小豆洗いちゃんが出会った人達
熊の村長
彼等から管理を任された湖の真ん中に鎮座する屋敷へ向かい、空気を入れ換える。
空気の入れ換えなど必要ないくらいに、この屋敷は、生きている。
呼吸をし、主の帰りを待っている。
それでも窓を開き空気を入れ換えれば、力が抜けたように心地好さそうにしているのは感じる。
「……」
掃除もするけれど、不思議なほど埃は少なく、
「不思議ですねぇ」
テラスで休憩させてもらいながら、魚がハネるのを眺める。
彼等が訪れ、この屋敷を買い。
友が出来た。
小さな人の子供の形を模した遠い山の主と、その彼女の従獣と、人の男。
そして、東の山の主になったばかりの小リス。
あの小さな山の主が、友がいないとぼやいた自分を、気に掛けてくれていた。
東の山から使いが来た時は、とても驚いたけれど。
遊びに行ってみれば、大きな山の小さなリスは、この変幻だけに長けた自分を歓迎し、そして年だけを無駄に重ねた自分を、とても慕ってくれ。
「鳥に運んで貰えればあっという間なのです」
と、小さな身体の利点を生かし、度々、笑顔で村に遊びに来てくれる様になった。
それだけでも嬉かったのに。
「あらぁ、あなたが噂の村長さんね」
随分と男前じゃない、と現れたのは。
「お、おぉ……」
その吸血鬼1人に対し、荷は3台。
一見、人を模した従獣たちの牽く馬車を、荷馬車を引き連れて村に現れた。
「えぇ、私はご覧のとおり吸血鬼よ。見境なく襲うわけじゃないから安心して」
知能も知性も高そうだ。
人間の女性としての外見は、バイタリティーに溢れる、魅力的な人物であり。
村の男たちも、その魅力に早くもチラチラと足を止めている。
「あの子から聞いたのよ、お友達を欲しがっている友人がいるって」
あの子。
訊ね返すまでもなく、
「彼等は、お元気でしたか?」
「元気、元気。“彼”には最後まで警戒されちゃったけど」
うぅんと悩ましげに眉を寄せている。
彼。
あの少女の人の従者は、従者として、とてもよく出来た男だったけれど。
なぜだろうと内心で首を傾げていると。
「あなたも、変幻に長けているのねぇ」
凄いわねと感嘆の吐息を漏らされた。
「いやいや、私は変幻しか出来ない、それも山の力なのです」
自分自身の力は、何もないのだ。
「なによ、山に選ばれてるのよ、自信を持ちなさいな」
長く絹のような髪を背中に払う吸血鬼は。
対面しても尚、非常に読みにくく掴みにくい者ではあるけれど、何より、あの彼等の紹介だ。
それは、信用が置けると同義。
「改めてようこそ、小さな村へ。この村の村長を名乗らせて貰っています、どうぞよろしくお願いいたします」
片手を差し出せば。
「堅い、堅いわよ。私たちもう友人なんだから、敬語もいらないわ」
とは力強く手を握り返してくれる。
その体温はとても低い。
見た目からして人の女を取り繕っている「レディ」に失礼な物言いつつとは承知で。
「あなた様の方が年が“若干”上ですので、さすがにため口は……」
躊躇すれば。
「なぁに言ってるのよ、あの子に比べたら私達なんか胎児よ、胎児」
胎児。
赤子ですらないのかと笑ってしまうと、
「そ、ほらね、同じ、おんなじ」
吸血鬼も、うふっと、低音で喉を鳴らす。
