2話 久しぶり
「……きれい…だな」
ラエリルの中央から東寄りに位置するフルーツガーデン、の手前に広がる広々とした平原。
緑が生い茂り、日輪の光があたりを活性化させている。暑い。
ラエリルにも季節はあるが、場所によっていつ来るのかが変わる。
今は9月。例年はもっと灼熱のような暑さだったからマシになったほうだと思う。
(それにしても……初めて来た)
フルーツガーデン。ラエリル有数の名スポットだ。
冒険者ならば一度くらいは来るべきなのだが、僕は冒険者ではない。
ここに来るまでの道中で、モンスターとか変な盗賊に巻き込まれたりしたから、昔の弱かった自分よりは強くなってるような気はするけど……
「はあ…………此処もなしか」
(……取り敢えず近場で休もうかな)
「――――誰?」
(……洞窟の中から声がした……のか? いや、気のせいだ)
長旅のせいで幻聴も聞こえるようになってきたんだな。
フォワードは踵を返す。
「待ってってば!!」
(……ん?)
フォワードはゆっくり後ろを振り向く。
「……!!」
やっと逢えた。
何時ぶりだろう。
僕の目線が地面と並行して彼女を視界に捉えられる。
「はあ……はあ…………もうなんで行っちゃうのよ!!」
「ごっ、ごめん。……あの……君――アイスに伝えたいことがあって、ずっと捜してたんだ」
「捜す? 私を?」
動揺しているようだ。
無理もない。数年ぶりに会った人に「捜してた」なんて言われると同性であっても動揺する。
まあそんな変な意味はないのだが。
「あのとき、ぼく……俺、ご飯奢れてなかったから」
「ご飯?……あー、あれは私が好きでやったことだから。って、伝えたいことってそのこと?」
「……だから、奢れなかったから、今度こそアイスのために、何かしてあげたい…と思う」
僕の人生の目的は彼女を幸せにすること。
別に彼女のためにとかではなく、自分のために彼女を幸せにしたほうが得だと考えたんだ。そうだ。アイスのためじゃない。
長いこと一人でいたから自分を何よりも優先してしまう。
間違ってる……のかな?
「んーでも……私はフォワードくんがこうして会いに来てくれることが何より幸せかな。ありがとう、フォワードくん!」
「…………」
(どういう反応が正解なんだ)
「えとっ、なんでここに居るの?」
「なんでだと思う?」
質問を質問で返す。
斜め上の返答だった。
なんで、か。
僕は彼女のことを半分も知らない。昔に3、4回会ってなんでもない世間話をしたくらいの関係。
年の差は同じくらいのはずだが、今回の質問の答えは全く予想がつかない。
「……分からない」
「そんなに難しく考えなくて大丈夫だよ!」
「別に難しく考えてるつもりはないんだけど」
「えっそうなの!?」
相変わらずリアクションが大きいな。
でも、元気があって良かった。
「フッ」
「お〜フォワードくん、笑ってる!」
「……それよりさっきの答えは」
「答えは簡単。フルーツが食べたかったから」
(何だそれ)
アイスの考えてることは本当に分からない。
僕はアイスに逢うために彼女が行きそうな、というより冒険者が行くべき場所を巡りに巡った。
彼女が冒険者かというと多分そうだ。
容姿は昔と比べて大人びて見える。寧ろ僕より大人なのではないか。
「あのさ……僕と一緒に旅というか……一緒に来て欲しい」
「え……え!?」
アイスの顔が赤くなってるような?
僕そんな変なこと言ったっけ?
「だ、だめ?」
「全然だめじゃないよ、寧ろ嬉しい」
嬉しい、なんて本当に思ってるかは知らないけど、彼女が緊張しているのは何か理由があるのかな。
「んと、一緒にってどこに行くの?」
「内緒、と言いたいところだけど、僕の両親が経営しているレストランに」
僕の両親はどちらも有名なシェフで、僕もその両親から教わり、料理は普通の人よりできる自信がある。
「……ご飯奢るってこと?」
「そうじゃない。い、いつか、俺の手で作った料理を食べて欲しい」
「それってつまり手料理……フォワードくん料理できるの?」
(バカにされてるのか?)
「嫌だ?」
「嫌じゃなくて、私料理できないからすごいなと思って」
確かアイスのことは前々から聞いたりしてたけど、僕の話あんまりしてこなかったな。
もしかして、秘密主義のように見られてたりもするのか。
全然秘密なんて……いやあるか。
「……それにしてもフォワードくんと会うの久しぶりだね、これ最初に言うべきだった」
「……うん。僕、少しだけ寂しかったというか、その……また逢えて嬉しい」
(何言ってるんだ僕)
「どっどうしたの急に」
アイスはまた顔を赤く染める。
フォワードは思ったことをあまり口にはしないが、偶に口から出ることがある。彼にとっては無意識なのだ。
「……何でもない。とにかく、日が暮れる前に僕の家――レストランに行こ!」
フォワードもまた彼女と同じように顔を赤く染めた。