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ぐだぐだ異世界冒険譚  作者: 大錦蔵
12/39

いよいよ魔王戦③

 今回は宗教色が強いかもしれません。

 ※ぐだぐだ異世界冒険譚は、特定の宗教を差別や勧誘等したりする小説ではございません。

一番最近に再編集した日時2018年1月17日

 三回連続オレ ギン が語りナレーターをやらせてもらう。

 舞台はゴルギオンさんの家ではなく、ゲルタベ国立図書館本館内。読者は覚えてるでしょうか。ヤハチ院長が、国崩しのためにその図書館に立てこもった事件現場のことである。

 ただオレは、中の出来事を、ろくに知らないのだが・・・・・・。


 マーマラちゃんの視線は、持っていたメモと本棚に収納されている本らの背表紙を行き来していた。


 彼女の沈みぎみな心には、ガラス張りの天井に向けられていた。真中部分が、緑色の大布で覆われていて【壁に鉄杭を打ち、そこから布の端まで縄で固定している】、それを一瞥するたびに、手の平に微小の針が刺さって抜けない痛みのような罪悪感に襲われてるのだ。・・・・・・なんで?

 自身の正体を知っている周囲のお客さんや図書館職員さんが、畏怖や好奇の念を抱いて、こちらを観察しているのではないでしょうかとか、と考え悩んでいるマーマラちゃん。しかし・・・・・・。

 


 「あっあった! ナナお姉さまがご所望の『世界を闇でおおえ』という小説が!」


 ナナちゃんに頼まれたことを、しっかりこなさなきゃ!! 自分を変えなきゃ!! と決心した彼女であった。自身が尊敬する読書家が欲している冊子を代わりに探す。彼女の提げている竹網カゴは、図書館貸出物であり、それの中には『幽鬼ファントム騎士ナイトの一種・足軽ライトフットの戦法』『こうすることによって、アチシはマンドラゴラを使役することができた』『ジプットの文化全集』の本が入れられていた。


 「・・・・・・世界? 覆え・・・・・・?」

 マーマラちゃんが、とあるワードの羅列を読んで、何かを考え込んでいる。それはもう、閃く前の予兆を連想させるような。


 「・・・・・・っ!!」




 舞台が図書館から、ゴルギオンさんの家に移る。神殿の方ではなく、生活領域スペースである土壁の建物の方。


 「・・・・・・ごめんなさい、てっきりアマチュア座禅会にお越し頂いた生徒さんと勘違いしてしまって、思いっきり打ち据えてしまって、肩の方は大丈夫・・・・・・?」

 客間で、申し訳なさそうにナナちゃんに謝るゴルギオンさん。

 ゴルギオンさんとナナちゃんの、勘違いなる食い違いは、解消されたみたい。


 「あの・・・・・・大丈夫です。気にしないでください。いやまさかあのギシャーマの神殿が、座禅堂なんて、一片も想像だにできませんでしたから」と、ソファーに座っているナナちゃんは、自分の左肩をさすりながら語る

 彼女の横には、足がしびれてまいっているイイキさんと、神殿に出た後も何故か半眼なままのヘリックが並んでくつろいでいた。

 とても穏やかな顔をしているな、あのアザラシ。


 「これ、オリーブティーです。よろしかったら召し上がってね。あと茶菓子もどうぞ」と、お盆を運んだゴルギオンさんは、ナナちゃん達に温かなお茶と醤油せんべいを、二つのソファー間に設置されたテーブル上に置き、振る舞った。

 ・・・・・・全く何度も何度もやめろって口酸っぱく言ってるのにさ、出しやがって、合わねえんだよオリーブティーとせんべ・・・・・・とにかく話を続ける!


