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第7話 山を越えて

 ギルドからの依頼を受けて、山頂の調査とメイジキマイラの討伐を達成してから五日後。

 僕とメルティナは、ようやく山越えの準備も終わり、次の新たな街へと向かうために出発をしたところだ。

 街の外では、魔物に襲われる心配があるので、うさぎの召喚獣のミーティアを呼び出してともに同行させる。

 僕は、山道の入り口までミーティアの背にまたがって移動をしたが、ミーティアはピョンピョン跳ねながら移動するので彼女の背で激しく揺さぶられて気分が悪くなり、途中で二回ほど吐いた。そのため、山道を進む際は、自分の足で歩くことにした。

 一度、山頂までは行っているので、スイスイと登っていく。

 途中、ロックゴーレムと遭遇したあの岩場に差し掛かった時、何人もの男の人たちが作業をしていた。

 何をしていたかというと、山道を塞ぐように元ロックゴーレムのおにぎり型の胴体が転がっている。

 人が通れる程度には、僕の鹿の召喚獣であるカルティアの黄金の角で砕いたのだけど、馬車が通るには狭すぎるので、馬車を通すために岩を取り除く作業をしていた。

「お嬢ちゃんとボーヤ。山頂には、とんでもない魔物がいたらしいぞ」

「優秀な冒険者が退治してくれたらしいから、安全だと思うが気を付けて行きな」

 岩を砕く作業をしている人たちが、山道を登っていく僕たちを見つけ、声をかけてくる。

「ええ、ありがとう」

 苦笑いしながらメルティナが、男の人たちに手を振る。

 その山頂のとんでもない魔物は、僕たちが…正確に言えば僕の大トカゲの召喚獣であるドラグリアが退治しているので良く知っている。

 そんな僕たちの背後を大きなうさぎの召喚獣が付いてくる。僕の召喚獣ミーティアだ。

 そのミーティアを目撃した作業中の男の人たちが「魔物だ」と口々に叫ぶ。

このうさぎミーティアは、僕の召喚獣だから心配ないよ」

 僕は、ミーティアの背にまたがって見せる。

 ミーティアは、僕を背に乗せたまま可愛らしくピョンピョンと跳ねて見せた。こんなに可愛いのに、魔物と間違えるなんて酷いよ。

「召喚獣なんて初めて見たな」

「おとぎ話の中に登場するものだとばかり思っていたが、実在するんだな?」

 男の人たちは、物珍しそうに遠目でミーティアのことを見ながら口々に呟いていた。

 まあ、ものすごく大きな街では召喚獣を普通に連れている人もいるし、働き手として活用している人もまれには見かけたことはある。

 けれど、一般的には召喚獣はおとぎ話に出てくる登場人物の一種としてしか認識されていない。

 なので、この男の人たちが初めて見たというのは仕方がないことだ。

 僕たちが、ついさっきまでいた街には召喚獣を連れている人はいないようだった。

 僕とメルティナは、ミーティアを伴って山道を登っていく。

 日が暮れ始めた頃。

 僕たちは、特に魔物とも遭遇することもなく順調に山頂に辿り着いた。

 山頂には、すでに魔物の遺体は残っていなかった。

 僕の召喚獣の一人である大トカゲの召喚獣ドラグリアによって退治されたメイジキマイラは、冒険者ギルドの人たちによって回収されたみたいだ。そのメイジキマイラに倒されたオークたちの遺体も処理されたようで何も残ってはいなかった。

 今日は、ここで野宿をするのだから、魔物の遺体がそばにあるような状況では落ち着いて休めないから、処理されていたのは好都合だ。

 僕とメルティナは、夕飯の準備をする。

 準備と言っても街で購入した干し肉と水筒に入った水を飲む程度だ。

 干し肉は、ちょっとお高いものを購入した。

 この前のギルド職員のオムニって人がくれた干し肉は固すぎて食べるのに苦労したからだ。

 今回、僕たちが用意した干し肉はそこそこ固いものの、しゃぶっていると濃厚な味と旨味が溢れ出し、実に美味しいものだった。やはり、少しお高めでも良いものを買わないとダメなんだなと思わされる。

