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楠葵先輩は頼られたい  作者: 黒姫 百合


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なんか二人っきりで久しぶりですね

「ごめんね中村さん。話は終わったから引き続き楽しむわよ」


 いつも通り優しい笑みを浮かべた葵が優に話しかける。

 厳しい顔で指示を出していた葵はもうどこにいない。


 そのおかげで優の緊張も解けた。


 本当にあの時の葵は怖かった。


「あの~楠先輩ってお嬢様だったんですか」


 ジェットコースターエリアを後にしながら優は葵に話しかける。


「まぁ~……お嬢様と言えばお嬢様ね。あまりひけらかしたくはないけど」

「凄いですね。だから楠先輩は上品で気品があるんですね」

「ちょ……どうしたの中村さん。いきなり褒められると照れるわ」


 突然優に褒められた葵は照れくさそうにする。

 葵と初めて会った時、とても上品な人だと思ったがまさかお嬢様だったとは思わなかった。


「もしかして楠先輩ってあの楠グループの人なんですか」

「そうね……あの楠グループの娘よ」

「まさか楠先輩ってそんなに凄い人だったんですね。えぇ~と私、楠先輩に失礼なことしてませんよね?」

「そんなに恐縮しなくても大丈夫よ。学校や今はただの女子高生の楠葵だから。逆に気をつかわれる方が嫌だわ」


 楠グループと言えば日本でも有名な大企業である。

 主に化粧品とファッションと通販サイトが有名で、それ以外にもいろいろと事業を展開している。


 その企業の娘の葵は、正真正銘お嬢様だ。

 そんなお嬢様に優はなにか粗相をしていないか不安になる。


 だが葵は逆にお嬢様として気をつかわれる方が嫌らしく、唇を尖らせる。


「だから今まで通りに接してほしいわ」

「分かりました楠先輩」

「分かってくれて嬉しいわ」

「それにしてもさっきの楠先輩は迫力があって怖かったです」

「ごめんね中村さん。でもあれは企業が絶対やってはいけないミスをしたから厳しく注意しただけよ。本当はあんなこと私も言いたくはないんだけど、犠牲者を出してしまってからでは遅いから。経営者見習いとしては言うべきことははっきり言わないといけないから」

「そうだったんですね。でも経営者見習いの楠先輩はなんだか新鮮でした……えっ、楠先輩って経営者なんですか。凄いですね」


 優は葵が経営者見習いということに驚く。

 葵は成人しているとはいえ、まだ高校生だ。


 高校生で見習いとはいえ、経営者というのは凄いことではないだろうか。


「あくまでも見習いで本格的なことは大学生になってからよ。だから別に凄くなんかはないわ」

「葵は親の稼業を就くんだな」

「うん。もともと経営には興味があったし。私もいずれ父さんや姉さんたちみたいな経営者になることが夢なの。上手くいくかは分からないけど、一生懸命頑張るつもりよ」


 高校三年生だからある程度進路は決まっていると思っていたが、まさかもうすでに経営者を志望しているなんて思わなかった。


 スケールが大きすぎて全く想像ができない。


「頑張ってください。楠先輩なら慣れると思います……ってこんなこと言うのは無責任ですよね」

「ありがとう中村さん。私、頑張るわね」


 優から見て楠葵は才色兼備な女子高生だ。


 だから優は葵なら経営者になれると本心から思った。


 応援された葵はやる気が満ち溢れている。


「瞳ちゃんは進路とか決めたの? もう高校三年生でしょ」

「そうだな。あたしは先生になろうかなと思ってる。人に勉強教えるの好きだし」

「そうなんだね、頑張ってね瞳ちゃん。でも瞳ちゃんの進路ってそれだけじゃないでしょ」

「? どういう意味だ」

「あーあ、私は瞳ちゃんの旦那さんになりたいのに瞳ちゃんは私の奥さんになりたくないんだ」

「それは……もう決定事項だからわざわざ言うほどのことでもないと思っただけだ」

「……そう……」


 葵だけではなく瞳も高校三年生だ。

 だから後ろで瞳、実乃里カップルも将来のことについて話している。


 その内容を一言で表すと甘すぎる会話だった。


 二人とも最後には照れて視線を外すのは本当に可愛らしかった。


 本当にラブラブなカップルだ。


「羨ましすぎるぐらい本当にラブラブね、あの二人は」

「楠先輩って彼氏いないんですか」

「残念ながら今まで一度もいたことがないわね」

「えっ、意外です。楠先輩ほど可愛い先輩に彼氏がいないなんて」

「告白は何回かされたことがあるんだけど、心がときめかなかったから全部断っていたわ」


 葵は羨ましそうに瞳、実乃里カップルを見つめている。

 こんなにも美人なのに、今まで葵に彼氏ができたことがなかったことに優は驚く。


「そういう中村さんはどうなの。彼女はいるの」

「私もいたことがありません」

「そうなんだ~。こんなに可愛いのに」


 葵に彼氏の有無を聞いたのだから優に彼女の有無を聞かれるのは予想通りだった。

 当たり前だが陰キャの優には今まで彼女ができたことは一度もない。


 それが予想外だったのか葵は意外そうに優を見つめる。


 不意に可愛いと褒められた優はこそばゆい気持ちになり、葵から視線をそらす。


 その後、コーヒーカップに乗ったり絶叫マシーンに乗ったり、お昼を食べたりしていると午後二時を回る。


「葵、中村さん、悪いけどここからは二グループに分かれて行動しないか」

「私は大丈夫よ」

「私も大丈夫です」

「それじゃー六時に出口前に集合ということで。ありがとな二人とも」

「それではまた後で」


 別行動の許可をもらった瞳は実乃里と手を繋いで雑踏の中に消えていく。

 実乃里も二人に手を振り、瞳と二人っきりで楽しそうな表情を浮かべている。


 本当にラブラブなカップルである。


 二人の姿が見えなくなると葵と優も手を振るのを止め、向き合う。


「それじゃー私たちも瞳たちに負けないぐらい遊園地を楽しむわよ」

「はい」


 葵は空に拳を突き上げながらテンションを上げ、優も葵の高いテンションに乗る。

 楠葵は学校でも人気な女子高生だ。


 そんな葵と遊園地で二人っきり。


 まるで夢のようなシチュエーションである。


「なんか二人っきりで久しぶりですね。最近は西条先輩や倉木さんが一緒だったので」

「確かにそうね。ということは今日は中村さんを独占し放題ね」

「えっ……」

「……あっ、ごめんね。さすがに今の言い方はキモかったよね。忘れて」

「……それじゃー私も楠先輩を独占しちゃいます」

「……はい、独占されちゃいます」


 葵の言うとおり、二人っきりということはその人の時間を自分が独占できるという意味でもある。


 言い方の問題もあったが、その事実に気づいた二人は急に恥ずかしくなり、お互い視線を逸らす。


「こんなことしていても時間がもったいないわ。中村さん、なにかしたいこととかある」


 気恥ずかしい空気を払拭させるために、葵は話題を変える。


 先輩である葵は気の使い方が上手い。


「それじゃーチュロスが食べたいです。私、甘いものが好きなので」

「良いわねそれ。それじゃー早速チュロスを買いに行くわよ」


 そう言って葵は優の手を握りしめ、チュロス売り場へと駆け出す。


 優も葵に置いていかれないようについていく。


 葵の手は優の手よりも大きく、頼もしくて少しだけ汗ばんでいた。


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