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何かが砕け散る音が響き渡る。
ああああが机を殴りつけたことによる音だ。銅の剣と100G。この見覚えのあるものを見て怒りが頂点に達したのだ。
その怒りの一撃に耐えきれなかった机は無残にも破片をまき散らし、その姿を木片へと変えた。机の上に置いてあった銅の剣と100Gが宙を舞う。
ああ妹にぶつかったら大変だ。
ああああは手を伸ばし、宙を舞う銅の剣と100Gを掴みとる。
くるりと回る剣の持ち手を掴みとり、お金の袋を反対の手で受け止める
目を丸くして驚く妹が視界に入り少々罰の悪そうな顔をしてああああは椅子に座る。
俺だけではなく妹まで巻き込みやがって。あの糞野郎どもが。
俺はまあいい。まだ許せる。だが妹がこんな危ないものに巻き込まれたのだ。奴らへの怒りや恨みは膨らんでいく。
だが妹にそれを見せることはない。いったん軽く息を吸い調子を整える。
「すまない。……お前も選ばれたのか」
ああああは謝った後に妹、アア・あい愛称アイにむかって真剣なまなざしを向ける。
それを受け止めたアイはなぜ選ばれたとわかったのか、なぜ怒っているのかわからず混乱しながらもこたえる。
「そうだよ。お兄ちゃん。勇者候補にえらばたの」
その言葉にああああは怒りを強める。たった一人の家族が危ない目にあうかもしれないのだ。可愛い妹にそんな命令を下した王への憎しみは今までよりさらに強くなる。
王への報復を考えるああああはアイの言葉によっていったん思考を中止することとなった。
「お兄ちゃん。お前もって言ったよね。それってもしかしてお兄ちゃんもえらばれたの?」
かわいく首をかしげてそう尋ねるアイ。苦々しい顔をするああああ。
そうだ強制的に勇者候補にされてしまったのだ。軍事大臣のお墨付きで。
「ああそうだ。だが俺はお前を守るために戦うからな。王の命令で戦うのではない」
こうでも思ってやらなきゃやってられない。それに妹を守るために戦い死ぬのは本望だ。
それがああああの考え。もしああああが死んだらアイが悲しむということは一切考えられていない。だからアイは自分のために戦うと言った兄に対して口答えをする。
「守ってくれなくていいもん。お兄ちゃんは自分のために戦って。私は強いんだよ。魔法をばびゅーんって使えるんだから」
だがああああはいい顔をしない。ただ自分を安心させるための妹のでまかせだと思っているからだ。
それならとああああは一つ提案をする。
「パーティーを組もうじゃないか。仲間を見つけてさ。いくら強くても勝てない敵とかがいるだろう?」
そのああああの言葉にアイはうんうん考え込みやがて顔をあげる。兄と同じ黒い瞳が光ったかのような気がした。
「じゃあ私、仲間にするの魔物がいいな。たしかできたよね」
アイのその言葉にああああは絶句する。なるべく危険から遠ざけたいのに危険を仲間にしようと言い出したからだ。
「おい。俺はマッチョな格闘家とかがいいんだか。壁になるだろう」
とああああが言うもアイは聞かない。
「魔物ってかわいいもん。マッチョって熱くるしいじゃん。お兄ちゃんはホモなの?」
理由を言ったはずなのに勝手にホモ扱いされたああああは落ち込む。目を少し輝かしてそう言ったアイに精神的なダメージを負うが何とか言葉を振り絞る。
「じゃあ壁になる魔物がいなかったら格闘家な。異論は認めない。それに俺はホモじゃない」
すこしがっかりした様子のアイ。だがそれもかわいいなと思ったああああは仲間を探すためアイを連れて酒場へと足を運ぶことにしたのだった。