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ぐだぐだ異世界冒険譚  作者: 大錦蔵
17/39

空調機完備のダンジョン②

 よろしくお願いします。

 最近再編集した時期は、9月29日です。

 この小説は、中世西洋風のファンタジーだ。

 「おかっぱ姐さん。いつ来るんだい?」

 カフェ『カール髭』の店内にて、部屋の奥にある席に腰をおろしたゴブリンのイイキは、壁にかけられた、鉛製錘おもり三つぶら下げてあるカラクリじかけの時計の針らを、眺めこれらを呟いていた。


 「そうだね君ぃ、確かにこのメモでは、しっかりと・・・・・・」

 イイキの向かい側に座っている、ウール製の全身タイツを身に着けた初老の男が、左手でメモ帳を読み上げている。まあ、語っている時、急に黙りやがったからな、なんか気づいたんじゃねえの?

 そうヤツの職業、人を笑わす道化師だ。国王直属の・・・・・・。

 外見の特徴付け加えとくけどよ、布で覆われたその髪の毛だが、濃い茶色していて、いがぐりみたいな短髪ボサボサの髪型なんだ。あごひげの毛を絡まして複数の短いドレッドにしている。体格はまあいい方。


 「どうした?」


 「これ、この『一時待ち合わせ』って書かれてるとこ、姐さんじゃなくて、自身のカミさんとの待ち合わせについてだった。家内の誕生日プレゼント買うのに商店街の前で・・・・・・」

 と、イイキの質問に答えた道化師。・・・・・・そいつの顔はな・・・・・・一流のリアクション芸人ですら恐れおののき、羨ましがれるくらい見事な青ざめた表情だったんだぞ。


 それを聞き見入ったイイキと、近くを通っていたウエイターなる店員が、吹き出す。


 「くははっはっく・・・・・・やっぱりお前の自然ナチュラルボケ最高だな。ところで急いで行ったほうがいいんじゃねえの? 姐さんにはそのことについて面白おかしく連絡してやっから」


 「いやいい、カミさんの誕生日今日から二日前だった」

 その道化師の言葉でイイキは腹を抱える。


 「ははははっくけかかははっかかかか・・・・・・確か一日前、お前顔ぼこぼこになってたんだよな~・・・・・・」


 「家に帰ったらいきなりだもんな。意味もなく殴られたかと思ったら、原因わかったよ・・・・・・はあっ、メモに日時とか細かなとこ書かなかい癖あるから、勘違いしちゃって」と、肩を落とす道化師。

 そして彼は下げた肩を上げなおして、

 「よ~し気分治しだ! ・・・・・・今日オフの日だけど、もっと笑い追加しちゃうぞ君ぃ・・・・・・それ!」

 と言った後、自らの掌から、魔力でカラフルに発光させ、表情も変顔にして、上半身踊るようにおどけた。


 「チッ!!」


 「ケッ!!」


 イイキが、腰掛けに体を預け、額に青筋立てて舌打ちし、先程の店員がさも不機嫌な表情で怒りを吐いた。道化師がこれらの反応に縮こまる。


 イイキ「・・・・・・本当ほっんっと~に~、お前の持ちネタ屑だな? もっと面白いもんねえのかよ!?」


 「そんな~・・・・・・なんでわざとふざけると君ぃらぁ~笑わないんんですか~!? この国民全員が、笑いの沸点高すぎなんですよ~」と泣き言をほざいた道化師は、続けて

 「もう~・・・・・・いくら魔術の才能があっても、みんなを笑わせれないんじゃあ何の意味もないよ~」と、語る。


 片方の眉毛を、ピクリッ 動かしたイイキとかいう奴は、「じゃあ何か? お前にとって、魔術というのは、ハゲかつらや下着みたいに、笑いのための小道具としか思っちゃいねえのか?」と、質問した。