 「ああっオリーブティーなんて、初めて飲みましたよ! 緑色なんですね?」と言ってお茶を飲んだ後、続けて「・・・・・・後味のオリーブ強・・・・・・いやいやいやっ! いきなりですが話題を変えますね、本題に・・・・・・よろしいですか?」と、ナナちゃん。


 「ええどうぞ・・・・・・どんなご依頼件で?」と、彼女たちの向かいにあるもう一つのソファーに座って、返答するゴルギオンさん。


 「はい! 嫌なことを思い出させるかもしれませんが言いますね。召畜魔王ってご存知ですよね?」と、シリアスなる空気を纏った状態で、キリリッと質問するナナちゃん。すぐ横にイイキさんが、 バリボリバリボリ せんべいを噛み砕いていた。


 「・・・・・・ええ」

 表情が曇るゴルギオンさん。


 「あなたがその魔王に呪いを掛けられた被害者ですよね? 魔王についての情報をご存知であれば、差し支えない程度で、なんでもいいので教えて下さいませんか!?」


 「・・・・・・」


 「ところで話し変わるけどよ、結構前にベルが石化したんだが、一体何なんだ? あんた何か知ってんのか」と、無言のゴルギオンさんに、尋ねるイイキさん。


 ナナ「ちょっ!? イイキさん!?」


 「ええさっきのことでしょうか? 私の能力らしいのですよ」と、あっさりと応答するゴルギオンさん。彼女の顔に笑みが戻った。ただし不自然な・・・・・・。


 「やっぱりか! ゴルゴンって言えば、石化能力だよな! でもそうなるとどうやって発動したんだ? 作り話のセオリー通りなら、見たものが条件なんだろ?  生物にしか効かないとかも。あんたが外に出る前に、ベルが術に掛けられてたのが引っかかる」と、イイキさんは首を傾げて疑問をていした。 


 「お答え致しますよ。それとも直接見せたほうが早いかしら? 私の背後に飾られている水墨画をご覧なってください」と、ゴルギオンさんは、ナナちゃんの瞳に写っている墨で描かれた滝の絵に、平手で指し示し、振り向き語った。

 「それじゃあ視線をあなた達に戻して、『思い出し』ますよ。一瞬ですからまばたきは控えてくださいね」


 何のことかとわからないイイキさんとヘリック。

 

 石化した。水墨画とその周辺にある本棚やら壁が。

 彼女ゴルギオンさんが、ナナちゃん達の方に顔を向けて数秒たった瞬間に。


 「「ええっ!!!?」」


 「あら、うまく発動したみたいですね?」と、ゴルギオンさんは、彼女らの様子を確認した後、後ろの方を再び振りむいた。

 彼女の顔が、石に変換されたものに向けた時、刹那の時間すら待たずに、それらが元に戻った。


 呆然とする二人。ナナちゃんはお茶をすすって眺めていたが、少し戦慄の色を出していた。


 「もう理解したとお思いですけど、言いますね・・・・・・私の能力は、自分が思考にふけった生物・物体を、自分の恋愛対象者を除いて、なんでも石化しちゃうらしいの。数秒でね」と、悲しげに笑って、説明するゴルギオンさん。続けて「自分の意志とは関係なくね」とも。


 体の震えが止まらなくて、噛んでいたせんべいの破片を、カーペット中にぶちまけて怯えてるイイキさん。・・・・・・人の家を汚すな!!?


 「それは・・・・・・本当にお気の毒です。こんな能力を、魔王に掛けられてしまっては、とても生活できるなんて・・・・・・」と、ナナちゃんも、彼女の悲哀を察して同情を口にした。


 「いやそうでもないのよ!」

 パタンっ と、手を合わせ、さっきまでとの社交辞令的な笑みではなく、心から朗らかに微笑み返答するゴルギオンさん。


 「「「へっ!?」」」」


 「たしかに五年前までは、しょっちゅう『あなたの子また石化しましたよ』と先生から連絡を受け、頻繁に小学校に解除するために出かけたり。ご近所さんと井戸端会議してる時は、その時話した人達を石化していたらしくて、被害者の噂をしたことがバレたり。・・・・・・もうクレームとか解除勧告とか、半端がないくらい頻繁に来てたんだけどね」と、ゴルギオンさんは説明した。


