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ぐだぐだ異世界冒険譚  作者: 大錦蔵
13/39

いよいよ魔王戦④

 よろしくお願いします。最近再編集した時期は、2018年5月6日です。

 ナナとかいう人間をはじめとして、ゴブリンとスマスィも、ほぼ沼と呼んでいいよなぬかるみが強い土にはまっていた。そういうとこから今回の物語が始まる。浸り具合は、人間とゴブリンは背中全体に、ヘリックは下半身半分か?

 人間の得物であり、魔術の銃口にあたる杖も泥に包まれていた。


 そう・・・・・・ゾンビとスライムヘァー・・・・・・カブのことな。そのメンバーで人間どもを足止めしていたんだ。


 え? 何だ作者にんげん。語りナレーター役の自己紹介しろ? 必要ねえと思うけどねえ・・・・・・アンデ。スライムヘァー含めて第2話で出てきたんだ。

 別に読者の皆さんは、忘れてもストーリーを楽しめると思うんだが・・・・・・こうダラダラ話すのも時間の無駄か。


 まあ事の成り行きはこうだ。【自分の髪の毛を、気だるくきむしる】



 前回の続きだがな? 人間が・・・・・・ああギンのことな。ああもうややこしい。もうギンはギンでいいや。そいつが、自分の知り合いである人間が、自分の父親である魔王と闘うと聞いて、勢い良く外に出たんだよ。



 「なんてことだ・・・・・・。何でオレの知り合いが、オレのおふくろに助力を得て、オレの親父を倒そうとしてるんだ! というかなんでそうなったんだぁぁぁああああああああああああああああああ!!?」と、そう叫びながら自分家の近所を全力疾走してるギン。

 人間らを追っているのではない。彼女らより先に人間魔王にたどり着き、奴にとある説得をさせるために駆けていたのだ。・・・・・・ご近所さんが嘲笑わらっているぞ。ギン。


 大切な補足を言う。個人情報保護法の侵害だが、伝えなきゃいけないからな。ギンの母であるゴルゴンと人間魔王は、離婚こそしていないが、父親の方から別居したのだ。現在な。


 「・・・・・・ここから流石に距離が遠すぎる! ウマ科の哺乳類・・・・・・召喚!」と、走るスピードを緩め、倒れ込むよう地に両の手をつけるギン。転んだわけでなない。


 ギンの前方足元に、桃色の魔方陣が出現した。そこからオレの知っている馬より、一回り小さいウマ科の生き物が召喚された。・・・・・・ん~触りてえな。動物好きなんだよオレ。

 ・・・・・・ん? 何だ原作者にんげん? いきなりキャラが砕けすぎてる? どこがだよ失礼な・・・・・・。脱線から話戻して物語続けるぞ。


 そいつの体のカラーは、茶とか灰とかの単色ではなく、白と黒を組み合わせた縞模様の馬であった。

 ギンは、そのビジュアルに、少し戸惑いながらも、迷ってる時間はないと思い、おもむろにその馬の背にまたがろうとした。


 「ワ゛ゥっ!!」


 馬の分際で、犬みたいにいたそいつは、自分の背で、ギンを振り投げた。「わ゛ぅっ!?」と、地面に強打したギンは、変な声を出して、いた。自身の背中にひどい痛みが生まれたのだ。

 うわ~・・・・・・、術者なのに、召喚物になめられている。元来その生き物が、気性が荒く、人に懐きにくいのか、生き物に嫌われやすいギンの体質なのか・・・・・・。


 まあそれでも、伊達に召喚術が得意なギンではない。なんとかそいつを念じて操りしがみついて、普通の馬とそんなに変わらない速度で、人間魔王に向かい、ギンたちは駆けていった。