 誰かが、 すくっ と、立ち上がる。


 「まあ自身にとっては、そう・・・・・・」


 食パン一斤ほどの大きさを持つ魔術で出来た木塊を、何者かが、例の道化師の後頭部にぶつける。

 ゴォ・・・・・・ッン! と、シャレでは済まされないような痛々しい音が、店内で響いた。

 イイキは唖然とし、他の店員や客らが、何事かと下手人と机に顔を伏せてしまった道化師に振り向く。

 木は砕かれ、卓上らにバラけた。


 木塊をぶつけたのは、先程まで彼の背後の席でくつろいでいた、マギク魔術専門高校のブレザー系制服を着てる背の低い女性だった。


 「何よ!? 魔術をカツラとか小道具とか同列だと言いやがって、こっちは秋休み全部潰してでも、魔術の訓練頑張てったのに、あちしの一流魔術師の夢をバカにしたいの!? っざけんなっ!!」と、彼女は半泣きの顔で ズシズシ 歩き、支払場所である出入り口手前脇にあるカウンター上に四つの銅貨をぶちまけ、店内に出ていった。


 店内は一時、嵐後の静かな曇天みたいに、無音が占める。


 「・・・・・・災難だったな、ハゲカツラとか小道具とこの言葉は、オイラが言ったのにさ。・・・・・・すまんね、大丈夫か?」

 と、イイキは慰め、道化師の肩を叩いた。


 道化師の方はというと、イイキの言葉の合図で、面を卓上から上げ、首を キョロキョロ 動かし、とある言葉を発した。

 







 「ううっ・・・・・・私は一体誰?」


 イイキは感じたんだ。・・・・・・室内・晴れだと言うのによ、そん時確かに雷に打たれるような衝撃に陥ったんだ。

 「え・・・・・・お前、どうしたんだ?」


 「う・・・・・・あ・・・・・・ここどこ、あなた誰です?」


 「イイキだよ!? ふざけてんのか!? ふざけてるだろ!! 自身が国最高位の魔術師とか、防衛の要とか忘れちまったのかよ!? アルザナック・イーギロウ!!」


 「魔術師? ・・・・・・ゲームやアニメの話? やだ何この人中二病患者!? え? あなたの鼻が尖りすぎているし、耳も・・・・・・その体どうしたんですか!?」


 揺るぎない確信を得てしまったイイキ。奴の記憶が失っていることに、自身の脳から事実だと突きつけられた。なぜなら、奴アルザナックは、今まで演技した時、本当に下手くそなのだが、今のぼけ具合はまさに不自然なところが、どこにも見当たらないからだ。


 「・・・・・・マジもんだこれ・・・・・・。にしても」

 と、戦慄して語ったイイキは、続けて。

 「・・・・・・お前本当ほんっと・・・・・・自然ナチュラルボケはすげぇよな・・・・・・本物の・・・・・・記憶喪失とは・・・・・・」

 そのように感想を口にした。


 イイキが唖然として、上の行のセリフを呟いた後、ナナ姐【イイキの言っていた姐さんとは別の】や、連続で語りナレーターやってる俺リウムが、この喫茶店へと入店する。


 イイキが、ナナ姐を発見して

 「これはしめた!! 運命のイタズラか!? アルザナック見てみろ! お前の弟子ナナがいるぞ! ちょっと挨拶してこい! 何か思い出すかもしれん」と、指して語った。 

 へぇ~・・・・・・アルザナックとかいう道化師は、ナナ姐のお師匠さんだったとはな~。


 たいしてそのアルザナックとかいうやつは、

 「え!? あの目付きの悪い女の人が私の弟子!? 困ります! 行きたくない逝きたくない!!」

 と、俺を恐れ、駄々をこねる。


 「いやチゲぇし・・・・・・ほら眼鏡の娘の方!」

 

 「いやです。あの娘の隣に、例の目つきの悪い人がいますから~・・・・・・」


 イイキは、思いっきりため息を吐いた。

 「わかったわかった、とりあえず外に出て、医療棟行くぞ・・・・・・。次元の穴札持ってるしオイラ」


 「ああっ!! あの怖い人、出入り口近くの席に座ってしまいました!! 彼女が出ていかない限り私も出ません!! 出れません!!」


 ・・・・・・そんなに怖い顔してんのか俺? ・・・・・・。


 まあさっきまでの話の時系列は、俺が自分の正体をナナ姐にバラす前だったんだよ。次から前話の続きな。正しくは注文したもんが、俺らのテーブルにたどり着いた後だけど。あぁ時系列だけじゃねえや、視点も俺達を中心とするぜ?



