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劇作家による転生劇  作者: アルヒトバルス
14/16

讃えある至純にして至高、完璧にして崇高なる魔導の淵源《入門編》

また遅れてすみませんm(._.)m

今日は生憎の雨だ。最近は晴れ続きだったから暑さもなく暖かいくらいだったが雨が降るとこの一帯の気温は過度に涼しくなるので家でのんびりする、ジュリウスとはもともと雨の日は会わない約束をしているので問題ない。


やることもないし一日メリーの屋敷をぶらぶらする予定である。一ヶ所に留まっていたらメリーのエンドレス朗読会が開演してしまうだろうからな、それだけは避けたい。


朝食の席で屋敷の案内を頼むとメリーは頼りにされたのがよかったのか嬉しそうにしていたが脇にいた侍女が悪夢えほんを抱えていたので実際は間一髪だったのだろう。


メリーと共に出来るだけゆっくりまわろう。



なぁんということでしょう!


広い屋敷の中で働く侍女の為に

考えに考え抜かれた匠の心遣いが随所に見られます…

この収納は腰の悪い老年の侍女の為に

扉が左右におおきく開きます…

暗くじめじめとした倉庫には上部に窓を付けることで

明るく快適に作業の出来る空間に…

まさに匠の光のコンダクターとしての本領発揮です。




劇的な口調で屋敷の設備を褒め称えメリーをクスクス笑わせながら散策した。昼飯を挟んで午後まで伸ばしたが広い屋敷とはいえそろそろ回り尽くしてしまう。


メリーは健康優良児だから夕食から風呂そしてお休みなさいの流れで寝てくれるがそれまでまだまだ時間がある。


このままでは余った時間でメリーは絵本を朗読するだろう、何故かメリーは朗読するのが楽しくて仕方ないようで飽きる気配がない。他に遊べるオモチャもないし当然の帰結かもしれないが。



考えろ、今日の安眠を守り抜く為に…

いや、まてよ逆に考えるんだ読まれる前に読めばいいさと



「そうだ!一方的に話を聞かされ続けるのは悪いから今日は私がお話を聞かせてあげよう!」


チラッとメリーを見たが目をキラキラさせているから悪い気はしていないようだ。


「さぁ、本を取りにメリーの部屋に戻ろうか」



と、メリーとお手て繋いで戻った訳だが


「メリーこの中から本を選んでいいのか?」


「うん」


今目の前にあるのは学級文庫程度の量はある本棚である。

…うちの方が爵位は上なのに本が少ないとはどうゆうことだろう?

しかも、図鑑や簡単な教育系の本とかもある。往々にして参考文献は割高の筈で一冊ごとに手書きらしいこの世界じゃかなりの額になるであろう本が子供メリーに与えられている。


「…お話し、だよな。」


「うん」


これだけの蔵書が目の前に有りながらも手に取れるのは童話の書かれた絵本だけ。

比較的低い位置にある童話を怨敵とばかり睨み付けるが表紙に変化は見られない。面の皮が厚い奴だな、装丁がしっかりした本なのだろう。その中から適当に一冊抜き取り目を通す。

パラパラとめくった感じとしては『トム・ティット・トット』いや、『がたがたの竹馬こぞう』によく似た話だ。


話の内容としては



貧乏な主人公の男が家にやって来た

ドワーフに奇跡を起こしてもらうが

その代償に大切にしている物を貰うとの契約を結んだ。


その日から畑を耕せばダイヤモンドが見つかり、道を歩けば金貨を拾うような奇跡が連続する。


しかし、男の元にはドワーフが契約を果たしに来なかった。


数年してから奇跡のお陰で人生はまさに順風満帆、美人と結婚して子供も生まれて幸せになっていた男の元にふらっとドワーフが現れ「対価に貴様の大切にしているその子供を寄越せ」と言う、男はそれはあんまりだと懇願する。


あんまりにも男がしつこいのでドワーフは「俺の名前を3日目の晩までに当ててみろ」と猶予期間を与える。


しかし、ドワーフの名前の手がかりなどはなく男は困り果てる。

自棄に成って飲みに行って、へべれけになり男泣きして周囲の人間に事情をわめき散らした。


後日、酒場にいて話を聞いたマールンと名乗る賢者から知恵を授けられ3日目を迎える。


3日目の晩ドワーフが訪ねてくる。


「さぁ、期日だ俺の名前を言って「さぁさ!ドワーフ様ようこそおいでくださいました!」


男はドワーフの口上を遮り宴会を始め酒を勧めるる。

ドワーフは酒を好むことで有名で例にも漏れずそのドワーフも

驚いたが「どうせ遅かれ早かれ子供は俺のものになる、俺の名前は分かるまい」と酒を飲んだ。


酔いに酔ったドワーフに男は歌いかける。



「さぁさ ここに おられますのは 奇跡おこせし


天下無双のドワーフ様だぁ ただの小人と 格がちげぇ!