 食事は、あっという間に終わる。

 まだ、街を出て1日しか経っていないのに食料を無計画に食べるわけにはいかない。

 たくさんの荷物を持っての移動は大変なので、数日分の食料と旅に必要最低限の物しか持っていない。馬車があれば荷物を積めるけれど、そこまでするつもりはない。

 山の中には、動物や木の実なんかがあるから、それをうまく活用できればいい。

 夕食を終えた僕とメルティナは、地面に麻の布を敷く。人一人が横になれるくらいの大きさのものだ。

 その上に毛布にくるまった状態で横になる。

 僕の横にミーティアが添い寝をしてくれる。

 大きなうさぎの召喚獣なので柔らかい毛並みが心地いい。それにくっついて寝ると温かい。

 少し離れた場所で寝ようとしていたメルティナが、うらやましそうにこちらを見ている。

「何?」

「暖かそうね?」

「くっついて寝ると温かいよ」

「私も近くで寝ていい?」

 すでにメルティナは、ミーティアの横にすり寄ってきて寝る準備をしている。

「好きにすれば」

 僕がそう言うと、「じゃあ、そうするわ」と答えてミーティアに寄り添った。

 僕とメルティナは、ミーティアを挟む形で川の字になって眠りについた。


 朝日を浴びて僕たちは、目を覚ます。

 夜と同じく干し肉をかじって朝食をとる。

 毛布や麻布を片付けて出発する。

 今日は、昨日登って来た山道の反対側へと下っていく。

 山頂は開けた場所になっていたが、下り始めて少しすると、山道は次第に木々に囲まれる。

 山道は馬車が通れる程度の広さがあるので、草木に邪魔されることなく歩ける。

 見上げれば、背丈の高い木々がそびえ立ち、空をおがむことはできない。

 まだ、朝も早いためか、鳥たちのさえずりが微かに聞こえる。

 さすがに山道は綺麗に整地はされていないので、地面は凸凹だ。馬車で通ったらガタガタ揺れて大変な目に合いそうだ。

 しばらく、代り映えしない景色が続き、僕たちの気が緩みだす。

 そんな時だった。

「ハクション!」

 突然、メルティナが大きなくしゃみをした。

 さすがに僕もミーティアも驚いて、硬直した。

 それと同時だった。

 木々の合間から大きなものが素早く飛び出してきた。

 それは、メルティナの左腕に激突すると素早く、反対側の木々の中に消えていった。

「きゃあぁぁぁぁぁ」

 メルティナがくしゃみよりも大きな悲鳴を上げた。

 視線を向けると、左腕から大量の血が地面に滴り落ち、赤く濡らしていた。

「メルティナ!」

 僕は声を上げると、メルティナの左腕を見てゾッとした。

 細くしなやかな左腕が大きく切り裂かれ、血に染まっていた。

 何か鋭いものでかなり深くえぐられていて傷跡が三本ある。

 かなりの重傷だ。

 病院に連れて行って診てもらわないといけない状況だ。

 だけど、ここから街まで戻るには1日以上かかる。

 メルティナは、耐えがたい激痛に嗚咽おえつを漏らしながら、地面に倒れこんでしまった。

「メルティナ。しっかりして」

 僕が声をかけるけど、痛みにのたうち回るだけだ。

 ガサガサ…

 先ほど、メルティナを傷つけた物体が飛び込んでいった茂みの方が揺れ動いた。

 再び、何かが飛び出してきた。

 今度は、その飛び出してきたものに対して、ミーティアが反応した。

 飛び出してきた物体を蹴り飛ばした。

 ミーティアに蹴り飛ばされた物体は、手近な木に激突して、その姿を現した。

 大きな茶色い体毛を持つ猫だ。

「ヘルキャット」

 僕が、叫んだ。

 虎のように大きな猫の魔物だ。異常に長い3本の爪を持ち、ギョロギョロとした大きな不気味な猫目が特徴的な魔物だ。毛並みは、茶色くくすんでいて整っていないので汚い印象を受ける。

 こいつがメルティナに襲い掛かり、彼女の左腕にケガを負わせたのだろう。

 凶暴とまではいかないけれど、長い爪に串刺しにされたらひとたまりもない。

 実際、メルティナの左腕はズタズタだ。

 病院で治療ができたとしても、かなり深くえぐられているので、元のように動かすことができるのかわからない。

 しかも、血が止まらない状態だ。

「ミーティア、あいつをやっつけて」

 僕の指示にすぐさま反応して、ヘルキャットに飛び掛かっていくミーティア。

 ヘルキャットは、素早く木々の合間に飛び込んで逃げる。

 いや、茂みが揺れながら動いているので、攻撃する機会を伺いながら移動している。

 僕は、メルティナの左腕を手で押さえながら、何とか流れ出る血を止めようとするけど、一向に血が止まらない。

 どうしたらいい?