その空気を通して伝わる音は、耳を通して身体の奥底に届く。
見た目、動き、言葉。
1つ1つが、人を魅了する力を持っている。
そして見た目こそ、人の女そのものだけれど、中身は若干男よりのようだ。
あの少女の従者の彼に警戒されたと言っていたけれど、彼は吸血鬼の男の部分を過敏に嗅ぎ取り、警戒をしていたのであろう。
その吸血鬼の従獣は、寡黙な白い蝙蝠だけれど。
「その、あなたの従獣は、どこかにぶら下がらなくて平気なのですか?」
まるで鳥の様に肩に留まる蝙蝠。
「従獣の特権よ。あのタヌキちゃんも人と同じように食事してたりしたでしょ」
あぁ。
そうだ、彼も。
「うちの子と仲良くしてくれてね、この子、珍しく別れ際に落ち込んでいたのよ」
この子の伴侶探しのために旅を始めたのよと、長命種ならではの暇潰しであろう。
「お世話になりたいのだけれど?」
と小首を傾げられ。
「立派な宿はないのですが……」
小さな村は、主に行商人や旅人が1泊していくだけの止まり木の様な土地。
「勝手に押し掛けて来てるだけなんだから気にしないで」
それでも厩舎も荷台置き場も吸血鬼の荷だけで半分は埋まる。
その吸血鬼は、実際は熊である村長を名乗る自分の変幻の力、だけでなく、村長として村に居続けるその在り方、人々に“錯覚をさせる”山の力に非常に興味を持ち。
「凄いわ、この山の力は、村の人間の感覚をも、やって来る行商人、気紛れに訪れる旅人をも騙くらかすわけでしょ?」
なんて力なの、と窓から山の方に目を向け。
「結界に近いものなのかしらねぇ」
謎解きをしつつ荷解きを終えた吸血鬼を、彼等の屋敷の見える場所まで案内すれば。
「へぇー、いいロケーションじゃない、ちょっとちっちゃいけど」
小さい。
湖畔の真ん中に浮く建物としても村の建物と比べても大きいと思っていたけれど。
「小さいわよ、私ならこの3倍は欲しいわ」
吸血鬼の荷が多い理由が解った気がする。
「私も新しく別荘を持ちたいわ」
腕組みして、肩に留まる従獣と頷き合う吸血鬼に、あの建物からは、主が不在でも、絶えず呼吸を感じると疑問をぶつけてみれば。
「あら?」
吸血鬼は、そんなことある?とは言わず、辺りを見回して、静かな波打ち際へ向かうと、躊躇なく高いヒールのまま水辺へ入ると、屈んで指先を水面に突き立てた。
「……」
「そうね、あの彼女が、何か彼女自身の一部を、髪かしらね、を置いてるのよ」
髪を。
「それに、ドレスなんかも置いてるだろうから、呼応して屋敷も起きてるのよ」
髪と、脱ぎ捨てた衣服のみで。
屋敷を、絶えず呼吸させている。
「彼女は……あれは、“何に”当てはまるものなのですか」
東の山のリスも、この力の強い吸血鬼も、しかしその根本は、源は、自身と同じものを、流れを感じる。
けれど。
あの人の少女を、幼子を模した“何か”は。
「そうね、人でない私達でも警戒する“何か”よね」
「えぇ」
あまりの差に、そもそも逆らう気など起きず、自ら助けを求める程の。
「でも彼女は、私達にはおろか、人にも、何をしようとはしないわ」
「……あぁ」
そうだ。
むしろ、何でも“出来る力”があるのに。
「お人好しなくらいよ」
「その通りです……」
なのに、どうしてか。
