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死にたがりの異世界放浪記  作者: オタクな塩/水無月白斗
第一章 死にたがり開幕記
2/12

死にたがり、第一村人と遭遇す。

作者は一人称しか書けないんですが…最初の方は別キャラの視点であることもあり試験的に三人称視点(?)も混ぜて書いてみた。しっくりこなかったらやめます。

—主人公である海斗が人里を探して森を彷徨っていた頃、ある一人の少女もまた日課の薬草採取のために森の中へと足を踏み入れていた。—


今日も私は薬草採取をするために森へ行く。それが私の日課です。


しばらく薬草採取に精を出していた私は忍び寄ってくる命の危機に気付くことが出来なかった。

‼茂みの方から物音…?いつもはこんな事ないのに…私は懸命に逃げの態勢に入る。最悪、今日の薬草を捨ててでも。薬草なんて言ってしまえばただの草だ。自分の命には代えられない。

警戒している私の前に姿を現したのは…狼系の魔物だった。しかも一匹ではない。目に見える範囲だけでも4匹は居る。しまった。囲まれている…!

「グルルルル…!」

目前の魔物は私を餌と認識しているのか玩具だと思っているのか私を見て愉悦に満ちた獰猛な表情を浮かべていた。


「…ぁ」

瞬間、その音を発したであろう少女ですら意識しなければ聞き取れないほどの小さな小さな悲鳴を上げた。いや、思わず漏れ出てしまったというべきだろう。しかも少女は腰が抜けて動けなくなってしまった。狼の迫力に気圧されているのだ。


足が……動かない。頑張ってよ!私の足!お願いだから……!

どんなに少女が自らを奮い立たせようとしても現実は無常だ。少女の体は依然恐怖に震え、腰が抜けたままである。……少女が「死」を意識するのも当然の状況。

…ごめんなさい。お母さん…私…


「ガルルルウウ‼」

ッ‼食べられる…!そう思い少女は目を瞑った。だが、少女の痛覚が覚悟した痛みを訴えることは一向になかった。


…?痛みが来ない?私はそんな疑問を抱き、そして…意を決して目を開けた。するとそこには、一匹の狼が腕に嚙みついている男の人がいた。…もしかして、助かった…?


「期待してた訳じゃないけどこんなもんじゃ死ねないな…」

え?この人今なんて?

***

残念、俺の日頃の行いはそこまで良くなかったらしいわ。あれからまる一日が経ったが人の気配が一向にしない。一応川沿いに歩いてきてるんだけどなぁ…まだ森を抜けられないし。てか、これで道を間違えてたら目も当てられんな。確かめようもないが。


そうだそうだ。忘れてた。俺、なんと魔法が使えた^^

魔力の知覚が出来てないから魔法が使えないって考えたのは正しかった。実質事故みたいなもんだったけど。偶々休憩と評して適当な森の恵み(果物)を食べたときに体内を駆け巡る熱い感覚があったんだ。最初毒かと思ったけどスキルのせいでやわな毒は効かないしそも毒にしては巡りが早すぎたからもしやと思ってその感覚に意識を向けた。したら出来るようになったわ、魔法。確認した範囲だと水と風は使えるみたいだ。ド安定の組み合わせで一安心ってとこか。それが昨日の出来事。


今日こそは異世界人に遭遇したいな~と思ったり思わなかったりしながら彷徨ってたら丁度女の子が狼と相対している場面に遭遇した。


……明らかに女の子は腰が抜けてるし助けに入った方が良いな。思い立ったが吉日。てなわけでほんの一つまみ程度にこいつらなら俺にダメージ入れられるかも?という期待を織り交ぜて乱入したわけよ。


「期待してた訳じゃないけどこんなもんじゃ死ねないな…」

予想通りというかなんというかダメージ入らんし血すら出ないし。左腕に狼がぶらんぶらんしている状況は実にシュールだな。


「………うん。もういいわ。お前らに用もないし帰れ。」

そう言って俺は左腕を振るう。するとぬるっと狼の牙が腕から外れ、肢体が跳ねた。

「きゃいん⁉」

獲物に投げ飛ばされるとは思ってなかったんだろうか。固まっているが…ま、いいか。俺の魔法の練習台になってくれや。水魔法の刃をイメージする。この世界の魔法はイメージが重要らしい。イメージ出来たらあとは実際に形にするだけだ。


「【アクアカッター】。」

必要なのはその一言だけ。そこから狼に放たれた水の刃は軽々と狼の首を切断していく。なんとか気づいて反応しようとした個体もいたが遅い。一匹たりとも逃すことなく魔法が命中した。


………ヨシ。見える範囲は仕留めたし、隠れてた強襲部隊は今のでビビッて逃げたっぽいし終わりだな。ということで後ろを振り返ってみる。女の子は綺麗な茶髪を後ろで括ったポニテ少女だった。異世界第一村人遭遇ヨシッ!