 僕のそばの茂みが揺れる。

 僕とメルティナは動けない。

 狙われたら、まずい。

 茂みから飛び出してきたヘルキャットにミーティアが体当たりをして防いでくれた。

「ありがとう、ミーティア」

 そう声をかけた時だった。

 ミーティアの背後にもう一体のヘルキャットが飛び出してきて爪を背に突き立てた。

「ミーティア」

 ミーティアの背から赤い血が滴り出て、真っ白な体毛を赤く塗り替えていく。

 この木々に隠れるように移動され、死角から2体のヘルキャットに襲われてはどうにもできない。

 僕とメルティナは動けないし、ミーティアも背中の傷はかなりやばい状況だ。血がドンドン溢れてきている。

 ミーティアは、聖獣界に戻せば受けた傷は徐々に回復していく。なので、命は助かる。

 だけど、メルティナはどうしようもできない。

 どうしよう。

 そう思った時、鳥の鳴き声がわずかに耳に入った。

 周囲の木々にいたのかもしれない。もしくは、僕の聞き間違いだったかもしれなかったが、僕が次の行動をとるきっかけにはなってくれた。

「ミーティアは、一旦、聖獣界に戻すよ。そのあと、フォートレスティーを呼ぶよ」

 僕の叫び声に、ミーティアは一度だけ頷いた。

 僕の意図を理解してくれたみたいだ。

 僕は、血を流すメルティナの左腕から手を放し、素早く正面に突き出してミーティアの足元に魔法陣を描き出す。その魔法陣は淡く光を放ち、ミーティアを包み込んでいく。その光が消え去ると同時にうさぎの召喚獣の姿は消えた。

