死にたがり、冒険者登録をする
ルシャール様とバカみたいなやり取りをしつつも俺は冒険者ギルドに着いた。そして中に入って驚いた。
だって…普通冒険者ギルドったら治安悪い感じの言い方は悪いけど安っぽい酒場だと思うだろ?実際酒場は併設されてるし、飲んでる冒険者もいるが…そうじゃない窓口側はお役所っぽい小奇麗さを感じるんだ。ま、冒険者の格好は想像通りのファンタジー味溢れる人やらエルフや獣人がいるからミスマッチ感すごいけどな。でもそれだけじゃない。
「冒険者ギルド【スーリアス】支部へようこそ。依頼ですか?登録ですか?」
「冒険者登録をお願いします。」
「かしこまりました。それでは向かって右手側奥の窓口へお並びください。」
「分かりました。丁寧にありがとうございます。」
俺がどの窓口に並ぶか考えていると受付嬢の一人であろう女性が俺の下に来て親切に教えてくれた。めちゃくちゃサービスが行き届いているわ。そしてどうやらこの街で新規の冒険者は珍しくないみたいでラノベでテンプレのガラの悪い冒険者に絡まれるというイベントは発生しなかった。案内された窓口に今も数人並んでるし。
そして俺の番が来た。
「冒険者ギルド【スーリアス】支部へようこそ!冒険者登録をご希望ですね?……えーっと…失礼ですが、16歳を越えていらっしゃいますか?越えていない場合、冒険者登録は出来るのですが、受注可能な依頼に少し制限が付いてしまうのですが…」
俺の姿は黒髪黒目の純日本人顔だからね。いくら18とはいえ日本人の特性発揮されてんなぁ。童顔に見られたっぽい。待て、何歳に見られたんだ?この世界の成人は16らしいからな。……そういえば俺が18だって言った時、ペトラちゃんもシェイラちゃんも驚いてたな?…何歳に見えてたのかは怖くて聞いてないけど。
「大丈夫です。これでも成人してます。18なので。」
「え"っ!?ししし、失礼しました!てっきりお顔が若く見えたので14歳程度かと…!?こほん。お客様は成人済みということで先ほどの注意事項はお忘れください。それではこちらの用紙に名前、年齢とできればで良いのですが得意な武器や魔法などの技能関係も記載してください。代筆は必要でしょうか?」
(海斗さん海斗さん呼ばれてないけどルシャールです。この世界の文字が分かるように文字を書くことも自動変換で処理されているので日本語を書く感覚で書いても大丈夫ですよ!……父はそこまで気を遣わなかったようなので……)
まじで助かります。今度落ち着いたらルシャール様に捧げものでもしようかね。それともどっかに祀るか?
(捧げものはありがたく受け取りますが、祀るのはやめてください…十分祀られているのでこれ以上は恥ずかしいので。)
ウっス。
「いえ、書けるので大丈夫です。」
俺は渡された用紙に名前、年齢を書いてスキルどうしかと思ったが…初級魔法全般にしておいた。その紙を受付嬢に渡したら一瞬驚いたように目を見開いていたけどすぐさま持ち直した。プロだね。…でもさ、初級魔法くらい誰でも使えるんだろ?おかしなこと書いてないんだけどなぁ…
そして受付のお姉さんがカウンター奥の魔道具に用紙を通してから一枚のカードを机の下から取り出した。多分これが冒険者証だろうね。
「こちらがカイトさんの冒険者証となりますので、こちらに血を一滴垂らしてください。そうすることでカードと持ち主の紐づけが可能になりますので。」
言われるままに出された針で指をちょっと刺して血を垂らした。するとカードに赤い刻印が刻まれ、俺の情報が見ることが出来るようになった。
「これにて冒険者登録は完了です。平時は持ち主の許可がなければ他人が冒険者証の内容を見ることは出来なくなっています。またこのカードが冒険者ギルドにおける個人の口座扱いとなっていますので紛失しないように細心の注意を払ってくださいね。一応冒険者証紛失の場合、作り直すことは出来ますが…それなりの金額を頂きますので……」
「分かりました。」
