同じ画面(自販機編)
掲載日:2026/02/09
手がかじかむ。
それでも、握った硬貨は冷たい。
行列が、ようやく僕の番になった。
目の前に立つ、少し古びた自動販売機。
この寒い季節でも、Coldの商品が並んでいる。
僕が欲しいのは、当然Hotだ。
束の間でいい。安らぎが欲しい。
目当ての「ゆずはちみつ」を見つける。
硬貨を入れると、ランプが灯った。
ボタンを押す。
ガコン。
トゥルルルルル……
僕は、ゆずはちみつを取り出した。
チャララン♩ チャララン♫
思わず、周りを見た。
同じ安らぎを求めて並んでいた人たちの視線が、こちらに集まる。
「あ、あの……当たったみたいなんで。お好きなの、どうぞ」
次に並んでいた女性に声をかけた。
今度は、その視線が彼女に移る。
女性は少し困ったように笑って、
同じ自販機を見上げた。
「じゃあ……これ、いいですか」
指さしたのは、同じ「ゆずはちみつ」。
僕は、うなずいた。
取り出し口から、もう一本。
湯気が、二つ並ぶ。
彼女は軽く会釈して、列を離れた。
僕も、その後に続く。
振り返らない。
理由は、まだない。
自販機の前では、
次の人が、同じ画面を見ていた。