そんな 偉大な 誰もが 尊ぶ 世に二つと無き


ご尊名こそ 」ここでドワーフに振り返り


「さぁ、ご一緒に!」



自分を讃える歌の途中で急に呼び掛けられ深く考えずに歌ってしまう。


「ルンパルシュッツハインである!」



しまったと思った時には遅く男はしたり顔で


「そうです、あなた様の名前はルンパルシュッツハインです。」


と言った。


ドワーフはハメられたが約束は果たされたので泣く泣く帰っていったとさ。






ふぅ、さしずめこの話の教訓は契約内容のご確認はキチンとしましょうってこととお酒は程ほどにって感じだろうか。

それと名前の神秘性とかの要素があるな。



…そういえば、マルーンって伝説の魔方使いの伝記で読んだな。

これも実話?いやまさか…まぁ今は関係ないな。


「メリーはこのお話しは好きかい?」


「うーん、ちょっと難しかった。でも、もいっかい読んで」


「もう1回?しょうがないなぁ」




その後めちゃくちゃ朗読した。6回目以降は数えてない。

喉が痛い、何故メリーはいつも無限リピートが出来るのか、不思議だ。



夕飯まで後少しあるってとこで肩に何か当たって意識を取り戻す。

ついさっきまで延々と同じ話を繰り返すスピーカーになっていた、人間としての自我すら忘れるところだったな。


メリーが隣で寝て寄りかかってきたようだ。そっと遠ざけメリーの部屋の枕を持ってきて寝かせる。


控えている侍女が「えー、微笑ましかったのに」みたいな顔しているが知ったことか。


目の前の本が読みたいんだ!


「すみません、この中から本を借りてもいいですか?」


「はぁ、奥さまとメリー様に夕げの席でご相談ください」


そうか、一介の侍女に高価な本を貸し出す権利なんてないか。焦っちゃいかんな。


仕方なくメリーの所に戻りそっと頭を持ち上げ膝枕をする。

こらそこのメイド、顔がニヤニヤしてるぞ。






そして夕飯の時間になってメリーを揺すり起こしたら少し意識があったのか直ぐにメリーは起きたが何故か嬉しそうにはにかんでいた。そんなに夕飯が嬉しいのだろうか?


そして、夕食の席でメリーに本を借りたいと申し出たらお母様が驚いた顔で


「いつも庭園で遊んでいるから本にはあまり興味がないものと思っていたわ」


知識欲はそれなりにあることが伝わっているが子供に本は貸せまいと遠慮してフィールドワークばかりしていたせいで専ら外回り派の人間と思われていたようだ。なるほど家に本が少ないわけだ。




本を借りれるというわけで夕食後にメリーの部屋にお邪魔する。

童話を読まねばならなかったので出来るだけ意識をそらしていたがこうしてじっくり見ると本当に多岐にわたった品揃えだ。



刺繍に詩集など女性の教養のほかに草花図鑑に神話の本、これはすばらしいな。


私は端からそれらを見ていったが中でも目についたのは

『讃えある至純にして至高、完璧にして崇高なる魔導の淵源《入門編》』


…名前が大仰すぎる。


だが魔法には興味がある、舞台の演出装置に使えるものもあるかもしれないのだ。


高価な本を沢山借りるのははしたないので一冊に絞る気でいたが悩ましいものだな。



…しばらく悩んだがこれに決めた、草花や詩集なら頼りになる我が侍女長殿に聞けば何とかななるからな。



メリーにこの長ったるい名前の本を借りると言って部屋を出る。

メリーは既に夢うつつであったのでこくこくと頷くだけだった、因みに現在は午後6時半くらいである。



これから部屋に戻り早速読んでみるとしよう。


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