 数分彼らが猛スピードで、移動した後、走るのをやめた。

 ギンの目の前に、三階建の、石造り主体な立派である建物があった。

 その家は、右部分に、地面から三階のバルコニーまで蔦を這わせてる。

 わざとこうゆう風な作りにしてあるだろう・・・・・・。裏庭には、杉が一列に植えられてあった。


 そうそこは、スライムヘァー共の住処である。

 その庭で、花壇に植えられたチューリップなどの花に、ジョウロで水をのんびり与えていたスライムヘァー。・・・・・・今の自分は、優雅にたたずんでいると、想像しながら。


 「やあっ、グットアフタヌー・・・・・・ン我が友よ! ここに何の用かな? もしかして自分の宿題に、分からないとこがあって、博識なボクに、助けを乞いに来たのではないかね? ・・・・・・もしそうだとするならば、あなた、『マギク魔術専門高校1-S』のエリートである僕を選ぶ、そのお目だけは高いですね?」と、ギンにベラベラほざきまわるスライムヘァー。


 ギン「違う・・・・・・、ところで頼みたいことがある」


 「フフン? 頼りがいのあるボクを選ぶとは、中々嬉しいことだ・・・・・・が、残念だがボクはこれから、温泉にでも行こうかと考えてたのだよ。他をあたってくれな・・・・・・」と、髪の毛である自分のスライムを手で ネチャリ 払いたなびかせながら、語っているのだが・・・・・・。


 「・・・・・・頼みじゃなくて、命令だった」

 スライムヘアーが話している途中に、そう宣言したギン。


 「・・・・・・っ! 何なんだ君は!? ここは『ミツク』領主家の領域だぞ!? 人間である君は、希少種であるこのボクに、命令しようとしてるのかい!?」と、驚愕と怒りを表すスライムヘアー。

 ちなみに、スライムヘアー種、言うほど数少なくねえぞ?


 「そう命令だ。何週間か前、オレが山賊に絡まれたこと覚えてるよなお前」と、ギンは軽く冷徹に語り始めた。


 「おっ・・・・・・おう?」と、引きつらせた笑みを浮かべるスライムヘアー。


 「で、あの時の山賊は、オレが異世界出身者だと思っていた。・・・・・・まだオレは他人に、自分のこと騙ってなかったはずなのにな・・・・・・!」と、眉毛を釣り上げ、スライムヘアーをにらみ付き語り始めたギン。それに対して彼は無言で自分の目を泳がしていた。


 「・・・・・・お前言いふらしただろう。町中で。そこから完全に予想なんだが、たまたまそこにいた例の山賊が、お前を尾行・・・・・・お前はオレが降りた場所であるバス停からツケた時に、同乗していた奴が、先回りしてアジトにいる仲間を呼び寄せた。」と、推理するギン。


 「・・・・・・ギンくんが山賊に絡まれたのは、ボクのせいだってこと・・・・・・?」と、スライムヘァーは口にし、肩と膝を落とした。


 「予想だけどな・・・・・・それ以外考えれなかった」


 「・・・・・・あの時は、町中でギンくんを心配し、探し回ってたんだよ。・・・・・・わかった負けだ。君に迷惑かけたし、今回はボクが折れる」と、スライムヘアー。


 「ありがとな! 話は走りながらする! まずは乗ってくれ!」と、感謝などを語ったギンは、さっきと同じ要領で動物を召喚した。

 その動物は、まあ馬みたいな形をしていた。資料によると ラマ ? 茶色い毛を持っており、大きさはそんなにない。・・・・・・まあ昔ギンの話によると、召喚された生き物は、肉体を強化されてるとか。人一人乗せるくらいなら大丈夫だろう。


 「ふ~む。手綱や鞍がないのは辛いし、白馬ほど気品さは感じられないが、まあ良しとしましょう。・・・・・・」と、言いながら、ラマと顔を合わしたスライムヘァーは『ペッ!・・・・・・』と、自分の額に、動物からつばをつけられた・・・・・・。


 

 

 舞台は変わる・・・・・・人間やらゴブリンやらヘリックやらに。


 メガネを掛けた人間は、どうやら例の用が済み、彼らと一緒に今バスに乗っていた。人間魔王の根城である一つの山岳近辺に、設置されたバス停に向かって。

 他の同乗客は、暇つぶしに歌を奏でている鳥人間ハーピーを含めて四人。


 「今までは、大変に無礼なことを申しました。こんなボクでよろしければ、魔王を改心させる手伝いをさせてはいただけないでしょうか・・・・・・」



 スマスィもといヘリックの言葉である。

 

