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タイトル未定2025/11/01 15:55

「小説家になろうラジオ」の「タイトルは面白そう」のコーナーに

タイトルのみ送った作品ですが、面白そうとの声をいただき書き上げました。

【城の下働きの女性談:現実】

 はい、その日は王子殿下ご誕生の日で、もう1週間も前から生誕祭が催されていました。

今年で丁度20歳になられるとのことで、例年にも増して大々的なお祭りになりました。

城下では地方から来た商人たちもテントで仮初めの店を開いたり

旅芸人たちがあちこちで様々な演目で人の目を楽しませていました。

 でも、何と言っても今年のメインイベントは当日夜の舞踏会でしょう。

未婚で年頃の娘の元にはお城からの舞踏会への招待状が届いているはずです。

私ですか?私にはもう夫がおりますから、招待状は来ませんでした。

私のようなお城の下働きと言えど、若い未婚女性には招待状は届いています。

まぁ、実際は舞踏会へ行ってみたくても、ドレスがなければ行けませんけどね。

ご覧の通りの汚れた下働きの姿では無理です。

ですから、招待状は国の隅々にまで届いても

参加できるのは、平民だとしてもそこそこ裕福な家のお嬢さんと言うことになるでしょうか。


【近衛騎士団所属の男爵家令息の呟き】

 通常の舞踏会は家格が高い家の令嬢から順に入城し、国王陛下にご挨拶と言う流れだが

今回の舞踏会にいたっては特別な進行になっている。

まず平民の娘たち、と言っても舞踏会へ参加できるレベルのドレスと

そこそこのマナーや教養を身につけている良家の子女たちではあるが

彼女たちがまず入城し、一人一人でなく彼女らの代表者が一人

陛下にご挨拶することになっていた。恐らく、最も裕福な商家の娘がその任を担うだろう。

その後は、基本自由に過ごしてよいのだが、場慣れしていない彼女らにとっては

居心地は悪かろう。それでも、万が一王子殿下に見初められれば一夜にして玉の輿

王妃陛下に次ぐ、高貴な身分となる。

高貴な身分!?平民の娘が!?とても許容できない。

男爵家に生まれた私が平民の娘を守るために楯になるなど考えられない。

たとえ、近衛の騎士団に所属していても。

 続々と平民の娘たちがやってきた。ドレスコードは守っている。

守ってはいるがやはりどこか野暮ったさがにじみ出ていた。

まぁ、これなら王子殿下の心を射止めることはないだろう。

つまり、つまらない女の護衛はしなくて済みそうだということだな。


【舞踏会会場 ドリンク係のお喋り】

 国中の若い女性を集めての舞踏会。王子殿下の花嫁探しだって。

まったくいいご身分だよね。高貴な方々の考え方はボクには分からないよ。

まあ、どんな舞踏会であろうと、ホールのドリンク係ってことには変わりないから

やることはいつもと一緒。ささめく招待客の間を目端を利かせながら泳ぐように移動し

必要なお客に必要なドリンクをサーブするだけ。

でも、いつもとはやっぱりちょっと違うかな。早くから来ているお嬢さんたちは

所謂ボクと同じ庶民だから。他のドリンク係のヤツと囁きあう。

「上品なお嬢さんたちだけど、やっぱり貴族の令嬢とは違うな。」

「そうだね。存在に圧がないよ。それと、くだらない嫌みの応酬もね。」

「そうそう。なんであんな風に回りくどく相手を貶めるかね?」

「お貴族さまの考えることは、ボクたちには分からないさ。分かりたくもないし。」

「奥さんにするなら、下品なのはお断りだけど、おっとり優しい子がいいよ。」

「うんうん。圧のないね!」

サーブの合間にそんなことを言い合う。大丈夫。仕事はちゃんとしているさ。

飲み物も軽食も過不足無く用意されているし、補充も怠らない。

こう見えても、ボクらは優秀だからね。

 この冗談めかしたお喋りを実は少しの間外の空気を吸おうと通りかかった王子が聞いていた。

「くだらない貶め合いか…。確かにな。市井ではそういうことはしないのか?」

王子に無駄話が聞かれていたことも、そのときに王子が少し遠い目をしたことも

ドリンク係たちは知るよしもなかった。


【街の子供たちの遊び】

