王都の城内にて
よろしくお願いいたします。
最近再編集時期は8月27日です。
金言 という言葉の意味を勘違いしていました。
岩垣と木材を組こんだ、強固で長大な円筒の建物。それらが東西南北方面に一つずつ配置されており、真ん中にそれらよりも背が高い円錐の屋根を持つ主塔が複数、そびえ立っている。他にも医療棟などの建物が敷地内に存在する。
円錐屋根の頂上には全て旗がはためかせていた。
数多の花々木々を植えられている花壇らを含めた敷地内の庭。それらの周りに、水を敷き詰めた幅が広い壕があり、それより外側では、半端な魔術攻撃ならびくともしないだろう岩壁製の分厚い外膜壁が囲ってあった。
その建物は、王族と一部の貴族の住処である。
まあそういう特徴を持つ建立物を、世間ではこう呼ばれるだろう・・・・・・城。
今回の話で、語り手を担当しているのは私。・・・・・・三回目だね。
その時の私は夕日に照らされながら、先ほど説明した城に繋がる倒れた木製吊り上げ橋上を歩いていて、正楼門を潜ろうとしてた。・・・・・・往来する群衆の中で。
私が語る群衆とは、ローブを着ている魔術師とか、王城の関係者と思われる甲冑姿の騎士、ハープと呼ばれる楽器を操りながら異界のアニソンをノリノリで歌う吟遊詩人、ゾンビの少年とハイエナタイプの獣人美少女のカップル、ボロを着こなし駆ける子供とか、エトセトラのことである。
魔術師や騎士はともかく、何でどっからどう見ても一般人の方たちが、祝日でも特別な日でもなく、王の城に手軽に出入できるかというと・・・・・・。
敷地三分の一が、アミューズメントパーク施設だからである。観光地なのだ。
・・・・・・読者の皆さん。想像してください。
例えですけど、皇居又は軍事基地本部の一部が、平日休日祝日ひっくるめて、遊園地みたいに平民が遊びに行くその光景を・・・・・・信じられますか?
私が住んでいる国の王城が、そんなことになってるんですよ?
銅貨十枚のお金で、別の国の騎士でさえも出入りできるのです。
今捕まっている院長が、この国をぶっ潰そうとしたのも無理ないよ。
流石に凶器探知機の役割を果たす魔方陣が、吊り上げ橋の手前に大きく描かれており、楼門入り口左右側に立っている八人の甲冑姿の騎士が、はめられてる者が魔術を使う時、警報がなる腕輪を、来客共に付けてる。
上記に説明した腕輪は、城の内側では外すことが出来ないよう、術式が描かれていた。
その騎士の一人が、私に向かって話しかける。
「お客様、入場料と借り腕輪代合わせて銅貨十枚となります」
私は黙って、一つのペンダントを相手に見せつけた。
城の絵が描かれている。観光・遊行目的以外の客は、城で作成されたペンダントを渡され、それを持っていると、腕輪をはめなくても敷地内に入れるのだ。
「陛下の来客様でいらっしゃいますね。失礼致しました。案内係を今呼びますので、あちらのベンチにてお待ち下さい」と、その者はさっきの態度とあんまり変わらない様子で説明し、敷地内側の正門脇にある、クッションが敷かれたイスを私に勧める。
私がそこに座ろうとした瞬間に、正楼門の屋根上から、自分の目前である場所に、何かが垂直に落ちてきた。
ドゴッン という轟音、軽い振動、地面がめり込み土煙が舞った。
その事例を見た観衆は、思わず拍手をしたのだ。
ガーゴイルである。