 「・・・・・・・・・・・・」

 自分の頬と肺胞はいほうを、それぞれ引きつらせた人間とゴブリン。


 ゴブリン「・・・・・・ど、どうしたヘリック。そんな改まった言葉で?」


 「はい・・・・・・ボクは反省しました。自分の傲慢な言動を・・・・・・」と、ヘリックは被ってあったシルクハットを降ろし、頭を下げて語った。


 「・・・・・・キャラが完全崩壊しているわ・・・・・・」彼女は、名前のつけがたい感情に侵されて呟いた。


 「いきなりの豹変ぶりで驚きでしょう・・・・・・説明させて頂きます。

 ボクは学生の頃から、正体が不明な心の穴がありました。多分それは虚無感だと今は思います。その穴を埋めたくて埋めたくて仕方ないボクは、人々の前で自慢すれば、その穴をふさぐように紛らわせれることに気づきました。

 それからのこと話し相手の気持ちも全く気にせず、傲慢な態度を取ってしまったのです。・・・・・・しかしいくら自分のことを説いても説いてもその穴を塞ぎきることは・・・・・・叶いませんでした。

 ですがさっき短時間の座禅をし、自分をかえりみることによって、その心の穴は全部は埋めれませんでしたが、自分が他の人達に酷いことをしたと気づくことができたのです!! 

 ・・・・・・改心しました。これからは汚名返上いたします!! 改めてよろしくお願いします!! イイキさん。そして本当に申し訳ありませんでした。ナナさん」


 ヘリックの説明に、なんと対応していいのかわからないゴブリンと人間。


 「・・・・・・仕事の話をしよう・・・・・・」


 そう口にしたのは人間。そう答えるしかできなかった。続けて。


 「・・・・・・さて魔王の根城なんだけど、相当標高高い場所になるわよ。登るのに、一日二日かかるかもしれない。引き返すなら今のうちね? まあ食料とかは、多めに用意したから」と、途中自分のからっているカバンを軽く叩き、彼女は説明する。


