魔物と勇者
安眠を取り戻してしばらくたっているが貴族らしい陰謀渦巻く社会の真っ直中ながら猶予期間なのか毎日平和そのものだ。
月の2つある世界、ここには地球とちがう不思議な現象やら突飛な生き物やらがいるのだろうか?そう、魔物とよばれるような物や魔法と呼ばれる力が。
そんな空想に童心を思いだし(現役一歳児)ワクワクした気持ちを感じる。
もしいるのなら見てみたいものだな。
前に誕生日プレゼントで貰った絵本を読みながらぼんやりとそんなことを考える。
やけに英雄譚が多いな、図鑑や歴史小説とかを寄越して欲しかったなぁ。
そんなことを考えていたのがいけなかったのかモンスターに屋敷内で遭遇してしまった。
私はこの屋敷を過信していたようだ、日々の安寧の中にいるうちに危機感を何処かに忘れてきてしまっていたのだ。
魔物は魔の物なのだ人をワクワクさせるだけの見せ物ではなく……
そのモンスターを見た私はあまりの恐怖にすくんでしまった。
そのモンスターはおよそこの世の物とは思えぬものだ。
禍々しく恐らく人間全てに憎悪され嫌悪され恐怖される為に生まれてきたのだろう。
私はこのモンスターの名を知っている。
異世界の異形でありながら見覚えのある魔物。
その名は……いや名前を言うことさえ忌々しい。
仮にGとでも呼ぼう、そいつは……
ブチっ
その魔物の禍々しさを心のなかで描写しようとしていたら
私の目の前で勇者の正義の鉄槌によりあっさりと撃破されてしまった。
正義は為された!!
「うへぇ、洗ってこよ。」
「マーサ、ほんとにありがとう。」
「あ、ちょっと履き物洗いに行きますから待ってて下さいね。」
勇者は颯爽と去って行った。
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あの火星に送られてもピンピンしてるどころか人のように進化してそうな生き物はなんなのか、私はマーサに尋ねることにした。
「あの恐ろしい生き物はなんだったの?」
「んと、あぁゴキブリンのことですか?」
なんか知ってるのと違う!
定番モンスターと融合してる。ここは異なる世界ではなく融〇次元だったのか!?
「名前、魔物っぽいね。」
「誰が名付け親かは知りませんが、皆が一目見て何故かすごく嫌って気持ちと恐いって感じるから魔物のような名前をつけられたのでしょうね。」
確かに例え世界が変わろうとあの生命体を愛してるとかいう奇特な方々はマイノリティーのままだろう。
「たしかに、まものみたいだった。」
「ふふ、魔物はもっと恐いですよ。」
まるで魔物がいるかのような口振りだな。
「まものなんて絵本の作り話でしょ?」
「いえ、森を歩けば倒してもキリがないほどいますよ。」
おお、ファンタジーだ!ハ〇ポタだ!指〇物語だ!
そのまま興奮ぎみに尋ねる。
「まほうは!?まほうもあるの!?」
「えぇ、ありますよ。」
さも当然のようにマーサは返す。
おお、ジーザス。宅急便も送れるじゃないか!
「イザーク様もお勉強されてましたでしょう?『勇者グルダフとドラゴン』とか『伝説の魔導師マールン』などの伝記で。」
ん、伝記?私が読んでいたのはただの絵本……
もしかして。
あの勇者が町を襲ったドラゴンを倒したり、魔法使いが旅をしながら人々を魔法の力で助けるあのベタベタな絵本の数々が全部……
実話?
次回は土曜日を予定しています。