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翌日。

ピンポーン、とチャイムが鳴った瞬間、一誠はドアを開けた。


そこに立ってたのは、相変わらず間延びした表情の凪。

その足元には、控えめに置かれたダンボール2箱だけ。


「……お前、これだけか?」


「うん」


凪はコクンと頷くと、すっと片方の箱を軽々と持ち上げて家の中に入っていく。

そのまま、もう一箱も器用に持ち直し、結局自分で全部運び込んだ。


「……手伝う気失せるわ」


一誠が苦笑いしつつ言うと、凪はふわりと微笑む。


「必要ない、でしょ?」


「まあな」


居間にダンボールを並べて、一誠は中を覗き込んだ。


一つ目の箱には、きっちり畳まれた服が少しと、下着が数枚。

もう一つの箱には、ゴツめの調理器具と、何やら物騒な武器類と、その手入れ道具。


「お前なぁ……」


一誠は呆れ半分、感心半分で凪を見る。


「少なくねぇ?普通、もっと色々あるだろ」


凪は少し首を傾げて、穏やかに言った。


「必要ない、から」


「は?」


「いつ死ぬか分からない、仕事だった、から。ものを増やすの、嫌だったの」


その言葉に、一誠は一瞬だけ黙る。

確かに、凪は軍の総帥だった。最前線に立ってた人間だ。

命の保証なんか、最初から無かった。


「だから、服は最低限だけ。あともう少し古いのとか壊れかけのは、無理やり使ってたけど……こっち来る前に捨てた」


凪は淡々と説明しながら、ダンボールの中の調理器具を撫でた。


「……こっちだけ、趣味だったから、ちゃんと揃えた」


一誠は溜め息をついて、凪の頭をポンと叩いた。


「お前なぁ……そんなんじゃ生活できねーだろ」


「ん?」


「よし、決まり。明日は買い物行くぞ」


「……買い物?」


「ああ、服とか、日用品とか。ちゃんと増やしてけ。もう死ぬ覚悟しなくていい生活なんだからよ」


凪は少し目を丸くして、一誠を見つめたあと、ふわりと笑った。


「……んー。ありがと。甘え、させてもらう」


「最初からそのつもりだろーが」


一誠がニヤリと笑い、凪は照れたように視線を逸らす。


「明日、よろしくね」


「おう、任せとけ。お前が人間らしい生活できるよう、しっかり揃えてやるからな」


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