大きなおともだちができました。
変態ってむずかしい
その男は暗くこじんまりとした部屋にいた。
その男はキロリミ・マリアベル。
伯爵家 マリアベル家の現当主である。
その男は興奮していた。
いつもの彼なら余興に水を差されたことに腹を立て不機嫌になっていただろう、が今の彼はホールで泣いてる子どもを少し困った顔であやす少年を応援することでいっぱいだった。
こどもがお使いをする某テレビ番組をご存じだろうか?小さい子どもが万難千苦の果てに目的のブツを仕入れてくるあの人気番組である。
子どもというのは元来その生存本能としてある程度みんな可愛く愛くるしい姿をとり、大人に守ってもらおうとするものだ。
そして、お使いでなくても何でもいいが子どもが頑張る姿に大人はその保護欲をそそられてしまうのだ。
そうして今この男も例外ではない。
「……余興の邪魔をされたのに応援してしまった。これは是非ともおともだちにならねば。」
今まで幼稚な下心しか満たせていなかった男にとってこの見守ることで得られる、云わば親や大人の特権は新鮮で鮮烈に感じられる物だった。
鼻から流れる血液を拭い獣から紳士に生まれ変わった男はホールへと降りていく。
____________________
友情はぶどう酒である。新しいうちは口あたりが悪いが、年月を経て熟成されると、老いたものを元気づけ若返らせる。
誰の言葉かはうろ覚えだがアメリカの偉い人だったような……この世界にグー〇ルは無いのでお手数ですが皆様にお任せします。
さて、私ですイザークです。
今、友達が出来て少しテンションが上がっています。
いや、子どもが苦手と言いましたが現時点では同い年ですし、今後一人も友がいないのはさみしいかもしれないし、この場は友達を作る場だそうなのでその主旨に沿った行動をとるのはやぶさかではないかもしれない。
……いや、失礼、取り乱してますな。
実は私前世での盗作問題の時にも支えてくれる人が居てくれたらなどと一歳のまだハイハイも上手く出来てなかった頃にちょっと、ちょびっと考えたりしていまして……実はほんの少し私は寂しがりな所がなきにしもあらずでして。
ですが友達は大事なものだとしてもやたらに増やせばいいというものでもなくキチンと選ぶべきだというのが私の持論です。
例えば目の前にいるような「ふひゅー…ふひゅー」と荒い息をつきながらまるで絵に書いたような不審者スマイルで
「お、おじさんと、お、おともだちにならないかな?」
とか言ってくるような奴は有り得ません、論外です。なんでこの屋敷に変態がいるのかは分かりませんがこういう時は大人に頼るのが一番確実でしょう。
「お話していいか聞いてきますので周りの子どもに話しかけずに隅の方で膝を地面に着けて両手を頭の後ろに回して大人しく待っててください!」
それだけ言ってマーサの方に全力で走る。
「マーサ!あれだ!ふしんしゃさんだ!110…いや、衛へ…むぐっ」
マーサは慌てて私の口を塞ぎ耳打ちする。
「あの不審者に見えるかもしれない人がマリアベル家の当主様ですよ!」
なん、だとアレが?ここの婦人会の会場を提供したマリアベル家の当主だと……あのロリコンかショタコンかペド野郎の3択の何れかには確実に該当してそうな見るからに明らかな変態が?
「おーい!イザークく~ん!」
変態の声がする。
律儀に言いつけた姿勢で待っているがかえってその異様さに周りの子どもが涙目になってる。
また泣き出されたらたまらないので嫌々ながらも引き返す。
「はい、なんですか?」
「お話は終わったかな?それで……僕とおともだちになってくれないのかい?」
明らかに作り物だと分かる悲しげな声を出しはじめた。
嫌だという本音を言うのは簡単だが腐りに腐っても貴族なのには変わりはないので仲良くなるのも悪くはないではないだろうか。
そんな葛藤を続けていると近くにいたメリーが変態を憐れに思ったのか小さな声で
「わ、わたしで…」
これはマズイ、わたしでよければなどと言うつもりだろう。
彼女は私の初めての友人である。そして今その子が変態の毒牙に私の替わりにかかりかけている。それはあってはならない!
この間0.1秒
そしてメリーの声をかき消すように言う。
「わかりました!友達やらせていただきます!」
「お、おぉ、ありがとう、よろしく!」
大きな声に少し驚いたようだが、彼は嬉しそうに手を差しだし私と握手をした。
メリーは少し所在なさげにしたあと発言をキャンセルしてくれたようだ。
この一幕の後、今回のおともだちをつくろうイベントは終了して、屋敷に帰った。メリーとも再開の約束を友達としてしておいた。
その日の晩、
新しくできた友達二人を思い返し、グダグダと「まだ幼女だから友達(仮)かもしれんな、もう一人も変態じゃないか」等とニマニマしながら独り言を言っていた少年がいたそうな…
リアルにてGが現れました。
やはりあれは魔物ですね、上半身を完全破壊してようやく活動停止させることが出来ました。
後処理も嫌悪感が半端なかったです。