・・・・。それにナナお姉さまは女の子ですし・・・・・・」と、なんとかフォローするマーマラ。実は彼女は、ナナのワイルドな体臭を、耐えて黙っていた。そのことについては、たとえ彼女から尋ねられても、絶対触れまいと考えるマーマラ。
まあ・・・・・・私の敵であっても、二人の気持ちは、わからなくもないんだけどね。女だし自分。
マーマラが ポンッ と、軽く一度拍手して、「私本で、香水の魔術の使い方読んだことあります。如何ですか・・・・・・? 香りの濃度には、パルファム・オーデコロン・オードトワレとか選べますよ? 掛けて差し上げましょうか?」
「まあっ素敵! それじゃあっ早速ウチに掛けてくれないかしら? きつめじゃない方の香水の方・・・・・・」
「ええ・・・・・・」と、マーマラが言った後、彼女はナナに向かって、手をかざし、呪文を唱える。
「浴場に入らぬ怠惰な者よ! 花の精の力を借り、隣人を誤魔化・・・・・・」と、詠唱中のマーマラが、とある思考の数々を、頭に一瞬でよぎった。
◯人一人用の『つもり』の香水魔術を発動する。
↓
◯私のことだから、術が制御しきれず、超々高濃度及び桁外れの膨大な量の香料が、自分の手の平から、溢れ出す。
↓
◯あっという間に、世界中の万物が、自分の魔術により、香り付けされる。
↓
◯もちろん食べ物にも香料が付与され、それを食すはずであった生き物たちの食欲を、香りによって極端に削がしてしまう。
↓
◯この世界に存在する生き物の種類九割が、飢えて全滅する。
↓
◯殺戮大魔王マーマラ生誕!! ・・・・・・。
私パープルも同感・・・・・・でも確か香水って、吹きかけられた使用者の汗に触れて初めて香りを発することができるって、どっかで聞いたような。食べ物にも香り付けされる? ・・・・・・いやいややっぱり嫌な予感しかしない。
「どうしたのマーマラさん?」と、青ざめた顔で、呪文を中断し黙り始めたマーマラを、心配して声をかけるナナ。彼女は、マーマラの実力の一片も知らないでいた。
「やめましょう!! やめていいですか!? 私の使おうとした術は、この世界を滅ぼすに足る、恐ろしい能力を秘めているのですっ!!」と、彼女の声掛けによって自分の思考から現実に戻り、顔中汗だくで、片手拳を握りだし、自らの提案を拒否するマーマラ。
ナナ「そんなに恐ろしい術使おうとしたの!? 香り付けの魔術で? 何それ禁呪の一種!!?」
「そうです!! ですから残念ですが、他の方法を考え・・・・・・ん?」と、マーマラが語っている中、彼女のつむじらへんに、冷たい水滴が落ちてきたような感覚がした。
「・・・・・・雨だ・・・・・・」と、今回は革の手袋を履いていないナナは、自分の手の平に当たる水玉に、一言つぶやく。
いつの間にか、澄んでいた空が、曇天に飲み込まれていた。
「良かったですね! お姉さま!! 秋の季節に降る雨は、少々冷たいかもしれませんが、匂いが多少取れるかもしれませんよ?」
言葉に出さずとも、ナナも期待の念を、自分の笑顔に表した。
パイプをふかしているキマバスの運転手は、自らの指を パチンッ と鳴らした。キマイラと運転手・・・・・・そして荷台部分の上空らへんに、車全体を追うように動く、浮有する見えない膜やら壁やらが生まれ、降ってくる雨を、彼らのいる場から全て遮断した。
「「・・・・・・・・・・・・」」
時間が立つにつれて、猛威を増す雨。
とある一つの停留所で、停止したそのキマバスを、ずぶ濡れな状態で乗車した一人の客が、ナナの体臭を嗅ぐやいなや、バスが発射する直前に、不自然な歩法で、車を降りて、雨に再びうたれがら去っていった。
「「・・・・・・・・・・・・」」
今彼女たちの元へと降っている雨は、運転手の術によって防がれてるはずなのに、ナナの瞳から雨が一滴、彼女の頬を濡らした。 ・・・・・・まあ・・・・・・・・・・・・頑張れ。
数十分後 彼女たちは、ゲルタベ町の停留所で、マーマラが運賃を運転手に渡し、降車。
その時には、雨が止んであった。
それから四十分ほど歩いて、リザードマウンテンにある自分たちのギルドにたどり着く。
ナナは数日ぶりに、嗅ぎ慣れていた硫黄の匂いを吸って、安堵。
炎精霊の巣窟入口前の脇で、何やらカチャカチャ電子部品みたいなものを弄っているゴブリンがいた。
「イイキさん! 久しぶりです!」と、ナナが挙手して、彼に挨拶する。
・・・・・・イイキってやつは、ゴブリン? クソきめえゴブリンを、彼とかの三人称で呼びたくないんだけど、なんとかならない? 作者。
「おおっ! お勤めご苦労様! ・・・・・・んんっ? なんか臭うな? オイラより・・・・・・」と、クソきめえ彼は、一通りの挨拶【?】を言った後、女の子に向かって、絶対言ってはいけない言葉を発したのであった。・・・・・・よりにもよって一番言われたくないであろう化物に・・・・・・。
「もう酷い! イイキさん! これから風呂入るから」と、さして気にもしてない様子で、反論した彼女であったが。
ナナが、ギルド玄関口に入る寸前で、くりゃー! とその建物の柱を、自分の腰をひねってハイキックを喰らわした。完全に八つ当たり! ブチ切れてました。
そしてその出入り口から、 ギラリッ と銀色に輝く大鎌が、彼女の足元に倒れ串刺し。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・大鎌??