 「ここまで来たら退けねえだろ?」「がんばります!」

 ゴブリンとスマスイは、やる気充分である。


 「・・・・・・で、作戦を立てなきゃ。まずウチが考えたのはね・・・・・・」




 場面は戻る・・・・・・ギンとスライムへァーに。


 「なんか用か・・・・・・?」

 暗がりな路地裏にある一つの小さめな民家の玄関に、オレは疑問をぶつけた。

 ギンとスライムヘァーが、俺の家を訪ねてきやがった・・・・・・。面倒くさかったな。


 「オレ達の手伝いしてくれないか。詳細は移動しながら伝える!」と、ギン。


 アンデ「お前が頼み事するなんて、ただ事じゃねえ。まあ借り一つな。彼女とのデートは明日で今暇だし。ってかスライムヘァーおでこ臭えぞ!?」


 「うるせぇ! リア充!!」と、叫んだ非リアスライムヘァーは、ポケットから真っ白なハンカチを取り出し、おでこを拭った。


 「それじゃあ行こう! 近道を知っている。アンデは移動用の動物は召喚しなくてもいいな!?」と、ギンは確認を取った後、オレの返答を待たず背を向き、馬に乗ろうとする。


 見たこともない珍獣二匹を、またがり移動する、ギンとスライムヘァー。・・・・・・正直かなり羨ましかった。



 「・・・・・・たりめーだ」と、返したオレは、自分の足元に泥を出現させ、それを体勢前屈みなる自分の体を浮かせた状態で滑らせて、奴らの背を追った。






 「・・・・・・登るのに、どんくらいかかるって言った? ナナ」

 時系列が少し過ぎて、ナナとかいう人間達の方に、照準を戻す。上のセリフの主はゴブリン。


 「・・・・・・いや、はっはっはっ。まさか魔王の根城と、降りた停留所が、目と鼻の先とはねえ・・・・・・」と、そう困った顔をし笑って誤魔化す人間。


 「まあ・・・・・・体力使わなくて良かったじゃないですか。時間がかかればかかるほど不利になりますからね」と、スマスィは語る。


 そう、彼女らは、魔王の住処付近に立っていた。目的地の場所まで約2キロ。

 高山病かかるかもしれねえ山地、バスの経由にすんなったく。

 生えてある植物も少なく、寒々しさを湛える灰色の岩がほとんどであった。山の天気は変わりやすいのか、禍々しさを帯びる黒い雲が、彼女達の頭上近めに、固まっていた。


 「それじゃあ行きますか・・・・・・」と、ヘリックをビニール手袋履いた左手で持ち上げ、控えめに音頭を取る人間。

 崖と崖の幅2メートルある間の上り坂道を、彼女らが通ろうとする。


 いきなり人間が、杖を持った右腕で、ゴブリンも抱え、崖左壁に向かって飛び退く。

 何のことか呆然とするゴブリンとスマスィ。その時彼女のカバンが、岩の壁に付着した。


 ベチャリッ と、背筋も凍るような不快な音が発し、人間の背負っていたカバンが崖に激突。


 彼女がいた足元には、つややかに光を反射させる、緑色の粘液がうごめいていた。

 その人間は旅路の時、常に発動している索敵魔術で飛来物を感知し、回避したのだ。


 「スライム・・・・・・?」と、見慣れぬ物を、見下ろしながら呟く人間。

 その気持悪い物体は、重力に逆らわず、坂下向かって滑っていく。

 

 しかしその謎に浸り尽くす前に、背中に違和感を感じた彼女たち。

 カバンが人間の背中ごと、ぬかるみに変質した岩に飲み込まれようとしていた。

 「泥状化!? 爆炎で乾かしてやるわよ!」と、叫んだ彼女は、大杖に魔力を込め、爆炎を自分の付近に発した。いぶしげな煙が、ゴブリンやヘリック周りも含めて漂い・・・・・・数秒で拡散した。

 「・・・・・・~ケホケホ無理でしたか・・・・・・」

 しかし残念ながら、火力が足らなかったのか、彼女の背中だけでなく、杖ごと両手と、ゴブリン共の一部も泥に纏われている。


 そうして物語の冒頭に当たる場面は、現在に至った。そこから話の続きな。


 先程緑色の粘液を放した砲撃元を、にらめつける彼女ら。空気が徐々に張り詰めてきた。


 

 「は~っはっはっ!! お嬢さん。さっきはよく華麗に避けましたね! ですが・・・・・・」と、耳障りに叫ぶさっきの術者の正体は、例のスライムヘァー。

 人間たちの前に、颯爽さっそうと現れた・・・・・・と妄想しているらしい。

 彼女らが張り付いているのとは反対方面にある、5メートルの高さを持つ崖の上から、自分の髪の毛を ネチュネュ いじりながら人間らを見下ろしていた彼。


 「もうしまいだがな・・・・・・!」


 人間たちの真横に、オレの声が響く。彼女の至近距離で、オレが垂直なる崖の岩を泥化させ、そこから這い出たんだ。



 「イヤまさか待ち伏せした場所に、跳んでくれるとは楽だな。

 スライムヘァーの攻撃誘導がこうそうすとは・・・・・・。あんたらが触れている崖の岩は、柔らかくしといた。

 怪力でも使わねえと抜けねえぜ? しばらくおとなしくしてくれ。オレたちはてめえらをこれ以上危害加える気はねえからよ。

 付け加えとくが、オレの沼に包まれた所は、魔術が使えないぞ?・・・・・・」と、オレは説明して、土埃まみれた自分の髪の毛を掻きむしり、反対方面の崖壁に歩んだ。 


 「て、てめえら魔王の手下か!? すぐにギタギタのボコボッコにするからな!!」と、虚勢きょせいを張るゴブリン。


 オレは振り返り「まっ・・・・・・そんなとこだ」と、適当に相槌あいずちを打つ。


 「ちょっ・・・・・・・・・・・!? 違うでしょ!! アンデ!! 僕達善良な一般市民だぞ! 魔王の仲間とか嘘付いたら、僕ら冤罪になっちゃうじゃないか!!」と、スライムへァーはまくし立てる。