※ガーゴイル・・・・・・石の怪物。フレイアと出会ったガーゴイルのタイプは、大型犬くらいの大きさを持ち、スタイルは異世界の南島に語り継がれる『シーサー』と酷似してあった。四足歩行者。
「初めまして、案内係の ナンクルナイサー です。フレイア様でいらっしゃいますね。いきなりですが、北方面の遇塔内にある会議室まで案内いたします。お手洗いに御用がある場合は、あたくしに声をかけてください」と、石像でできた口で、流暢に喋るナンクルナイサー。
高音を発していたので、多分女性の方だろう。声を出す以外はガッチリと口を閉じている。
そして私は、彼女? に連れられ、ぶどう園沿いにある石畳の道を歩んでいた。
彼女の前足と後ろ足は、無機物で構成されたものとは思えないくらい、滑らかに動作している。
追記だけど、さすがに地下牢・騎士が住む寮・武器庫などはもちろん、原則医療棟にも関係者以外立入禁止なんだ。当たり前だね。
なにせ伊達に国内最高の城ではない。
敷地内に馬車・キマイラバス・浮いて動く魔力絨毯用の停留所が、ちらほら確認できる。
非常に敷地内が広いためである。
他にも様々な種類の売店やら、総合案内所のテントに、座禅堂とかあった。
十数分立った時、北の円塔内部にある廊下に入り、一つのドア前までたどり着いた私達。
まあ、ここには前来たんだけどね。
「では、あたくしはこれで失礼致します。」
と、ナンクルナイサーは一礼して、廊下の奥へと去っていった。
・・・・・・・。
「・・・・・・」
会議室の扉には、『関係者以外立入禁止』と書かれた張り紙がある。
これはつまり・・・・・・。
その部屋に隣接している廊下は、関係者以外も出入りできることなの。その時の私の周辺には一般人が平気で闊歩しているという意味だ。
大事な大事な国家機密を扱う部屋を、何だと思っているのか。
ため息一つ付き、私は入室した。
会議室内の特徴だけど、モザイクめいたタイル張りの床上に、青色を基調としたカーペットが、部屋全体に敷かれている。
天井には、様々な方向に燭台先が複雑に枝分かれしているシャンデリアを2つ設置されており、ドア側の壁には、蔓草・横縦線・矢先の形などを組み合わせて彫った金製額縁と、それに入れてる多種多様な絵画が、大小合わせて多数飾ってた。
全窓自体がでかくて、窓際にあるカーテンらも威圧感を放っていた。
窓や扉が取り付いてない壁には、暖炉が取り付けられている。
部屋の中央には、真っ白いクロステーブルが敷かれた大きめの円卓が置かれていた。テーブル上には水挿し、グラスが四つ、漆塗りの木製コップ一つが配られていた。
室内に待機している客たちが、私を除いて三人。
他にはドアの脇に見張り番二人と、窓の手前には給仕係らしき人が一人が手を組んで仁王立ちしてた。
他の客どもは私と同じ人型精霊の人外で、腐れ縁・・・・・・昔からの知り合いである。
ああ言ってなかったけ・・・・・・私は、精霊だってこと。
「ん~♪ この絵画とても・・・・・・ファンタスティック! ミーの心がとても揺さぶれま~す! おおっ! この絵もなんともジャズの音楽が似合いそうな芸術性が・・・・・・」
一人称が ミー であるこのウザイ青年は、名前が カゼウス・シルフフ 。
髪の毛が緑色で、その上に薄い緑色のベレー帽を被っている。緑に染めたチューニック上に白いスーツを羽織っている。背中付近にトンボの羽を浮かしてある人外だ。
