第6話 山頂での戦い
「山頂までは、あと少しで辿り着けそうだね?」
僕は、山の頂上を見上げながら呟いた。
ロックゴーレムを倒し、ギルド職員のオムニと合流した僕とメルティナは、白馬の召喚獣であるヴァージニアと黒鹿の召喚獣であるカルティアを伴って山頂を目指して登っていたのだが、山頂からかなり手前で1泊することになった。もし、頂上に魔物がいた場合、頂上付近で野営をしていたら襲われるかもしれないという不安があったからだ。
オムニの用意してくれた簡易テントの中でメルティナは休み、そのテントの外で僕とヴァージニアとカルティアが野宿し、オムニは僕たちから少し離れて野宿して一夜を明かした。
今は、みんなで朝食を取り、出発するための準備をしていた。
「ここからだと、お昼前には十分辿り着けるはずです」
リュックに簡易テントなどを詰め込み終えたのか、背負いながら眼鏡のギルド職員が答える。
「ヴィオ君?今、頂上の方で黒いものが見えなかった?」
僕とともに頂上を見上げていたメルティナが、こっそりと耳打ちしてきた。
「見えたね。でも、すぐに消えちゃった…」
「やっぱり、見間違いじゃないわよね?今のは、何だったのかしら?」
「とりあえず、頂上に行けばわかるんじゃないかな…」
僕たちは、冒険者ギルドからの依頼でこの山の山頂を目指している。山の頂上でたまに現れてはすぐに消えてしまう黒い雲のようなものの調査と、ここ最近商人たちがこの山を越えて街に来ていないみたいなので、山越えができない障害(魔物の生息や山道が通れない)などがあるかの調査を依頼された。
山頂までは、まだ少し距離があるけど、行くしかない。
「こちらの準備は終わりましたので、山頂に向けて出発しましょう」
ギルド職員がそう声をかけてきたので、みんなで山頂に向けて歩き出した。
山頂までは、もう少しというところまでやってきた。
何やら山頂付近が騒がしい。
何かが暴れている?いや、戦っているのかな?
「クシャァァァァ!」
魔物の咆哮が、僕たちの耳を劈く。
僕たちは、山道を一気に駆け上がる。そして山頂に辿り着く。
目の前には、オークがいた。
正確には、5体のオークの死体が転がっていて、息を荒くして疲弊しているオーク1体の背中が見えた。
そのオークは、手にしたこん棒を振り上げて、何かに突進していった。
オークの背中越しに見えたのは、奇怪な姿の魔物だ。
頭が二つある。一つは、たてがみを持つライオンのような頭、もう一つは鷲のような頭をしている。その二つの頭が虎模様の胴体にくっついている。四本足で立つ胴体の虎模様には、ちょっと違和感を感じる。その姿だけでも気持ち悪いのに、さらに尻尾が蛇だ。チロチロと赤い舌を出し入れして蠢いている。本当に気色悪い魔物だ。
「キマイラですか!」
その気色悪い魔物を一目見て、ギルド職員は眼鏡の奥の瞳を怪しく輝かせた。
オークは、足音を響かせながらキマイラに襲い掛かる。
その場から動かずに鷲の頭が大きく口を開ける。
刹那。
水が噴水のように勢い良く一直線に吐き出された。
全身に直撃を受けて、オークは仰向けに倒れこむ。
続けて、蛇の尻尾が倒れたオークのそばまでその身を伸ばし、口を開いた。
どす黒い霧のようなものを浴びせかけるように吐き出した。
オーガはそれを吸い込んだらしく、咽て苦しみだす。
「まさか…あの蛇のような尻尾は毒を吐いたんですか?」
ギルド職員は、興味深げにキマイラの行動を観察している。
オーガは、ジタバタともがき続け、とどめとばかりにライオンの頭が口を開く。その口からは、氷の粒が吐き出された。拳くらいの大きさの氷の粒オーガの身体を容赦なく打ち据える。
小さな悲鳴を上げて、身体の所々を氷漬けにされたオークは動かなくなった。
ギルド職員のオムニ以外は、目の前の光景に絶句している。