 おーい、もう大分暗くなったし、帰ろうぜー。あんまりおそくなると

また母ちゃんにどやされて、晩飯抜きになっちまうぞー。

夕方と呼ぶにはかなり影が濃くなった街の中、おいらは仲間たちに声をかける。

え?なにしてるのかって?迷路遊びだよ。もう、終わって帰るとこだけど。

昼間きれいなお姉さんが来て、面白い遊びしない?って誘ってくれたんだ。

しかも一緒に遊んでくれたら、お小遣いときれいな砂時計をくれるって言うからさ。

どう言う遊びかって?おいらたちはこの「この先危険 迂回せよ」って書いてある柵を道に置く。

で、砂時計を5回ひっくり返したら、これを持ったまま別の場所に行ってまた道に置く。

別の場所でも砂時計を5回ひっくり返して、また移動。

これを繰り返して、看板に従いながら夕方の鐘の音までに街の外れまで出られたら

探検チームの勝ちで、出られなかったら迷路チームの勝ちってゲーム。

砂時計は全部で7つあったから、迷路チームは7人だけだったけど

探検チームはもっといたんじゃないかな。

面白かったよ。おいらは迷路チームだったから、ちょっと疲れちゃったけどね。

お姉さんが誰かって?知らない。だけどお小遣いもくれたしいい人だよ、きっと。


【城の執事長の内心の焦り】

 おかしい。お妃候補筆頭のテルーストテラ公爵令嬢がまだおいでにならない。

家格、財力、品格、美貌、教養全ての面において王子妃の資質に恵まれた公爵令嬢は

確かに少々気が強いが、マナーには厳格で遅刻などあり得ない。

しかも、彼女だけではない。貴族のご令嬢方がまだ誰も到着しない。

もっとも、如何に異例づくしの舞踏会とは言え、貴族は家格が大きく物を言う世界

公爵令嬢がまず入城なさらなければ、それより低い家格のご令嬢方は

会場に入られることすら出来ないのではあるが。

そろそろ早くからの参加者、つまり平民のお嬢さんたちは全て捌けるというのに

未だご令嬢方の到着がないのはどう言うことなのだろうか。

長年城にお仕えし、城を訪れる賓客の方々をお迎えしてきたが

招待客がこれほどまでに遅れてやって来られるケースは今までかつて1度たりとも無かった。

舞踏会がめちゃくちゃに(もう、半分なっているけれども)なる嫌な予感しかしない。

私は月が昇ってきた空を見つめてその不穏さにため息をつく。

「侍従長さま、陛下がお呼びです。」

背後から声がかけられた。

「分かった。今行く。」

私は持ち場である城の正面入り口に背を向け、奥へと向かった。


【馬車の中 公爵令嬢付の侍女の苛立ち】

 お嬢さま、様子がおかしゅうございますわ。

馬車に揺られながら、私は主人であるテルーストテラ公爵令嬢に申し上げました。

お嬢さまは優雅に扇子を弄びながら

「やはり?」

とだけ返されました。言葉はそれだけでしたが目がどういうことなのか説明なさい、と

命じていました。私は御者に声をかけました。

「ねぇ、さっきから道をあっちへこっちへ曲がっているみたいだけど

どうなってるの?もうご招待の時間をまわってしまっているのでは?」

「そ、それが… どの道を行っても危険だから迂回しろという柵がありまして

通り抜けられない状態でして。」

は!?今まで例を見ないほど大規模な舞踏会の日に通り抜けできない道などあるわけがありません。

たとえ道に不具合が起きたのだとしても、当日までに修繕されて然るべきです。

私は馬車の窓から身を乗り出して、道の先に目をこらしました。

「何もないじゃないの。おかしなことを言ってないで早く城へ向かって。」

「いや、さっきまで…」

言いかけた御者を睨み付けると、彼はぺこりと頭を下げ

今度こそ、王宮へと馬車を走らせました。

事の次第をお嬢さまにお伝えすると、お嬢さまは何か思うことがおありなのか

静かに思案なさっておいででした。


【王子の憂鬱】

 疲れたし、飽きたな。王子という立場上、結婚とその先にある血筋を残すと言う

義務は重々心得てはいるし、王子妃を迎えたからと言って恋人を持ってはならない

なんてことにもならないのも分かっている。

でも、まだ20歳だぞ。もう暫く自由にさせて欲しい。

貴族令嬢たちは誰が妃になってもいいような高等教育を受けていて