 そして。

 描いた魔法陣はそのままに、新たな召喚獣を僕は呼び出す。

「フォートレスティー、召喚」

 再び、魔法陣が輝きだし、光は新たな召喚獣の姿を描き出す。

 その光が霧散したあとには、大きな鳥がドッシリとした姿でたたずんでいた。

 全身が真っ赤な羽で覆われた巨鳥だ。所々に金色と銀色の羽が見え隠れしている。

 一見すると炎に包まれているかのようにも見える大きな美しい鳥の召喚獣。

 それが、フォートレスティーだ。

 突然現れた巨大な鳥に驚き、「ニャシャァァァ…」と奇声を上げる2体のヘルキャット。

「フォートレスティー、あのヘルキャットたちをやっつけて。そして、メルティナを…」

 僕が泣きそうな声で叫ぶと、優し気な眼差しで僕とメルティナをフォートレスティーは見る。

 メルティナが左腕の激痛で地面をのたうち回り、赤い血の水溜まりを作っている光景を目の当たりにし、フォートレスティーの瞳が怒りの炎に色めき立つ。

「キィィィィィィィィ」

 耳をつんざく大きな声をフォートレスティーは上げた。

 ヘルキャットたちは、たまらず両手で耳を塞いでいた。

 フォートレスティーは、地面に立ったまま勢いよく翼を広げた。

 馬車が通れるくらいの道幅があるので翼が周囲の木々に当たることはなかったが、思いっきり広げると結構ギリギリだ。

 広げた翼が炎のように揺らめく。

 いや、フォートレスティーの身体が、徐々に炎に包まれていっている。

 開いた翼をいったん閉じ、再びフォートレスティーは翼を広げた。

 炎がフォートレスティーを中心に渦巻き、火の粉が周囲に飛散する。

 火の粉を浴びたヘルキャットの茶色い体毛が燃える。

 一瞬にして炎に包まれ、ヘルキャットたちは慌てふためき、地面に身体を擦り付けて炎を消そうともがいている。

「メルティナ、しっかりして」

 僕は、左腕を抑えながら激痛に歯を食いしばって堪えていた彼女に声をかける。

「ヴィオ君…」

 メルティナが、僕を見る。

「ヴィオ君!燃えてる!ヴィオ君の身体が燃えているわよ!」

 驚きの表情とともに大きく見開いた眼で僕を見つめながら、突然、大きな声を上げる。

「メルティナも燃えているよ」

 冷静に僕が言うと、メルティナは自分の身体を確認する。

 メルティナの身体は炎に包まれて燃えていた。

 僕の身体も炎に包まれている。

「やだ、なんで…」

 手や腕、身体、髪、メルティナの全身が炎に包まれている。

 その炎を消そうと、メルティナは手で払いのけるが、炎は全く消えない。

「なんでこんなことに…」

 パニックになっているメルティナに「少し落ち着いて。熱さは感じてる?」と僕は問いかけた。

「熱いに決まっている…いえ、熱くない…むしろ…心地良いっていうのもなんだけど…ほのかに温かい…優しい暖かさって言えばいいのかしら?なんだか不思議な感じ?」

 炎に包まれているのに僕とメルティナは熱さを感じてはいない。逆に暖かなものに包まれて守られている感じを受ける。

「キシャァァァァァァァァ」

 フォートレスティーが、雄たけびを上げ、再度、翼を大きく広げた。

 フォートレスティーの翼から火の粉が飛び散り、周囲に再び飛散する。

 だけど、木々や茂みには一切燃え移らない。

 炎に包まれたのは、僕とメルティナ、そしてヘルキャット2体だけだった。

「グニャァァァァァァ…」

 断末魔を上げて、2体のヘルキャットはその場にバタリと倒れ伏した。

 文字通りの丸焦げ状態だ。

「あれは?」

「メルティナを襲った魔物。ヘルキャットだったものだよ」

「えっ?ヘルキャット?」

 すでにヘルキャットだったものは、元の姿がわからない状態だ。炎に焼かれて炭化物と化している。

「ヴィオ君は、何でそんなに平気な顔をしているの?」

 炎に包まれている僕を見つめながらメルティナは不思議そうな顔をしている。

「僕の召喚獣、鳳凰のフォートレスティーの力だからだよ」

 僕が指さす先に大きな鳥の召喚獣がいる。

 それを見てメルティナは「綺麗な鳥さんね」と呟いた。

 僕とメルティナを包み込んでいた炎が次第に消えていく。

 僕たちの身体に焼けた跡はない。

 服が焼けたりもしていない。

 丸焦げになったヘルキャットとは違い、全くの無傷だ。

「フォートレスティーの『審判ジャッジメントフレイム』は、敵と認識した者を炎で焼き尽くし、逆に味方と判断した者を守る力があるんだよ。それに…致命傷はどうしようもないけれど、ある程度までの傷であれば治すこともできるんだよ」