 「なんじゃっこれ!? 放射能少なすぎじゃねえか! 卵や乳や砂糖の味だけじゃ足らねえ! 物足んねえ!!」

 俺が、大きいワイングラスに盛り付けてあるシャーベット状のミルクセーキを一口噛み砕いた後、そう難癖をつけたのであるってよ。

 道理で最初見た時、霞んでたんだ。目を細めないと細かく視認できなかった。ああ冷ややかなる甘みと、喉の渇きを感じたのは確かさ。


 「人間ウチ達にとっては、安全な食べ物ってわけね、放射線が味覚成分の役割を果たしてるの?」

 俺の言葉に返答したナナ姐。パンプキンラテを口にしている。もう一つ説明すると、竹林通っている時に、俺がナナに「俺に敬語使うな。お硬いのは嫌いなんでね」と伝えた。むず痒いからな。


 「ああっ・・・・・・」

 俺達吸線鬼にとって、素材や調味料の味覚も感知できる。・・・・・・が、食材に含まれている放射線が少なければ、薄く感じちまう。

 伝え忘れてたな。俺達吸線鬼の視覚は、光だけじゃなく、例の放射線でも感知し、線の種類の組み合わせで、物の色覚を認知する。


 ナナ「にしても懐かしいもの頼むのね。ウチのいた地元じゃ、それの上にさくらんぼとかのせて出されていたけど」


 店長らしき弧型の口ひげを持ったおっさんが、皿の水滴を布で丁寧に拭っている時、ナナの言葉に成る程と微笑む。


 ナナ「唐突だけど、リウムが、ダンジョンそんなにも行きたがっている理由は何なの?」


 「いやいや気づけよ。放射線がてんこもりの遺跡だぜ? しかもあのダンジョン、異世界の物があるという噂聞きつけてよ・・・・・・。もしかしたらとんでもねえお宝が眠ってるかもだ!」


 お宝・・・・・・? と、ナナ姐は少し首を傾げ、オレの話の続きを聞きたがる。そしてオレは

 「放射性物質のことだぜ!! もしかしたら異界の人間が『品種改良』したごちそうがあるかもしれねえ! 別の世界にあるという未知のキュリウム、ドブニウム、ニホニウム、ネプツリウム・・・・・・ウウよだれが止まらねえ! 

 俺ウランくらいしか、放射性物質見たことなくってよ。 一体それらがどんな味や色がすんのか全く予想できねえよ! 

 それらの放射線舐めてぇからってのが理由だ」と、熱弁する。途中で舌なめずりもした。

 その時のナナ姐は、俺の熱弁に、少し・・・・・・いやすごく引いていたがな・・・・・・。 


 「ダンジョン探索か・・・・・・何回か、マスターやアルザナックさん、そしてガサツさんに連れて行かれたっけ、今回の護衛ウチだけか、心細いな~」と独り言呟くナナ姐、ちなみにガサツとかいう名前を出した時の彼女の顔は、なんとも嫌そうだった。


 「おい! 道化師! 今お前の話してんぞ! なんかまだ思い出せねえのか!?」

 店内の誰かが、と言うかバレバレだな。イイキが尋ねる。ただその声は、俺達には届かなかった。


 俺「なぁにぃ弱音吐いてんだよ! お前確か魔王倒したじゃないか、その腕見込んで俺がお前を指名したんだ!」


 「魔王・・・・・・。あれは本当に倒したって呼んでいいのかな?」

 窓の向こうにある、風に揺られた茂みを眺めながら呟くナナ姐。


 「え? 倒したんじゃねえのか?」


 「ん~魔王、仲間の音の攻撃でもがき苦しんだり、涙流して倒れていたけど・・・・・・」


 「それを倒したっていうんじゃねえか。たしか召畜魔王とかいう奴は、強固な精神も持っていたと言われているぜ? そいつを泣かしたんだ! 自信持っていいと思うぞ・・・・・・不安がるな、俺も補助系の魔術使えるからよ、やばかったら手伝ってやる」


 「それは頼もしいな」


 「そいじゃ料理こいつら片付けたら、早速向かうぜ」

 俺らは各々の頼んだ料理をたいらげた後、割り勘で勘定し、外に飛び出て目的地に向かった。


 「ああ此の通り越えると図書館・・・・・・ウチちょっと通いたいな~・・・・・・」

 ナナ姐が、商店街の小路を通るころに、そう呟いている。

 旗から見ても、胸を躍らせ、頬を紅潮させていたんだ奴ぁ。・・・・・・ありきたりな表現か?

