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楠葵先輩は頼られたい  作者: 黒姫 百合


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中村さんチョコ好きなんだね

「ごめんなさい中村さん。私のせいで」


 葵は優の方を振り向くと、俯きながら謝罪する。


「楠先輩のせいじゃないですよ。私がキャッチしそこねただけですから」

「でも私が中村さんに手を振ったから。本当に中村さんには悪いことをしてしまったわ」


 別に優は葵のせいだとも、パスをしたクラスメイトのせいでもないと思っている。


 パスキャッチミスをした自分が悪い。


 でも葵は自分が優の注意を引いてしまったことが原因で怪我をしたと思っているらしい。


「わ、私は楠先輩に手を振ってもらえて嬉しかったですけど」


 これはお世辞でもなんでもなく、優の本心だ。

 先輩なのに、話しやすくてまるで同級生のような感じで話すことができる。


「そう……ありがとう」


 葵は冷めた笑顔で優の頭を撫でる。


「中村さんって利き手って右手よね」

「そうですね。右手ですね」

「それじゃー突き指が治るまで色々と大変よね」

「まぁー大変ですけど大丈夫だと思いますよ。左手は無事ですし、右手も人差し指以外大丈夫ですし」

「そんなことないわ。私も右手を怪我した時あるけど結構不便よ。だからこれから中村さんの怪我が治るまで私がサポートするわ」

「へぇっ?」


 葵は名案とばかりに胸を手を当てながら提案をする。

 予想外の展開に優の脳はショートした。


「これは私のせいでもあるもの。それにこういう時は持ちつ持たれつよ。私を全力で頼ってちょうだい」

「いや、そんなの悪いですよ」

「悪くないわ。私、頼られるの好きだから。むしろ頼ってちょうだい」


 頼ってほしい葵に優は逆に申し訳なささで断る。


 優と葵はただの先輩、後輩だ。


 先輩後輩の関係でそこまでしてもらう義理もないし、申し訳ない。


 たが葵は頼られるのが苦でも負担でもないらしく、むしろ頼ってほしいと懇願してくる。


 断り続ける優と、頼ってほしい葵。


「……分かりました。せっかくなので楠先輩に頼らせていただきます」


 葵が折れないことを悟った優は折れることを決意した。

 このまま押し問答していては、放課後になっても終わらないだろう。


「任せて。怪我が治るまで私が中村さんのお世話をしてあげるわ」


 葵は自信満々に胸をそらす。


 優も男の娘だ。


 年上の女の子にお世話をしてくれると言ったら、少しだけエッチな想像をしてもしょうがないだろう。


 こうして優は葵のお世話を受けることになった。




 授業中はさすがに違う学年なので葵はいない。


 その代わり実乃里に頼んで、指が治ったらノートを写させて欲しいとお願いをした。


「もちろん、良いよ」


 実乃里は嫌な顔一つせず承諾してくれた。


「ごめんね、中村さん」

「ううん。私がよそ見したせいだから全然気にしないで」


 体育授業の終わりに優にパスをした同級生が謝罪しに来てくれたが、むしろこれは優のよそ見が原因なので、相手側は全く非がない。


「でも……」

「だからこの話はこれでお終い。だからもう気にしなくて大丈夫だからね」


 相手側はあまり納得していない様子だったが怪我をした優が大丈夫ならなにも問題ない。


 放課後。


「中村さん、もし私たちにもなにかできることがあったら言ってね」

「あたしを頼っても良いんだぞ~中村~。はい、チョコあげる」

「二人ともありがとう。木村さん、チョコいただくね」

「どうぞどうぞ、食べて食べて」


 ホームルームが終わった後、優と特に仲が良いクラスメイト、実乃里と愛音が近づいてくる。


 愛音はなぜかチョコレートをくれた。


 優は甘党だったのでお言葉に甘えていただく。


 口の中にチョコの甘さが広がる。


 疲れた体や脳にはこれが一番効く。


「中村さんチョコ好きなんだね」

「うん。甘いの全般好きかな」

「だから中村はお菓子作りが好きなんだね」

「そうー」


 優は甘い物が好きだからお菓子作りも好きになった。

 自分で作るお菓子は売ってあるお菓子とはまた違うおいしさがある。


「中村さ~ん。迎えに来たよ~」


 教室の入口から葵の大きな声が聞こえる。


 まるで母親を待っていた子供のような感じがして優は恥ずかしかった。


「えっ、楠先輩」

「めっちゃ楠先輩美人」

「もしかして楠先輩と中村さんって仲が良いの。意外」


 大声で呼ぶものだから、変な注目を浴びてしまう。


 クラスメイトたちは優と葵を見ながらコソコソと話している。


「楠先輩、中村のこと本当に気に入ってるんだね」

「楠先輩、楽しそう」


 愛音と実乃里は微笑ましそうに優と葵を見る。


「それじゃーあたし、先に帰るね」

「私も瞳ちゃんと約束してるから。バイバイ」

「バイバイ、二人とも」


 愛音と実乃里はなにかを察したかのように帰っていく。


「お待たせ中村さん。それじゃー帰るわよ」


 葵は優の机までやって来ると、自然な流れで優のカバンを持つ。


「ありがとうございます、楠先輩」

「全然気にしなくて良いわ。怪我が治るまで私に頼ってちょうだい」


 さりげなくカバンを持ってくれたことにお礼を言う優に、葵は全く気にしてはいなかった。


 その後、優は葵と一緒に寮へと帰る。

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