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黒猫ツバキの夏の日々(ご主人様と、いつも一緒ニャン)  作者: 東郷しのぶ


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5/12

黒猫ツバキと打ち上げ花火――国王陛下即位20周年記念式典――(前編)

登場キャラ紹介(コンデッサとツバキ以外)

 ミミッカ……ボロノナーレ王国の第8王女。17歳。とても賢い。

 国王……ボロノナーレ王国の国王。親しみやすい性格で、国民から人気がある。頭はツルツル。


 ジンキミナ……魔女たちの長老。コンデッサの魔法の師匠。


※テーマは「打ち上げ花火」です。

 本作の時点において、コンデッサ(とツバキ)は、既にミミッカや国王と知り合いになっています(本編『黒猫ツバキと魔女コンデッサ』参照)。

 季節は夏。

 ここは、ボロノナーレ王国の端っこにある村。


 魔女コンデッサ(20代の美人さん!)と彼女の使い魔である黒猫のツバキは、仲良く暮らしていた。


 ある日、彼女たちの家にミミッカが訪ねてきた。

 ミミッカは、17歳。ボロノナーレ王国の第8王女である。


「これはこれは、王女殿下。わざわざこのような田舎までいらっしゃるとは、どうなされたのですか?」

「コンデッサ様にお願いがあって、まいりました」

「私に願い……なんでしょう?」

「コンデッサ様は、古代世界の空の芸術〝打ち上げ花火〟を、ボロノナーレ王国に(よみがえ)らせた《花火復活プロジェクトチーム》の一員であると(うかが)っております」

「ハイ。その通りです」


 2人の会話を聞いていたツバキが、誇らしげに言う。


「ご主人様は、何でも出来るのニャ」

「ツバキ。いくら本当のことでも、そんなに()めるな」

「ご主人様は、何にでも関わっているのニャン」

「まぁな」

「ご主人様は、あらゆる事に頭をツッコむのにゃ」

「その表現は、どうかと思う……」



 コンデッサたちが生きている世界は、実は現代より数億年()ったあとの地球なのである。そのため古代の地層より、しばしば《用途不明となってしまった、過去の地球の遺物(いぶつ)――オーパーツ》が見付かるのだ。


 数ヶ月前にコンデッサは、オーパーツの1つを入手した。それは、古代世界の書物。――《解読(かいどく)魔法》を使用してみた結果、タイトルは『みんなで楽しむ、打ち上げ花火』である事が分かった。

〝打ち上げ花火〟とは如何(いか)なるモノか、その実態(じったい)は、コンデッサたちの時代に伝わっていない。そんなわけで、コンデッサによる〝謎の本〟解読を契機(けいき)に、《花火復活プロジェクトチーム》が結成されたのである。


 メンバーは、コンデッサを始めとする魔女数人(すうにん)、古代世界を研究している考古学者数人、火薬の専門家数人、色彩の芸術家数人、そして黒猫のツバキ。

 なぜツバキがメンバーに入っているのかは、当時から疑問とされていた。現在でも、その理由は全くもって不明なままである。


 で。


 文献にもとづいて試作してみた〝花火玉(はなびだま)〟を、コンデッサたちは空へ打ち上げてみた。


 ドーン!

 バン!

 ドン! ドン! ドン!

 ドドドドド

 バババババ

 バーン!

 パラパラパラ


「う~ん」

「音は、凄いんだけどね」

「思っていたよりも、イマイチだな」

「もうちょっと、こう……」

「ニャ~」


 不評であった。


 しかしコンデッサは(あきら)めずに『みんなで楽しむ、打ち上げ花火』を再解読(さいかいどく)してみた。すると、なんと〝花火は、(おも)に夜に打ち上げていた〟という新事実が判明したのである。

 前回の実験は、昼に行っていたのだ。


 で。


「けれど、なぁ……」

「実験時刻を昼から夜にしたところで、そんなに変わるものなのか?」

「過度な期待は、やめておきましょう」

「やるだけ、やってみるか」

「ニャン」


 夜。


 ドーン!

「うおおおおお!」

 バン!

「凄い!」

 ドン! ドン! ドン!