 さあ、一つの曲がり角を俺達が過ぎた後にな、異界でいう前方後円墳に形が似た国立図書館が、俺の視界の端ら辺にとらえたんだ。


 その時・・・・・・。

 『ビーッ! ビーッ!、A級危険人物を感知! 冥読本蟲デスブックワーム接近! 冥読本蟲接近! 警備員の方々は、彼女の迎撃準備と、資料の安全を確保して下さい』と、合成音声とかいうの? そういうのが、あたり一遍に響いた。


 動かした足を止めたナナ姐。俺もつられて立ち止まる。

 間抜けそうに大口開けて呆然とする彼女。


 その一瞬後、針葉樹に囲まれた敷地の一部・・・・・・物やら人気やらない場所に、『それ』が ガンガラズズム 隆起した。


 「おい・・・・・・んだあれ?」


 「・・・・・・ゴーレムじゃあないかしら?」


 ※ゴーレム・・・・・・土や岩などでできた人形。術者又は特定の人物の命令を遂行する特徴を持つ。


 俺達が出会ったゴーレムのタイプな・・・・・・ああっ・・・・・・デカかった。とにかくデカかったよ。背の高さは例の図書館の1.5倍位な。幅は目分十メートルほどか・・・・・・。

 そいつの肥大している右腕に、円状に並べられた複数の銃口が搭載されてる。筒穴直径脅威の一メートル。作者からの情報なんだが、なんでも此の図書館に、けっこう前、複数の落ちていた武器があって、それの一つがガトリング砲なんだと。・・・・・・土魔術を使う警備員の一人がそれを参考にしたんだと。