彼だけは、目をランランと輝かせ、興奮しているのが雰囲気で分かる。
「今のは…魔法なのか?だとしたら、ただのキマイラじゃない。メイジキマイラだ。凄い、メイジキマイラをこの目で見られるなんて」
「メイジキマイラ?」
聞いたことのない魔物の名前に僕とメルティナが首を傾げた。
「聞いたことありませんか?メイジキマイラですよ。太古の昔に悪い魔法使いの集団があって、その集団がいくつもの魔物を組み合わせて作り上げたのが、キマイラです。そのキマイラの中でも、魔法を使うものをメイジキマイラと呼ぶんです。かなり、レアな魔物ですよ」
嬉しそうに口元に笑みを浮かべながらオムニが説明してくれる。
「太古の昔ってことは、凄く昔ってことでしょう?何で生きているの?」
「キマイラは多くの数が作られたらしいです。それが逃げ出したり、野に放たれるなどしてひっそりと繁殖してきたのでしょう?こうして、生きたものを見られるなんて私たちはラッキーですよ」
心から嬉しそうにしながら、このギルド職員はフラフラと引き付けられるようにメイジキマイラの方に歩いて行っている。珍しい魔物に会えて興奮状態である彼は、この危険な状況をまともに捉えられていないみたいだ。
「なんてすばらしいんだ」
もっと近くでこのメイジキマイラを観察したいのか、不用意に近づいて行っている。探求心が勝っているが故の行動だろう。
「オムニさん、そんなに近付いたら危ないですよ」
メルティナが叫ぶ。
彼の目と鼻の先には、近寄ってくるオムニを不思議なものでも見るかのような相貌で見据えているメイジキマイラがいる。
オムニの眼前に蛇の尻尾が立ちふさがる。その蛇が口を開く。喉奥から黒い霧のようなものが微かに漏れ出た。
それを見た瞬間、オムニは冷静になったのだろう。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ…」と情けない悲鳴を上げて、走り出した。視線は、メイジキマイラの方を向いたままだった。
メイジキマイラの尻尾は黒い霧を吐き出さなかったが、前をよく見ずに逃げ出したオムニは張り出した木の枝に激しくぶつかり、仰向けに倒れて気を失った。
なんて迷惑な人なんだろう。けれど、気を失って倒れてくれている方が、ありがたい。邪魔にならずに済む。
メイジキマイラは、僕たちの方に視線を向けた。
僕とメルティナ、その後ろに召喚獣のヴァージニアとカルティアがいる。白馬と鹿の召喚獣を美味しそうだと思ったのか、メイジキマイラはゆっくりと戦闘姿勢を取った。
「ヴァージニア、カルティア。あいつをなんとかできそう?」
僕が振り返って尋ねるが、二人はゆっくりと首を横に振る。
メイジキマイラの奇妙な容姿に恐れ戦いているみたいだ。表情が引きつっているようにも見える。
「それなら…一旦、聖獣界に送り返すよ」
僕は素早く両手を前に突き出すとヴァージニアとカルティアを一緒に聖獣界に戻すために普段よりも大きな魔法陣を描き出す。二人の姿が光に包まれ、消え去った。
「せっかく、大きな魔法陣を描いたんだから、あの人を呼ぼう」
僕は、二人が消え去った魔法陣をそのままにした状態で、新たに別の召喚獣の名を叫んで呼び出す。
「ドラグリア、召喚」
僕の声に応じて、大きな魔法陣の中に大きな光の塊が現れる。3メートルくらいありそうな光の塊が次第に形を成していき、それは大きなトカゲのような形を形成する。
光がはじけたその場所には、これまでの召喚獣たちとは比べ物にならないほど大きな召喚獣がいた。
「どっ…ドラゴン!」
メルティナが驚きの声を上げる。