 「・・・・・・クレームだけで済むんですか?」と、ナナちゃんはツッコんだ後、ヘリックは何か引っかかる、彼女の言語表現を感じて、それについて疑問を提示した。

 「ゴルギオンさん。あなた先程自身の能力を誤発動した際には、そのことについて『~したらしい』とかの曖昧的な表現を、何度も使用してましたね。その意図とは・・・・・・?」

 この偏屈アザラシ、勘がいいな・・・・・・。まあだてに高学歴名乗ってるわけないよな。


 「あら勘がいいですわね・・・・・・。では話題を変えて、その意図もお話いたしますね・・・・・・」


 ナナちゃんは、ヘリックの質問に、 ハッ とさせられた。


 「まあ申してしまえば、自分が石化の能力を持っているということに ピン とこないんですよ・・・・・・」と、照れて恥ずかしそうに、言葉を返すゴルギオンさん。


 「「「えっ!?」」」


 「だって、被術物の解除条件が、石化した対象物を、私の視界に入るとか、触れるとからしいの。人生で一度も自身が石化した物を感じたこと全然ないのです。

 ・・・・・・ちなみにそれなら一瞬くらいなら感知できるってお思いになるかもしれませんが、私の頭が、己を混乱しないように、自身の記憶領域が、何事もなかったように頭の映像等を再編集していて、ごまかしてるんですって。

 人外の体って神秘ですよね。一年前ヤハチ院長【実は微妙に変装した状態で、診察した】がそのことについて仰ってました。

 あら? 私だけ話し込んでしまったわね。ごめんなさい・・・・・」

 石化の能力について二つ程補足しとくけど、ゴルギオンさんの視覚触覚に感知されている途中の場合は、どんなに彼女がそれに対して思考に耽っても術が発動しない。逆に自分の目や肌が感知できない対象に関しては、思考が少しくらい曖昧さを帯びていても、差し支えなく発動する。

 


 「話題を戻させて頂くわね? ・・・・・・でも、ある時とある本に出会ったんだけどね、それがこれなの・・・・・・」と、語りながら振り向いて、本棚から一つの本を取り出すゴルギオンさん。ちなみに彼女が語っている途中で、その本が真っ白に染まり、彼女が振り向いた瞬間に、元の姿を取り戻してる。


 「これ! 『異世界の瞑想 ”禅” 』~!! これのおかげで、石化の発動が、信じられないくらいに回数が激減したの!」と、ゴルギオンさんは、彼女らに本の表紙を見せて、それはもう嬉しように語った。


 「どういうことなのですか?」と、彼女のハツラツさに、少し引き気味で、疑問を口にするナナちゃん。


 「私は思考し続けたものを、石化してしまう。でもこの資料を参考にして、今この場を、徹底的に集中し、雑念を振り払わせました。

 それから結果として、術の誤発動条件を満たさせなくする事に成功! 解除勧告が極端に少なくなったのがいい例よね!? 心が穏やかになれるわで、周りからの対応も全然変わったの! 

 異世界ってすごい瞑想法が有るんですね。もう『禅語』とか『禅問答』とかにものめり込んでしまいました。

 ドハマリしすぎて、先祖代々受け継がれてきたスカイエルフ神道の神殿を、座禅堂にしてしまったしでもう・・・・・・」と、ゴルギオンさんは長々と猛烈に語る。

 ※スカイエルフ神道・・・・・・マルウェーやギリスなどに、信仰されてきてる国教。


 ナナちゃんが、喋り倒すゴルギオンさんをよそに、例の本棚に収納されている本の背表紙を、眺めてた。・・・・・・ほとんどが仏法やら禅やら瞑想法やらについてで、彼女は脱力してしまった。


 「ゴルギオンさん! お話途中に失礼します!」と、前ヒレを挙げて、話しかけるヘリック。


 「ああっごめんなさいね。また長々話し込んでしまったわ・・・・・・なんでしょう?」


 目を輝かせて彼は「僕もその本らを拝読してもよろしいでしょうか!?」と、熱くお願いした。

 えっ・・・・・・?!