「ビューティフル! ワンダフル! ファンタスティック!」

 ドドドドド

「夜空の奇跡! 光彩の芸術! 典雅(てんが)大輪(たいりん)!」

 バババババ

「うわ~! うわ~! うわ~!」

 バーン!

「感激、感嘆(かんたん)、胸いっぱい」

 パラパラパラ

「にゃ~! にゃ~! にゃ~!」


 大好評であった。



「ご主人様、大手柄(おおてがら)だったニャン」

「うん」

「それで、《復活の花火(はなび)魔女(ウィッチ)》との名声を得られているコンデッサ様にワタクシが頼みたいことと言うのは――」

「チョットお待ちください、王女殿下。私を《復活の花火魔女》と呼ぶのは、やめていただきたいのです」

「え? どうしてですか? 花火復活の功労者であるコンデッサ様に相応しい、素晴らしい呼び名だと思うのですが……」


 不思議そうな顔になる、ミミッカ。

 ツバキが説明する。


「《復活の花火(はなび)魔女(ウィッチ)》との呼び方が長いにょで、《復活のハナ()ウィッチ(・・)》を略して《復活のビッチ》って言う人が居るのニャン」

「復活のビッチ……」


 ミミッカは(つぶや)き、それから黙り込んでしまう。

 コンデッサは、無表情だ。


「…………」

「…………」

「……ニャ~」

「王女殿下。私への用件とは?」

「あ。そ、そうですね。コンデッサ様。今月末に、父の即位20周年記念式典が開催されることはご存じでしょうか?」

「国王陛下の即位20周年記念式典……もちろん、承知しております」


 ボロノナーレ王国の現在の国王は気さくな人柄で、国民から、とても高い人気を得ている。コンデッサとも、知り合いだ。


「ワタクシは娘として、式典で父へ贈り物をしたいのです」

「なるほど。それで〝打ち上げ花火〟なのですね」

「ええ。協力していただけないでしょうか?」

「分かりました」

「ありがとうございます!」

「アタシも、手伝うニャン!」

「ツバキさん……そのお気持ちが、嬉しいです」

「猫の手を借りるほど、忙しくはなりませんよ。王女殿下」

「ご主人様は、いけず(・・・)ニャン」



《国王陛下の即位20周年記念式典で花火を打ち上げよう臨時委員会》が、発足した。メンバーは、かつての《花火復活プロジェクトチーム》と一緒である。


「本来の花火だけでも充分に美しいんだが、せっかくの式典だし、なにか新しい工夫が欲しいな」


 思案中のコンデッサに、ツバキが提案する。


「それニャら、花火を使って夜空に〝文字〟を(えが)いてみるのはどうかニャ?」

「文字か。難しそうではあるが……」


 コンデッサがメンバーに相談してみると、『花火玉に魔法を掛けることで、可能になる』との返事を(もら)った。


「ツバキさん。素晴らしいアイデアです!」


 ミミッカは喜び、自ら文字を選定した。


「『(いわう)』『(しあわせ)』『(さとい)』『寿(ことほぐ)』『(こい)』『(さかえる)』にいたします」


 コンデッサが王女に尋ねる。

「『祝』『幸』『寿』『栄』は分かりますが、『聡』と『恋』は――」

「『恋』は、式典に来られる恋人たちへ……古代世界では、花火をカップルや家族で見るケースが多かったと聞きましたから。国民へのアピールです」

「さすが、王女様ニャン。『聡』は、ナンなニョ?」

「『聡』は〝聡明(そうめい)な国王陛下〟――早い話、父へのおべんちゃら(・・・・・・)です」

「ミもフタも無いニャン」


 コンデッサは、更に王女に告げる。

「委員会に確認してみたところ、打ち上げ花火の文字が平仮名(ひらがな)だったら、文章にすることも出来るそうですよ」

「では、『おめでとうございます』『およろこびもうしあげます』『おすこやかであらせられますように』の3つをお願いします」

「了解しました」



 そして、 国王陛下即位20周年記念式典の日……。

 後編に続きます。

※注 ボロノナーレ王国の公用文字は『漢字・平仮名・カタカナ・ローマ字』の4種類です(でも〝時空のねじれ現象〟により、古代の文字を解読するのは困難で、魔法が必要だったりします)。本作はコメディーであるため、ツッコミは無しで……(作者からの嘆願)。

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