そう、魔法陣から現れたのは、ドラゴンだ。一般的には、そう呼ばれているものと似た容姿だ。角の生えたトカゲのような頭部、全身を深紅の鱗に覆われ、大きな身体には不釣り合いな短い腕だが指先には鋭く尖った爪がある。太い脚はやや短いがしっかりと大地を踏みしめ、長く太い尻尾が揺れている。金色の双眸が、メイジキマイラをけん制するかのように睨みつけている。
「ドラゴンの召喚獣なの?」
「違うよ。トカゲの召喚獣だよ」
僕が訂正する。召喚獣は動物の姿が基本だ。ドラゴンだと魔物になってしまう。だから、僕は訂正をした。
突如、現れた大きなトカゲの召喚獣ドラグリアに戸惑った様子を見せたメイジキマイラだったが、敵とみなして攻撃を仕掛けてきた。
メイジキマイラのライオンの頭が口を開け、氷の粒を吐き出してきた。
トカゲの召喚獣ドラグリアは、短いながらも両腕を交差させて前傾姿勢でこれを防御する。ドラグリアの背後には、僕とメルティナがいるので攻撃を盾になって防いでくれた。そのせいで、ドラグリアの頭と腕周辺が所々凍り付いている。
しかし、ドラグリアは気合を入れて全身に力を籠める。
あっという間に凍り付いた部分の氷は、ガラスが砕けるかのように粉々になった。
ドラグリアの深紅の鱗には傷一つついていない。
続けて、メイジキマイラの鷲の頭が口を開いた。
一直線に噴水のように水が吐き出される。
ドラグリアは、ガードもせずに仁王立ちして、それを身体に受ける。
ドラグリアにとっては、水鉄砲の水をかけられた程度にしか感じられなかっただろう。
まるっきりの無傷だった。
今度は、お返しとばかりに、ドラグリアが大きく息を吸い込んだ。
「メルティナ、ここから離れるよ」
僕は、メルティナの背を押してドラグリアから離れた場所に移動すると、岩の後ろに身を隠すように回り込んだ。
チラリと、僕たちが距離を取って安全な場所に隠れたことをドラグリアは確認すると、吸い込んだ息を今度は吐き出した。
バリバリバリバリバリ…
激しいスパークを巻き起こしながら、電撃が渦を巻きながらメイジキマイラに向かって飛び出した。
反射的にメイジキマイラは飛び上がって躱した。
ドラグリアの放った電撃は、メイジキマイラがいた地面をえぐり取り、その後ろにあった岩壁に衝突して大きな穴を穿った。
飛び上がって回避したメイジキマイラは、地面に降りてはこなかった。
背中にコウモリのような羽があった。胴体の背に模様のようにあったのは羽だったみたいだ。その羽を器用にはばたかせながら、ドラグリアを見下ろしている。
ドラグリアは、再び息を大きく吸い込んで、電撃を吐き出す。
しかし、メイジキマイラは身軽そうにヒラリ、ヒラリと躱していった。
ドラグリアの吐き出す電撃は超強力だけど、当たらなければ意味がない。力を消耗するばかりだ。
埒が明かないとばかりに、ドラグリアが僕に視線を向けてきた。
「成獣化させればいいんだね?」
僕が尋ねると、ドラグリアはしっかりと頷いた。
「わかった、じゃあ、行くよ」
僕は両手を前に突き出してドラグリアの足元に巨大な魔法陣を描き出す。
ドラグリアの身体は大きいため、その大きな体を包み込めるくらいの魔法陣を描かなくてはならない。普段よりも多くの魔力を消費する。僕の魔力は無限にあるわけじゃない。ちょっと大変だけど、ここは僕が頑張るしかない。大きな魔法陣を描き切る。
「我、汝の封印を解き、解放する者なり。封印よ、退け。メタモルフォーゼ」
呪文を唱えると、ドラグリアの巨体が眩い光に包まれる。
その光は、どんどん小さくなっていく。
小さくなりながら光が人型を形成する。
光が霧散したその場に現れたのは、全身に深紅の鎧兜をまとった女性だった。
幼獣(動物型)であるドラグリアの姿が大きかったため、成獣(人型)になったドラグリアの姿はかなり小さくなったように感じられるが、それでも身長は180センチくらいはありそうだ。
金色の髪と瞳が目を引く。