彼女たちがしてくれたことの功績の大きさ、感謝は尽きないのに。
離れれば、時が経てば経つ程。
「おぞましい、恐ろしい何かが、記憶として一番始めに現れてしまうのです……」
責められるのを承知で口にすれど。
「そうね。それは人でもない私達にすら存在する強い本能なんでしょうね」
吸血鬼はそれを責めることもなく。
「本能」
「そう、単純にね、彼女が怖いよの」
怖い。
確かに、言い逃れは出来ない程に怖いけれど。
「いや、何とも、彼女に申し訳ない……」
こんな気持ちを持ち、真っ先に悪夢の様な感覚が芽生えてしまうことが。
「大事な感覚よ」
大事。
「彼女を怖いと思わなくなったら、もう、感覚が鈍くなってる証拠、それはあなたが消える時が近いのよ」
「……」
「彼女は、人とは勿論、私達とも、全く違う存在なのよ」
理解しようと思うことが間違っていると。
「そうよ。あなたはこの屋敷を守り、ただ彼女たちの帰りを待てばいいの」
吸血鬼は2泊し、村の男たちを魅了してから、ただ手は出すことなく。
酒を酌み交わし。
「帰りにまた寄るわ」
「えぇ、お気を付けて、帰りをお待ちしています」
「うふ、ありがと」
お土産期待しててねと、吸血鬼は手を振って荷馬車と共に進んで行く。
従獣も、軽く羽根を広げ挨拶してくれる。
「お早いお帰りを、お待ちしております」
また、大事な友たちが増えた。
ーーー
研師の女
「ありがとう、また頼むよ」
「もう少しマメに来なよ」
「あぁ、次は遠慮なく頼みに来るよ」
長年、こちらの体調を気遣ってくれていた常連の客を見送り。
研いだ石の水を流すと。
「休憩にしようか、その前に散歩かね」
ドアの隣にあるソファに寝そべる狼に声を掛けると、散歩の単語に尻尾を振ってソファから飛び降りた狼は。
「……」
開いた扉から、外を眺めている。
「なんだい?」
獣の勘は馬鹿に出来ない。
扉の外に出ると、
「ピチチッ」
その小柄な身体に似合わない大きさの金筒を着けた小鳥が、
「ピチーッ」
到着!
と言わんばかりに地面に降り立った。
「……おや、うちにかい?」
「ピチチッ」
そうらしい。
「奥においで、ビスケットしかないけど」
「ピチ♪」
仕事用の机の上に飛んできた小鳥の足首の金具を外して奥のキッチンへ向かう。
(……これは、茶の国の模様だね)
小振りで気の強く頑丈な桃色小鳥は、目玉が飛び出る程度には金額が張る。
あのじじいと届け先を間違えた?
そんなはずはないかと思いつつ中身の手紙を広げると。
「……なんだい、もうっ」
思わず声と笑いが漏れてしまう。
送り主は、あの不思議な旅人たち。
『彼女があなたに手紙を送りたいと言ったため、筆を取っています。
こちらは無事に茶の国へ着きました。
お身体の調子はどうでしょうか?
異常や異変はありませんか?
こちらは、至って元気です。
彼女も彼も、パフェと言う食べ物や、甘くないブレーツェルと言うビスケットに夢中になり、森では元気に駆け回り、多少元気が過ぎるところもあり、ただ付いていくのに必死です。
季節は、そちらの温暖な気候が懐かしくなる冷たい風で、しかし落ち着いた街並みや人々は、謹厳実直なあなたにも、とても肌に合いそうな国だと思いました。
狼は大きくなりましたか?