 

 「ええ、喜んで!」と、ゴルギオンさんが返事して、本を受け渡す。

 その様子を見ていたナナちゃんは、閉口できずに、その光景を眺めることしかできなかった。


 「いい加減にしろよ!! 今ものすごく大変なこと起きてっぞ!!!?」

 そう叫んで、ソファーからおもいっきり蹴っ立ってたのは、イイキさん。


 張り詰めた空気が、いきなり客間を満たす。

 驚いた顔を見せる彼女らを、睨んだイイキさんは、「思考に耽った物を、石化させる!? ふざけんな!! 何で高山病対策ごときに、こんな危険なリスクを背負ったんだ! 

 なんでゴルゴンの前に顔を出したんだナナ!! お前知ってたんだろ!?」と、激昂した。

 唖然とするナナちゃんの顔を確認しては、歯ぎしりをおこしたイイキさんは、ゴルギオンさんを、人指指で示し、「こんなチート能力・・・・・・あいつが仮にオイラ達を殺そうと思えば、いつでも石化できるわけだぜ!? どんなとこにいてもな! そのへんのことわかってんのか!?  恐ろしくねえのか!? ああっ!?」と、熱弁した。

 叫ばれたゴルギオンさんの顔は、悲しみに染まっていた。首を下に曲げる。


 「何今更なこと言ってんのあなた・・・・・・」と、なんでもないようにクールで対応するナナちゃん。

 その反応について、理解できないでいるイイキさんであったが。


 「ここ、超平和ボケしてるチート大国『マルウェー』よ? 最低でもウチの知り合いの中には、異世界の海とか召喚する悪党に、元素レベルで炎を操れる女の娘に、自分の創生した宝石を壊した者を、その場で問答無用で賠償さして、魔力ごと身ぐるみ剥げれることが出来るおじさんに、同時に千種類の魔術を発動させれる芸術家に、なんやかんやでその人達と肩を並べるくらいすごい量の水を操る文学者とか・・・・・・ってかあなたもだいたいのその人達と知り合いじゃない。

 こんなメチャクチャな人たちが闊歩する平和ボケした国で、いまさらゴルギオンさんに、顔を覚えられたとか覚えられないとか位で騒いで、アホらしくならないの?」と、ナナちゃんは、一笑付すように、説明する。

 ・・・・・・・・・・・・よくよく考えたらそうだよな・・・・・・こんなシッチャカメッチャカな国で、平気で暮らしてきたよなオレら・・・・・・。


 「・・・・・・そういや、そうだな・・・・・・」と、悲しくも納得してしまったイイキさん。


 「すみません・・・・・・ウチの連れが、あなたに失礼なことを言ってしまって・・・・・・」と、ソファーから立ち上がり、ゴルギオンさんに向けて頭を下げて、謝るナナちゃん。


 「いいんですよ! 気にしなくて・・・・・・」


 一旦黙っていたナナちゃんは、頬を赤らみながら「そこにある本、ウチも読んでいいですか?」と、尋ねた。

 「させねえよ! 冥読本蟲デスブックワーム!!」と、手の平を押し出しているナナちゃんを、蹴りで弾いて宣言したイイキさん。乱暴だけど、彼女にだけは渡しちゃダメだな。


 しばらくはしょげかえる彼女であったが・・・・・・。


 ナナ「いきなりですが、トイレお借りしてもよろしいですか?」


 「ええ。 玄関に一番近い部屋にあります。お連れ致しましょうか?」


 「いえいえ大丈夫です。では失礼します」


 ・・・・・・・・・・・・。


 「そういえば『あの子』、秋休みの宿題進んでるのかしら? 終業式から帰ったと思ったら、いきなり旅行に行きたい!! とか言い出して・・・・・・。挙げ句の果ては、制服のまま出かけていって、裾を泥まみれにしたり・・・・・・」と、ゴルギオンさんは、・・・・・・とある人物についてついつい考えてしまった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 


 場面変わります。トイレ前。ナナちゃんが、ゴルギオンさんに教えてもらったトイレのドアを開けた時、とある光景が表れた。

 そこには、自身のズボンとパンツをずらしている後ろ姿の男性なる石像が。・・・・・・年齢は高校生くらいであろうか・・・・・・。トイレの前で突っ立っていて、半ケツが拝めれる。


