第六章:灰の尖塔 p1
彼らが〈枯病〉の地へ入ったと言うのは、単なる境界線を越えたことを示唆するに過ぎない。それは、そのようなものではなかった。それは、自然の基本法則が穢され、病と腐敗の言語へと書き換えられた世界への、ゆっくりとした、陰湿な下降だった。
貧血を起こしたような灰色の草は、黒く、不毛の塵と、脆く、死にゆく大地の風景へと変わっていった。木々は節くれだった、骸骨のようなものとなり、その枝は苦悶に満ちた形にねじ曲がり、樹皮は剥がれ落ちて古い痣のような色の木肌を晒していた。大気そのものが濃く、重くなり、歯に響く絶え間ない低い唸りと、腐った果物のような、むせ返る不快な甘さを運んできた。砕けた月からの光は、ここで歪み、ねじ曲がるようで、長すぎ、暗すぎ、そして自らの意志で動いているかのような影を落とした。
この場所の恐怖と戦うために生涯を訓練されてきたコーヴァンは、厳しく、集中した、強さの柱だった。彼は戦士の用心深さをもって動き、その手は常に剣にあり、その目は絶えず不自然な風景を詮索していた。「植物には触れるな」彼は、低く、切迫したつぶやき声で警告した。「ある植物は麻痺性の毒を持つ。他のものは、体から暖かさを吸い取るだろう。ここの全てが、飢えている」
対照的に、グレイルはほとんど我が家にいるかのようだった。〈灰の魔女〉は、慣れ親しんだ、捕食者の優雅さをもって、病んだ風景の中を進んだ。圧迫的な雰囲気も、彼女には重荷になっていないようだった。むしろ、それによって活気づけられ、感覚はより鋭く、動きはより流動的になっているようにさえ見えた。ここは彼女の狩場。彼女の聖域だった。
ライリスは、彼らの二つの現実の間に囚われていた。教団が彼女の魂に刻み込んだ潜在的な知識は、脅威に対する、無菌的で、学術的な理解を提供した。彼女は〈囁きの苔〉の群生地を認識し、その胞子が幻聴を引き起こすことで知られていたため、一行を迂回させた。彼女は、毒を持つ、昆虫型の腐肉漁りである〈シャンクテイル・スキッタラー〉の足跡を特定した。彼女の心は、恐怖の百科事典だった。
しかし、彼女の体は、苦しみのキャンバスだった。〈枯病〉の圧迫的で、不自然なエネルギーは、彼女の精神に絶えずのしかかる、消耗させる圧力だった。そこは、深く、宇宙的な絶望の場所であり、彼女自身の魂の中にある、小さく、暗い場所と共鳴した。足首の痛みは、ここではより深く感じられた。殺戮の記憶は、より生々しく感じられた。彼女が細心の注意を払って築き上げた心の中の壁は、薄く、脆く感じられた。
彼らはこの病んだ地獄絵図の中を、二日間、沈黙した、厳しい行列で旅した。彼らの会話は途切れ途切れで、戦術的な必要性に限られた。彼らの休息は短く、用心深いものだった。二日目、コーヴァンの専門知識が彼らを救った。彼は前方の空気中に、かすかな、きらめく歪み――時間的崩壊の一区画、時間そのものが解けている場所、一歩で人を千歳も年老いさせかねない罠――を発見した。彼は一行を、それを避けるための長く、骨の折れる迂回路へと導いた。その出来事は、彼らが今や直面している危険の、異質で予測不可能な性質を、まざまざと思い出させるものだった。
彼らがついにそれを見たのは、三日目のことだった。
広大な、灰色の平原の中心から、一つの、あり得ない建造物がそびえ立っていた。それは尖塔、病的な、痣のついた空を掻きむしるように伸びる、黒鉄と黒曜石の、ギザギザの針だった。それはイルミナスの塔のような、優雅な美しさを持つものではなかった。それは、純粋な、反抗的な怒りの記念碑だった。その建築は全てが鋭い角とブルータリズム様式の線で構成されており、建てられたというよりは、死にゆく世界の心臓に、暴力的に突き刺されたかのようだった。その頂点からは、かすかな、深い紫色の光が脈打ち、荒涼とした風景の中で、悪意に満ちた、監視するような灯台となっていた。