 まあその沢山の銃口だがな・・・・・・俺・・・・・・の側に立っている人物に標準を合わせていた。その後加速するように複数の筒が回転した。


 「・・・・・・」

 「・・・・・・」


 『発射!!』

 例のガトリングから、でっかくて水気の多い土の塊が、狙撃対象に向かって、直線に飛んでくる。速さ驚愕、異界の自動車の法定速度とかいうのと、ほぼ同じくらい。

 何とかギリギリでそれを飛び跳ねて避けた俺達。

 耳も塞ぎたくなるほどの轟音だ。

 黙って傷ついたであろう箇所に視線を落とす俺ら。弾に当たった壁やら床やらに、亀裂が生まれていたのだ。

 機関銃の名に恥じぬ乱射っぷり。姿勢を立て直してない此方側に、弾丸が飛んで飛んで飛んで飛んで飛びまくる。まさしく容赦なく。


 「・・・・・・まだ敷地内にも入ってないのに~・・・・・・っ」

 ナナ姐の泣きごとを合図に、ゴーレムに背を向けてダッシュで駆ける俺達。

 まじでここまでやるか!? と思ったぞ。


 「ふはははははっ! どうだ冥読本蟲デスブックワーム!! 我ら図書館警備員のとっておきを!」

 そのゴーレムの肩上に、制服である青スーツ着こなした警備員の一人が立っており、拡声魔杖とかいうのを持って、ここまで声を伝えている。


 「ちょっ・・・・・・どういうことだよナナ! 何で図書館の警備員が、俺達を狙ってるんだ!? というか冥読本蟲ってなんだよ!!?」

 息を乱しながら文句を垂れる俺。


 「それなんかウチの通り名らしいの・・・・・・。公共の本を汚しすぎたから、図書館側に相当憎まれてるのよ」

 その瞬間だった、ナナ姐の右上空に浮かしてある一つの本に、土塊がぶつかるのを。


 「ああっ!? まだほとんど読んでないのに!!」


 「貴様っよくも、貴重な資料を・・・・・・!!」


 「それあなたのせいっぃぃいぃいいいいいいいいいぃぃっっ!!」


 例の図書館物は土煙の中舞い、もう泥まみれで ボロボロ 読める代物ではなくなった。それでも彼女はまだ捨てずに浮かし寄せている。


 三十二弾目の高速で飛ばされた塊が、直激しようとしている。・・・・・・彼女の後頭部に・・・・・・。

 「おいっ!? 危ねえぇ!!」

 たまたまその時背後を振り返った俺は、危険な状況を察知した。後ろにいるナナ姐の状況を。その弾丸に俺の手をかざす。


 「わかってる!!」

 ナナ姐が大杖の先頭部分を自前の肩に掛け、細小杖の先を、地面に向ける。

 「・・・・・・え?」


 だが彼女が術を行使する必要はなかった。ナナ姐は後ろに感じていた風切音が止んだのを不思議がり、体ごと向きを反対に変える。


 「・・・・・・」

 唖然するナナ姐。それもそのはず放出された土塊は膨張しだし、発射されたエネルギーを消失したかのように、フワフワ風船のごとく宙に浮かせたのだ。

 その後その泥が、降り出した雨のように、振りかける小麦粉のように パラパラ 粉末状に落下する。


 「何よこれ・・・・・・」


 「足止めんな! まだ来るかもしれん! さっさとずらかるぞっ」


 「う・・・・・・うんっ」

 そしてなんとかガトリングの射程圏内から脱出した俺達であった。

 ちなみにゴーレムに乗ってた奴はと言うと。

 「チッ・・・・・・物陰に潜んで逃げたかあいつら。あともう一息で倒せれたのに」

 そう悔しがって呟く奴の肩に、誰かが軽く叩く。


 「あっ何でい!?」

 警備員は背後を振り返ると、そこに、青く光る空に立っている西洋甲冑を全身に固めたのが一人いた。


 「今お時間よろしいでしょうか? 私憲兵ハイエナの者ですけど、あなたが先程行った、市民に対しての明らかなる悪質な不要防衛・過剰報復、建造物等の無差別破壊行為についてお話したのですが・・・・・・」


 例の警備員は、一瞬で顔を冷や汗まみれにし、呟く。

 「・・・・・・なぜここに?」


 「いえちょっと、図書館の書類を頂くために参りました・・・・・・」

 そう答えた憲兵は、咳払い一つをし、

 「・・・・・・城までご同行願えますね?」事務的に語る。


 「・・・・・・はい」

 


 憲兵「ありがとうございます。良かったですね、これだけのことをなさって傷者一人も出さなかったことに。本当に運が良いですねあなた・・・・・・悪ければ酷い惨事になっていたことでしょうね・・・・・・」



 

 話を俺達に戻すぞ。

 アクシデントから抜け出し、十五分後、急な角度を持つアーチ型墨色の岩橋を、二人で歩いていた。

 ここらへんでは、建立物よりも、木々やら畑やらが目立ちはじめ、人の往来も少なくなる。

 

 近くに駆けるガキ共が、とある歌を歌っているのを、俺は聴いた。内容は「フレイア殿はおっしゃりになら~れ~た~♫ ハープしか持ーたぬ~わ~たくしにっ~♪ ・・・・・・殺してやる!! 塵にしてやる!! ~と~、嗚呼この歌は彼女の容赦なく凄まじい士気を畏れる歌~♬」である。

 その歌を耳にしたナナ姐は、信じられないような顔をして、青ざめていた。

 

 「・・・・・・最近妙な現象が起きてるよな。それも大規模で難解不明の・・・・・・」

 左手のみを、ジーパンのポケットに突っ込んでる俺は、最近の新聞の記事にもなっている情報をナナに尋ねる。


 「それって、あなたが言ったダンジョンの方? それとも・・・・・・」

 くわで農地を耕そうとするトロールを、ふと橋端で眺めながら語ったナナ姐。


 ※トロール・・・・・・平均身長が二メートルから五メートル超えで、青白い肌を持つ怪物。いびつな形をした顔やら筋肉やらも特徴の一つ。怪力持ち。【マルウェー出身者基準】