「では冒険者についての説明をさせていただきますね。まず冒険者には冒険者ランクという制度が存在しています。下からE→D→C→B→A→S→SSの7つのランクに別れています。どんな冒険者であっても初めはランクEからのスタートとなりますよ。ランクはその冒険者の実力並びに信用を示す指針となっており、高ランクになるほど貴族様から指名依頼を受ける、ということも起こり得ます。そしてBランク以上の方には滞在している街で魔物の襲撃などの有事があった際には率先して戦場に赴く義務が生じるようにもなります。ランクを上げるには一定の回数の依頼をこなす等条件を満たしたうえで各ランクの昇進試験を受け合格することで晴れてランクアップとなります。」
なるほどね。まぁ、普通の感じだね。如何にもって感じだ。
「そしてランクごとに受注可能な依頼に制限があります。受けられる依頼は現在のランクの±1のものを受けることが可能です。つまりCランクならばDランク、Bランクまでの依頼でしたら受注可能となっています。……こちらとしては出来る限りランクに見合った依頼を受注していただきたいのですが…特に低ランク帯は。Eランクですと受注可能な依頼は街中での雑用のようなものか、常設されている薬草採取、並びにゴブリン退治の依頼だけとなっています。ただこれは依頼の掲示板もランク帯ごとに分かれているので間違って高ランク依頼を持ってくるということはないと思われます。依頼を受ける際ですが、ギルドの左手の窓口にお並びくださいね。そちらが依頼受注専門の窓口となっていますので、掲示板から依頼を見繕い、窓口へ持っていき受注する。これが依頼受注までの流れとなっています。……ここまで一気に説明していますが大丈夫でしょうか?まぁ、分からなくなったら常駐している者にお聞きくださいね。」
「はい。」
「依頼から帰ってきて素材や魔物の討伐証明部位などを提出、換金する場合は中央窓口へお願いします。そこで依頼書に完了のサインを受付に書いてもらっていただくことで依頼完了となります。あまりにも魔物素材の数が多かったり、ご自身では解体が難しい場合は窓口で仰っていただければ担当の者が解体場がある倉庫へとご案内いたします。最後に、この街で活動する分にはパーティを組まずともなんとかなるかもしれませんが、もしもカイトさんがダンジョンに興味がある、という場合はパーティを組むことをおススメいたします。ダンジョンはそれだけ地上と比べても難易度が高いので…残念ながらこの街にはダンジョンはないのでダンジョンに潜るならば別の街へ出向いていただく必要がありますが…冒険者の説明としてはこのようなところでしょうか。長らく説明にお付き合いありがとうございます。」
「いえいえ。必要なことはしっかりと聞かないとあとで困るのは自分なので。」
「助かります。懇切丁寧に説明していると大概の方は話が長いと聞かれない方が多数居ますので…最後に、当ギルドでは新人向けに冒険者の講習や魔物、薬草等の素材資料室などの開放を行っておりますのでご興味がおありでしたら利用も検討してみてください。資料室は無料で開放されていますので。講習はどの窓口でもいいので申請していただければ参加することができます。それではあなたの冒険者生活に幸あらんことを。」
「とても丁寧で助かりました。ありがとうございます!」
ふーん。資料室があるのか。ちょっと見てみるか~。
冒険者ギルド:各国に点在している冒険者のための組織であり冒険者に対する仕事斡旋所。基本的にはある程度の規模の街であればどこにでもある。村の規模だと近くにダンジョンなどがないと設置されない。冒険者ギルドは独立組織扱いのためどこの国においても冒険者ギルドと国または領主間の癒着は原則的に禁止されているが、スーリアスのように騎士団と提携をしている場合もある。
教会:人が住む場所であれば余程の理由がない限りは建てられている。特定の神を信仰する教会もあれば信仰する神は自由だという教会もある。治療院の役割も担ってはいるがそれとは別に薬師ギルドが経営する薬屋もある。神聖国アルバトリオンは教会至上主義の国なので除外