「〈灰の尖塔〉」グレイルは言った。その声には、誇り、苦渋、そしてライリスが彼女からこれまで聞いた中で最も敬虔さに近いものが、複雑に混じり合っていた。
「信仰に誓って…」コーヴァンは息を飲んだ。その手は、かつて聖印があったであろう革の柄へと、無意識に伸びていた。「伝説は真実だったのか」
「ほとんどの伝説は、ただ十分に長く語られてきた物語に過ぎない」グレイルは、唇にかすかな、笑いを含まない笑みを浮かべて答えた。「だが、こいつはたまたま、鉄と意志でできている」
彼らが近づくにつれて、ライリスは、尖塔がただの死んだ建造物ではないことがわかった。その頂点で脈打つ同じ紫色の光が、黒曜石の表面を細い、血管のような線となって走り、ゆっくりとした、リズミカルな光で脈打っていた――ドクン、ドクン、ドクン、ドクン――まるで巨大な、眠れる獣の、ゆっくりとした深い心臓の鼓動のように。〈枯病〉の地全体に浸透していた低い唸り声は、ここではより強くなり、計り知れない、内包された力の、共鳴する響きへと集中していた。
「この場所は何?」ライリスは、畏敬の念と、忍び寄る恐怖にひそめた声で尋ねた。
「それは牢獄。それは要塞。それは秘術の機関」グレイルは説明した。「そして、それは私の家だ。石と漆喰ではなく、血と記憶で鍛えられた。私の生命力に繋がれている。私が生きる限り、それは立つ。その心臓は、私のものと共に鼓動する」
彼らは尖塔の麓にたどり着いた。壮大な入り口も、門もなかった。ただ、継ぎ目のない黒曜石の壁があるだけだった。グレイルはそこへ歩み寄り、冷たく、振動する表面に手のひらを平らに置いた。長い間、何も起こらなかった。そして、彼女の手の周りの岩の中の紫色の血管が、より明るく輝き始めた。地の底から聞こえてくるような、低く、軋むうなり声とともに、壁の一部が後退し、暗い、三角形のアーチ道を形成した。
「私のるつぼへようこそ」グレ俺いるは言い、中へと足を踏み入れた。
コーヴァンはためらった。彼の深く染みついた敬虔さが、彼の新しい忠誠心と戦っていた。この場所に入ることは、最後の、取り返しのつかない異端行為のように感じられた。しかし、一瞬の葛藤の後、彼の新しい仲間への忠誠心が打ち勝った。彼は頭を下げ、魔女の後に続いた。
ライリスが最後に入った。彼女が敷居をまたいだ瞬間、彼女は深遠な変化を感じた。〈枯病〉の地の圧迫的で、消耗させるオーラが、まるでドアが閉まるかのように、即座に断ち切られたのだ。中の空気は静かで、涼しく、金属とオゾン、そしてかすかな、ほとんど感知できないほどの、古い悲しみの痕跡の味がした。
アーチ道は彼らの背後で封鎖され、彼らを絶対的な暗闇へと突き落とした。そして、彼らがいる部屋の壁の中の紫色の血管が輝き始め、広大な、円形の部屋を照らし出した。壁は、光を飲み込むかのような滑らかな、黒い黒曜石で、部屋の中央には、一本の、途切れのない黒鉄から鍛えられた螺旋階段が、闇の中へと蛇行しながら上っていた。
ここは、〈灰の魔女〉の力の中心。彼女の聖域。彼女の檻。
そしてライリスにとって、ここは、彼女の真の、苦悩に満ちた教育が始まろうとしている場所だった。道中の教訓、生存の過酷な現実は、序文に過ぎなかった。ここ、純粋な、異端の意志の要塞で、彼女は自分自身の破滅の文法を学ぶことになるのだ。
「お前の訓練は今、始まる、記録官」グレイルの声が、広大で、静かな部屋に響き渡った。「我が術をお前に教えよう。お前の内を流れる生命の川を、使いこなす術を教えよう。だがその前に、この世界が提供しうる、最も重要な教えを学ばねばならない」
彼女は振り返った。その目は、紫色の光の中で、冷たく、無慈悲な炎で燃えていた。
「血の流し方をお前に教えよう」