遺跡から発掘された箱
「おーい、なにか出てきたぞ」
とある遺跡で作業をしていた発掘作業員の一人がそう言って一つの箱を持ち上げた。
その箱は長方形の鉄製で、周囲には細やかな模様が彫り込まれていて、鍵穴だろうか、側面に穴が空いている。
「これは一体なんでしょう?」
発掘を指揮していた博士にその箱が渡されると、周囲からそんな質問が出た。博士は少し待ち給えと言うと箱をためつすがめつ眺め回す。そして箱の底にかすれた文字を見つけた。
「うむ……ドーラーと読めるな。贈り物という意味だ。さしずめ贈り物を入れるための箱かなにかだろう。その前にもなにか書いてあるが……」
しかしどれだけ見てもそれ以上は読むことが出来ず、中を見てみれば分かるかもしれない、ということで箱の見つかった周囲が徹底的に調査された。
そして、少し離れた場所で箱と同じ金属で作られたと思われる一つの鍵が見つかった。
博士は慎重に鍵を差し込むとゆっくりと回す。かちり、と音を立てて鍵が開く。
博士や作業員たちは好奇心に顔を輝かせながら箱の中をのぞき込んだ。しかし箱の中にはなにも入っておらず、がっかりとした表情になった。
発掘作業が終わったあと、家に戻った博士がテレビをつけると、博士たちがあの箱を見つけた日を境にして世界中で病気が流行り始め、地震や台風などの災害が起こっていると伝えていた。
博士はあの箱に書かれていた文字が一体なんだったのかを理解できたような気がした。
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