壁際にある絵画を、至近距離で眺めている彼。ちなみにその絵の内容は、異界に売られてあるという自撮り棒を得物として使ってる勇者が、凶悪化した豆腐小僧と闘うといういかれたものである。
「君の見ている絵画・・・・・・吾輩もなかなか良いと思いますな。・・・・・・ただし金額価値視点のみでですな。・・・・・・グフフッ売ったらすごいことなりそうだ」
笑い方が気持ち悪いおっさんの名は ツチヨミ・ノームズ 。
後頭部の毛や口ひげがぼうぼう生えてあるのに、頭頂部分は禿げている。茶髪。
頬はこけているのに三段腹で、腕はひょろ長なのに足は寸胴。
白い和服を着用し、その上に煤けた豪奢な毛皮のコートを羽織っている。
ルビー・エメラルド・ダイヤなど宝石の指輪を何重にもはめており、たくさんの勾玉を繋いだネックレスを掛けている。
「ミスフレイア、ナマステ~・・・・・・。昨日のテロリスト退治の時、アタシを援護してくれて謝謝! もうすぐでキングが カムオンンザヒア するから気楽に待つぜよ アディオス・アミーゴ」
このセリフの主は ミズウ゛ァーティ・ウィンディーナ 。私に向かって、合掌して挨拶している。
特徴は、インドの民族衣装であるサリーを、身を包んでいる女性の方。
髪の毛はカーブをえがいているロングタイプで濃い青色。
見た目の年齢二十代前半。
・・・・・・それより。
「昨日そんな喋り方してなかったよね?」
私の言葉に対して彼女は。
「・・・・・・ビぇええええええぇ~ん!!」
美しく整った顔を歪めて、泣きじゃくってしまった。
「仕方ないじゃないの~!! 周りの皆があんまりにもキャラ濃すぎるのよ! 普通にしてたら誰もがアタシの事忘れてしまうんじゃないかって、すごく不安になるのよ!! こうでもしないと地味キャラになっちゃうじゃないアタシ! というより、フレイアちゃんもフレイアちゃんじゃない! 自分のこと自分の名前で呼ぶって、絶~っ対キャラ付けじゃないの!?」
という私に対して、無礼千万の言葉をまくし立てたミズウ゛ァーティ。・・・・・・キャラ付けじゃないからね言っとくけど。
そんな喧騒の中、ドアをノックする音がおとなしめに聞こえてきた。
「皆様~・・・・・・。お集まり頂きましたでしょうか? あ! 皆様いるみたいですね。忙しい中お越しいただいて恐縮です。ではいきなりですが、会議のほう、始めさせてもよろしいでしょうか?」
上の言葉を発した人は、扉から顔を出し、話すたびに ペコペコ 腰を曲げていた。
見ための年齢は、十代の後半。
種族は人間で、特徴として髪の毛は紫色のボブカット。
背はフレイアより高いけど、その年代の平均と比べて低めで、顔つきは穏やか。
国一番の上等な毛皮の赤マントを羽織っており、様々な種の魔鉱石をはめ込んでいる王冠を被っていた。
まあ、このド小市民根性満載の、腰の低い小童こそ・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・この国の王様であった。
名前は、 ロイヤリテ マルウェア 。
っというかこいつ一般人往来の中、一人で来たの? もし廊下に刺客とかいたら、死んでたんじゃない?
陛下が着たタイミングを確認して、私を除く精霊たちは、好き勝手に各々の下座に座った。
ただし、私の席だけが、前来た分のと合わせて決められている。
座席位置が高い子供用の椅子なのだ。座り心地はとてもいいのだが、腑になんか落ちるもんか。
愚弄して・・・・・・!
