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ふと、落ち着いた空気のままソファに腰を下ろした一誠は、凪の顔をぼんやりと見つめる。
統合して、まだそこまで時間は経ってないけど――やっぱり、変わったな、と思った。
前よりも表情が柔らかい。
喋り方はふわふわしてるし、無駄な力が抜けてる感じだ。
なのに、芯の部分は変わらず、冷静で――強い。
「にしてもさぁ……」
一誠はため息混じりに呟く。
「凪、かわいくなったな、マジで」
凪はキョトンとした顔をした後、ふわりと首を傾げた。
「かわいく……?」
「そう。前はどっちかっつーと、カッコよかったんだけどな。無駄にクールで、無駄に隙なくて、威圧感あってさ」
苦笑しながら言うと、凪は目を細めて、微かに口元を緩めた。
「ふふ……あざとい、かな?」
「お前が自分で言うなよ」
一誠は思わずツッコむが、凪はそのまま、まんざらでもなさそうに微笑んでいた。
「でも、嬉しいよ。可愛いって、言われるの」
その言い方がまた、ふわふわとしていて、普段の凪からは考えられないような、柔らかさが滲んでいた。
「……お前、前だったら、その言い方、された瞬間に怒ってたろ」
「怒ってたね。『くだらない』って、真顔で言い返してたかも」
「だろ?だから余計、違和感すごいんだけど」
一誠が肩をすくめると、凪はわずかに目を細めた。
「……たぶん、私の中の“あれ”が、そういう感情に抵抗ないんだと思う」
「ほー」
「でも……今の私も、それが嫌じゃない。だから、いいかなって」
一誠は凪のその穏やかな顔をしばらく見つめ、最後には、苦笑しながら頷いた。
「まあ……お前がいいなら、俺も別にいいけどさ」
凪はふわりとした笑みのまま、またソファに寄りかかる。
「ありがと、一誠」
――以前のカッコよさとは違う、新しい凪の姿に、どこか照れくさくなりながらも、一誠はそっと、その隣に座った。