旦那(無愛想)と嫁(可哀想)と風呂(でする事)
今回は台詞のみで。
「ただいま」
「恭ちゃん。おかえりなさい。仕事お疲れ様」
「疲れた。飯は?」
「ご飯? 出来てるけど、もう食べる?」
「ん、食う」
「でも汗かいてるなら先にお風呂入ったらどうかな」
「あ? 俺が飯っつってんだから先に飯に決まってんだろ」
「そう? ごめんね」
「いいから早く飯」
「はーいはい。ちょっと待っててね、すぐ用意するから」
・
「お待たせ」
「遅え」
「ごめんね。お腹減ってた?」
「減ってるから食うんだよ」
「それもそうだね。はい、味噌汁」
「ん」
「ダシ変えてみたんだけど、どうかな? 美味しい?」
「悪くはない」
「本当?」
「不味かったら食わねえし」
「ありがとう。じゃあ今度からこれにするね」
「お好きに。…………これ何?」
「あ、それはねお隣の山田さんがお裾分けしてくれたゴーヤで作ったゴーヤチャンプルーだよ。山田さん沖縄出身なんだって」
「ふーん(もぐもぐ)」
「気に入ったの?」
「まあまあ」
「よかった。山田さんに会ったらもう一回ちゃんとお礼言っとかないとだね。何かお返しした方がいいかな?」
「さあ。知らん」
「ううーん」
「つか、何かって何あげる気だよ」
「だから今、それを考えてるんだよー」
「あ、そ。ごっそさん」
「はい、お粗末様でした。今日も沢山食べたねえ。毎日作り甲斐があるよ」
「おい」
「あ、お茶だね」
「ん」
「今日ね。山田さんにいいお茶っ葉ももらったんだよ。はい、どうぞ」
「ん。はふう…………」
「なんかね、旦那さんが静岡に単身赴任しててしょっちゅうお茶を送ってくるんだって。それで余っちゃうからってお裾分けしてくれたんだ」
「ほー」
「恭ちゃんも山田さんに会ったらちゃんと挨拶とお礼してね」
「いいけど俺、山田さんの顔知らんよ」
「ええっ? お隣さんだよ? なんで知らないの?」
「会った事ねーもん」
「お隣さんなのになんで? 私、毎日会うよ?」
「ふーん。で?」
「え? あ、えと、聞き返されても困るんだけど………」
「あ、そ」
「………………」
「………………」
「………………」
「………あれ? 話終わっちゃった?」
「さあ。つか風呂入る」
「あ、うん。なんか釈然としないけど……………タオルと着替えはいつものところに置いとくね」
「ん」
「また上半身裸で出てきちゃダメだよ? ちゃんと服着てね」
「かったりぃ」
「ちゃんと着なきゃダメ。風邪引いたらどうするの?」
「そんときゃそんとき」
「もうっ。もし裸だったら無理矢理着せるからね!」
「はっ、やれるもんなら是非どうぞ」
「本当に着せるからね!」
「うっさい。わかったから早く入らせろ」
「あ、ごめん。行ってらっしゃい。よく暖まってね」
「ん」
・
「上がった」
「あ、今日はちゃんと服着てるね。偉い偉い」
「……………(服の裾に手をかける)」
「なんでわさわざ脱ごうとするのー!?」
「自分の胸に聞け。その薄っぺらな胸に。…………おふっ(殴られた)」
「胸は関係ないでしょー!!」
「あるかもしれん」
「ないよ!!」
「いや、あるかもしれん。お前の胸がこれから成長する確率くらいは」
「ない!! …………ちょっとある」
「微かな可能性にすらすがらないといけないとは可哀想な胸だ」
「可哀想とか言うなーっ!! その可哀想な胸の女と結婚したくせにー!」
「可哀想な胸のおまえと結婚したからといって俺まで可哀想だとは限らない…………まあ触る楽しみはないが」
「今なんか言った! 今なんか小さい声でボソッと言ったー!」
「クククククク」
「なんか悪い笑い方で誤魔化されたー!?」
「なんなら俺がでかくしてやろうか? ん?」
「極めて手付きが怪しいよ!?」
「ククク、俺は変態なんだ」
「自分で言った!」
「大丈夫だ、優しくしてやる」
「イヤだよ! そんな優しさいらないよ!」
「ならば激しく」
「それもイヤです!」
「ならば怪しく」
「物凄くイヤです!」
「どうしろと」
「どうもしなくていいです!」
「阿呆。それじゃつまんねえだろ。もっと遊ばせろ」
「私、遊ばれてたの!?」
「俺は遊びにこそ全力を尽す主義だ」
「ええ!? もっと他の事頑張ろうよ!?」
「物事には優先順位というものがある」
「これが最優先事項ですかっ」
「当然だ。俺はこのために生きてると言っても過言ではない」
「もっと有意義な生き方があるよう!!」
「あるわけないだろう」
「あるよう!」
「つーわけで布団行こうか? な?」
「一足跳びに!? 私、まだお風呂入ってないのにー!」
「問題ない。臭くてもちゃんと愛してやるからな」
「く、臭くないもんっ!」
「なら尚更問題ないな」
「ああっ!?」