 僕がメルティナの左腕を擦る。

 ヘルキャットの爪に引き裂かれて大怪我をしていたのに傷跡もなく綺麗に治っている。

「嘘…傷跡もないし、全然痛くない。普通に動かせるわ」

 傷一つない自分の左腕を不思議そうに撫でながら、手を握ったり閉じたりして腕の状態を確認している。

 普通に動かせるようだ。

 フォートレスティーの能力はかなり凄い。

 敵は完全に焼き尽くしてしまう。

 けれど、味方は炎に包まれて守られる。

 しかも、致命傷では無ければ同時に怪我を治すことができる。

 今回は、メルティナの左腕の怪我は治ったけれど、もし心臓を貫かれていたらフォートレスティーの能力でも助けることはできなかった。

 フォートレスティーの…いや、召喚獣たちの能力は万能ではない。

 出来ることと出来ないことがある。

 今回は、運よく治せたが、次はどうなるかわからない。

 気を引き締めて行くしかない。

「ヴィオ君、あの鳥さんにお礼を言わせて」

「うん、言ってあげて」

 メルティナは、少しおっかなびっくりしながら大きな鳥の召喚獣であるフォートレスティーに近寄っていく。

 フォートレスティーは、メルティナが背に乗っても飛べるくらい大きい。

「鳥さん、私の腕を治してくれてありがとう」

 メルティナは、フォートレスティーの首筋をそっと撫でながらお礼を言った。

 どういたしましてと言っているようにフォートレスティーが小さく鳴いた。


 僕とメルティナは、山道を歩き出す。

 フォートレスティーもその巨体を揺らしながらドスドスと音を立てて歩いて付いてくる。

 背の高い木々が空を覆い隠すように林立りんりつしているので、邪魔で飛び立てないのは仕方ない。

 しばらく歩くと木々が途切れてフォートレスティーが飛び立てるほどの場所に出た。

「フォートレスティー、ちょうど良いから、周辺に街や村がないか確認して来て」

 僕がお願いするとフォートレスティーは一声鳴いて、その美しい真っ赤な羽をはばたかせて飛び上がる。

 優雅に空を飛び回り、周辺を散策してくれている。

 僕たちは、腰を下ろして休憩することにした。

「ヴィオ君の召喚獣はすごいわね。どんな魔物でも倒してしまうし、私の腕の怪我も治してしまうし…」

「どんなことでもできるわけじゃないよ。できないこともあるよ。死んだ人を生き返らせることはできないし、重傷を負って死にそうになっている人や寿命が尽きそうな人は助けられないから…今回は運が良かっただけだよ」

「そっ…そうなんだ…じゃあ、ヘルキャットの爪が左腕じゃなくて、胸にでも刺さっていたら…」

「多分、助けられなかったと思うよ…」

 あまり、変な期待を持たせると困るので、はっきりと言っておく。

「運が良かった…?悪かったのかしら?でも、怪我が治ったから良かったのかも…」

 運が良いのか悪いのかと言ったら、悪いのだろう。運が良いなら、ヘルキャットの攻撃を受けていないはずだ。

 けれど、こうして助かったことを思えば、運が良いのかもしれない。

 まあ、そこはその人それぞれの捉え方次第かな。

 そんな話をしているとフォートレスティーの羽ばたきが聞こえてきた。

 戻って来たみたいだ。

 僕たちのそばに降り立つ。

「クェェェェ…クェッ…ククェッ…」

 何かを言おうとしているが、さすがに分からない。

 なので、僕は両手を前に突き出すと力をめる。

 フォートレスティーの巨体を囲むように魔法陣を描き出す。

「我、汝の封印を解き、解放する者なり。封印よ、退け。メタモルフォーゼ」

 呪文を唱えると、魔法陣は輝きながら彼女の身体を包み込み、光は次第に巨鳥から人型に変わりだす。

 光が消え去った後には、美しい女性の姿のフォートレスティーがいた。

 赤い髪を二つに束ねて左右に垂らしており、その赤い髪には金と銀の髪が混じっている。優しげな瞳は、右は金色で左は銀色のオッドアイだ。

 深紅のドレスに身を包み、背中には大きな翼が生えている。その翼は、赤と金と銀で彩られている。

 その姿は、まるで天使や女神の像のように美しく、見惚れてしまう。

 フォートレスティーは、翼を大きく広げる。

 すると、その翼は見る見るうちに小さくなっていく。

 そして、背中が大きく開いたドレスの背中に羽のような形の模様となって落ち着いた。完全に翼がなくなってしまった。

「凄い綺麗な人…」

 メルティナが小さく声を漏らして、フォートレスティーを見つめている。

 見とれてしまうほどの美人だ。女神様と言っても良いくらいだ。

「ヴィオ様。この先には街や村がいくつもあるようです。山道をまっすぐに下ってそのまま行けば、二つほど村があり、その先には大きな街がありました。ふもとの道を左に行くと鬱蒼うっそうとした森が広がり、森の中に村らしきものがいくつか見えました。右に行くと荒野がしばらく続くようです。こちらはかなり遠くに村がありそうでした」

 空を自由に飛び回って得た情報を教えてくれる。

「やっぱり、行くなら大きい街に行きたいよね」

「そうなると道沿いにまっすぐ行けばいいわけね」

「そうですね。しばらくは、わたくしが同行いたします。情報が必要になれば、いつでも言ってください」

 フォートレスティーは、うやうやしく僕に頭を下げると、背中の翼の模様を翼に変えて広げて見せた。

 翼を自由に羽ばたける状態にしたり、翼のような模様にして収納できるみたいだ。

 便利そうだ。

 もしもの時には、食料の買い出しとか頼んだりしたら行ってくれるかな?

「じゃあ、とりあえずは街を目指すってことで、行こうか」

 僕は、宣言すると歩き出す。

 メルティナとフォートレスティーも後に続いて歩き出した。

第7話まで書くことができました。

ここまで読んでくださった方々、ありがとうございます。

思いついたものをその場その場の勢いで書いています。

この先の展開がどうなるのか私自身もわかりませんが、自由気ままに書いていくつもりです。

今しばらく、お付き合いいただけるとありがたいです。

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