 「・・・・・・トイレの前に石像? 弱った、これじゃあトイレができないじゃないの・・・・・・」と、文句を言ったナナちゃん。続けて「・・・・・・でもすごいリアルだね。なんか誰かの知り合いの後ろ姿と酷似してるよ。・・・・・・いったい誰だったけ・・・・・・」と、語った。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





 嫌ぁああああああああああああああああああああああああああぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!!!!!!!!!!!!


 これオレじゃねえええかああああああああああああああああああああああああああああ!!?


 ・・・・・・女の娘に半ケツ見られた・・・・・・。・・・・・・なんかおかしいと思ったんだよね、トイレ入っている時、不自然に少しの間の記憶無くしてしまって・・・・・・。


 ・・・・・・そうだよ。読者の中にはお気づきになった人もいるかもっていうか、バレバレなんだけどそうだよ。オレのフルネームは、 ギン ゴルギオン。シロアさんってかおふくろは、オレの実母! つまりオレは、ゴルゴンと人間のハーフってわけだ。石化の能力はねえけどな・・・・・・。


 あと・・・・・・! いよいよ魔王戦編最初らへんで、オレが言ってたエピローグ・・・・・・ただ単に、オレとおふくろが、自分家で会話しただけを、作者がそのことについて超オーバーに曲解し、語り手用書類を書きやがった。

 初めて読む時何だこりゃと思ったぜ。


 それにしても・・・・・・ああ。まさかこんなタイミングで・・・・・・。ドア鍵かけとけばよかったああああ!! 来客なんて知らなかったんだから!!


 話の続きに戻る・・・・・・。

 「う~ん。ゴルギオンさんに許可得て、どかそうかな? ・・・・・・まだ大丈夫そうだし、たしかここ来た時に、公共用トイレ見かけたはずだから、我慢できる!」と、独り言を言った彼女は、踵を返し、例の客間の方に戻っていった。

 ・・・・・・せめてもの・・・・・・石像と勘違いしてくれてよかった。あと見られたのが後ろ姿だけとか・・・・・・本当に!!


 おふくろのいる部屋に戻ったナナちゃんは、ゴルギオンさんとヘリックが、話し込んでいるのを、目にした。イイキさんは黙ってせんべいをかじっている。


 「いやあっゴルギオンさんの好きな禅僧のエピソードは何ですか?」


 「武帝と達磨ダルマの問答でしょうかね? 最初読んだ時は、度肝を抜かれましたよ~」

 異世界のギリシャ神話で伝承されるという人外が、中国の王と、インドの坊さんの話について、熱く語ってたよ。


 「他にも好きなお坊さんは?」


 「白隠さんとか良寛さんとかかな?」

 髪の毛にヘビをうねらせ、石化能力を持つ人が、有名な坊さんについて詳しそうだ。


 「・・・・・・あの?」

 呆然としていたナナちゃんが、彼女らに声をかけた。


 ゴルギオン「ああナナちゃん。なんでしょう?」

 ヘリック「おお、ナナさん!」

 ・・・・・・あのアザラシ、ナナちゃんのことそんなふうに呼んでたっけ? キャラ変わってない?


 「その・・・・・・トイレありがとうございます。・・・・・・それでですね、仕事についてお話を戻してもよろしいでしょうか?」と、感謝を述べたナナちゃんは、語りながら自分の座っていたとこに再び腰を下ろした。


 「ええそうでしたね。いいですよ? 例えば?」と、前の態度と違って、すんなり快諾するおふくろ。


 「魔王の弱点とか」


 「そうですね~・・・・・・。脱ぎ散らかした服を折りたたまないとことか?」


 ナナちゃん「へっ!?」


 「他には、紅茶とか好きではなく、なんでも一人で背負う短所もあるわね。自分が召喚した生き物は、全部面倒見ようとするし、気弱だし、たまに背筋曲がるし、演技下手ですし、口喧嘩には極弱だし、・・・・・・」


