まさか、婚約破棄…?
「はぁ、君が婚約者じゃなかったら」
ついポロっと言ってしまった。
本音はこんな大好きな女性が婚約者だから上手く立ち振る舞えないのか…なのだが。本気で思ったわけがない。エリス以外なんて有り得ないし、考えたことだってない。
「はい。わかりました」
「えっ! わかったって? 何が?」
「あなたのお気持ち、十分理解しました。では、手続きがありますので失礼します」
「えっ! 待って、手続きって!? エリスっ!?」
呼び止めようとして上げた手をそのままに固まる。
ちょっと待ってくれ!!
手続きって?
なんの?
ま、まさか婚約破棄とか言わないよな!?
嫌だ、俺は彼女だけしかいらない。
彼女じゃなきゃ嫌だ!
嘘だ! エリスが婚約者じゃなかったらなんて本当は思ってない!
悩みに悩んで一睡も出来ず翌日を迎える。
今日は学校も休みだから、朝一番でポトリフ家に謝りに行こうか?
だが先触れもなく急に訪ねるのは非常識か?
でもそんな悠長なこと言ってる場合ではない。
心にもない言葉をぶつけて、絶対に彼女を傷付けた…。
「はぁ…。エリス…」
起き上がったままのベットの上で頭を抱える。するとコンコンと寝室のドアをノックする音が響いた。
「おはようございます」
入って来たのは只今絶賛頭を埋め尽くし中の彼女。
目を擦ってもう一度見ても可愛らしい若草色のドレスを身に纏ったエリスだった。
「えっ? どして…?」
キッと始めてエリスに怒った顔を向けられる。
「事実婚! または同棲でございます。本日からは花嫁修業と致しましてガーディアン家に住まわせて頂きます」
ポケっとだらしない顔をしてしまう。
そして何かを思い付いたかのようにハッと気付く。
「手続きってコレ!? 事実婚って
…何? 一緒に住むって!?」
「ええ。ハイディク様は私の事が好きで、好きで、好きで、好き過ぎて態度が……、その、(残念な方向に)アレになってしまうので。
春になり変な虫(一年のくそリリサ)が湧いてきたようなので、寄生される前に私と居ることに慣れて頂くのが最善かと。こちらの屋敷に移る手続きやらお義父様、お義母様とのご相談も兼ねて色々と昨日は大変でした」
昨日手続きの話を切り出した後、エリスは早退してしまった。
直ぐに追いかけたかったが王城での仕事もあり、昨夜は帰宅が遅かった。
放心状態になっているとエリスがベットに近づき、座ったままのハイディクの頬に右手を当て顔を寄せる。
「ハイディク様。私への耐性を身に付けましょうね? 夫婦になるのですから。 今日から、よ、ろ、し、く、ね」と言って頬をトントンすると最後にチュッとキスをした。
頬を押さえ顔を真っ赤にして口をパクパクし、ブルブル震えるハイディクを見て満足をするとスリっと頰から顎にかけて一撫でする。
(はぁ〜、やっぱりハイディク様は可愛いわぁ♪ 瞳を潤ませて震えちゃって…。今まで我慢してた分、可愛がらせて頂きます!! そしてあなたの形の良い唇から【愛してる】の言葉を引き出してみせますわ!)
覚悟なさって!
私のハイディク様。
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