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 豪華絢爛に飾り付けられ、来るものを歓迎する王城。

 今日はここにアア・ああという少年が招かれていた。普段はああああと呼ばれている。彼はもともとこのような場所に来られる身分ではなかったが、国の軍事を司る大臣に見定められたことで、招待されたのだった。

 王の座る謁見の間、ああああは膝をついて顔を伏せている。王様って太ってておなかぷよんぷよんだったよなと不敬なことを考えながら王が口を開くのを待っているのだ。

 

「よく来たああああ。さっそくだがお前には魔物を退治してもらいたい。もし成果を上げれば勇者として扱ってやる。さあ目の前の箱を開けるがよい。選別だ」


 咳払いをしたあと一方的に投げつけられる言葉。王の言葉は絶対。彼には断ることができない。おもむろに彼は顔をあげる。

 黒い短めの髪が軽く揺れ幼い顔が箱を見つめる。

 ああああは箱を開ける。そこには一本の銅の剣と100Gが入っていた。

 ああああはそこで噂を思い出す。国が魔物退治のために勇者にあこがれる子供を集めていると。まさか自分が呼ばれしかもこんな劣悪な条件だったとは思わなかったが。

 100Gなど一週間宿に泊まればなくなってしまう。ああああは家があるのでそこは何ともないが。

 彼は勇者にあこがれてなどいない。むしろ農民になりたい。だからこそこれは仕事だと考え王様に疑問を投げつける


「すみません。給料などはでるのでしょうか」


 その言葉に王は眉をしかめ、ぴしゃりと言い放つ。


「そんなものはない。勇者という名誉が与えられるかもしれないのだぞ。さあもう行け」


 ああああはそのまま近くにいた兵士に連れ出される。

 子供に夢を見させての使い捨て。反吐が出る。

 行きは豪華だと思った廊下も今は悪趣味としか思えない。そんな考えをしていると後ろから声がかかった。

 

「やあ。いろいろすまなかった。だが僕は君に期待している。だからこれを上げよう。ほかの人には内緒にしろよ」


 そういって腕輪をくれたのは軍事大臣その人だった。人の良さそうな笑みを浮かべ軽く頭を下げあやまる。だが自分をここに招待したのは彼なのだ。

 ああああは地獄に落ちろとも思ったがまあもらえるものはもらっておく、と腕輪を受け取る。

 腕輪はつけると体が軽くなった気がする。きっと身体強化の魔法でもかかっていたのだろう。

 一応ありがとうとお礼を言ったああああは大臣がいなくなったのを見て少々無礼だったかなとも思った。があんな奴に礼儀なんてどうでもいいかとほうっておくことにした。そしてふとある考えが頭に浮かぶ。

 ある考えそれは勇者になれなかったら魔物との戦いで死ぬ。なったら名誉の勇者。ならば悪事を働いてもうまくいけば許され、うまくいかなくてもどっち道死がまっているから関係ないというものだった。あの気に食わない王や大臣に一杯食わすことができる。

 彼の笑いが廊下に響いた。この国では悪事の大半は死罪なのだ。

 ああああ、素早く行動した。ああ、クソ大臣様腕輪をありがとう。そう思いながら。

 さすがに城の宝箱はカギがかかっている。なら適当な部屋から使えそうなものを盗めばいい。

 だからまずは適当にそこらの部屋をあさる。

 そこはどうやら資料室のようだ。

 ああああは大量の本棚にあるものから適当に魔道書とかかれた本を掴む。売れば高く売れるだろう。そう考えて。読む気は今のところない。魔力はあるが多いというほどではないからだ。簡単なのらもう覚えている。何冊か適当に見繕った後、部屋を後にする。

 次にああああは謁見の間からは離れた侍女や料理人のくらす場所へ侵入した。

 料理人の私物だろうか、銅の剣よりも切れ味がよさそうな包丁を一つ盗み侍女の部屋のタンスから盗んだパンツをお礼としておいておく。

 あとは適当にお金を抜いておき颯爽と城を抜け出す。

 勇者になればこれらの罪もなくなる。

 にやつくああああを見た門番はああまた哀れな犠牲者が増えたのかと送り出す。

 それが勇者になれるから喜んでいるというのとは違うということに気が付くはずもなく。

 これがのちに世界を揺るがす勇者ああああの誕生の瞬間だった。

 

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