「さて……お姉さん平気?立てる?」

俺は女の子に手を貸す。女の子の方も俺の手を借りて無事に立ち上がった。

「えと……はい。助けてくださってありがとうございます!私はペトラって言います。」

「俺はカイト。よろしくね。…ところで、この辺に人の住んでる集落とかあるかな?」

「ありますよ?すぐ近くに私の住んでいる村があります。」

「じゃあ、そこまで案内してもらっても良いかな?」

「分かりました!私の命を救ってくださったお礼もしたいですしぜひ案内させてください!」

「助かる。お願いします。あ、でもその前にこの狼の死体どうしようか。放置するわけにいかないし…」

「そうですね、【アイテムボックス】でもあればよかったんですけど…」


アイテムボックス…?そういえば俺そのスキルあったな。忘れてた。収納っと。

【収納:フォルフの死体×5】

なるほど念じるだけで視界内のものは収納できるみたいだな。スキル実験の時は手元で試したから知らなかった。これで心置きなく進めるね☆


「カイトさん【アイテムボックス】持ってたんですね⁉」

「そうなんだよね。……忘れてたけど。」

忘れてたって言ったらペトラちゃんにダメな子を見る目で見られた気がするがまあいい。


「そういえばカイトさんはどうしてこの森に?」

「実は俺もなんでここに居るのか分からないんだよね。」

「え!?それって…」

「一部記憶喪失…かな?自分の名前とか出身とかは覚えてるんだけどさ、気づいたらこの森に居てさ。どういう経緯でここにいるのかも分からないし、これまでどうやって生きてきたのかも覚えてないんだよ。」

ちょっと無理があるか?でも変に偽ってボロが出るよりも初めから記憶ないですって言った方がマシだよな?


「あ、その…ごめんなさい。私、そんなつもりじゃなくて…」

「いやそんな深刻そうにしないでくれ。生きてるならこういうことも有る。多分!記憶があろうがなかろうが俺は俺だ。というわけで案内をよろしく。」

「……分かりました!当人が気にしてないのに私が気にしすぎるのもおかしな話ですもんね!村への案内任せてくださいよ!」


セーフ。道中気まずい雰囲気になったら耐えられないわ。流石に彼女の前で死ぬわけにもいかんしな。トラウマもんだろ。目の前の奴がいきなり死んだら。死ねないけどね?


【善行ポイントが+1可算されました。】

では今回も設定のメモをば。

魔力マナ

魔法を使うのに必要な力。大気中に漂っている他、この世界の生き物ならば少なからず魔力を体内に内包しているし大体は体内に魔力を生み出す器官が備わっている。異世界人の海斗も例外ではない。

【魔法】

魔力を変質させることで魔力を現象へと変換する。生活魔法と攻撃魔法とで別れており、生活魔法は個人の適正に関係なく誰しもが扱うことが出来る。攻撃魔法は第一位階~第十位階まで存在する。ただし同じ魔法でも使用者の魔力量とイメージによって威力にある程度の変化は出る。また、適性外の魔法でも第二位階までなら一応使用できる(ただし威力は適正アリより劣る)。詠唱は使う魔法のイメージさえできていれば必要ない。新しく魔法を習得するには魔導書や師からの教わり練習することで始めて使えるようになる。海斗の場合はこの教わる過程を完全に無視した。


【アイテムボックス】

誰でも習得可能なコモンスキル。容量は人によってマチマチである。共通しているのは時間停止、生物侵入不可、収納リストが見られる点。鑑定とも連動していることがほとんど。


【フォルフ】

フォレストに生息する一般的な狼の魔物ウルフなので略してフォルフ。単独だとそこまで強くない。群れだから厄介。

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