この世界の情報
この世界のことをもっと聞いておいた方がいいだろう。
「マーサ、演劇っておもしろい?」
「うーん、まぁ聖書の中身をそのままやっているだけですし、そこまで見ていて面白いものではないですね。」
ふむ、まだ初期の聖史劇かな。
聖史劇の後期ではそれぞれ形式ばったものをなくしエンターテイメント性の高いものも現れていたはずである。
今のところまだ初期の聖史劇である聖書の視覚化が目的だったり復活祭などでのイベントでやっているものだろう。
ちなみに後期の聖史劇のエンターテイメント性の高まりによる娯楽化は教会から受け入れられなかったらしい、もったいない。
他に聞いておくべきは……
「吟游詩人ってしってる?」
「えぇ、最近は王宮でも盛んに重用されるようになってきていて、吟遊詩人の中でも宮廷付きの詩人になって一山当てようなんて人も多いらしいです。」
ミンストレルか?トルバドゥールだったか?彼等は厄介だな。
彼らも貴族の恋愛模様などを詠うのだ、『ピュラモスとティスベ』系統の話くらいはもう出ているかもしれない。
「どんなことを詠うの?」
「よく詠われるのは英雄譚ですね。」
……仕事しろよ、吟遊詩人!せっかく友になれる存在かと思ったのに!
その後も色々なことを聞いたが結局、村のお祭りに劇があるところも無きにしもあらずくらいの発展度合いだった。
まぁ何にせよ一番乗り出来そうじゃないか!
私は少し複雑な気持ちもありながらも確かに胸の高鳴りを感じた。
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私は気づいていなかった。
この事から何が予想されるかということに。
まだ貴族向けの劇などが出来ておらず、もしかしたらどこかに大衆劇があればいいくらいのこの世界ではまだ、劇団などの職業俳優などがいるハズもなくそして更に、舞台の装置すら確立されきってないということだ。
残念ながらこの時の私はとりあえず一番乗りで演劇界を開拓できるかもしれないとワクワクしていたので気づいていなかった。
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演劇の情報に夢中で忘れていたが魔法も有ったな。一応聞いておくか。もしかしたら迷信の類いかもしれないし、あまり期待はせずに聞こう。
そういえばまだ中世初期頃かもしれないからこそ魔女狩りとかもされていないのかもしれないな。
「まほうってなぁに?」
「精霊さまや神さまにお祈りして不思議なことを起こすものです。」
うーん、まぁ魔法だから曖昧だな。試しに見れればいいのだが、
マーサも使えたりしないだろうか。
「マーサも魔法使える?」
そう聞くとマーサは顔を赤らめ目をそらした。
「いえ、残念ながら私は使えないですね。」
怪しい、分かりやすく嘘をついている気がする。
「ほんとー?」
幼児限定魔法《|上目遣いの質疑》相手は(罪悪感で)死ぬ。
「くっ、つ、使えませんよ。」
まだねばるか、ならば
《上目遣いの質疑level2》
「マーサはぼくにウソつかないよね?」
説明しよう!《上目遣いの質疑level2》とは転んだ時の激痛(当社比)を思い出し涙の膜でうるうるeyeを作り威力を上乗せした魔法だ!ちなみに涙腺のゆるい幼少期しか使えない。
「ぐふぅ、萌え死……」
マーサが軽くトリップしている。これで聞き出せそうと思ったが
「ふ、ふふ、じゅるり……」
……これは一時撤退して後日聞き出しても遅くないな。今にも襲いかかってきそうなマーサを放置して逃げ出した。
ちなみにマーサは即死技である抱きつき攻撃をもっている。
マーサの胸は実際豊満であるため胸元で抱き締められると2つの意味で天国(heaven)が見れる。
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私はこの1年知識の吸収に努めていた。
そして、たまに思い出したように私の考えうる悪餓鬼のとりそうな行動もきちんととっていた。
きっと私の評価もうつけ息子くらい地に堕ちているだろう。
そうこうしながら3歳を迎えた。
遅くなりました。