 「・・・・・・じゃあなんでウチ達の目的を邪魔するの? 時間稼ぎが狙い・・・・・・?」と、オレたちに敵意の目を向け、荒く呟く人間。


 「そうだ」と、返答したオレは、スライムヘァーがいる崖の方まで歩み、急勾配の岩壁に、足をのせた。

 敵に背を向けるのは、あまり良くねえが、オレが危ない時はスライムヘァーが、彼女らの攻撃を迎撃してくれるかもしれねえからな、多分。

 

 オレの前にたたずむ岩の壁が、前方方面一直線上の部分のみ泥に変質させられて、速い速度で流動して、オレを崖の上にいるスライムヘァーのとなりまで運んだ。


 「イイキさん! 放つの今だよ! 『破壊ジェノサイドデストロイヒール超々オーバーブラスト!!』」と、人間が、ゴブリンに向かって叫んだ。


 「っ? ・・・・・・っ! わかった! 喰らえ!! 『破滅ジェラートデストロイハバネロ腸々オーバーブラスト!』」と、彼は小首をかしげた後、彼女の言葉にすぐさま理解した。自分の右手を突き出し、左手で標準を安定させるよう右の二の腕掴み、オレたちに向かって狙いを定め、必殺技を唱えた。・・・・・・ツッコミは面倒くさいからいいや。


 「おおっ! ゴブリンの人。なかなかすごそうな技使おうとしていますな!?」と、驚愕を表すスライムヘァー。少し後ずさりした。


 ゴブリンの掌から、一筋の青い閃光が、とめどなく発射された。

 彼の魔術が、曇天に轟く。



 「うおっ・・・・・・!?」と、崖の奥に引っ込み、驚嘆するスライムヘァー。少しビビっていた。

 まあオレもポーカーフェイス気取っちゃいるが、ゴブリンの一挙一動注意して回避した。


 彼の攻撃に、震えが止まらずにブツブツ独り言を呟くスライムヘァー。

 ネタがわかったオレは、そんなバカに、ため息一つ漏らし教えてやった

 「・・・・・・あれ、『ライト』だぞ? 光属性日用魔術の」


 彼は短時間で顔全体に冷や汗まみれになり、上ずった声で「・・・・・・ふっふ~ん。アンデ! 気づいてたよボクも。でも紳士でもあるボクは、敵の心象でさえ傷つけないように、ハッタリ魔術でもリアクションを取ることを美徳としているのだ。君もそういうとこを、ボクから見習うのはどうかね?」と、相変わらずほざき回した。



 「人間らから目を離すなよ・・・・・・」と、スライムヘァーに説教しながら向けた視線を、再び彼女らに移したオレ。

 そこに映っていたのは、ただただオレらに、にらめつけてるだけの女の子たちである。



 オレはもう一回ため息をし、こっちもにらんだ。

 「おいてめえら! こんなガキどもの化生に手こずるお前らが、これから戦いに挑むのが魔王? 世界舐め過ぎだろうが!! しばらく時間くれてやるから、泥で頭冷やして考えろ!! 退き際も考えるのが、強者の条件だろうが!!」と、人間たちに怒鳴り散らしたオレ。


 しかしこのぐらい叱っても、自分の胃の煮えたぎりが冷ますこともなく、怒りの言葉をつなげた「・・・・・・気が変わった。お前らこれから医療棟まで、入院送りにしてやるよ・・・・・・(ヘリック以外はな)」正直そいつらの無鉄砲さがほっとけなかったのさ。