「では皆さん、テロリストの方たちの逮捕補助ありがとうございました」と、王様は、私達が席についたのを確認して、彼もツチヨミの隣に座り、ねぎらいの言葉を発した。
私達はここ何日か前、とある過疎地に集まってコソコソしている悪党共を倒したのだ。・・・・・・ほぼ私しか働いてないけど。
「・・・・・・」と、しばらく言葉を失ったかのように黙ったツチヨミは、「お言葉ですけど・・・・・・ここ下座ですよ。王様」と、呟いた。
王様はあたりを見渡して、「いやっはっはっはっ・・・・・・ごめん、ごめん。どうも大仰な場所に設置されたイスには、慣れて無くてね。では上座に座らせていただくよ」と、語り、暖炉に一番近く、漆器が手前にある席についた。
上座というより、玉座では? 王様。
扉が ギギギ と微かに鳴る。
しかしそのことに関して、今いる室内の者達は、誰も気がついていない。
ミズウ゛ァーティ「それと『ありがとうございました』より、『大儀であった』と、仰られるほうが、相場にふさわしいのでは?」
王「そうですね。大儀であった」
カゼウス「ところで陛下よ・・・・・・。今回の会議の題目は?」
「うん・・・・・・。二つあるよ。一つ目は『通り魔』について、二つ目は『ギリス国が、不穏な態度を見せている』ってことだね」と、王様は説明しながら極自然な動きで、近くにある水差しの持ち手を掴み、私のコップに、この世界では本来存在してなかった前茶を注ごうとした。
王の行為に、待機していた給仕係の人と、見張り番の人の顔が青ざめ、慌てて礼節保ったまま彼を制しようとする。
「『通り魔』って、あの亜種リザードマンである下手人?」と、私は、給仕係が代わりに入れた前茶のコップを口元に寄せ、呟いた。
※リザードマン・・・・・・トカゲやカメレオンなどの爬虫類を、擬人化したような姿を持つ人外。様々な種類がある。
王「そう。この前彼が、僕を支持してくれる遠征中の騎士団三割を、襲ったんだ。あの亜種タイプは、ボクが知っている人外全ての中で、所持している魔力の平均最大値が一番少なめだけど、絶対捕縛する時は手を抜かないでね。この国に住まう魔王たちの大半は、彼に敗北している」
「了解。二つ目は?」と、私は掴んでるグラスを置いて、『通り魔』の会議を中断しようとし、国際情勢の会議を勧めようとする。だって、その気があればあんな奴、私が一捻りだよ。
ツチヨミ「あの・・・・・・いいのですかな王様。 サラマンデラ殿 が勝手に議題を進めようとしてますが・・・・・・」
サラマンデラは私の名字。
「いいよいいよ。通り魔退治についてはやっぱり治安を護る騎士団の領分だからね。本来僕達司法側が、それぞれ民間事業の責任者であるあなた達に頼み依存するのは、お門違いなんだ。今更だけどね。
そして確かに議題の項目二つ目が、一番大切なんだ」と、たしなめ説明した王様は、続けて
「皆さんおなじみのギリス国についてだけど、前にその国が、戦争対象であった別国を征服したらしいんだ。矛先がすぐこちらにも向くだろう。いや絶対宣戦して来る! そのために・・・・・・」と、語った後言葉を、少しつまらせる。
私をはじめとして、他の精霊達と見張り番・給仕係が息を呑み、王様一点に集中した。
「できるだけ早く、この国を穏便に、ギリスの王様に譲渡するんだ」
暫くの間私達は、この愚王のほざいた言葉で、呆然とした。
「「「「「「「・・・・・・ハアッ!!?」」」」」」」
「・・・・・・! げほっえほえほっ!!」
私と同時に声をハモらせていた見張り番たちと給仕係が、慌てて咳き込む演技をする。
「・・・・・・? 何か問題でもありますか」
と、私達の驚嘆に、意外そうな面持ちで疑問に持つ王。
「いやっ何言ってんのよこのヘタレ王!! 何で防衛も会談も交渉もせずいきなり国を分け渡すの!? この売国奴!! 売国王!! 私達を見くびってるの!? チート大国マルウェー舐めさせないでよ! いっそ貴様が諦めてんのなら、ここでお前を灰にしてもいいのよ!!?」と、席を蹴っ立てた私は、王の胸ぐらをつかみ、お互いの顔を至近距離まで近づけ、睨めつけて脅しをかける。