「きゃあっ!?」とかの言葉もさして発せず、冷静に床にめり込んだ鎌を取り外し、持つナナ。
それから彼女とマーマラは、何事もなかったように、ギルドに入館した。
・・・・・・なにこいつら・・・・・・? 作者どういうことだ? え? マーマラちゃん驚かなくなって、成長したな~って? でも前の彼女のほうが、可愛かった? ・・・・・・????????
ナナ「ただいまー」
マーマラ「ただいま帰りました」
「お~。久しぶりやな~ナナちゃん。無事戻ってきて、何より何より。それより二人お腹すいてるどすか? ワテが簡単なもん作りましょうどすか?」
木製の椅子に座り、彼女たちに尋ねる白ずくめの男がいた。
アサシである。第二話目で、ちょっことしか出ていなかったキャラ。
・・・・・・ひっでぇ言われよう。
あと彼は今食事中。この世界が定義する『カレー』を、蒸気サウナみたいな部屋の中で、汗一つかかずに、平気な顔で頬張る頬張る。水無しで。・・・・・・嘘。 (第三話参照)
「ええお願いできる? あとアサシさんの得物、どこに置いとけばいいの?」と、重い鎌を持ち上げ、語るナナ。
へえ~あの鎌、彼の武器なんだ~。多分そのギルドで、討伐系の仕事を請け負ってると思うわ、その人。物騒ね。
「玄関の壁に掛けてくれまへんどすか?」
ナナ「やめたほうがいいと思うわよ。お客が入る時、もしまた入り口に倒れたら、絶対その人トラウマが刻まれると思うから。洞窟付近に置いとくよ」
「洞窟入り口もやめたほうが・・・・・・近くで滑って転んでもしたら、その衝撃でまた倒れるかもしれません・・・・・・」と、苦笑いするマーマラ。
「ウチお風呂はいるから・・・・・・ご飯お願いしますね。あと間違えても、『あの時』みたいに、マルウェーのカレーかけている料理を出さないでね。ウチも怒るよ?」と、最初は温厚に語っていたナナは、最後らへんに、持っていた鎌をギラつかせるよう彼に見せつけ、怒気が含むように言った。
マーマラも彼女の忠告について強く首肯した。
それからナナは、アサシの鎌を壁に立てかけ、鍾乳洞内部に入っていった。・・・・・・建物の中に鍾乳洞?