 前、公民の教科書流し読みしてたら、ギルドに所属する魔術師とかは、医療棟に続く異空間魔術のアイテムを持ってると記載されてるのを発見。

自身の拳を鳴らして、次に魔術を発動させるため詠唱する。スライムヘァーはそのことについても激しく慌てながら異論を唱えていたが。


 そんな自分に対して、彼女は・・・・・・。





 オレたちの背後を見つめて、「ヘリック・・・・・・?」と、呟いた。 

 言葉を発した人間は、信じられないようなものでも見てる目で。


 一瞬奴が何を言ってるのかわからなかったが、思考停止に陥ると感じてしまうくらいの異変を察知した。

 シルクハットをかぶったアザラシの姿がどこにも見当たらない。


 オレは慌てて後ろを見渡した。隣りにいたスライムヘァーもつられていた。





 しかしそこには、待機させてあるラマが、草をはむ姿しか見当たらなかった。

 オレたちが十数秒探し回ったが、アザラシの影一つ発見できない。



 嫌な予感がし、オレたちは急いで彼女たちの様子を確認した。


 肩をすくめ、微笑む人間・・・・・・。





 オレの魔術で土を纏わせて無力化したはずの、そいつの両手がそれぞれ杖を持った姿で、オレの視界にさらされた。

 土埃は付いていても、泥なんか纏ってない。そいつの両隣には、ゴブリンそしてさっき姿を消していたヘリックが、泥状化した岩に飲まれているのではなく、彼らの背後にある水分が少なそうな土を、被術者中心にたくさんシワを生み出しめり込ませていた。・・・・・・オレはその魔術を知っている。ってか使える! 地面や岩などに強力な弾力性をもたせる『マッドトランポリン』・・・・・・!!



 八方塞がりであった彼女らが、オレの術を短時間で解いたことについて、正しい思考回路を保てないまま慌てふためくオレ達。幻術でも使ったのかと・・・・・・。


 猛スピードで泥を貼り付けたまま、オレたちに向かって、トランポリンの反動で、放射状に空中に舞うゴブリンとヘリック。


 スライムヘァーが、焦りながらも自分のスライムの一部を引きちぎり、ゴブリンに向かって投げ飛ばした。


 見事その人外の顔に緑の粘液が当たり、飛んでくるスピードが少しダウンした・・・・・・が、彼がスライムアレルギーなのか、スライムヘァーの術の効果なのか・・・・・・。


 「ヘックション!? ヘックションッ!!?」 

 ゴブリンから鼻水やらよだれやら涙が共々大量にあふれ出し、その顔は、普段ただでさえひどく醜いのに、ますますかゆみにより歪んでしまった。


 「ふははっ・・・・・・はっ? あっいやこち来るな・・・・・・、うわ来ちゃダメ!? あっ・・・・・・あっ・・・・・・ぎゃああああああぁぁああああああぁぁああああああ!!!!!??????!!!!!!!!!!!????? っっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 体液ぶちまけた子鬼の化物が、ネチュネチュ している粘液を点けた状態で、スライムヘァーの顔に張り付いたのである。読者は、奴が避けるか迎撃しろって思ってるとこかもだが、あんなショッキング映像見せられたら体なんか動けないと思う。 ・・・・・・・・・・・・人生で初めてで最後であろう最高の同情をオレは奴にした。ものすごく気の毒だった。


 そのまま彼は、ギャグ漫画でよく描写されそうなマヌケ顔で倒れ、失神。



 そんなひどく哀れな倒れ方をしたスライムヘァーを尻目に、オレももう一つの敵を見据えていた。

 ヘリックである。かわいくて仕方ないアザラシ。

 それでも私情に流されないよう、迎撃態勢をとったオレだが、跳んで向かってくる彼はとんでもなく恐ろしい異能を発揮した。


 ヘリックの周りに、なんかこう・・・・・・ フワフワ な雰囲気を醸されていて、彼の目も異常なくらいすごく ウルウル していた。空中にいながらびたポーズまでコイツは取りやがった!

 オレはその破壊力に気圧され、その・・・・・・抱きついてしまった。なんか避けてもヘリックが地面にぶつかって危なさそうだったし・・・・・・。とにかく後悔はない!!


 そんな彼の前ヒレから、穏やかな音楽が流れてきた。オレは数秒聞き惚れ、すぐに意識が遠のき、その時の自分は熟睡して地に伏せたのである。



 彼女の背にくっついた土は、オレが倒れた瞬間に解けたらしい。書類にこう書いてあった。

 人間共は、オレたちに勝利したのである。


 ちなみに闘いにおいての追記読むぞ・・・・・・。人間のカバンが、オレが泥化させた崖に、接触した時からだ。


 ◯彼女が、自分の背に泥が張り付いたの感知した瞬間、小さな杖を胸ポケットから取り出し、ダメ元で爆撃魔術で土を乾かそうとし、まだ見えない敵に対して目眩ましをした。

  ↓

 ◯敵の魔術から逃げられないと悟った彼女は、害がある沼にまだ触れていない両手と、彼達の背中【ヘリックは下半身】を、自分の魔力で創生した土を纏わせた。もちろん周りにある岩の色に合わせてカモフラージュする設定を加えるために呪文も詠唱。ここでやっと煙が分散された。それと彼女の作り出した土を操っているので、オレが柔らかくした崖に引きずり飲み込まれることはなかった。