どの令嬢も確かに妃として申し分ない。でも、隙がなさ過ぎて息が詰まる。

もし、私が王子ではなかったら、ホール係が言っていたような

おっとりと優しい女性を妻に迎えて、平凡だけれど穏やかで幸せな家庭を築けたのだろうか。

いや、それは幻想だ。現に今回我が儘を言って平民の女性たちも舞踏会に招いたが

妙齢の女性という点は同じでありながら、やはり、貴族と平民の間には大きな隔たりがあった。

国を支え、守り、盛り立てて行くにはやはり知識と才覚と品格は欠かせない。

妃は私の妻であると同時に戦友でもあるのだから。

 さて、平民のお嬢さん方はもう帰ったかな?ふう、これからが本番か。

本命の令嬢方のご登場だな。それにしても、疲れたし、飽きたな。

まだまだ続く舞踏会にうんざりして知らず、ため息がこぼれた。


【舞踏会音楽を演奏する楽団指揮者の困惑】

 人の少ない会場に緩やかにごく静かに音楽を演奏する。

演奏するのはいい。そのためにやってきている。今日は長い時間演奏するということも

織り込み済みで、タイミングを見て交代で軽食を摂ることも決まっていた。

だが、これは何なのだ?どうしてこんなにも人がいないのだ?

早い時間には、平民のお嬢さん方で会場は賑わっていた。

慣れないながらも、一所懸命に身を処していた。場から浮かないように

貴人方の不興を買わないように。

大凡で決められていた時間を過ごすと、ほっとした様子で帰って行った。

それはそうだろう。この後、本命の貴族の令嬢方が舞踏会にやって来るのだ。

案外玉の輿を狙うような野心家な娘たちはおらず、自分たちが前座だと言うことを

みな理解していた。

そして、現在だ。

予定していた貴族の令嬢方はまだ来ない。

演奏をして、これ、意味があるのか?いや、逆に閑散としてしまっているからこそ

音楽で時間と空間を埋めないわけにはいかないか。

私たち楽団は、この惨状とも呼べそうな状態の中

派手やかになりすぎないように細々と演奏を続けていた。

 そして、かなり長い時間、小さな音で演奏していたが、急に慌ただしい空気が流れた。


【侍従長 国王の眼前にて】

 「侍従長、平民の時間は終わったぞ。貴族の令嬢たちはまだ来ないのか。

何故来ないのだ。招待した時間はとうに過ぎているのではないのか?何か手違いがあったのか?」

陛下のお召しにより御前に参じると、たたみかけるように問われた。

「それが、原因が分からないのでございます。」

私は恐縮しただただ頭を深く下げるしかなかった。

そのとき、空気が急にざわめき立ち、狼狽えた声が私を呼んだ。

 馬車が正面に止まって、テルーストテラ公爵令嬢が侍女に手を引かれ降りてこられた。

急ぎで迎えの準備をし、高らかに令嬢の名前をコールする。

令嬢は、優雅に陛下の前まで進むと深く膝を曲げ、美しい声でご挨拶された。

「遅参いたしましたこと、深くお詫び申し上げます、陛下。」

「まったく、規律に厳しいそなたにあるまじき失態。如何いたした?」

陛下の言葉には抑えた苛立ちが混じっていましたが令嬢は怖じけることなく

「申し訳ございません。わたくし、夢を見ていたようですの。

蝶になった夢ですわ。黄昏の街をとんでおりましたら、大きな蜘蛛の巣がございまして。

わたくし、その蜘蛛の巣に捕まらないように避けて飛んでおりました。

おつきの者たちは私のまどろみを優先してくれたのですわ。ところで陛下

国を覆うような大きな蜘蛛の巣に心当たりはおありになりませんか?」

真っ直ぐに陛下を仰ぎ見ながら、そう艶然と笑まれました。

陛下は無言でチラリと傍らにおられる王子殿下と目を見交わされると

「あいわかった。遅参は不問に付す。」

と一言だけ返された。

 公爵令嬢のご挨拶が終わるか終わらない頃から、次々に令嬢が到着を始める。

その度、お出迎えし名前をコールし続け、これで漸く体裁が整うかと思うと

内心胸をなで下ろした。


【公爵令嬢の疑念】

 不問に付す。ああ仰ったと言うことは陛下も殿下も「とおせんぼ」には無関係。

最も早く到着したのがわたくしだということは、他の令嬢たちも同様ね。

では、一体誰が何の目的でこのわたくしを足止めしたのかしら?