マーマラ「お供します! お姉さま」
アサシは自分の食事を中断し、席から立ち上がって、広間の隅においてあった、竹編みのかごと鉄製の大バケツを手に下げて、彼女に続くように洞窟の中へと消えていった。
ちなみに二人が、ホタル達が飛び交う道を行く中、ナナが先頭きり、光魔術『ミクロサン』を操りながら、歩み進める。彼女たちの前に出て動く光の玉が、彼女たちとその周りを照らしていた。
・・・・・・まあっ、間違ってもマーマラが、担当してはいかんだろ。
ナナたちは、各々自分たちの部屋に行き、タオルやら着替えやらを持って、外室して、二人はさっき自分たちが別れた岐路にて合流。そのまま全く別方向の道へと駆け上る。
彼女たちが歩くさなか、ギルド正面入口とは、全く別の出入り口を通過。リザードマウンテンの中腹である。一面煤こける火成岩が幅を利かせた荒れた大地。夜目に慣れた彼女たちが、外の明るさに少し怯む。
彼女たちが辿り着いた先・・・・・・それは天然の露天風呂である。その温泉の特徴は、浴槽の床に、磨石した石畳でできており、その石と石の間から、お湯が湧いて出ていた。それを囲うよう迷路みたいな一方通行道沿いに敷かれた柵には、マルウェーにはなった異界の物・・・・・・竹編みの柵製の物を採用。その仕切内に設置されている衣服を預ける棚も、竹を組み込ませたもの。
露天風呂って、羨ましいね~。
このギルドとゲルタベ町の道半ばでは、竹林がある。・・・・・・ああ、そこから引っ張り出したのか。・・・・・・というかいつ竹生えてきたのこの国?
二人は衣服を脱ぎ、入浴。ナナは三つ編みを解かせ、一息つく。美女たちの詳しい入浴シーンは、読者のご想像におまかせいたします・・・・・・ってね。
あと雨天の日とかは、洞窟道一つの行き先にある、高い天井に、少し外に割いている通気口が有る、岩窟風呂を使用するとか。
うんマジで、憎いね・・・・・・!
◯二人の温泉での会話
「はぁああ・・・・・・。ナナお姉さまの三つ編み姿も萌えですが、解けた長髪もレアで麗しいです~・・・・・・ちょっとだけ、お姉さまの髪の毛、とかしてもよろしいでしょうか?」
「・・・・・・この小説。ガールズラブ要素なかったわよね?」と、不安げにボソッと呟くナナ。
「え? 何かおっしゃいましたか?」
「いや、いや・・・・・・!! ところで一つ思ったんだけど、何でマーマラさんは、こんな辺ぴなギルドを仕事場に選んだのかな?」
「それは・・・・・・いろんな魔術に関する仕事に就こうとしましたが、才能がないから、色々仕事を転々、・・・・・・」と、それはそれはシリアスな面持ちになり、トーンの低い声で語るマーマラ。
「いやいやいや・・・・・・!! ごめんごめん!! 昔の古傷に塩を振りまくるようなこと質問して・・・・・・マーマラさん」と、お風呂の湯気に熱せられたのか、汗だくで、謝罪するナナ。
「お姉さま、気にかけてくれてありがとうございます。優しいですね。・・・・・・いきなりですが、このギルドは、私の天職だと思いました。とても気に入りました! 掃除や、買い出し、客の接待に、家具とかの修繕手伝いとかの、魔術を使用しない仕事をするだけで、生活できる賃金がいただけけるとこなんて、このギルドだけだと思います」と、朗らかな笑顔に戻り話すマーマラ。
ん? ・・・・・・このギルド客とか来るのか!? 蒸気まみれで、ど田舎にあるんだろ? そこ。
「あっでもマーマラさん・・・・・・魔術を関する仕事につきたくないのなら、なぜ魔術師ギルドを選ん・・・・・・」と、質問している最中に、ナナは自分の尋ねる内容が、彼女を不安にするようなことを言ってることに気づいたのである。―― あなた転職でもすればいいじゃん ――とかいう風にも解釈できると・・・・・・。
「・・・・・・親が、エルフだから魔術に関する仕事以外認めないって、厳し・・・・・・」と、自分の耳を、最大限まで垂れ伏せ、口ごもるようにテンション下げた声で、質問を返答するマーマラ。
「いやいやいやいやいやっー、マーマラさん・・・・・・言いたくないことは言わなくていいから! このギルドは、マーマラさんを大歓迎しているから! そんなテンション下げることもないから!! と言うかウチが悪かったからーっ!!!」と、マーマラの言葉を遮るよう、挙動不審で彼女を励まそうとするナナ。
一方で、アサシは、ギルドに隣接する洞窟部屋の中で、一番深い地下を、歩いていた。
彼がいる場所、それは食料貯蔵庫である。冷蔵庫とかいうからくりには少し劣るものの、格段に温度が低く、飲食物を収納するのに適していたのだ。
ココらへんには、永年ホタルは生息していない。
彼が提げている竹編みのかごに、棚田の浄水浸かる多彩な野菜やら、台に置かれたパンやら、油の瓶に調味料などを、手際良く入れるアサシ。
目的の物全てを集めたアサシは、踵を返し、冷水の水道管が有る部屋へと駆け上がる。その後、もう一つ持っていたバケツで、それの容量五分の四ほど水を注ぎ満たした。
ちなみにアサシは、発光系の魔術は会得してない。この時は手持ちの行灯も持たなかった。・・・・・・え? アサシの吐いた息が、壁やら床などに跳ね返って、自分の肌に感じる事によって、空間の遮蔽物を感知し、暗闇内で歩いたり作業したりできる・・・・・・? 何者そいつ?