 柔らかそうな土に、先程の鍬が突き刺さる瞬間、例のトロール一匹が、困った顔でこんなことを言った。

 「ありゃ? また土が刃に刺さらねえ! 最近時々こんなことが多すぎる! きっとどっかのやつが、俺様の畑仕事を邪魔してるんだ畜生!」

 ・・・・・・状況説明ご苦労さん。


 「・・・・・・時々あらゆる物やら生物とかを、傷つけることができなくなる現象?」

 ナナ姐が、トロールから目を離し、十一行上のセリフの続きを口にした。


 「そうだ。例の事象が起こったらしばらくの間、稲刈り・磨石・ペン入れ・調理・挙げ句の果ては、食事すらできなくなっちまうんだ。なにもかもだよ。ま~じ~で」

 ただその現象にもう二つ特徴がある。一つ、この事象が始まってから、起きない場所は確認されてない。まるで世界中がそれの対象内であるように。二つ、すぐに収まる。


 トロールの一人「おおっ、収まった! 収まった! また変に固まる前に、さっさと仕事終わらせてやる」


 先ほどの橋や畑らに背を向け、一雑木林が、俺達の視界に入るまで進んだ頃、俺はとある異常に気づいた。

 「あん? この林、道が整備されている・・・・・・?」

 俺が獣道だと思ったそれは、地面が整えられ、一直線上に木々が切り倒されていた。

 知っている場所の、見覚えがないレンガの石畳道を、とりあえず歩く俺達。

 「ダンジョン発見したのが、約一週間前・・・・・・整備されたにしても、早すぎねえか?」

 

 首を傾げる俺に、ナナ姐は、

 「土属性の魔術使えば、一日で事足りるのでは?」と、まあうなずける説を語った。


 林前に、ナナ姐が唐突に、持っていた大杖から白い煙を溢れ出させた。

 

 「うわっなんだいきなり!?」


 「虫除けスプレーなのよ、これ。ここらへん多そうだし・・・・・・念入りに燻すわよ。体には悪くないから」

 そう説明した彼女は、俺のと自身の体中に、俺がドン退くくらい徹底的に浴びせた。

 全く煙たくて、目も少し痛ぇし、臭いし、さんざんだぜ。

 ちなみに先程の魔術を使い終えた彼女は、「・・・・・・これで大丈夫なはずだよね? ・・・・・・うん大丈夫大丈夫!」と、怯えながら自己に暗示をかけるかのように呟いていたな。


 俺達は何キロも進んで、目的地にたどり着く。・・・・・・整備されてるから短時間で行けたが。

 雑木林から深々と変わった山のふもとに一つある、下り阪沿いにうざいほど咲き溢れたすすきをかきわけた先に、お目当てのダンジョンがあるのだ。

 多種多様な石造を組み合わせて作られた遺跡がそびえ立っていたんだ。

 外見の詳しい特徴はこうさ。

 表の屋根壁の材料には、石灰岩とかいう灰色を持つ物を採用しており、大石で組み込んである。

 石造物の周りに、ツタが、緑々しいのから、乾いた茶色まで這ってあった。

 建物のフロアは、二階だけだが、かなり奥行きが広かった。横幅は玄関と廊下は基本約五メートルだが、奥に進めば、外からでもいろんな分かれ道やら広間などが存在してると、目視できるぞ。

 入り口は、眼前に戸なしのが一つだけ。建立物周りを確認しても、窓一つ確認できやしない。

 ・・・・・・なんか建築物のサイドらへんに、壁をくり抜いた穴から、地面に置かれた四角い箱みたいな機械までが、ホースで繋いであって、複数存在する。それの網目部分やら渦巻き部分から少し冷ややかな風が出てた。

 他にも換気口とか多彩なコードとか確認できたけど。・・・・・・気にしないでいこう・・・・・・。

 入り口の外壁には、ツクシを模した列柱が並んであり、入りそれの左右脇には、台が一つ置かれ、各々の上にカラスの彫刻物があった。

 


 「よっしゃぁっ! 心の鉢巻引き締めてっ、なぐりこみいくぜぇええええええええ」

 そう音頭を取った俺は、出入り口に入った瞬間、生ぬるい風が、天井から来るのを感じ取った。

 異世界に詳しいナナ姐によると、それの正体は、業務用のエアコンの暖房機能なる温風だとか。

 

 この小説は、中世西洋風のファンタジーだ・・・・・・?

 

 

 


 


 

 


 


 








 

 読んで下さりありがとうございました。

 吸線鬼の定義する放射物質に対する『品種改良』の意味とは、人工元素・合成された元素のことです。

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