情報が少なすぎて、問いが私の中で空回りする。腹立たしい。わたくしの道を阻むなんて。

皆が遅れての参加ゆえ、ほぼ挨拶だけに終始し、殿下と踊る時間はほとんど無い。

それでも、1曲は踊れたのだけれど。

あぁ、我が国の民謡をワルツにアレンジした曲が流れ始めたわ。

もう、最後の曲なのね。殿下は王妃陛下と踊られて今夜はこれで幕ね。

そう考えていた私の横を誰かが走り抜けていく。誰?


【舞踏会会場に吹いた夜色の風】

 星月夜色の風が舞踏会会場に吹き込んできたかのようだった。

ヒールの音を高らかに響かせ、深いブルーの風が国王の前で止まる。

「遅れて申し訳ありません。でも、折角ご招待いただいたので

遅れてでも参加をと思い、走って参りました。」

その言葉どおり、全力疾走してきたのであろう女性は肩で息をしながらも

笑顔を浮かべ、一息でそう言い切った。

会場全体があっけにとられて、一瞬時が止まる。

いち早く我に返った楽団の指揮者が、楽団員たちに合図を送り

再び、最後のワルツの旋律が流れ出した。

音楽と共に時間がまた流れ出すと会場がざわざわとし始める。

あの女性は一体誰なのだろう?と。

通常、貴族の女性たちは舞踏会でブルーの衣装は身につけない。

ブルーはロイヤルブルー。つまり、王家一族の色だと言うことを承知しているからだ。

だが、走り込んできた珍客とも呼べる女性は

青いドレスを身につけているばかりか、そのドレスは流行を外した形。

会場が混乱するのも無理はなかった。

 そんな中、王子が動いた。青いドレスの少女の前まで進み出るとその手を取ったのだ。

「ラスト・ワルツですが、一曲お相手をお願いしても?」

「光栄です。」

怖じ気づくこともなく明るい笑顔で応じた少女を王子は野の花のようだと思って少し笑った

「面白いね、きみ。」

「そうでしょうか。」

踊りながら、言葉は交わされる。

「ブルーのドレス。舞踏会では誰も身につけないよ。王家の色だから、みんな遠慮する。」

「えぇっ。」

驚いた少女は真っ赤になった。

「知りませんでした。私、母の形見のこのドレスしかなくて。

古い物で色褪せも酷かったから、染め直したんです。

あちらこちら繕わなきゃならなかったし、それで遅刻を…。」

ますます赤くなって、口ごもる。さっきまであんなに堂々としていたのに

何ともアンバランス。何ともミステリアスな少女。

「きみ、名前は…?」

王子が問おうと口を開きかけた。


 リーーン… ゴーーン… ワルツの演奏が終わる前に12時を告げる鐘の音が鳴り始める。

その音が聞こえるやいなや、少女は突然ダンスを止め殿下の手から抜け出すと

来たときと同じように、城から走り去って行った。

ヒールの音だけが響いていたが、カランと音がすると靴音のリズムがおかしくなった。

シーン…。一瞬にして音楽が止まり、そこにいた人たちのおしゃべりも止まった。

直後、困惑を孕んだざわめきは、更に困惑と混乱を極めた声に変わる。


【公爵令嬢の察知したこと】

 な、何が起きたの?いつも冷静沈着な行動をと求められているわたくし。

そんなわたくしにも処理しきれないほどの事態にわたくしは狼狽えた。

鮮烈な印象と謎を残したまま消えた少女。一体あれは何だったのか。

あっけにとられて見送ってしまった後、はっと気が付いて王子殿下を見る。

呆然としているのは分かるとして、彼女が走り去った方角を名残惜しそうに見ていた。

してやられた。あの度胸、あの美貌。そして恐らく、私たち貴族の令嬢の足止めを

どう言う方法でか分からないけど、やってのけたのは、恐らく彼女だ。

天真爛漫に見えた笑顔も計算ずく。青いドレスも演出の内。

わたくし、もしかして王子妃にはなれないかもしれない。


【最後に再び 城の下働きの証言】

 ええ、びっくりしました。

舞踏会の夜、下働きの仕事が終わって帰ろうとした私とすれ違った青いドレスの女性。

あの方がまさか王子妃になられるだなんて。

私と同じ平民の出なのに。あの夜のドレスもお母さんの形見だったとか。

きっとこれから先、私たち平民の味方になってくださいますよね。

はい。私には分かります。だって、私、舞踏会の裏にいましたから。



私にしては、長い一編になりました。

最後までおつきあいいただき、ありがとうございます。

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