身に着けている鎧は、全て金属製の鎧兜ではない。なめした皮を重ね合わせ、組み紐で編み上げられた芸術作品とも呼べる美しいものだ。非常に丈夫だが、軽く、動く際に邪魔にならない構造をしている。
腰には二本の刀と呼ばれる武器をぶら下げている。
「ドラグリア、あの魔物をやっつけちゃって」
僕は、上空をせわしなく飛び回っているメイジキマイラを指さす。
「お任せください。我が主、ヴィオ様」
僕に向かって一礼すると、ドラグリアは上空を見上げた。
飛び回っていたメイジキマイラが上空でその動きを止めた。
蛇の尻尾がニョロニョロと動き出し、口からどす黒い霧を吐き出した。
それも、ものすごく大量にだ。
メイジキマイラがいる周囲を囲むように山頂の上空が黒い霧に覆われる。
「あの黒い霧…」
「僕たちがここに来る途中で見た黒い雲の正体は、あの蛇が吐き出した毒霧だったんだ」
メルティナと僕は、どんどんと広がっていく黒い霧を見上げている。
この黒い霧は落ちてくる気配がない。上空を広く覆いつくすだけだ。
「でも、下から登ってくる時に見えた黒い霧はすぐに消えちゃったわよ。でも今は…」
メルティナは息を飲む。
上空に広がった黒い霧を鷲の頭が口を開いて吸い込みだした。
自分の蛇の尻尾が吐き出した毒霧を吸い込むなんて、何を考えているんだろうか。
あっという間に黒い霧は、鷲の頭の口の中に吸い込まれて綺麗さっぱりとなくなってしまった。
黒い雲が見えてもすぐに消えてなくなってしまうのは、このメイジキマイラの蛇の尻尾が吐き出して、鷲の頭が吸い込んでいたからすぐに消えたように見えていただけだったんだ。
「自分で吐いた毒の霧を吸い込むなんて…」
その行動の意味を理解できずにメルティナと僕は上空のメイジキマイラを見上げている。
メイジキマイラの鷲の頭が口を開いた。その口からどす黒い液体の球がいくつも吐き出され、ドラグリアに降りかかる。
ドラグリアは避けようともしない。
ドラグリアの周囲に液体の球が落ちて飛び散る。その飛び散った液体が、ドラグリアの足や太ももを微かに濡らす。
「ぐっ!」
小さな声を漏らし、表情を歪ませるドラグリア。
一つの液体の球が、ドラグリアを直撃する。
寸でのところで、ドラグリアは左腕を振り回して液体の球を弾き飛ばそうとした。
しかし、その水玉は腕が触れた途端に破裂し、ドラグリアの頬や左腕に焼き付く痛みを与えた。
「毒の液体…」
ドラグリアの呟きが聞こえた。
メイジキマイラは、尻尾の蛇が吐いた毒霧を鷲の頭が吸って、毒の液体を生成して吐き出してきたようだ。
「ドラグリア、大丈夫?」
「油断大敵…また、あの時と同じこと繰り返そうとしていたとは…」
僕の声に何か独り言を呟き、「すぐに、かのものを仕留めてごらんにいれます」と返答して腰の刀の柄に手をかけた。柄に手をかけたままドラグリアは構える。そのまま、じっと上空を飛んでいるメイジキマイラを凝視している。
そんなドラグリアを見下ろしながら、メイジキマイラは再び尻尾の蛇頭が毒の霧を吐き出した。
先ほどと同じように、鷲の頭がその毒霧を吸い込んだ。
そのあとに狙いを定めるように上空を飛び回っていた動きが止まった。
「居合、列覇連斬」
目にも止まらぬ速さで引き抜かれた刀が、振るわれた。
まさに一瞬の出来事だった。
ドラグリアが刀を引き抜いたと思った瞬間、すぐに鞘に刀は戻されていた。
「グギャギャギャギャ」
気色の悪い悲鳴が上がり、メイジキマイラのコウモリのような羽が消し飛んだ。
ドラグリアの刀から放たれた衝撃波がコウモリのような羽を根本付近からあっさりと破壊したようだ。
空中で姿勢を維持できなくなったメイジキマイラは、恐怖に彩られた形相で頭から地面に落下した。落下の衝撃で鷲の頭が下敷きになり、潰れた鷲頭からは赤黒い液体が漏れ出て地面を汚した。
蛇の尻尾が鎌首をもたげる。