 「もっ・・・・・・結構です・・・・・・」と、脂汗を一粒流したナナちゃんは、控えめに片手を前に押し出して、口にした。


 「あらそう・・・・・・? ごめんね。あまり役に立たないことばかりしか言えなくて・・・・・・」


 「あの・・・・・・今回の用件は、魔王についての情報収集だけではなくてですね、高山病を予防させる魔術を、あなたが会得していると伺っているので、・・・・・・もしよろしければウチたちに、その術を掛けることをお願いしたいのですが・・・・・・」


 「お安い御用!!」と、おふくろは、元気よく片腕を上げ、自信満々に答えた。


 「それでは、さっそく術を繰り出しますね? 皆さんトイレとか大丈夫ですか?」

 それについての返答は、ええ大丈夫です・別に・・・・・・とかの、返答が返ってくる。ナナちゃんは、うつ伏せのまま無言であったのだが。


 「呼びかけては何ですけど、すぐに終わりますね。では呪文を唱えます! 『大気の精霊よ、高々とそびえる峰々を越えさせるため、彼女らに~」と、詠唱を始めたおふくろ。 すぐに終わりますね の言葉に、安堵の息を放つナナちゃん。


 彼女らの座るソファー周りの床全体に、青色の魔方陣が出現する。鮮やかな光を放っていた。

 言っては何だが、彼女の詠唱している声のトーンは、なんか・・・・・・そう・・・・・・お経ぽかった・・・・・・。


 魔方陣の光が止み、数十秒で詠唱し終わったおふくろは、ナナちゃんたちに微笑み「終わりましたよ。これで、高い山に登っても、息が苦しむことはありません」と、説明した。


 「ありがとうございます! ウチたちは、急いでいるので、お名残惜しいのですが、失礼させていただきますね?」と、汗ダラダラで、早口に返答するナナちゃん。

 イイキさんは、このことに違和感を感じていた。


 舞台は、客間から玄関に移った。


 「では・・・・・・・・・・・・色々お世話になりました。ありがとうございました」と、杖とかローブなどを返してもらったナナちゃんは、おふくろに頭を下げて感謝を伝えた。ヘリックもイイキさんも同様に。


 「まあ・・・・・・無理はしないでね? やばくなったらすぐ逃げるのよ? 気軽にここに遊びに来てね。あなた達の無事を願っているわ・・・・・・」


 それから、彼女らは、ゴルギオンさんに背を向けて、歩んでいった。なんかナナちゃんが、切羽詰まった感じがでていたのだが。



 「おふくろ・・・・・・お客が来たのか?」と、その時のオレがトイレから出て、近くにいたおふくろに訪ねた。どうやらオレが今読んている書類によると、彼女の頭に這いずるヘビの一匹が、開いてあるドアの奥を眺めたのだとか。

 蛇の眼でも術が解除されるのか、初めて知った。 


 「ええ・・・・・・」


 オレはおもむろに、背を向けて去る人達を眺めた。

 「ナナちゃん!? イイキさん!?」


 「あら、ギン君の知り合い? なかなかいい人達だったわよ」


 驚きを隠せないままオレは、「何でナナちゃん達が、オレん家に・・・・・・? 炎精霊サラマンダー巣窟ハウスからは、かなり遠いはずだぞ? ここ」と、疑問を口にした。



 「勇敢で立派な人達よ。・・・・・・召畜魔王を・・・・・・倒すために、ここに尋ねてきたの・・・・・・」そう寂しげな顔で呟いていたおふくろ。


 その時のオレは、こみ上げてきた感情を、放つため、近くに設置してあった木製窓を開け、快晴で澄み渡った天空に向かって、おもいっきり叫んだ。



 












 「オレの親父じゃねええかあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっ!!!!!!!!?????????????????????????????????




 


 


 




 




 


 


 


 


 





 

 読んでくれてありがとうございました。

 禅に詳しい方、もし間違った情報を私が執筆した場合は、申し訳ございません。

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