「あららっ」と、王はのんきに、自分の後ろ髪を優しく搔いている。
「やめてください!! 陛下の御前ですぞ!!」と、カゼウスはその背に浮いている虫の羽を羽ばたかせ、、荒れに荒れた私を、後ろから羽交い締めして制した。
王「まあサラマンデラさん達が、納得出来ないのも当然ですね。理由はあります。
仮に戦争にでもなれば、死者が出る。そんなのはイヤです。それにギリスの王様は名君だと聞きます。安心してこの国を任せられるでしょう。
僕はどう考えても、自身が人の上に立つ器ではないと思いますからね。ご先祖様達も草葉の陰で理解していただけるかな~とか」と説明しながら席に戻る王
「いいわけ無いでしょ!! ギリスはエルフを除いた化生を、徹底的に排斥する国なのよ!? それはエルフ以外であるモンスターの子孫から高確率で、チートの能力を持つ者が産まれてくるからよ! マルウェーみたいにこんな寛容で素晴らしい国他になかなかあるわけな・・・・・・ハッ!?」と、熱弁奮って、頬を紅に染め、半泣き状態になってる私は、途中でニヤニヤにやついている王と他の精霊達に気がついた。
「いやまさかあのサラマンデラ殿の言葉から、愛国心を感じることが出来るとは・・・・・・」
「意外ですね~。いつもクールなフレイアちゃんから、こんな熱く歯が浮くようなセリフを・・・・・・」
「なんとも魂揺さぶられるような美しい演説・・・・・・」
「いや、サラマンデラさん。聞いてる僕が恥ずかしくなっ・・・・・・」
「・・・・・・うわぁああああああああぁぁぁあああああああああああああああ!!」
会議室内全ては、一瞬にして発動した巨大な魔力の炎に、炙られる。
もちろん術者は私。
「燃やしてやるっ!! 灰にしてやるっ!!」
その時の私は・・・・・・いや今もものすごく恥ずかしいよ!! ・・・・・・顔を真赤にし・・・・・・ウウッ・・・・・・阿修羅の形相で叫びこんだ。 ・・・・・・こんなこと自分でばらさなきゃいけないなんて・・・・・・作者さん覚えてらっしゃい!
「だ・・・・・・誰か、サラマンデラさんを取り押さえろ」と、火に包まれながら、慌てふためく片方の門番。
王様の周りに、熱を一切遮断出来る上、酸素を確保させる竜巻の殻の魔術を発動したカゼウス。
ツチヨミがおもむろに片手を挙げた瞬間、ただの人間である門番全員と給仕係の周辺に、炎を完全に防ぐ岩壁が、絨毯上から具現し纏わせた。
そしてミズウ゛ァーティが呪文を詠唱した後、天井から雲なしの豪雨がぶちまけられた。
水の構成成分である酸素と水素を引きちぎれる私の炎が、彼女の術で短時間の中鎮火されてしまう。きっと特別な術式でも施したのだろう。
「落ち着きました?」と、優雅に座ったまま、私に向かって微笑むミズウ゛ァーティ。
門番のもう一人は、炎が消えた瞬間に崩れた岩壁から、這い出て驚愕した。
「部屋の何も燃えてない!?」
会議室に灰やら煙やらが何一つ見当たらない。全て無事。
ミズウ゛ァーティ「理性を保ったまま激昂したんですね。本当に自棄になっているのなら、ここにある家具ら何やら全部が灰になっています」
だけど私を含め、ありとあらゆるものがビチョビチョなんですけど。貴方の水のせいで。
「やれやれ、サラマンデラ殿が吾輩達の借りを踏み倒すため、皆殺するかと思い、一瞬ヒヤヒヤしましたぞ」と、愚痴を言って、吐息一つのツチヨミ。
実に不愉快なことなのだが、三人の精霊たちは、私が経営している建物を建設する時、要の仕事をこなしたのだ。その借りがまだ私にあるから、できるだけ会いたくなかったのに。
王「・・・・・・話題を戻してもいいですか?」
カゼウス「ええ陛下! ギリスが宣戦してくる予測についてですね?」
「うん。それで伺うけど・・・・・・皆さんは、僕が他国の王に、この国を渡すのは、イヤでしょうか?」
そんな王の戯言に対して私達は。