ドラグリアに向かって口を開く。
だが、ドラグリアの動きの方が早かった。
一瞬のうちに近寄ると、蛇のような尻尾を縦に刀で切り裂いた。切り裂かれた尻尾は力なく地面に横たわった。
胴体がビクリと動き、ライオンの顔がドラグリアの方を向く。
刀の方が早い。
ライオンの頭は、首のところで胴体と切り離されて地面を転がった。それでもビクビクとメイジキマイラの胴体は奇妙な動きを見せている。
ドラグリアは、胴体に刀を深々と突きさして止めを刺した。
それ以降は、メイジキマイラはピクリとも動かなくなった。
「ドラグリア、大丈夫?」
僕は、ドラグリアに駆け寄る。
毒液の飛沫を受けた部分が変色している。特に左腕が痛々しそうに見える。
「この程度なら心配はいりませぬ」
強がっているようには見えないけれど、毒を受けたのなら早く聖獣界に戻してあげた方が良いかもしれない。聖獣界に戻りさえすれば、どんな傷でも毒でも徐々に回復していくはずだからだ。
「そういえば、ミーティアが元気になりました。彼女をそばに呼んであげると良いでしょう」
ドラグリアは、そんなことを言ってきた。
「じゃあ、ドラグリアを聖獣界に送り返して、ミーティアを呼ぶことにするよ」
「そうしてくだされ」
ドラグリアは、微笑むと軽く頭を下げた。
僕はドラグリアの足元に魔法陣を描き出すと、彼女を聖獣界に送り返し、代わりにうさぎの召喚獣であるミーティアを呼び出した。
「ミーティア、元気になってよかったね」
僕は、元気な姿のうさぎの召喚獣のミーティアを見たら嬉しくなって彼女に抱き着いた。
それからしばらくして。
気を失っていたギルドの職員である眼鏡…じゃなかった、オムニは意識を取り戻した。
無残な姿になって討伐されていたメイジキマイラの状態にかなり落胆していたが、すぐに仕事モードになってくれたことは、まだ良かった。
僕たちは、黒い雲が現れては消える現象は、この討伐したメイジキマイラのせいであったことを説明した。
そのあとは、山頂周辺の調査を行った。
他に魔物はいないかとか、山道がどうなっているのかを調査した。
山頂付近には、いくつかの魔物の死体が腐敗した状態で転がっているのが見つかった。
恐らく、このメイジキマイラがやったものだろうと推測できた。
縄張り争いでもしたのだろう。
だから、キラーベアーやブレスフェンリルなどが、この山から麓の街の方へやってきてしまったのだろう。
さらには、ジャイアントオークとゴブリンの集団もこのメイジキマイラから逃げてきた先に街があり、入り込んでしまったのではないかということになった。
もう、この山頂付近には危険はない。
それがわかれば、商人たちもこの山を越えてくることだろう。
僕とメルティナも山を越えて次の町に行ける。
とりあえず、ここから一度街に戻ってギルドに報告と報酬を受け取りに行くことになった。
ちなみに、メイジキマイラの死体はギルドが標本にするために買い取ってくれることになった。これは意外だった。かなりの高値で買い取ってくれることを約束してくれた。
あと、ロックゴーレムのことをオムニに話してみたんだけど、ロックゴーレムは砕けてただの岩になっていたので、魔物という判定は受けられなかった。まあ、オムニはロックゴーレムの姿は見ていないし、岩の塊を元ロックゴーレムだったと主張しても、信じてもらえなかった。まあ、それは仕方ない。
メルティナの冒険者証明証にまた一つ、メイジキマイラを討伐したという記録が記された。メルティナは、その状況を諦めたように受け入れていた。諦めが肝心な時があるんだよ。
僕とメルティナは、ギルドから報奨金を受け取ると、今度こそ山越えをして次の町へ行くための準備に取り掛かる。
次の町は、どんなところかな?
ワクワクしながら、僕は旅に出る支度をするのだった。