こちらは茶色い狼が多く、凛々しくも人懐っこく、やはり、こちらに一度来てみることをお勧めします。
順番が前後してしまいますが、あなたの恋人のお陰で、大変に快適な船旅が出来ました。
彼にも礼を伝えて貰えたら幸いです。
自分達はこれから、更に遠くの国へ向かってみます。
一方的なものにはなりますが、また手紙を送ります』
2枚目には、あの可愛い小さな子と、可愛い狸の描いた絵。
「あぁ上手だね、よーく描けているよ」
直接伝えられないことが、もどかしい。
けれど、んふーと得意気に笑う娘に、フーン♪と半目になる狸が想像できる。
「これは、大事に飾っておかないとね」
宝物だ。
「ピチチ」
甘味を寄越せと小鳥。
「おっと悪かったよ」
ビスケットを啄む小鳥を見ながら、
「……少し早めに、行ってみようかね」
行った先に、あの子たちはいなくても、あの子たちが見た景色を、自分も少し見てみたくなった。
「おお、愛しのハニー、休憩だったかい?」
ドアが開く音と共に、恋人が、大袈裟なリアクションで顔を覗かせてきた。
「その呼び方はやめてくれっていつも言ってるだろう」
眉を寄せつつ、つい笑ってしまうと、
「ご機嫌で僕も嬉しいよ、んん?」
小鳥と、金筒に目を留める。
「あの子たちからだよ、あんたにも、いい船を用意して貰った礼を伝えてくれってさ」
「おおっ……!僕と君と出会わせてくれた彼等か、元気にしているのかい?」
「あぁ、元気そうだよ」
とても。
手紙からも伝わってくる。
「……」
濃い顔の恋人に、無駄にじっと見つめられ、
「なんだい?」
肩を竦めれば。
「彼等のことを話す君は、僕が嫉妬してしまうほど、柔らかい表情をするからね」
冗談でもなさそうな、大きな溜め息。
「あぁ……」
それはそうだ。
何てったって、彼等は、あの娘は。
(命の恩人だからね)
「……ねぇ」
「なんだい?」
「あんたの故郷を、私にも見せてくれないか?」
しょぼくれていた恋人は、
「ああ!ああ!!もちろんだよハニー!!」
こちらの頼み事で一気に持ち直し、家が揺れる程の声に、小鳥がひっくり返っている。
「すぐに船を手配しよう!海が穏やかな今は、最高の船旅になるし、最高の旅行になるだろう!」
「全く、やかましいねぇ」
このうるさい恋人は仕事は早い。
急いで、旅の支度をしなくては。
ーーー
青の国の青年
青の国は穏やかな春の街。
店の外にもそろそろテーブルを広げようかと話していると、
「こんにちわー!」
「到着ー!」
と知らぬ男たちの声。
食材を届けてくれるいつもの軽口を叩く若者の声でもなく、
「?」
親父と顔を見合わせて店の扉を開けると。
「こちらへお届けものなんですが、なにせ大物で。こちらの店先に卸してもいいものかと」
と大柄で熊とでも戦えそうな男2人が、馬車の荷台を指差す。
「お届けもの……?」
親父も心当たりがないらしく、
「……なんの届け物ですか?」
不思議そうに首を傾げると。
「出発は氷の島からです!」
氷の島。
「俺たちは赤の国からです!」
「トナ鹿らしいですよ!氷と保存魔法駆使してますから、新鮮新鮮!」
それでも、更に首を傾げる親父に、
「……あ」
心当たりがあるのは、
「どうした?」
自分。
そう、冬にぽっと現れた、あの不思議な旅人たち。
そうだ。
自分は確かに。
彼等に。
『氷の島へ行くなら、トナ鹿の肉送ってくれよ』
そう軽口を叩いた。
石を冷やす、冷凍保存魔法があるとはいえ、冷凍のまま運ぶ、その膨大な手間と時間と維持費。
しかも、
「でかいな……」
大男2人が、裏から厨房に運んでくれた。
「しばらくは保つようにと、かなり冷気の持つ箱に入れてありますが、箱の方の処分にお困りでしたら、こちらから回収に伺いますので、こちらにご連絡を」
と紙を渡される。
至れり尽くせりだ。
その大男たちが、
「自分達も見ていいですか?」
とワクワクしてるため、その場で蓋をこじ開けると、
「おお……っ」
毛も皮も剥がされ、解体された胴体と太もも部分がみっちり詰まり、
「ほーぉ、見事なものだな」
