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楠葵先輩は頼られたい  作者: 黒姫 百合


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16/38

ますます意識しちゃいますから

「くっ付けるんですか」

「この方がもしも中村さんになにかあった時すぐに対応できるもの」


 隣同士に付けられた布団を見て優は驚きの声を上げる。


 てっきりできるだけ距離を空けて端で寝ると思っていた。


 いくらお互いがなにもないと思っているとはいえ、至近距離で異性の先輩の寝顔とかあったらドキドキ……いやムラムラしてしまうかもしれない。


 それにこの距離感、まるで夫婦だ。


 葵は優のことを異性として意識していないのか平静な表情を浮かべている。

 自分だけ葵のことを意識しているのが馬鹿らしくなってしまう。


「……分かりました。楠先輩が良いなら大丈夫です」

「私はなんの問題もないわ。……も、もちろん中村さんには変なことはしないって神に誓うわ。だから安心して寝て良いわ」

「私も楠先輩には変なことはしないので大丈夫です。ただ二人で寝るだけですから」


 葵も男女で寝ることがどういうことなのか、少しは理解しているらしくそういう行為はしないと神に誓う。


 優は葵がそんなことをするとは微塵も思っていないため、電気を消して布団の中に入る。


 葵は優しい年上の女の子だ。


 そもそも、いきなり襲ってくる想像すらできない。


「おやすみ中村さん」

「おやすみなさい楠先輩」


 カーテンの隙間から微かに月明かりが漏れている。


 すぐ目の前には無防備な葵がいる。

 近くで自分以外の呼吸音が聞こえる。


 この部屋には優と葵しかいない。

 つまり、優は葵の吐いた息を吸うことになる。


 逆も然りである。


 そう考えると変な感じがする。


 優は自分が変態的な思考をしていることに気づいていない。


「中村さん、寝た?」


 葵が優に話しかけてくる。

 あいさつをしてからまだ二、三分しか経っていないの寝ているわけがない。


 葵だってそれは分かっているはずである。


「まだ、起きてますよ」

「なんか同世代の人と一緒に寝るなんて修学旅行みたいでワクワクしない」


 葵に返事をすると、楽し気な声が返ってくる。

 葵は優と一緒にお泊りして楽しんでいるのだろう。


 これはアレだ。


 全く異性として意識されていない声である。


 だが逆に葵は優と一緒に寝ることに嫌悪感を抱いていないことでもあった。


「楽しそうですね、楠先輩」

「私は楽しいわよ。中村さんは楽しくないの」


 葵の方に寝返りを打つと葵と目が合う。

 楽しそうに話していた葵だったが、一瞬不安がちらつく。


「楽しいか楽しくないかと聞かれたら楽しいですけど、それよりも私は緊張してるんです」

「どうして緊張してるの。私、襲ったりとか絶対にしないよ」

「そういうことを言ってるんじゃなく、女の子と一緒に寝るだけで男の娘は緊張するんです」


 夜の魔法がそうさせたのか、優の口が軽くなる。

 本当はこんなこと葵に言うつもりなんてなかった。


 でも思わず口から本音が漏れてしまった。


 優だって健全な男の娘だ。


 こんなに可愛い女の子と一緒にお泊りしてなんとも思わないわけがない。


 例え、手を出さないと心に誓ったとしても。


「……」


 優の今の言葉で優のことを異性として意識したのか、葵の顔がほのかに赤くなる。


「ごめんね、中村さん」


 葵は申し訳なさそうに謝罪をして優に背中を向けるように寝返りを打つ。


「さすがに迷惑だったよね」


 葵のか細く消え入りそうな声がやけに響く。

 優は葵を落ち込ませる気なんて全くなかった。


 ただ、自分がどれほど異性の葵と一緒に寝て意識しているか知ってほしかっただけである。


「べ、別に迷惑だとも嫌だと思ってません。むしろ、知り合った私のためにここまでお世話をしてくれて感謝してます。それでもやっぱり異性の女の子と一緒に寝るのは意識しちゃいます。男の娘なので……きゃ」

「良かったわ……私、迷惑じゃなかったのね。本当にホッとしたわ」


 優は葵がお世話をしてくれて迷惑だと一度も思ったことがない。


 むしろ、葵に迷惑をかけていると自分の方だと思っている。


 それを葵に伝えた瞬間、嬉しかったのか葵は優の布団の中に潜り込み優を抱きしめる。


 葵の柔らかくも筋肉質な体に包まれる。


 胸が目の前に広がっている。


 女の子の胸は想像よりも柔らかくて弾力もある。


 男の娘とは全然違う女の子の体に童貞の優は鼓動がどんどん速くなるのが分かる。


「く、楠先輩」

「ご、ごめんなさい中村さん。これはつい嬉しくてハグしただけで、変な意味は全くないのー」


 優が葵を見上げると、葵は優の布団の中に入り優を抱きしめていることを自覚したのか、脱兎のごとく自分の布団へと戻っていく。


 葵が自分の布団に戻ったとはいえ、優の布団の中にはまだ葵の残り香が残っている。


 女の子の匂いにさらに優はドキドキしてしまう。


「いきなり中村さんの布団の中に入って本当にごめんね。別によ、欲情したわけじゃなくてね……」

「わ、分かってますから。あまり生々しいこと言わないでください。ますます意識しちゃいますから」

「ご、ごめん……」


 葵が優に欲情して襲ったわけではないことは優も分かっている。


 でもそれを直接、なんのオブラートにも包まないで言われると、また異性として意識しちゃうから止めてほしかった。


 葵は自分の布団の中でシュンとなって体を小さく丸めている。

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