  ↓

 ◯オレは自身の術が、彼女の両手を封じたと勘違いする。

  ↓

 ◯ゴブリンが光魔術を放つ。その術に警戒し見定めたオレたちをよそに、人間が、先程と同じ要領で具現した土を、ヘリックの全身を包んだ。スマスィの種族は、長い間呼吸を止めても平気である。

 ちなみに土を纏わせた時は、ヘリックに許可を得ずだが。・・・・・・まあ本人は納得してる。

  ↓

 ◯ヘリックが俺たちの後ろにいつのまにか回り込んだことに、気づいた様に演技する彼女。彼はその時泥で隠れてたし。

  ↓

 ◯敵を見当外れな場所に探し続けるオレたち。時間を稼がれてしまったのだ。その間に人間が、両手に張り付いてる具現した泥を解除した。

 彼女が作り出した土だから、取り外すのも楽勝だろ。

 彼らに付着した泥を、『マッドトランポリン』に再利用するため、人間は杖に魔力を込め、その土を彼らのでん部ら辺に集め脱水した。

  ↓

 ◯奴らが飛び上がる前に、それぞれ種類の違う呪術を、彼女が付加したのだ。ゴブリンには『潜伏ヒドゥンボルト』、ヘリックには『誇張愛想プリティーデフォルメ』を。


 ※潜伏ヒドゥンボルト・・・・・・体や物に電気を帯びさせる魔術。被術した対象物は、内にある雷魔術のダメージはないが、その者・物に近づいた別の生物・物体は、そこから電気が伝わってしまい、ダメージを受けてしまう。


 ※誇張愛想プリティーデフォルメ・・・・・その術をかけられた獣型の生き物は、相手がどんなに冷血であろうとも、母性本能をくすぐらせる事ができる呪術。人間自身に付加することはできない。

 

  ↓

 ◯スライムヘァーには、雷の魔術はいらなかった気がするが、例の通り倒れたオレたち。

 あとなぜ彼女が、土を彼らにつけまま飛ばしたかというと、自分の作り出した土を操って、跳んでいる奴らの軌道修正を行おうとしたためである。

 やばくなったら彼らを、安全圏まで避けさせることも出来るというわけか。

 ・・・・・・ああ忘れていたが、ヘリックの魔術『サウンド』で発動した音楽についてだが、かなり前に人間どもがバスに乗っている時、歌ってた鳥人間ハーピーからちゃんと許可とって、彼がコピーしたのがそれだとよ。


 そいつが演唱した歌の種類は、『セイレーンの子守唄』。周知の通り、聴いた者を睡魔に襲わせる魔力を持つ歌で、キマイラを手綱でいてた運転中の運転手達が、その歌の効果で居眠りして、危うく大惨事になりそうだった。人間ナナが運転手を起こした。


 ・・・・・・とまあ追記はここまでとして、話の続きな。


 「よっしゃ! ナナ! 勝ったぜ! 後で奴らを捕縛しといてくれ。この調子で、魔王を蹴散らそう!」と、そう語ったのはゴブリン。崖の上から彼女に向かって、まだ止まらぬ鼻水を流しながら顔を出していた。


 ヘリック「・・・・・・誰か助けてください。この男の方。眠っても僕を離そうとしないんですが・・・・・・」


 「・・・・・・どうしたナナ?」と、ゴブリンは彼女の落ち込んでいる姿を見て、疑問を発した。


 「今回は、魔王討伐見送らない・・・・・・?」と、悲しげにゴブリンを見上げる彼女。


 「「はいっ!!?」」


 「なんか、あの人の説教・・・・・・正論だと思ってしまった。ウチ世の中舐めてたと思う」


 と、意外とオレの意見に耳を傾け、落ち込んでしまった人間なのである。



 その頃人間魔王の瞳には、彼女達を映していた。

 

 


 

 

 




   

 



 


 


 

 


 


 

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