「……」
感心する父親の隣で、言葉も出ずに、立ち尽くす。
ほんの、軽口だった。
その場の流れで、口にしただけだったのに。
あの旅人たちは。
「トナ鹿を受け取った証明書のサインを貰えますか?」
「あ、あぁ、はいはい」
親父が店の名前を書くと、
「確かに。ではこちらは、トナ鹿の運賃に対して、おまけとして預かってきたものです」
と手紙を渡された。
大男たちを礼を伝えて見送り、店に戻り、手紙を広げる。
『自分達は今は、氷の島にいます。
約束通り、君にトナ鹿の肉を送りす。
"あの若造にトナ鹿の肉を送れと催促されていた"
と言ったのは彼女で、申し訳ないけれど、俺はすっかり忘れていました。
その彼女曰く、狸の彼は、
"トナ鹿は白ワインの礼だ、今度は、1杯と言わず今度は2杯奢れ"
と言っていると、ここで伝えておきます。
氷の島と呼ばれているだけあり、こちらはとても寒いです。
ただ今年は特に寒く雪が多く、だからこそ、トナ鹿は脂と肉がのり、とても美味しいらしいと聞きましたし、実際、とても美味しいです。
ウエイトレスの彼女と、彼女のご両親にもよろしく伝えて欲しい。
そして、夕陽のような髪色をした君の彼女と、灰色狼にも、トナ鹿を御馳走して上げて下さい。
もし彼女との関係が上手く行っていなかったら、申し訳ない』
「お、お陰様で、上手く行ってるよっ」
思わず口に出してしまう。
そう、彼女とは、それぞれの仕事があるし、まだ色々と難しいけれど、少なくとも自分は仲良く出来ている、とは思っている。
2枚目は紐?蛇?と思われる絵と多分、鹿の絵。
それにあの狸という酒好きの生き物の足跡が付けられていた。
「フーン♪」
早くおかわりを寄越せ、と短い前足でグラスを差し出してきた狸。
絶えず穏やか、にこやかに酒と煙草を嗜み、年の離れた妹と思われる小さな娘の、口許をせっせと拭っていた男。
そして。
黒髪に赤い瞳、見慣れぬ獣を従えた、何もかもが異質な、小さな娘。
言葉が通じないのを差し引いても、静かな娘だった。
一度だけ見た、見知らぬ国のドレス。
白く、裾がとても長い羽織りものと、赤色ともオレンジ色とも言えるひだのあるスカート。
足指で挟むだけの心許ない木靴。
その彼女の国でも、あまり着てる者は少ない的なことを言われていたドレスは、彼女に良く似合い。
「似合ってんじゃん」
と雑に流してはみたけれど。
あの時、なぜか彼女の、
「本当の姿」
を垣間見た気がした。
彼らがこの街にいたのは、ほんの短い時間だった。
特に狼の運動会の時は、ここらでは自分の店くらいしか開いていなかったから、来ただけだと思っていた。
もしくは、見知った顔だから、入りやすいのだろう程度にしか考えていなかった。
でも。
「なんだよ……」
この目の前に鎮座した、大きな、見たこともない生き物の肉の塊。
彼等は。
自分が考えるより遥かに、きっと、もっと。
あの小さな娘も。
自分のことを、気に掛けてくれていた。
そう。
生意気で無駄に力んでいた自分のようなクソガキの、ただの軽口1つを忘れず。
手間と時間と、膨大な金を掛けて、一方的な約束を、果たしてくれるくらいには。
「……」
親父がそっと背中を叩いてくれ、
「ぁ……」
自分が、手紙を強く握り締めていたことに気づいた。
いつか。
いつかまた、彼等は、この店に来てくれるだろうか。
もし、いつか会えたら。
酒だけでなく、食事にでも誘いたい。
きっとあの男は、悔しいけれど、更に渋みの増したいい男になってるだろうし、あの狸は年を重ね、毛艶は若干色褪せているのだろうし、あの小さな娘も、背も伸びて、男に、口許を拭われなくなっているのだろうけれど。
「……」
どうしてか。
どうしてだろう。
小さな娘の、成長した姿は想像できず。
いつか、再びあの旅人たちが、店の扉が開いても。
なぜだろうか。
あの時のまま。
全く変わらない男に、男に抱かれ男にしがみつく小さいままの娘。
男の足許で、もさりと4つ足で立つ狸の姿しか、思い浮かべることが出来なかった。