アサシが調理するための水や食料を確保したので、ギルド正門入口に外出し、彼から見て左方向に歩み出す。
すぐ近くに、湯気が溢れたグツグツ煮えたぎる小さめの泉と、まな板と調理台の役割を果たす、表面を削り磨いた高さ一メートルの火成岩。その岩の真ん中ら辺を切り出した隙間には、金物やらフライ返しなどが収納されている。そして炎が滾リ、ガスコンロの役目を持っている浅めな二つの穴が、規則正しく並んであった。
その穴達は、地下からメタンガスが漏れており、アサシのボスに当たるマスターの魔術によって、豪雨がふろうが、寒風吹き荒れろうが、決して消えることがない火が常に灯らせている。燃料である天然ガスは、このギルドに所属している占術師が、発見した。
その燃料は、あと七百年保つと、その者の占いに出ている。
占術師? このギルドには、まだメンバーがいたのか・・・・・・普通のと比べれば、人数すごく少ないけど。
彼が、煮えたぎっている泉に浸していた網のなかで、空中に晒す部分である先端を、手元にたぐり引き寄せる。
お湯から出てきたのは、網に包まれた8つの卵・・・・・・しかしただの卵ではない、温泉卵である。
卵さえあれば、ここでいくらでも温泉卵が調理出来るのだ。・・・・・・え~いいな~。
アサシは腰を下ろして、片膝立てながら、懐から折りたたみのナイフを取り出し、料理を始めたのであった。
・・・・・・原作者、おい原作者! 調理の説明は? しなくていいのかよ? ・・・・・・はっはっ~ん、さてはお前、料理がろくにできねえな? 図星だろ?
彼女たちが、湯から上がり、着替えをして、湯気を纏った状態で、大広間に戻った。
その時にはアサシが、数々の料理をテーブルに置き、給仕していた。
彼が残したカレーも、先程たいらげてある。
「お~・・・・・・! ナイスタイミング! では早速頂いてもよろしい?」と、目を輝かせて、アサシに問うナナ。
「ええ。ええどすよ?」
マーマラ「では早速いただきますね。」
「・・・・・・今気づいたけど、ギンさんは?」と、椅子に腰掛けながら、アサシに問うナナ。
「いやなんでも、長居しては悪いし、そろそろ奉公先元に帰らんと、イカンやさかい言いよって、二日前、帰っていきましたどすよ」
「・・・・・・それは残念ね。もっと異世界に来る前の話とか聞けばよかった」と、残念そうな顔で、肩を落とすナナ。
アサシは何やら キュピーンと閃き「おやっ、あんさんもしかして、彼に惚の字ちゃいますの?」と、にやけてナナに問いた。
マーマラもこの手の話は、大好物のようで、垂れていた耳を ピーンッ と天に伸ばして、頬を赤らめ、聞き耳を立てようとした。
「え? ・・・・・・特に?」と、アサシからの不意打ち恋バナを、さして動揺もせず返答するナナ。
・・・・・・これ完全にないな。脈なしだな。・・・・・・ギンってやつ可愛そうだな・・・・・・。
しょぼんと、テンションと肩を下げるアサシとマーマラを差し置いて、合掌するナナ。
続いて手を合わせるマーマラ。
「「いただきます!」」
今回の料理の内容は、例の温泉卵に塩をふりかけたシンプルなものと、揚げパンとバジルが添えられたオムレツ。揚げパンなどは大皿に山盛り積まれており、オムレツもボリューム満点である。
ナナが揚げパンをおもいっきりかぶりつき、マーマラがよく味合うため瞳を閉じて、オムレツをスプーンで一口目を食した瞬間に、アサシが「ナナちゃんがさっき、カレーを『かけた』料理食いたくないゆうてましたんで、かわりにそれらの『中に入れました』どすえ~。たっぷりと・・・・・・。お味の方はよろしいでっか?」と、軽く口角を上げ、自らの料理を語った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小学生並みの屁理屈だな。
読んでくれてありがとうございます。
あと次回の投稿は、けっこう遅くなる予定です。申し訳ございません。