「イヤに決まってるじゃない」
「我輩達は故郷を守りたいのだ」
「ああ・・・・・・血飛沫が舞い踊る光景も鑑賞したいです」
「ちょっとカゼウスさん!? これ全年齢対象の小説ですから!! 発想が物騒!」
微笑む王様。彼が「ところでもしこの国を防衛する場合、一つだけ条件があります」と、人差し指だけ上げた左の拳を私たちに見せつけて述べます。
私「何でしょう?」
「死者は誰一人出さないでね。それなら戦をしてもいいよ」
・・・・・・その言葉に冷や汗一粒づつ流し、返答できないでいる私達。
実のところ、ミサイルやら連射弾が四方八方飛び交う異世界の戦争よりも、魔術を使うほうが、確実に死者が出るのだ。
相手を呪い殺す呪術は、被術者達を気づかせることなく死なせ、広範囲を焦土に化す魔術なんてざらにある。
しかもこの王の言うことだ、対象者は味方や平民はもちろん、敵全員も指しているだろうね。
ただ、王のうわ言のような条件に、ただ一人口を開けた。
「仰せのままに」
会議室の出入り口である扉から、会議に何の関係もない吟遊詩人が、許可も得ずに顔を覗かせた。
返答したのはコイツだ。続けて
「フレイア殿はおっしゃりになら~れ~た~♪ チート大国マルウェー国をなめさせるな~と~♬ フレイア殿は熱弁なさ~れ~た~♪ マルウェー国ほど寛容で素晴らしい国はない~と~♫ 嗚呼この歌は彼女の熱く勇敢な魂に賛同する歌~♪」と、人を苛つかせるようなゲスの笑みで歌い、ハープを奏でた。
その音楽に対して、会議室にいた人た達が拍手し、声援を送った。
・・・・・・私以外が・・・・・・。
「殺してやるっ!! 塵にしてやるっ!!」
その吟遊詩人に向かって突撃する私。
奴は軽い足取り・・・・・・もといスキップで廊下の奥に逃げ出した。
置いてけぼりにされた王様は「・・・・・・ところで世間話になるけど、ゲルタベ町の郊外に、近日新しい娯楽施設ができるんだよ・・・・・・」と呟いた。
場面は廊下になる。
その時の私は、自分の背に生えてある赤いドラゴン羽を、翼一つ幅一メートル半ほど巨大化させた。
正しくは巨大化ではなく、一翼三十センチほどの幅まで縮小させてる自分の翼を元に戻したということで。
自分の翼を羽ばたかせ、人々が往来する中を低空飛行した私は、逃げ続ける奴の裾をつかもうとしたら、そいつが飛び退き、たまたまそこに歩いていたガーゴイル・・・・・・ナンクルナイサーの背びれにまたがった。
ナンクルナイサー「なっ! 何をするんですか!?」
「御覧なさい貴方の後ろにいるあの貴婦人を・・・・・・。猛烈な殺気を放ってらっしゃる。一目散に逃げないと貴方も巻き添えですよ?」と、その吟遊詩人は手のひらで、目を光らせ顔いっぱいに影が指している鬼形相な私を指し、語った。
私は掌に浮き出る魔方陣から、火炎弾の炸裂弾を、吟遊詩人に向けて発した。私がその時激昂したせいか、そいつの周辺を全く気にしてない。
自分に向かってくる攻撃を一瞥したナンクルナイサーの顔は、岩生命体のはずなのに青ざめ、奴を乗せたままただひたすらに走りまくりだす。
ただそいつが、彼女に乗りながら、こんな癇に障りまくる歌をほざき回したのだ。
「フレイア殿はおっしゃりになら~れ~た~♫ ハープしか持~たぬ~わ~たくしにっ~♫
・・・・・・殺してやる!! 塵にしてやる!! ~と~、嗚呼この歌は彼女の容赦なく凄まじい士気を畏れる歌~♫」
私は、廊下から、観光者用のホテル前、迷路のような植物園内、大噴水周辺などの経路を辿って、吟遊詩人を追った。
噴水に沿って設置されたベンチに座っている、黄色と青の色を縞々なよう交互に組み合わせて染められた頭巾をかぶった男を、その時の私は視界に少し入る。
だけどその時の私は、そんな人、気にも留めてなかった。
その男は、自分の腕にはめられた腕輪の模様をただただ眺めていた。
読んでくれてありがとうございます。
次の投稿ペースが遅れるかもしれません。申し訳ございません。